織斑姉弟の部屋に張り付き、聞き耳を立てる二人の美少女……。
うん、かなりシュールな絵だな。
……それにしても。
二人のうち一人は、仮にも代表候補生。それが背後で開いたドアにも気付かないなんて。
よほど集中してんのか?一体、この部屋の中で何が行われているのだろうか?
「……何してんだお前ら」
「「(きゃあぁぁぁぁ!!)」」
俺の声に反応し、小声で絶叫するというありえない高等技術を披露する二人。今の、どうやったんだ?
「(こ、紅也!脅かすな!)」
「(そうよ!一体、どこから……)」
「(普通に部屋からだけど?)」
ひそひそ話を継続する俺達。しかも箒と鈴音は、話しながらもしっかりと聞き耳を立てている。……これが『分割思考』ってやつか?アトラス院の奥義を無駄使いすんなよ。
「(それはそうと、紅也。ちょっと聞いてみてくれ)」
ちょいちょい、と箒が手招きする。言われるがままに箒の隣に立った俺は、そのままドアに張り付き、聴力に全神経を傾けた。
『よっ……と。ずいぶん固くなってるな』
『最近、あまりやっていなかったからな。こうもなるさ』
『たまには自分でやったらどうだ?そういう道具もあるし……』
『馬鹿を言うな。お前にやってもらうからいいんだ』
「「「…………………」」」
沈黙。
一体この中で、ナニが行われているというのか。
「(お、同じように兄妹がいる身として……どう思う?)」
「(……き、兄妹でも越えちゃいけない一線は守るっつーか何つーか……)」
「(あーもう!あたしが聞きたいのは、そんな一般論じゃなくて……)」
「鈴さん?それに紅也さんに箒さんまで……そ、そんなに密着して、何を――」
「シッ!!」
突然現れたセシリアが話しているのを、鈴音が止めた。口をふさがれたセシリアは、わけがわからないといった表情で俺を見る。その視線を受け、俺は人差し指を自分の唇にあてた。そして頷くセシリア。一瞬で意思疎通を終えた俺達は、そのまま盗聴を続行する。
『千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?』
『そんな訳あるか、馬鹿者。――んっ!す、少しは加減をしろ……』
『はいはい。んじゃあ、ここは……と』
『くあっ!そ、そこは……やめっ、つぅう!!』
『すぐに良くなるって。だいぶ溜まってたみたいだし、ね』
『あぁぁっ!』
「「「「…………………」」」」
「(こ、こ、これは、一体、何ですの……?)」
「(……ここから先は、追加料金が必要だぜ……)」
「(紅!否定しなさい!頼むから!!)」
「……………」
四者四様の反応。全員の共通項はといえば、お通夜の如き雰囲気のみだ。
『じゃあ次は――』
『一夏、少し待て』
二人の声が途切れる。すると箒、鈴音、セシリアはドアにぴったりと耳を寄せ、さらに聞き耳を立て始めた。
一方、俺はだいだい次に起こることが予想できたため、足音を消しつつ部屋へと戻る。そして、俺が自分の部屋の扉を閉め終わるか終わらないかのうちに、向かいのドアが勢いよく開く音が聞こえた。
「「「へぶっ!!」」」
花の十代女子とは思えぬうめき声をあげる3人。ドアに殴られなかったことよりも、彼女たちの痴態を直視せずに済んだ安堵の方が大きかった。
『何をしているか、馬鹿者どもが』
『は、はは……』
『こ、こんばんは、織斑先生……』
『さ……さようなら、織斑先生っ!!』
バシバシッ!ドタン!
『盗み聞きとは感心しないが、ちょうどいい。入っていけ』
……捕まった、か。
そろそろ頃合いだろうと判断し、何食わぬ顔でドアを開く。
「あ、織斑先生。もう戻られていたんですね」
「白々しいぞ、山代。さっきまでお前もいただろうが」
「なぜそれをっ!?」
「気配でわかるわ、馬鹿者」
「……さいですかー」
気配、と来たか。気配は消していたつもりだったんだけどな。
……『むしろどうして生きているくせに気配が消せるなどと?』とか言わないでくれよ。
「うー、紅。一人だけ逃げるなんて……」
「武士の風上にも置けんな」
「……ずるいですわ」
「盗み聞きをしていた分際で、何を言うか。
ああ、そうだ。ついでに他の三人――ボーデヴィッヒとデュノア、それから山代妹も呼んで来い」
そう言うがはやいか織斑先生は、箒と鈴の首根っこを開放した。
「「は、はいっ!」」
二人は鎖から放たれた犬のような機敏さで、脱兎のごとく駆けだした。
……しかし、このメンバーの共通点、ねぇ……。一夏と関わりのある専用機持ち、ってことか?簪は呼ばれてないし。
考えているうちにセシリアも浴衣から足をどかされ、自由になった。涙目になって俺を見ている気がするが……あえて無視した。
「どうした?入らんのか?」
「ああ、いえ、お邪魔しますわ」
「え?俺も……っすか?」
「何だ?用があったから出てきたのだろう」
「まあ、そうなんですけどね……」
連れだって3人で部屋に入る。中には浴衣姿の一夏がいて、ベッドに腰かけていた。
織斑先生同様、着衣に乱れはなし。どうやら(当たり前だが)18禁展開ではなかったようだ。
「……で、山代。用は何だ?」
部屋の中を見回していたのが気に障ったのか、若干イライラした口調の織斑先生が、俺に声をかける。
「ああ、俺のテントのことなんですけど。あの……その……」
ちらり、とセシリアに視線を向ける。すると、その視線の意味に気付いた一夏が、俺に向け話してきた。
「セシリアならあの場にいたから、束さんのことは話しても大丈夫だぞ」
「そういや、そんなこと言ってたな。セシリアが空気だったとか……」
「ちょ、紅也!ストップ!!」
昼間の出来事を思い出したのか、一夏の顔が青くなる。セシリアは気にしてないみたいだけどな。それとも、織斑先生の前で一夏に狼藉は働けないか?
