IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

59 / 196
過去最大級に長い話ですが、なぜかスラスラ書けました。


第55話 これは「女子会」ですか?  はい、エロゲ展開です。

 織斑姉弟の部屋に張り付き、聞き耳を立てる二人の美少女……。

 うん、かなりシュールな絵だな。

 

 ……それにしても。

 二人のうち一人は、仮にも代表候補生。それが背後で開いたドアにも気付かないなんて。

 よほど集中してんのか?一体、この部屋の中で何が行われているのだろうか?

 

「……何してんだお前ら」

「「(きゃあぁぁぁぁ!!)」」

 

 俺の声に反応し、小声で絶叫するというありえない高等技術を披露する二人。今の、どうやったんだ?

 

「(こ、紅也!脅かすな!)」

「(そうよ!一体、どこから……)」

「(普通に部屋からだけど?)」

 

 ひそひそ話を継続する俺達。しかも箒と鈴音は、話しながらもしっかりと聞き耳を立てている。……これが『分割思考』ってやつか?アトラス院の奥義を無駄使いすんなよ。

 

「(それはそうと、紅也。ちょっと聞いてみてくれ)」

 

 ちょいちょい、と箒が手招きする。言われるがままに箒の隣に立った俺は、そのままドアに張り付き、聴力に全神経を傾けた。

 

『よっ……と。ずいぶん固くなってるな』

『最近、あまりやっていなかったからな。こうもなるさ』

『たまには自分でやったらどうだ?そういう道具もあるし……』

『馬鹿を言うな。お前にやってもらうからいいんだ』

 

「「「…………………」」」

 

 沈黙。

 一体この中で、ナニが行われているというのか。

 

「(お、同じように兄妹がいる身として……どう思う?)」

「(……き、兄妹でも越えちゃいけない一線は守るっつーか何つーか……)」

「(あーもう!あたしが聞きたいのは、そんな一般論じゃなくて……)」

「鈴さん?それに紅也さんに箒さんまで……そ、そんなに密着して、何を――」

「シッ!!」

 

 突然現れたセシリアが話しているのを、鈴音が止めた。口をふさがれたセシリアは、わけがわからないといった表情で俺を見る。その視線を受け、俺は人差し指を自分の唇にあてた。そして頷くセシリア。一瞬で意思疎通を終えた俺達は、そのまま盗聴を続行する。

 

『千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?』

『そんな訳あるか、馬鹿者。――んっ!す、少しは加減をしろ……』

『はいはい。んじゃあ、ここは……と』

『くあっ!そ、そこは……やめっ、つぅう!!』

『すぐに良くなるって。だいぶ溜まってたみたいだし、ね』

『あぁぁっ!』

 

「「「「…………………」」」」

 

「(こ、こ、これは、一体、何ですの……?)」

「(……ここから先は、追加料金が必要だぜ……)」

「(紅!否定しなさい!頼むから!!)」

「……………」

 

 四者四様の反応。全員の共通項はといえば、お通夜の如き雰囲気のみだ。

 

『じゃあ次は――』

『一夏、少し待て』

 

 二人の声が途切れる。すると箒、鈴音、セシリアはドアにぴったりと耳を寄せ、さらに聞き耳を立て始めた。

 一方、俺はだいだい次に起こることが予想できたため、足音を消しつつ部屋へと戻る。そして、俺が自分の部屋の扉を閉め終わるか終わらないかのうちに、向かいのドアが勢いよく開く音が聞こえた。

 

「「「へぶっ!!」」」

 

 花の十代女子とは思えぬうめき声をあげる3人。ドアに殴られなかったことよりも、彼女たちの痴態を直視せずに済んだ安堵の方が大きかった。

 

『何をしているか、馬鹿者どもが』

『は、はは……』

『こ、こんばんは、織斑先生……』

『さ……さようなら、織斑先生っ!!』

 

 バシバシッ!ドタン!

