IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第27話 示される力!もうヤマヤなんて呼ばせません!!

 曰くつきの二人が登場したHRは、珍しくお茶を濁した織斑先生の一言で終了した。

 一夏も平手打ちのダメージから「オイこら捏造するな」立ち直り、三人目の男子と友誼を深めようとしていた……。

 

「おい織斑。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう。山代、お前も逃げるな」

「君が織斑君?初めまして、僕は―――」

「ああ、いいから。とにかく移動が先だ。女子が着替え始めるから」

 

 そう言うと一夏はデュノアの手を取り、教室を飛び出す。

 俺も8の取っ手をつかみ、早足でその後に続く。

 

「とりあえず男子は空いてるアリーナ更衣室で着替え。これから実習のたびにこの移動だから、早めに慣れてくれ」

「う、うん……」

 

 デコが真っ赤の状態で先輩風(せんぱいかぜ)を吹かせる一夏は、正直、かなり滑稽だった。対するデュノアは、モジモジして、妙に落ち着かなそうだ。その仕草は、妙に女っぽい。

 

 だが男だ。

 

「トイレか?」

「トイ……っ違うよ!」

「そうか。それは何より」

 

 二人は階段を下りていく。……む、そろそろ他クラスのHRが終わってもおかしくない時間だ。

 俺は手近な窓を開け、外へと飛び出す。

 8の拡張領域から具現化させたのは、真っ赤な翼のハングライダーだ。

 

「アイ・キャン・フラーーイ!!」

 

 窓枠を蹴り、空へ。目指すは第二アリーナだ。

 

「ああっ!転校生発見!」

「しかも織斑君と一緒!」

「そういえば、山代君は?」

「いた、あそこ!!空飛んでる!!」

「ええい、性懲りもなく!弓道部部隊!!」

 

 校舎から聞こえる声。……が、同じ手が二度も通じると思うなよ!!

 

 弓矢は飛んでくるが、俺は回避しない。

 ハングライダーに命中。ダメージなし。

 制服に命中。穴は開かないし、痛くも痒くもない。

 

目標(ターゲット)、健在!!」

「そんな!矢が効かないなんて……」

 

 フハハハハハ!!

 説明しよう!前回の教訓を得て、俺の制服は防弾・防刃・防レーザー加工を施してあるのだ!!むろん、ハングライダーも同じ材質。この程度では終わらんよ!

 

「貸しなさい。私がやります」

「あ、名護屋河先輩!お願いします!!」

 

 ……は?「名護屋河」って……弓道部の部長じゃねぇか!

 マズい!あの人の矢は、40m先の的を、木端微塵にするほどの破壊力があんのに!!

 

「くっ……。シールド展開!!」

 

 校舎に向けてレッドフレームの楯を構える。その判断は正しかった。

 

 ズドオォォォン!!

 

 砲弾でも直撃したかのような衝撃を受け、俺は体勢を崩し、地面へと落ちていった……。

 

 

 

 

 

 

〈side:織斑 一夏〉

 

 群衆に捕まる前に校舎を脱出した俺達は、少しペースを緩めて走っていた。

 そしてもうすぐ第二アリーナの入り口……ってところで、信じられないモノを見た。

 

「よォ……。遅かったな、二人とも……。」

 

 更衣室の脇の壁にもたれかかり、息も絶え絶えの人影。それは、いつの間にか姿を消していたはずの、紅也であった。

 見るものにインパクトを与える赤髪は、いまは泥まみれで見る影もなく。

 額と唇が切れ、うっすらと出血していた。

 それなのに、全くダメージのない制服だけが、妙にミスマッチだった。

 

「山代君!?一体、何が……?」

 

 シャルルが恐る恐る、といった感じで接近し、ハンカチで血を拭き取ろうとする。

 しかし紅也はそれを手で制すると、俺達二人を見回す。

 

「へっ……。二人とも、無事だったか。良かった……」

「ば……馬鹿やろう!他人の心配より、自分の心配を……」

 

 俺は、思わず声を荒げる。

 

「いや、いいんだ……。自分の体のことは、自分が一番よく分かってる……」

 

 ずるずる、と。

 山代の体が壁をすべり、尻もちをつく。俺達を見上げるその瞳は、やや虚ろだった。

 

「……なあ、一夏。最後に一つ、頼まれてくれないか?」

「っく、何だよ……。最後だなんて、言うなよ……」

「こ……これを……」

 

 そう言って紅也は、懐から四角い箱を取り出し、俺に押しつける。

 

「一本だけ…。一本だけでいいんだ。これを、俺の口に……」

 

 俺はその箱から、小さな円柱形の物体を取り出し、紅也にくわえさせた。

 

 サクサクサク……という音が響く。

 ――紅也が取り出したのは、じゃ○りこだった。

 

「ふう……ありがとよ……。

 ……早く行け。俺は……少し……眠く……なって、き……た……」

 

 瞼が閉じていく。もう、俺達の言葉は、彼には届かない。

 

「くっ……。行くぞ、シャルル!コイツの犠牲を無駄にしちゃ、いけないんだ!!」

「え、えっと。ただ寝てるだけだと思うんだけど……?」

「いいから行くんだ!俺達まで遅刻したら、紅也に申し訳がたたねぇ!」

 

 渋るシャルルの手を引き、俺は更衣室の扉をくぐる。

 もう、後ろは振り返らない。

 

 

 

 

 

 

〈side:山田 真耶〉

 

 あ、初めての私サイドですね!いいんでしょうか、織斑先生より先に……。

 

 さて、朝から散々生徒にからかわれた私ですけど、今日は一味違いますよ!

