IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第38話 敵は倒せるときに倒す。それの何がいけないの?

 戦闘開始。

 

 レールガンとビームライフルが発射され、黄色と緑の閃光が交差する。

 音速を超える弾丸は、しかし光速には勝てず。

 競り勝ったビームは、レールガンの本体へと向かう。

 

 が、ボーデヴィッヒも大したものだ。レールガンの発射直後に降下し、直撃を避ける。結果、ビームはシュヴァルツェア・レーゲン本体をかすめ、背部ユニットの一部を溶かすにとどまった。

 外れたビームはそのままアリーナのシールドに直撃し、完全に消滅する。

 

「ほう、ビームとはな……。大した威力だ」

「あなたの目は節穴なの?これでも、十二分に威力を落としてるのよ」

「ほざけ!!」

 

 

 

 

 

 

〈side:山代 葵〉

 

 へえ、やるわね。初見でビームをかわすなんて。

 まあ、今のはこちらの実力を見せつけるのが目的だから、別にいいのだけど。

 

「まさか、弾頭を撃墜されるとはな……」

「紅也も同じことをやったわよ。つまりこの程度、誰でもできるわ」

「………っ!」

 

 ああ、焦ってる焦ってる。

 この子、自分より格上の子と戦ったこと、ないのかしら?もったいない。

 

 じゃあ、私が最初の一人になってあげる。

 

「……どうしたの?来ないの?」

「言われなくてもっ!!」

 

 今度はワイヤーブレード。いきなり6本全てを使ってくるあたり、油断はないようだ。

 私も右手のライフルを相手に向けたまま、円軌道を描いて回避する。

 さすがにまっすぐ追ってくるような馬鹿ではないようね。

 ワイヤーブレードはランダムな軌道で私に追いすがり、あるいは先回りしようとする。

 

 なるほど、セシリア以上に上手いわ。

 

 直撃コースにあるもののみをナイフで、あるいは蹴りで迎撃する。脚部ダメージ軽微……。

 ダメね。装甲の強度が足りないから、どうしてもダメージを受ける。

 いっそ、脚にナイフでも追加しようかしら?

 

 急停止。自らワイヤーの檻に飛び込み、ワイヤーを切断する。一本、二本、三本。

 それを見たボーデヴィッヒは、ニヤリと口を三日月の形に歪め……

 

 ――っ!体が、動かない!

 

「かかったな!!」

 

 AIC。正式名称、アクティブ・イナーシャル・キャンセラー。慣性を停止させるという、第三世代兵装。

 なるほど。確かに強力だ。実弾や不可視の弾丸、しかもIS本体まで停止できるなんて。

 だけど。

 

「終わりだ!」

「アンタがね」

 

 ビーム発射。何のために、銃口をアンタに固定してたと思ってんの?

 反応が遅れたボーデヴィッヒは、ビームを直撃。即座に絶対防御が発動し、シールドエネルギーを大幅に減少させる。

 すると、AICによる拘束が外れた。どうやら、集中力が切れたみたい。

 動揺しすぎよ、ウサギちゃん。

 

「な、何故だ……。体どころか、引き金を引く指まで固定したはず……」

「引き金?ああ、これ。ただの飾りよ」

 

 これは嘘。この引き金は、ビームライフルの故障時、マニュアル射撃をするためのものだ。

 普段のビームライフルはイメージ・インターフェースで操作してるから、エネルギーをこめるだけで発射できる。

 つまり、どんな状態であれ、私が生きていれば発射可能。それに気付けなかったのは痛かったわね。

 

「……じゃ、次はこっちの番」

 

 脚部にミサイルポッドを展開。右手のビームライフルはそのままに、左手はマシンガンに変更。

 まずはミサイル。左右合計6発を、ボーデヴィッヒを囲むように発射。

 同時にマシンガン。これは直撃コースだ。

 そして私は加速開始。わずかに右へ動くボーデヴィッヒへ牽制のビームライフルを放ちつつ、拡張領域に収納された『ジン』の実体剣を具現化。回避先を読まれたボーデヴィッヒは、AICを使ってミサイルの一発を停止させるが、ミサイルを遠隔起爆させてダメージを与える。そして剣を投げつけ、私は急降下。

 

 ――シュヴァルツェア・レーゲンは、既に檻に囚われた。

 

 真下から、ナイフ二本を投擲。狙いはもちろん、装甲のない部分。

 そして瞬時加速によって背後へ接近。ビームサーベル二本を抜き放ち、エネルギーをこめる。

 

 背弄拳&断罪炎刀?何それ。

 

 煙が晴れる。ジンの剣をAICで止めたボーデヴィッヒは、それに集中するあまり、ナイフに気付くのが遅れた。剣をプラズマ手刀ではじき、ナイフを残りのワイヤーで迎撃する。

 そのタイミングで、外れたミサイルが全同時起爆。爆風が、ボーデヴィッヒの銀髪をはためかせた。

 

 ――もう彼女には、私が見えない。

 

 無防備な背中。小さい、きれいな背中。

 私は、それを。

 X字に斬りつける。

 

「あああああああっ!!!」

 

 絶叫。威力を弱めたから傷は残らないけど、焼けるような痛みが走ったに違いない。

 でも、私の心は痛くない。

 

 背中を蹴り飛ばし、ボーデヴィッヒを地に落とす。今のは鈴音とセシリアの分。ボーデヴィッヒは、ぴくりとも動かない。

 ……あ、まだエネルギーが残ってる。とどめを刺さないと。

 ビームライフルを構える。

 じゃあね、未熟者。心と体とISと、全てを鍛えて出直しなさ……

 

「やめろおぉぉぉぉ!!」

 

 ……高エネルギー反応!?横から?