 

『盗み聞きとは感心しないが、ちょうどいい。入っていけ』

 

 ……捕まった、か。

 そろそろ頃合いだろうと判断し、何食わぬ顔でドアを開く。

 

「あ、織斑先生。もう戻られていたんですね」

「白々しいぞ、山代。さっきまでお前もいただろうが」

「なぜそれをっ!?」

「気配でわかるわ、馬鹿者」

「……さいですかー」

 

 気配、と来たか。気配は消していたつもりだったんだけどな。

 ……『むしろどうして生きているくせに気配が消せるなどと?』とか言わないでくれよ。

 

「うー、紅。一人だけ逃げるなんて……」

「武士の風上にも置けんな」

「……ずるいですわ」

「盗み聞きをしていた分際で、何を言うか。

 ああ、そうだ。ついでに他の三人――ボーデヴィッヒとデュノア、それから山代妹も呼んで来い」

 

 そう言うがはやいか織斑先生は、箒と鈴の首根っこを開放した。

 

「「は、はいっ!」」

 

 二人は鎖から放たれた犬のような機敏さで、脱兎のごとく駆けだした。

 ……しかし、このメンバーの共通点、ねぇ……。一夏と関わりのある専用機持ち、ってことか?簪は呼ばれてないし。

 考えているうちにセシリアも浴衣から足をどかされ、自由になった。涙目になって俺を見ている気がするが……あえて無視した。

 

「どうした?入らんのか?」

「ああ、いえ、お邪魔しますわ」

「え?俺も……っすか?」

「何だ?用があったから出てきたのだろう」

「まあ、そうなんですけどね……」

 

 連れだって3人で部屋に入る。中には浴衣姿の一夏がいて、ベッドに腰かけていた。

 織斑先生同様、着衣に乱れはなし。どうやら(当たり前だが)18禁展開ではなかったようだ。

 

「……で、山代。用は何だ?」

 

 部屋の中を見回していたのが気に障ったのか、若干イライラした口調の織斑先生が、俺に声をかける。

 

「ああ、俺のテントのことなんですけど。あの……その……」

 

 ちらり、とセシリアに視線を向ける。すると、その視線の意味に気付いた一夏が、俺に向け話してきた。

 

「セシリアならあの場にいたから、束さんのことは話しても大丈夫だぞ」

「そういや、そんなこと言ってたな。セシリアが空気だったとか……」

「ちょ、紅也!ストップ!!」

 

 昼間の出来事を思い出したのか、一夏の顔が青くなる。セシリアは気にしてないみたいだけどな。それとも、織斑先生の前で一夏に狼藉は働けないか?

 まあ、どっちでもいいや。話を続けよう。

 

「えーとですね、篠ノ之博士に吹っ飛ばされた荷物なんですけど。教師が預かったりしてませんか?」

「一つも無いな」

 

 ズバッ!

 

 即答。情け容赦なく、あっさり斬り返された。

 

「じ、じゃあ……。ひょっとして……」

「ひょっとしなくても、荷物は全滅だ」

「なん……だと……」

 

 ……そうか。やっぱり全滅か。

 覚悟はしていたつもりだけど、いざ聞かされるとなるとやっぱり、なぁ……。

 

「あ、そうだ。保険が下りたりは……」

「――あの天災に対して有効な保険など、存在しないさ。……先に言っておくが、IS学園でも保証はせんぞ」

 

 はあ。全部自分で賄う必要あり、か。ちょっと手痛い出費になりそうだ。

 

「――で、お前らは何をやってんだ?」

 

 さっきから意図的に見ないようにしていた、ベッドの上を見る。

 そこにはセシリアがうつぶせで横たわっており、一夏がその背中に手を伸ばしているところだった。

 

「何って、マッサージだけど」

「そ、そうですわ。昼間、お願いしていたんですの」

 

 昼間ぁ?『お願い』じゃなくて『OHANASHI』じゃなかった?

 

「じゃあ始めるぞ」

「はっ、はいっ!」

「ん、しょっ……」

「!?いたたっ、いたっ!い、い、いいっ、一夏さん!?な、な、なにをして――あううぅっ!」

 

 ……さっきも思ったけど、声だけ聞いてたら完全に「アレコレ」やってるように聞こえるよな。以下、俺は目をそむけているので、音声のみ抜粋してその全貌を伝えよう。

 

「す、すまん。もう少し優しくする。

 これぐらいだったら大丈夫か?」

「ええ……。気持ちいいです……」

 

「はぁぁ……。一夏さんって上手ですのね……」

「まあ、昔から千冬姉にシてたしな」

 

「おー、マセガキめ。

 しかし、年不相応の下着だな。そのうえ黒か」

「え……きゃあああっ!?」

 

 ……織斑先生がログインしたようだ。それにしても、目を逸らしておいて正解だったのか、失敗だったのか……。

 

「い、一夏さん、紅也さん、見てませんわよね!?」

「わ、悪いセシリア!悪気はなかったんd……」

 

 バアン!!

