IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第32話 紅也の悪癖!?アイツにアレを持たせるな

 作戦開始から、5日がたった。

 あの後も、何度かヒヤリとする場面はあったが、その度にハッと気づき、阻止し続けたため、葵の存在はバレてない。

 後はシャルルを部屋に連れ込めば、ミッション・コンプリート。

 

 ……こうして書くと、何だか変態みたいだ。

 

 ともかく、この作戦が成功すれば、俺は晴れて「奇策士・こうや」を名乗れる。

 さて、今日こそ頑張るぞー!ちぇりお!

 

 

 

 

 

 

「ええとね、一夏がオルコットさんや凰さんに勝てないのは、単純に射撃武器の特性を把握していないからだよ」

「そ、そうなのか?一応わかっているつもりだったんだが……」

 

 土曜日。

 いつものメンバー(一夏、箒、セシリア、凰、シャルル)でアリーナを使い、実習を行う俺たち。今は、一夏とシャルルが手合わせをして、その反省会の最中だ。

 

「うーん、知識として知っているだけって感じかな。さっき僕と戦ったときもほとんど間合いを詰められなかったよね?」

「うっ……確かに。『瞬時加速(イグニッション・ブースト)』も読まれてたしな……」

 

 え?アレ、読まれてないとでも思ってたのか?

 相手が撃ち終わった直後に使用、って……。バイハのボス戦かよ!って、思わずつっこみそうになったぜ。

 

「一夏のISは近接格闘オンリーだから……」

「ブレオンと言え。高尚に」

 

 シャルルの言葉に、被せ気味に呟く俺。あいにく、そこは譲れない。

 

「……だから、より深く射撃武器の特性を把握しないと対戦じゃ勝てないよ。特に一夏の瞬時加速って直線的だから反応できなくても軌道予測で攻撃できちゃうからね」

 

 うわお。流された。

 シャルルのスルースキルは、数日のうちに相当上がった。そのへん、俺たちに溶け込んできたと言えるだろう。

 

「直線的か……うーん」

「あ、でも瞬時加速中はあんまり無理に軌道を変えたりしない方がいいよ。空気抵抗とか圧力の関係で機体に負荷がかかると、最悪の場合骨折したりするからね」

「……なるほど」

 

 しかしシャルルのやつ、教えるのが上手いな。俺よりよっぽど「先生」らしいじゃないか。

 一夏のやつ、また腕を上げるな。何せ、いままでの教官は……。

 

 一番!非理論的擬音語で説明する女、箒。

 二番!理論理解実践主義、セシリア。

 三番!感覚主義者、凰。

 

 だったからな。優秀かもしれないが、師匠には不向きだな。

 ちなみに俺の師匠は、習うより慣れろ、見て覚えろの古典主義者だった。

 そのせいか、俺も一夏と箒に対しては同じスタンスをとってたぜ。

 

「ふん。私のアドバイスをちゃんと聞かないからだ」

「わたくしの理路整然とした説明の何が不満だというのかしら」

「あんなにわかりやすく教えてやったのに、なによ」

 

 三人の教官は、そんな一夏に不満タラタラであったようだ。

 

「まあ、落ち着けよ。教官が優秀でも、すべてが伝わるわけじゃねぇんだ。

 だから、『君たちは悪くない』」

「う、うむ。そうか……」

「優秀ですか?そうですか……」

「……って、紅!なに括弧つけてるのよ!」

 

 む、凰にはバレたか。

 まあ、全部嘘って訳じゃないんだが……。

 

「一夏の白式って、後付武装(イコライザ)がないんだよね?」

「ああ。何回か調べてもらったんだけど、拡張領域(バススロット)が空いてないらしい。だから量子変換(インストール)は無理だって言われた」

「たぶんだけど、それって――」

「ワンオフ・アビリティーに容量を食われてるんだよ」

「――紅也、割り込まないでよ」

「うるせぇ。さっき無視した罰だ。……話を戻すぜ。

 前に話したような気もするが、ワンオフ・アビリティーってのは、第二形態(セカンド・フォーム)から発現するものなんだよ。……ここからは俺の推測なんだがな、白式には、第一形態からアビリティーを使用できるようにするプログラムが入ってるんじゃないか?それが、拡張領域を減らしてると思うんだ」