 今の私は、ISを使ってます!名前は「ラファール・リヴァイヴ」!!デュノア社製の第二世代機です。

 さて、何でISを使っているかというと……。

 今日の模擬戦闘、私が戦うんです!実は私、昔は日本の代表候補生だったんですよ!!

 

 えっへん!すごいでしょ!

 

 ここで活躍すれば、生徒たちも私を見直すはず!そうすれば、変なあだ名じゃなくて、山田先生って呼んでくれるはずです!!

 

 ……と、そんなウキウキした気分で飛んでいたのですが、センサーが何かを発見しました。

 望遠機能で拡大してみると、アレは……。オーストラリアの第二世代機、「メイン・バトル・フィギュア」のシールドですね。しかも、表面が陥没してます!

 この武装を持っているのは、IS学園内では二人だけ……。

 ……いえ、カラーリングは赤ですから、山代くんのものでしょう。

 

 ……えええっ!!じ、じゃあ、山代くんに何かあったんでしょうか?

 シールドを拾い上げた後、山代くんの姿を探してみると……。いました!更衣室の入り口に!

 

 し、しかも……。倒れてます!大変です!!

 あわてて接近し、バイタルチェックを行うと、どうやら意識を失っているようです。

 一体、何があったのでしょうか?

 

「山代くん、目を開けてください!山代くん!!」

「え……あ……。やまだ……せんせい?」

「! 山代くん?気が付いたんですね!良かった~。」

 

 うっすらとですが、目を開けてます!

 私はそれが嬉しくて、思わず彼を抱きしめました。

 

 ――そう、ISを装備していることを忘れて。

 

「さあ、ちょっと遅れてますけど、アリーナに行きましょう!大丈夫、織斑先生には、私から説明しますから!」

「ありがどうござ……ぞれより、ぐるし……」

「じゃあ、このまま飛びますよ!!」

 

 山代くんが何かを言いかけてたけど、もう時間がありません。

 さあ、私の活躍が始まりますよ~!!

 

 

 

 

 

 

〈side:アリーナ内〉

 

「……む?そういえば、山代はどうした?姿が見えんが」

 

 セシリアと鈴音を叩いた千冬は、ようやく紅也の不在に気付いた。

 

「あー……山代君は……」

 

 シャルルは、あれをどう説明したものか……と、考え込む。

 実際、シャルルも何が起こったか把握しているわけではない。

 

「まさか、サボりか?いい度胸だ……」

「ま、待ってくれ千冬姉!これには、深い訳が……」

 

 バシーン!都合四度目の乾いた音が、アリーナに響く!……あ、これ以前の三回分は原作参照ね。

 

「織斑先生と呼べ。……で、どんな事情があるんだ?くだらないものだったら……」

 

 そう言って、素振りを始める千冬の姿に、一夏は冷や汗を流した。

 

「えっと……その……」

 

 シャルル同様、説明に困る一夏であったが、救いの声は、空から降ってきた。

 

「織斑先生!それは、私が説明します!!」

 

 唐突に聞こえたその声に、一同は上を見上げる。

 そこにいたのは一機のIS――ラファール・リヴァイヴだった。

 

「山田君か、早かったな」

「ええ、急ぎましたから……」

 

 ゆっくりと地上に下りる真耶。その両腕で抱えられていたのは、話題の張本人、紅也であった。

 

「紅也さん!?どうしたんですの?」

「ちょ、紅!大丈夫なの?」

 

 近くにいたセシリアと鈴音が、そのぐったりした姿に驚愕する。

 それを千冬は一睨みで黙らせ、麻耶に説明を求める。

 

「……で?なにがあった?」

「私も詳しくはわかりませんけど、更衣室の前で倒れてました。

 さっきまで意識があったんですけど、気が付いたら、また……」

 

 そう説明した真耶の目は、涙目だった。

 

「……はあ。山田先生。更衣室からここまで、どうやって来た?」

「それは、急いで飛んで……あ」

 

 その場にいた全員が、麻耶に白い目を向ける。

 

「生身の人間が、そんなGに耐えられるわけないだろう」

「ご……ごめんなさーい!!」

 

 実際は、飛ぶ前に胸で窒息――略してちちっそく――したことが原因なのだが……。幸いと言っていいのか、それを知るものはこの場には一人もいなかった。

 

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