 

 唐突に、部屋のドアが開く。それと同時に人影が部屋に飛び込み、まっすぐに俺に向かって飛びかかってきた!

 

「……見た?」

「見たのは一夏だけだ。俺は見てない。だから、その手を放してくれよ、葵」

 

 喉に感じていた圧迫感が消える。

 振りかえると、やはりというか、そこにいたのは葵だった。

 

「おい、ドアの影にいる4人も出てこい」

 

 ぎくっぎくっぎくっぎくっ。

 

「「「「…………………」」」」

 

 沈黙は数秒。ややあって、開かれたドアの影から箒、鈴音、シャル子、ラウラの四人が出てきた。

 

「一夏、マッサージはもういいだろう。ほれ、全員好きな所に座れ」

 

 あっさりネタばらしをする織斑先生。ニヤリ、と笑うその貌を見て、俺は思う。

 ――ああ、コイツは確信犯だ、と。

 四人はそれぞれ好きな場所に座り、俺と葵も皆の近くに腰かけた。

 

「ふー。さすがにふたり連続ですると汗かくな」

「手を抜かないからだ。すこしは要領よくやればいい」

「いや、そりゃせっかく時間を割いてくれてる相手に失礼だって」

「愚直だな」

「千冬姉、たまには褒めてくれても罰は当たらないって」

「どうだかな」

 

 そんな会話を聞いて、ようやく事態を理解した4人は、それぞれ異なった反応を見せた。

 

「は、はは……はぁ」

 

 ずるり、と脱力する箒。

 

「ま、まあ、あたしはわかってたけどね」

 

 無意味に強がる鈴音。

 

「「………………」」

 

 いろいろと妄想していたとおぼしきラウラとシャル子は、真っ赤になってうつむいている。

 

「……で、葵は反応ナシ、か」

「……紅也の焦りが伝わって来なかった」

「そうかい」

 

 室内にいる俺が無反応だったことから、最初から勘違いオチだと見当をつけていた葵。

 ……とはいえ、俺がセシリアの下着を見たと勘違いして、最初に突っ込んできたのを、俺は忘れてない。

 

「……ところで山代」

「「はい」」

「……山代兄」

「はい」

「お前、風呂には入ったのか?」

「え?まだですけど……何か?」

「部屋を汗臭くされては困る。行って来い。……一夏、お前もだ」

「? わかりました」

 

 何だ?

 わざとらしく俺と一夏――つまり、男子を部屋から追い出し、女子だけで残った理由は。

 

 ……ピキーーン!閃いた!!

 

 あれだ、これって、いわゆる「ガールズトーク」じゃないのか?あるいは、女子会?

 ……すっごくワクワクする響きだな。

 

 8をつかみ、一夏と共に部屋を出る。

 ドアを開けたときに振りかえったら、織斑先生と目があった。そして「しっしっ」と追い払うジェスチャー。……そんなに邪魔か?

 

(葵ー?聞こえるかー?)

(聞こえてる)

(内容が気になるから、トーク内容の中継を……)

 

 ぶちっ。

 リンクを切られた。

 

 

 

 

 

 

〈side:山代 葵〉

 

(……馬鹿)

 

 仕事ならともかく、プライベートな女子トークなど、兄に聞かせられるわけがない。

 しかも……と、葵は部屋にいるメンバーを見渡す。

 

 一夏に思いを寄せていると思われる3人――箒、鈴、シャルロット。

 紅也に気があるそぶりを見せるハイエナ――ラウラ。

 どっちなのかわかんない――セシリア。

 そして火中の男子の身内である、私と織斑千冬。

 

 このメンバーで始まる話など、一つしかないのではなかろうか?