「うーん、僕は、零落白夜自体の容量が原因だと思うけど……」

「……まあ、ここで話したって、答えなんて出ねぇよ。これに答えられるのは、不思議の国の兎さんだけじゃないか?」

「うさぎ……?」

 

「まあ、今は考えても仕方ないだろうし、そのことは置いておこうぜ」

「むう……。そうだな」

「それもそうだね。じゃあ、射撃武器の練習をしてみようか。はい、これ」

 

 そう言ってシャルルは、手にした55口径アサルトライフル、〈ヴェント〉を一夏に手渡した。

 

「え?他のやつの装備って使えないんじゃないのか?」

「普通はね。でも所有者が使用許可(アンロック)すれば、登録してある人全員が使えるんだよ」

 

 ISの武装――ナイフや剣などはともかく、射撃武器やエネルギー兵器なんかは、乱戦で相手に奪われて使われないようなセーフティがかかっている。自国、あるいは自社の研究の結晶である兵器を取られない、あるいは解析されないための当然の措置だ。

 しかし、そのルールをぶっ壊すプログラムを持っているのが、現在のブルーフレームだ。

 改めて思う。理不尽な能力だと。

 

「――うん、今一夏と白式に使用許諾を発行したから、試しに撃ってみて」

「お、おう。か、構えはこうでいいのか?」

 

 銃器にビビったのか、一夏はへっぴり腰で、脇は大きく開き、目線はキョロキョロしている。シャルルも、少しあきれ顔だ。

 

「えっと……脇を締めて。それと左腕はこっち。わかる?」

 

 一夏に近づいたシャルルは、手取り足取り(文字通り、体を動かして)指導している。

 

「火薬銃だから瞬間的に大きな反動が来るけど、ほとんどはISが自動で相殺するから心配しなくてもいいよ。センサー・リンクは出来てる?」

「銃器を使うときのやつだよな?さっきから探しているんだけど見あたらない」

「うーん、格闘専用の機体でも普通は入っているんだけど……」

「欠陥機らしいからな。これ」

「100%格闘オンリーなんだね。じゃあ、しょうがないから目測でやるしかないね」

 

「……って、待て!そりゃ、いくらなんでも無理だぜ」

 

「ん?やれないことはないと思うんだけど……」

「わたくしも、そのくらい簡単だと思うのですが」

 

 そりゃ、そうだろうよ。二人とも射撃は上手いからな。

 

「ん?もしかして紅也、射撃が苦手なのか?」

 

 ……一夏ェ。

 

「ん~? 何?紅って、射撃苦手なんだぁ」

「言われてみると、確かに射撃をしている描写は、今まで一度もなかったな」

「箒!メタ発言禁止!」

 

 凰はニヤニヤと、箒は腕を組んで、そう発言する。

 くそう、鬼の首でもとったような顔をしやがって!!

 

「へぇ……。じゃあ、紅也も練習しないとね」

 

 シャルルぅ!なんでそんなに楽しそうなんだ!Sっ気があるなんて聞いてなかったぞ……。

 

「ほら、射撃武器を展開しなよ」

「……ホイ」

 

 レッドフレームとガーベラを展開。空破斬の構えを取る。

 

「それ、刀だよね。銃は?」

 

 にこにこ。

 シャルルの笑顔が怖い。

 

「……持ってない。だから撃てn……」

「はい、これ。アンロックしてあるから」

 

 有無をいわさず、もう一丁の〈ヴェント〉を手渡される。これで、逃げ道はなくなった。

 

「じゃ、二人とも。とりあえず撃つだけでもだいぶ違うから、やってみてよ」

「おう。じゃあ、行くぞ」

「……へいへい」

 

 バンッ!!

 

「うおっ!?」

 

 響く、火薬の炸裂音。一夏は、ずいぶん驚いてるようだ。

 

「ほら、次は紅也も……。……紅也?」

 

 シャルルがナニカイッタ気がするが、俺には聞こえない。

 アサルトライフルを腰だめに構え、体と一体化させるようにして、トリガーを引く。

 

 パパパパパパパパパァン!!

