IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第29話 いや、ネタ振りのつもりだったんだが……

「では午前の実習はここまでだ。午後は今日使った訓練機の整備を行うので、各人格納庫で班別に集合すること。専用機持ちは訓練機と自機の両方を見るように。では解散!」

 

 織斑先生の合図で実習は終了。ISをカートに乗せ、レッドフレームで押して運ぶ。なぜか一夏だけは生身でカートを押してたが、修行のつもりだろうか?

 しかし、シャルル人気はすごいな。女子が率先して訓練機を運んでた。さすが「守ってあげたくなる系」。庇護欲をそそるオーラでも出てるんだろうか。

 確かに、見た目は華奢で、とても力仕事に向いているとは思えない。

 

 だが男だ。

 

 まあ、それはそれとして。

 現在、一つ気になっていることがある。

 実習前と比べて、箒が明らかに落ち込んでいるのだ。

 箒のテンションが変わる原因と言えば……一夏との仲直りができなかったのか?それとも、さらにこじれたか。原因の一端は俺にあると言えなくもないので、少し心配だ。

 

「紅也、シャルル、着替えに行こうぜ。俺達はまたアリーナの更衣室まで行かないと……って、紅也?いつの間に着替えたんだ?」

 

 そう。俺の姿は、既に制服だった。

 

「はあ。そもそも、ISスーツに着替えてないんだから、当たり前田のクラッカーだぜ。お前、俺がどうやってここまで来たか、もう忘れちまったのか?」

「……あ、そっか。山田先生に運ばれてきたもんね。エネルギーを使ってスーツを展開したんでしょ?」

「正解だ、シャルル。褒美として、黄金のファラ男を一つプレゼントだ」

「? 何、それ」

「知らないならいいや。……と、いうわけだから、ISを解除すれば自動的に制服が再構成されるんだよ。悪いけど、二人で着替えててくれ」

「……あ!僕はちょっと機体の微調整をしていくから、先に行ってて着替えててよ。時間がかかるかもしれないから、待ってなくていいからね」

「ん?いや、別に待ってても平気だぞ?俺は待つのには慣れ―――」

「い、いいからいいから!僕が平気じゃないから!ね?先に教室に戻っててね?」

「お、おう。わかった」

 

 ……今のシャルルの動揺っぷり、半端じゃなかったな。

 やはり、何かを隠しているのか?

 ――せっかくのチャンスだ。少し、探ってみるか。

 

「なあ、シャルル?」

「ん?どうしたの?紅也も先に行ってていいよ」

「そうじゃなくてだな……。お前、髪型変える気はないか?」

「え、な、何を急に?」

 

 まずは、会話から糸口を探る。かの伝説の名探偵シャーロック氏も、そんなことを言っていた。

 

「せっかくシャルルって名前なんだからさ、貴族みたいなクルクルロールにしてみるとか。皇帝っぽくていいんじゃね?」

「……ひょっとして、僕がフランス出身だからって、からかってる?」

「いや、某98代皇帝と名前が同じだからな」

 

 神聖ブリタ○ア帝国の。

 

「? 98代も続いてる皇帝なんていたっけ?」

「文化の違いか。知らないならいいや」

 

 さて、いきなり会話がすべった。これ以上、話が続かないな。今度は、葵も交えて食事に誘うか?

 

「じゃあ、先に行くぜ。また授業でな、シャル子よ」

「! う、うん」

 

 ……?

 「だが男だ」つながりでからかっただけだが、妙に反応してきたな。

 ……マジか?マジでDメール送っちゃった系か?バベルの塔が崩れてるのか!?

 男じゃなくて、女なのか?

 だが、確かめる術は無い。「このHENTAI!」呼ばわりされたくない。

 とりあえず、この疑問は保留だ。今は、別の問題を片付けようか。

 

 

 

 

 

 

「よう、まだいたのか、箒」

「! ……何だ、紅也か。悪いが、今は一人に……」

「知ってるか?悩みってのはな、一人で抱えるとドツボにはまるんだぜ。

……と、いうわけで、一緒に昼飯食いに行こうぜ。誰誘う?」

「いいと言っているだろう!私に構うな!」

 

 格納庫でうなだれていた箒を発見し、話しかけた俺だったが、相手は聞く耳持たずだった。

 ……こういうとき、一夏だったら強引に連れてくんだろうが、生憎俺はそんなことはできない。俺はただ、説得するのみだ。

 