 

 だから、通信を切った。

 ここからは、男子禁制のガールズ・トーク。そこに紅也の出歯亀はいらない。

 

 ……と、思ってたけど。

 

「「「「「……………………」」」」」

 

 沈黙が続く。誰も、何も口にしない。

 別に、怒られるわけじゃないんだから、何かしゃべればいいのに。

 ……私? 私は、自分から話すキャラじゃないから、いいの。

 

「おいおい、葬式か通夜か?いつものバカ騒ぎはどうした」

 

 そんな空気に耐えかねたのか、いつもの調子で話し始めたのは、織斑先生の方だった。

 それにより場に「しゃべっていい」空気が広がり、委縮していた生徒たちも次々に話し始める。

 

「い、いえ、その……」

「お、織斑先生とこうして話すのは、ええと……」

「は、はじめてですし……」

 

 まずは箒、シャルロット、セシリアがそう切り出す。とはいえ、織斑先生に威圧されているのか、お世辞にも饒舌とは言えない状態だった。

 

「まったく、しょうがないな。私が飲み物を奢ってやろう。篠ノ之、何がいい?」

 

 あ、箒、驚いてる。

 いきなり声をかけられたとはいえ、昔から知ってる人に対して、そこまで緊張しなくてもいいのに。いや、むしろ昔から「恐ろしさを」知ってるからこその反応かな?

 返事がないことを気にしていないそぶりで、織斑先生が冷蔵庫を開ける。そしてくるりとこちらに振り返ったその手の中には、6本の飲料缶が。……どういうバランス感覚だ。

 

「ほれ。ラムネとオレンジとスポーツドリンクにコーヒー、紅茶にマサイの戦士だ。それぞれ他のがいいやつは各人で交換しろ」

 

 そう言いながら織斑先生は、箒・シャルロット・鈴音・ラウラ・セシリアに順にドリンクを渡していく。

 最後に残ったのは私。余った一本は「マサイの戦士」。

 ……何で旅館に「マサイの戦士」なんてマニアックかつレアなアイテムがあるんだろう?

 

「鈴音、交か……」

「パス1で」

「…じゃあ、ラウr……」

「パス2だ」

「…ほうk……」

「すまん、無理だ」

「言っておくけど、僕も」

「わたくしも遠慮しますわ」

 

 ……みんなひどい。

 ドリンク交換は行われず、みんなは「これは私のものだ」と宣言するかのように、一斉に飲み物に口をつけた。

 

「どうした、山代。飲まないのか?」

 

 織斑先生は私の口元――否、指先に注目している。

 ……おそらく、これは何らかの対価の先払い。これに手をつければ、何らかの義務を負わされることは想像に難くない。

 とはいえ、ここで飲み物を飲んでおかなければ、私が織斑先生に不信感を持っていることがバレてしまう。そうなれば、後々の学園生活が面倒だ。

 

「……これ、苦手……です」

 

 とりあえず、言い訳をしてみる。……本当に言い訳だよ。本音じゃないから。

 

「そうか、じゃあ、こっちはどうだ?」

 

 再び冷蔵庫を開き、出てきたのはドクターペッパー。某狂気のマッドサイエンティストも愛飲している、知的な飲料だ……って、紅也が言ってた。

 

「……いただきます」

 

 マサイの戦士を返品し、ドクペを受け取る。そして不信感をぬぐい去るかのようにプルタブを開け、一口飲む。

 

「……キンキンに冷えてやがる」

 

 始めて飲んだドクペは、なんだか不思議な味だった。

 

「飲んだな?」

「は、はい?」

「そ、そりゃ、飲みましたけど……」

「な、何か入っていましたの!?」

「失礼なことを言うなバカめ。なに、ちょっとした口封じだ」

「だから貴様は、アホなのだ~」

「なっ、葵さん!?」

「……淡々と言われても、面白くないわよ、それ」

 

 鈴音からのつっこみはさておき。

 この「買収」の目的は、どうやら口封じであったようだ。まあ確かに、ジュース一本で無茶な要求はできないとは思ってたけど。

 そう考えている間に、織斑先生は三度(みたび)冷蔵庫へ。今度取り出したのは、日本の法律では子供は飲んじゃダメな20禁飲料、ビールだった。

 