 

 何発かまとめて発射。銃弾は、アリーナの地面をえぐる。

 うん、いい性能だ。次は、何かウゴクモノに当ててみよう。

 

 がちゃり。一夏に向け、ライフルを構える。

 

「お、おい。紅也?」

 

 頬がひきつった一夏は、気にしない。あれは、タダノマトだ。

 

 パパパパパパパパ……

 

「ハハハハハ!これで終わりだ!消えろ!消えろ!消えろォ!!」

 

 連射。マトは回避行動をとるも、その手足に弾丸が吸い込まれていく。

 

「ちょ、紅也。ストップ!」

「動けぬようにして、パイロットは引きずり出して……」

 

 パパパ……カチッカチッカチッ。

 

「……あれ、俺は何を?」

 

 上空には、怯えた様子の一夏。近くには、銃身をつかむシャルル。そして地上には、どこか呆然といった様子でこちらを見る三人娘が。

 

「……もしかすると、紅也は」

乱射狂(トリガーハッピー)?」

「銃が苦手な理由が、よくわかりましたわ……」

「これでは、誰もやつに銃は渡さんだろう」

「ナントカに刃物、って言葉もあるし」

 

 そんなことを言っている。

 ……ああ、やっちゃったのか。

 

「てへっ☆ やっちゃった」

 

「『やっちゃった』じゃ、ねえだろ!!マジで怖かったぞ!」

「あ、アハハ……」

 

 紅也に銃を持たせるのはやめよう。そう誓った一同であった……。

 

 

 

 

 

 

「ねえ、ちょとアレ……」

「ウソっ、ドイツの第三世代型だ。」

「まだ本国でのトライアル段階だって聞いてたけど……」

 

 一夏の射撃指導が終わったころ、急にアリーナ内がざわつき始めた。

 ドイツ、という言葉にひっかかりを覚え、皆と同じところに視線を移すと、そこには、やはりボーデビッヒがいた。

 

「いや、ボーデヴィッヒだよ」

「vとbの発音なんて、どうでもいいんだよ」

「おまっ……仮にも英語圏の人間なのに」

 

「……………………」

 

 無言で接近してくるボーデヴィッヒは、ISの開放回線(オープン・チャンネル)で一夏に呼びかけたようだ。白式に接近し、8を介してISネットワークに干渉し、通信を聞き取る。

 

「……私と戦え」

「イヤだ。理由がねえよ」

「貴様にはなくても私にはある。

 貴様がいなければ教官が大会二連覇の偉業をなしえただろうことは容易に想像できる。だから、私は貴様を――貴様の存在を認めない」

 

 教官。大会二連覇。

 おそらく、織斑先生関連だろうな。あの崇拝っぷりは、異常だと感じた。

 ……そういえば葵も、接触を受けたと聞いた。何でも、『オトモダチになりたくてやって来た』とか言ってたけど。意味わからん。

 

「また今度な」

「ふん。ならば――戦わざるを得ないようにしてやる!」

 

 おっと、こりゃまずいか!?

 

 ちゃき。抜刀。ガーベラを正眼に構え、二人の間に割り込む。

 そしてボーデヴィッヒのISの左肩に装備された大型砲塔――《N.G.I製レールガン〈シヴァ〉に類似、直撃注意》と警告が表示される――が、火を噴いた。

 

「どうりゃ!」

 

 一刀両断。加速された弾頭は、二つに分かれて後方に飛んでいった。

 ガーベラ・ストレートは無傷。しかし、弾頭は頭部ヘルメットを掠め、ダメージを受けたパーツが量子化する。

 バイザー越しではない。ボーデヴィッヒと俺は、直接顔を合わせる。

 

「……その眼。その眼で……私を、見るなあぁぁぁ!!」

 

 激昂。手から刃を発生させた黒いISは、俺に襲いかかろうとするも。

 

「そこの生徒!何をやっている!学年とクラス、出席番号を言え!」

 

 スピーカーから響く、教師の声。私闘を止めに来たのだろう。いいタイミングだ。

 

「……ふん。今日は引こう」

 

 ボーデヴィッヒは、あっさりと戦闘体制を解除し、アリーナゲートへ去っていく。

 

「……一体何なんだ、あの情緒不安定女は。ひょっとして、今日はあの日……」

「「「「ストップ!下ネタ禁止!!」」」」

 

 女子一同からツッコミを受ける。

 ……ん?今、絶対シャルル混ざってたよな?

 




紅也がパルス特務兵みたいになった。
ラウラがイルドみたいな逃げ方。
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