「まあ、そう言うなよ。さっきのあれは、どう考えても一夏が悪いぞ」

「……見てたのか」

 

 いや、見てない。

 ただ、相手に賛同する様子を見せると、人は簡単に心を開く。

 

「まあ、あんなことをされたら、普通はヤキモチ焼くよな。誤解の方も、まだ解けてねぇんだろ?」

「う、うむ。じつは、そうなのだ……」

 

 見るからにしゅんとする箒。陥落まで、もう一息か。

 

「あの一件は、俺達にも責任がある。とりあえず、飯にしようぜ。気持ちが下降気味の時は、食べるのが一番だ」

「……太るぞ?」

「運動すりゃいいさ」

「ふっ……。そうかもしれんな」

 

 ようやく誘いに乗ったか。やれやれ、手間のかかる子だ。

 さて、せめて愚痴くらいは聞いてやろう。誰か、学食行く奴いないかなー?

 

 

 

 

 

 

 食堂は、いつも以上に混んでいた。

 

「なあ、葵。なんでこんなに混んでんだ?」

「……転校生」

「なるほど、シャルル目当てで集まってんのか。……簪、四人席、確保できそうか?」

「……あそこ、空いてる……」

「おっけ。じゃあ、とりあえず席だけ確保してくるから、三人とも先に注文してきてくれ。……あ、葵。俺はカレーうどん、単品で」

「……わかった」

 

 セシリアと凰は弁当を持ってきたため、今日は来ていない。大方、一夏を誘って食事中だろう。ご愁傷さまだな。

 実はセシリア、料理はかなり下手なのだ。まあ、死人が出ないだけ姫○さんよりマシだと思うけど、それと比べるのは間違ってる気がする。何で、味見をしないんだろうな。

 ……え、俺か?チャーハンくらいしか作れないぞ。

 

 主人公が全員、料理うまいと思うなよ!!

 

 まあ、メタ発言はこのくらいにしておこうか。

 そういうわけだから、ここに来たのは俺、葵、箒、簪の漢字一文字女子たちだ。

 シャルルは、一夏に誘われてたけど、ここにいたら食事にならなかっただろうなぁ。いい判断だったと思う。

 

「……おまたせ、カレーうどん」

「さんきゅ。はいお金」

「い、妹をパシリに使うとは……」

「……仲良し、だね……」

 

 さて、これで4人そろった。さあ、食事を始めよう。

 

 

 

 かちゃかちゃ。

 しばらく、食器の奏でる音だけが響く。

 

「そういえば……」

 

 焼き魚を呑みこんだ箒が、ふとこちらを向く。

 

「紅也は山田先生に運ばれてきたが、何があったんだ?」

「……? 運ばれてきた?」

「ああ。遅刻したと思ったら、山田先生と一緒に来たんだ。……意識を失った状態でな」

「……それって、かなり……大事(おおごと)、だよね」

 

 三人の興味深そうな視線が、一斉に俺に向く。うどんを咀嚼し終えた俺は、あの状況を言葉にまとめようとするも、なかなかうまくいかない。

 

「あー。撃墜されて、意識失って、それから……。……気が付いたら、アリーナにいた」

「……何か隠してる」

 

 鋭すぎるぞ、葵。

 

「む、山田先生の話では、意識はあったと聞いているが」

「……嘘、ついてるの?」

 

 箒!?無駄な記憶力を発揮するな!そんな、どうでもいいことに!

 

「いや、意識不明の同級生が運ばれてくる、というのは『どうでもいいこと』ではない気がするが」

「話して」

「紅也……くん?」

 

 な、何だ?このプレッシャーは!震えているのか、私が?

 

「あー……。うー……。……ダメだ。朦朧としてたから、よく覚えてねぇ。

ところで箒、そろそろ本題に入っていいか?」

 

 不自然な言い訳に、不自然な話題転換。不自然だらけだが、今はそれでもいい。

 もともと、そんな話をするために集まったわけじゃない。

 

「さて……。一夏と、何があったんだ?」

「……話さないと、ダメか?」

「別にいいが、話した方が楽になるぜ」

 

 そう俺が薦めると、箒は顔を上げ、口を開き……

 

「……少し、いい……かな?」

 

 唐突に、簪がそれを遮る。

 

「この人……誰なの?」

 