 プシュッ!と景気のいい音を立てて飛沫と泡が飛び出す。それを自分の口に近付けた織斑先生は、そのままゴクゴクと喉を鳴らす。

 私以外の全員が、その光景にあっけにとられている中で、織斑先生はどこか上機嫌な様子で自分のベッドに腰かけた。

 

「ふむ。本当なら一夏に一品作らせるところなんだが……それは我慢するか」

 

 いつもとは違う、傍若無人……いや、良く考えればそれはいつものことだったけど。他にも生徒の前でビールを飲んだり、姿勢を崩したり、そもそも浴衣だったりと、いつもの『堅苦しい織斑先生』の姿は、そこには無かった。一夏の呼び方も『織斑』じゃなくなってるし。きっと、こっちの方が本来の織斑千冬の姿なんだろうな。

 

 ――私の本来の姿っていうのは、いったいどっちなんだろう?

 

 ふと、そのようなことを考えた。戦闘時の私と、普段の私。どちらも私だし、どちらも私じゃないと言える。……多分、本来の私は、あのときから――

 

「おかしな顔をするなよ。私だって人間だ。酒くらいは飲むさ。それとも、私は作業オイルを飲む物体に見えるか?」

「……飲むんですか?」

「飲むか、馬鹿者」

 

 私の思案顔をどう捉えたのか、軽口を叩く織斑先生。それに対して、私もまた軽口で返事をする。

 

「た、確かに意外ですけど……」

「でもその、今は……」

「仕事中なんじゃ……?」

「堅いことを言うな。それに、口止め料はもう払ったぞ」

 

 そう言ってニヤリと笑う織斑先生。私はその笑みに、悪だくみをする紅也の姿を幻視した。

 

「「「「「あっ!」」」」」

 

 驚く女子一同。ようやく、ジュースの意味に気付いたみたい。

 

「さて、前座はこのくらいでいいだろう。そろそろ肝心の話をするか」

 

 いまだに呆然としているラウラに命令し、追加のビールを取りに行かせる織斑先生。……弟さんが、『人にあれこれやらせるクセがつくと人間バカになるぞ。』って言ってたけど、それってもしかして実体験からの言葉だったのかな?だとしたら……一夏、かわいそうな子!

 

「お前ら……一夏について、どう思う?」

 

 ビールを飲みながら、とんでもない爆弾を投げてきた。

 ……いや、まあ、このメンツが集まった時点で、こういう話が出るのは分かってたんだけど。

 

「わ、私は別に好きとかではなく……以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけですので」

 

 と、ラムネをちびちび飲みながら箒が。

 

「あたしは、腐れ縁なだけだし……」

 

 スポーツドリンクのふちをなぞりながら、もごもごと鈴音が。

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけです。後、今のギャグキャラ扱いは――」

 

 ツンとした態度で、そして後半は切実にセシリアが、そう告げる。

 

「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておこう。それと、オルコットは諦めろ」

「「言わなくていいです!」」

「わたくしだけひどくありません!?」

 

 必死な感じで詰め寄る3人を、はっはっはっと笑い声で一蹴する織斑先生。そしてまたこちらを見ると、「お前らは?」と視線で問いかけてきた。

 

「僕――あの、私は……やさしいところが……好き、です……」

 

 ――リアル回答ktkr。

 うつむきながらそう言うシャルロット。……6月の紅也だったら、「だが男だ」とか言ってたに違いない。

 

「ほう。しかしなぁ、あいつは誰にでもやさしいぞ」

「そ、そうですね……。そこがちょっと、悔しいかなぁ」

 

 あはは、と照れたように笑いながら、赤くなった頬をパタパタ扇ぐシャルロットの様子は、どう考えても照れ隠しだった。隠せてないけど。

 

「で、お前は?」

「……正直、最初はいい印象を持っていませんでした。しかし……教官の弟にふさわしい、芯の強い男だと思います」

 

 ……へえ、ラウラって一夏のこと、そう思ってたんだ。

 そういえば、相互意識干渉で、お互いに語り合ったって言ってたよね。

 

「ほう……意外な評価だな。最後になったが山代。お前はどうだ?」

 

 そう話を振られ、6人分の視線が私に集中する。特にシャルロット。ガン見しすぎ。

 一夏の印象、ねぇ……。

 

「……良く言えば熱血。悪く言えば直情的。でも――」

「「「「「でも?」」」」」

「――そういう男は、嫌いじゃないわよ」

 