 意識をそちらに向けると、そこには〈雪片弐型〉を構えた白式の姿。

 止めろ、って。何を?今は試合中よ。

 

「止めろよ、葵。もう、勝負はついてる」

「……何勝手に名前で呼んでるの?

 まあいいわ、許してあげる。それより、まだ試合中なんだけど。シールドエネルギーが残ってるから、まだ『勝負はついてない』わ」

「でも、いくらなんでもやり過ぎだ!さっきの悲鳴を聞いただろ!?」

「……わかったわ」

 

 ブルーフレームを降下させる。私はシュヴァルツェア・レーゲンを乱暴につかみ、ゲートへと放り投げた。

 

 ――シュヴァルツェア・レーゲン、シールドエネルギーゼロ。

 

 ボーデヴィッヒはそのまま倒れこむ。が、ピット内からちらりと覗いた赤い機体の腕が、それを起こして、引きずって行く。

 

「これで、私の勝ちね」

「『これで』、じゃねえだろ!確かに、ラウラはやり過ぎた。でも、葵も――」

「……また。まあいいわ。その度胸に免じて、名前で呼ぶのを許してあげるわ、一夏」

 

 まったく。

 弱いくせに乱入して、偉そうに説教して。

 まるで、紅也みたい。

 

「……馬鹿騒ぎは終わったか?」

「……織斑、先生」

「千冬姉!?」

 

 そんなときに乱入してきたのは、一組の担任の織斑先生だった。

 現役を引いたとはいえ、ブリュンヒルデ。母さんを倒したその実力を、ぜひ見てみたいものだ。

 

「模擬戦をやるのは構わん。――が、アリーナのバリアーまで破壊する事態になられては教師として黙認しかねる」

 

 バリアー……?

 あ、一夏。ゲートから入ってきたわけじゃなかったんだ。

 

「このような事態が、そう何度もあってはかなわん。そこで、学年別トーナメントまでの、私闘の一切を禁止する。……異論は無いな?」

「……構わない」

「あ、ああ……」

「教師には『はい』と答えろ。馬鹿者」

「は、はい!」

 

 では解散!と一言言って、織斑先生は去っていく。

 再び静寂。残されたのは、私と一夏だけ。

 

「……なあ。なんであそこまでやったんだ?全部の攻撃で、絶対防御が発動してたぞ」

「……ISを壊さないため」

「え!?そのために、操縦者だけを?それじゃ、本末転倒じゃないか」

「何が?命に別条は無いし、ISのダメージレベルも低い。あのくらいなら、紅也が修理できる。トーナメントには出れる。

 ……でも、セシリアと鈴音は多分、もう……」

「!……そっか。でも、やっぱりやり過ぎだ。次からは、もうやめてくれよ」

「……考えとく」

 

 考えとく、なんて。

 普段なら、そんなこと絶対に言わないのに。

 

「よし。じゃあ、二人の見舞いに行こうぜ。一応、保険室で検査してもらうんだってさ」

「……そう。じゃあ、行く」

「お、普段の葵に戻ったな。」

 

 いや、戻ってなんかない。多分、今の私は、少しおかしくなってる。

 

 

 

 

 

 

〈side:山代 紅也〉

 

 ……え、ようやく出番?俺、主人公なのに。

 ああ、葵も主人公だっけ。そりゃ失礼。

 

 さて、一夏がアリーナに乱入した後、俺はボーデヴィッヒの使っていたピットへと走っていた。

 葵は、たとえ一夏が止めても、ボーデヴィッヒにとどめを刺すだろう。そのときISが解除されてればいいが、そうでなければ外してやって、すぐに保健室へと運ばなければならない。

 まあ、妹のアフターケアは、兄の義務だ。このくらいはやるさ。

 

 ……とまあ、これが表向きの理由。

 

 ピットに到着……って、のわあ!?

 漆黒のIS、シュヴァルツェア・レーゲンが俺の近くに落ちてきた。

 葵め……。投げたな?

 

 まあいい。レッドフレームを展開し、機体を運んでいく。ボーデヴィッヒは気絶してるな。過剰なダメージのせいで、操縦者保護機能が働いたか。ちょうどいい。

 

(じゃあ……データの吸い上げ、開始しますか)

《もはや犯罪行為になんのためらいもないな。お前》

(犯罪?仕事と言え)

 

 AIC、ワイヤーブレード、レールガン。有用なデータが、次々に吸い上げられていく。

 プラズマ手刀、VTシステム……って、VTシステムだと!?

 

(8!コレは本気でヤバイ!削除できるか?)

《いや、出来ないことはないが。やったらお前がデータを吸い出したことがバレるぞ!》

(それは困る!じゃあ、放置!放置だ!)

《やむをえまい》

 

 そうだ、やむを得ない。その代わり、何かが起こったら、俺が責任を持って対処しよう。

 

(じゃあ、次はISの解除だ。コイツを運ばねぇと……)

 

 IS本体は、驚くべきことに、ほぼ無傷だった。

 おそらく、壊さないようにと葵が配慮した結果だろうが……。

 なんだろう。その配慮は、かなりずれてる気がする。

 

《シュヴァルツェア・レーゲン、解除……》

 

 8のモニターにそう表示されるや否や、ボーデヴィッヒの姿が露わになる。その表情は苦悶で固まり、左目からは一筋の涙が垂れていた。

 

 ――敵とはいえ、その姿は、ひどく哀れで。

 

「……悪かったな。今は、ゆっくり休んでくれ」

 

 そうでも言わないと、罪悪感に押しつぶされそうだった。

 




機体ダメージを最小限にするために操縦者だけを攻撃。
ヤマト少尉とは真逆のタイプですね。
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