 …………。

 そうか。考えてみれば、簪と箒が会ったのは一回だけだ。

 あの時は、二人とも俺への質問で手いっぱいだったし、自己紹介してないんだな。

 

「一組の篠ノ之 箒だ」

「……四組、更識 簪……」

 

 終了。他に話すことないのか。

 

「話が進まない」

「同感だ。じゃあ箒、どうする?」

「……話そう」

 

 今度こそ、箒は重い口を開き、語り始める。

 

「葵はあの場にいたな?あの時の誤解が、まだ解けていないのだ」

「一夏、喧嘩中?」

「……そうだ。それで今日の授業中、一夏に踏み台になれと言ってしまったんだ」

「「「……はい?」」」

 

 ちょっと待て。脈絡なさすぎだろ。

 踏み台って何だよ。SMか?アブノーマルすぎるだろ。

 

「補足説明を求める。理解不能」

「……山代さんに、賛成」

「俺も分からんが……。詳しく話してくれ」

 

「あー、うむ。変な意味ではなくてだな。実習中にISを立たせたままにした者がいてな、そいつを、一夏が、その……抱いて運ぶことになったんだ」

 

「……よくある」

「へえ、けっこう初歩だと思ったんだけどな。四組でも、そんなミスをする奴がいたのか」

「三組にも、いた」

 

「そ、そんなことはどうでもいい!それで……。とにかく、一夏が他の女を抱くのが嫌で、思わずそんな一言を……」

 

 最後の方、超小声だったな。

 ……なんだ、ただのヤキモチか。

 

「……続きは?」

 

 ……葵?この話は、もう終わりじゃないのか?

 

「こんなの、いつものこと。ここまで落ち込まない」

「言われてみれば、確かに……」

「……私、帰って……いい?」

 

 相変わらず、一夏の話題が嫌いなようだな、簪は。

 いやそれ以前に、よく知らない人物の話題で盛り上がっていても、居心地が悪いだけか。

 

「そ、それでだな。私の時も一夏に運んでもらおうと思ったんだが……。『箒は、俺が踏み台になったほうがいいんだろ?ほら、早く乗れよ』『ほら、早くしろよ。俺のことなんか、踏み台程度にしか思ってないんだろ』……などと言って!人の気も知らずに!!」

 

 そう言って机を叩く箒。周りの注目が、俺達に集まる。

 

「あー、これは……」

「どっちも悪い」

「織斑一夏は嫌いだけど、これは……あなたをフォローできない」

 

 タイミングが悪かった。それだけで、ここまで人間関係がこじれたのか。

 

「……箒。今回のは、お前も悪いぞ」

「! な、何を根拠に……」

「一つ。昨日のうちに誤解を解かなかった。

 二つ。まあ、いつものことだが、一夏に対してきつ過ぎだ。これじゃ、嫌われてるって思われても無理はない」

「だ、だが……」

「喝っ!」

「ひうっ!?」

「話を聞け。三つ目!素直に謝っとけばよかったんだ。両方が変な意地張ってたら、そのうち手遅れになるぞ!」

 

 そう。何かあったら、時間をおかずに謝った方がいい。

 葵と簪も、ケンカ(ただし一方的)はしたけど、嫌いあってるわけじゃない。

 ほら。こうやって一緒に食事とってることからも、分かるだろ?

 

「……ただ、三つ目は、一夏も同罪」

「……紅也くんと違って……子供っぽい……」

 

 二人とも、ほぼ同じ意見のようだ。

 だが、簪。俺が大人っぽいのは、仕事モードのときだけだぜ。

 

「謝る……?私が、か?」

「そうだよ。……幼なじみは二人いるんだぜ?こんなところで脱落したいのか?」

「そ、それは!……困る」

 

 おおう、必死だな。恋は盲目って奴かな。

 

「……織斑くんの愚痴くらいなら、聞いてあげる……」

「がんばって」

「そういうことだ。次の時間、頑張れよ」

 

「みんな……。うむ、なんだかすっきりした。ありがとう、紅也、葵、更識!」

 

 答えは得たようだ。きっと、これから頑張ってくれるだろう。

 

「……じゃあ、俺達の責任は、ここまでってことで」

「後は、自己責任」

 

 席を立ち、俺達は食堂を後にする。ふっきれたように見える箒がどんな動きを見せるのか?それは俺たちには分からない。

 ……これで、変なしこりが残らないといいけどな。

 

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