 戦闘時のような、挑発的な口調で、さらなる爆弾を投下してみる。

 誰とは言わないけど、この発言を聞いてあたふたする数人の態度が、すごく面白い。

 その場の空気が、にわかに騒がしいものへと変化していく。織斑先生はその騒ぎをうっとうしげに見てから、パンッ!と手を叩いた。

 

「少しは落ち着け、お前たち。では、次の質問だ。……山代についてどう思う?」

「……私?」

「違う、兄の方だ。……というか、お前、わざとやっているだろう」

「……お約束だから」

 

 それはそうとして。

 やっぱりきたか、この質問。これも計算通りです。……なんてね。

 

「で、まずは篠ノ之。どうだ?」

「そうですね……。紅也は腕も立つし、剣の扱いも上手いし……。……普段のノリの軽さを除けば、尊敬できるやつです」

 

 ……なんだか、高評価だ。箒は、一夏のことしか見てないと思ってたんだけど。……いや、でも、紅也に弟子入りしてるって話だから、やっぱりリスペクトしてるってことかな。

 

「うーん、一言で言うなら『悪友』ね。なんというか、からみやすいというか……」

 

 『悪友』……ぴったりな言葉だと思う。普段から即興漫才をやってたりするし、妙に波長が合ってる感じがする。

 

「わ、わたくしも……。子供っぽいところはありますが、頼りになる方だと思いますわ。ただ、ギャグ要員扱いを止めて――」

 

 セシリアは、6対4くらいで紅也の方に興味ありかな?でも、そんな半端な思いは許さない。もっと自分を磨いてから出直したら?

 それと、扱いに関しては、いい加減諦めたら?

 

「うーん、確かにみんなが言うことも一理あるんだけど……。なんていうか……黒い?」

「「「あー」」」

 

 シャルロットの発言を、先に言った三人が肯定する。

 ……確かに暗躍してるし、それは私も否定しない。特にたまに見せる『悪役笑い』から、そんな印象を持たれるのは当然だと思う。……私は、ああいう顔もかっこいいと思うんだけど。

 

「はい、嫁のことは好きでが……。どこが好きかといえば……わかりません」

 

 ……分からない?

 

「ほう……。何故だ?」

「はい……。特定の『何か』があるわけではありませんが、紅也の言動、生き方、それらがどうしようもなく眩しく見えて、それで……」

「……ふっ。変わったな、ラウラ」

「はい。これも、紅也が教えてくれたことですから」

 

 ……驚いた。一番驚いた。

 ラウラ、それはね……『ベタ惚れ』っていうのよ。

 見なおしたわ、ホント。もし私が紅也の母親だったら、たぶん二人の交際に反対なんてしないだろう。

 でも……私は認められない。

 

 だって、なんか嫌だから。

 

 紅也には、私を置いていって欲しくない。

 そりゃ、いつかは紅也も結婚するし、私以外の女を大事にするようになるだろう。

 でも、その『いつか』は、今じゃなくてもいい。少なくとも今はまだ、私を大事にしてほしい。そのために、私は強くなったんだから。

 

「で、最後は山代妹だが……聞くまでも無いな」

「……区別、反対」

「そうは言ってもな。……山代、もし話すとしたら、どのくらいになる?」

「……今夜は寝かせない」

「……と、いうわけで却下だ。異論は無いな?」

「「「「「はい、ありません」」」」」

「……おーぼー」

 

 あおるようにドクペを流し込む。何とも言えない爽快な味が、喉を潤していった。

 

「織斑先生、こんな話をわざわざした、ということは、もしかして一夏を――」

「言っておくが、やらんぞ」

「「「「ええ~……」」」」

 

「女なら、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。なあ、山代?」

「ええ、私もそう思いますよ、織斑先生」

 

 互いに口角を釣り上げた私と織斑先生は、どちらともなく乾杯をした。

 

 

 

 ――それにしても、織斑先生って、結構ブラコンだったんだ……。

 




葵と千冬のブラコンコンビ、略して「ブラコンビ」結成!
……なんだかブラ○モリみたい(笑)

感想欄でも触れましたが、ヒロインズの現在(・・)の好感度はこんな感じです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。