まあ、どっちでもいいや。話を続けよう。
「えーとですね、篠ノ之博士に吹っ飛ばされた荷物なんですけど。教師が預かったりしてませんか?」
「一つも無いな」
ズバッ!
即答。情け容赦なく、あっさり斬り返された。
「じ、じゃあ……。ひょっとして……」
「ひょっとしなくても、荷物は全滅だ」
「なん……だと……」
……そうか。やっぱり全滅か。
覚悟はしていたつもりだけど、いざ聞かされるとなるとやっぱり、なぁ……。
「あ、そうだ。保険が下りたりは……」
「――あの天災に対して有効な保険など、存在しないさ。……先に言っておくが、IS学園でも保証はせんぞ」
はあ。全部自分で賄う必要あり、か。ちょっと手痛い出費になりそうだ。
「――で、お前らは何をやってんだ?」
さっきから意図的に見ないようにしていた、ベッドの上を見る。
そこにはセシリアがうつぶせで横たわっており、一夏がその背中に手を伸ばしているところだった。
「何って、マッサージだけど」
「そ、そうですわ。昼間、お願いしていたんですの」
昼間ぁ?『お願い』じゃなくて『OHANASHI』じゃなかった?
「じゃあ始めるぞ」
「はっ、はいっ!」
「ん、しょっ……」
「!?いたたっ、いたっ!い、い、いいっ、一夏さん!?な、な、なにをして――あううぅっ!」
……さっきも思ったけど、声だけ聞いてたら完全に「アレコレ」やってるように聞こえるよな。以下、俺は目をそむけているので、音声のみ抜粋してその全貌を伝えよう。
「す、すまん。もう少し優しくする。
これぐらいだったら大丈夫か?」
「ええ……。気持ちいいです……」
「はぁぁ……。一夏さんって上手ですのね……」
「まあ、昔から千冬姉にシてたしな」
「おー、マセガキめ。
しかし、年不相応の下着だな。そのうえ黒か」
「え……きゃあああっ!?」
……織斑先生がログインしたようだ。それにしても、目を逸らしておいて正解だったのか、失敗だったのか……。
「い、一夏さん、紅也さん、見てませんわよね!?」
「わ、悪いセシリア!悪気はなかったんd……」
バアン!!
唐突に、部屋のドアが開く。それと同時に人影が部屋に飛び込み、まっすぐに俺に向かって飛びかかってきた!
「……見た?」
「見たのは一夏だけだ。俺は見てない。だから、その手を放してくれよ、葵」
喉に感じていた圧迫感が消える。
振りかえると、やはりというか、そこにいたのは葵だった。
「おい、ドアの影にいる4人も出てこい」
ぎくっぎくっぎくっぎくっ。
「「「「…………………」」」」
沈黙は数秒。ややあって、開かれたドアの影から箒、鈴音、シャル子、ラウラの四人が出てきた。
「一夏、マッサージはもういいだろう。ほれ、全員好きな所に座れ」
あっさりネタばらしをする織斑先生。ニヤリ、と笑うその貌を見て、俺は思う。
――ああ、コイツは確信犯だ、と。
四人はそれぞれ好きな場所に座り、俺と葵も皆の近くに腰かけた。
「ふー。さすがにふたり連続ですると汗かくな」
「手を抜かないからだ。すこしは要領よくやればいい」
「いや、そりゃせっかく時間を割いてくれてる相手に失礼だって」
「愚直だな」
「千冬姉、たまには褒めてくれても罰は当たらないって」
「どうだかな」
そんな会話を聞いて、ようやく事態を理解した4人は、それぞれ異なった反応を見せた。
「は、はは……はぁ」
ずるり、と脱力する箒。
「ま、まあ、あたしはわかってたけどね」
無意味に強がる鈴音。
「「………………」」
いろいろと妄想していたとおぼしきラウラとシャル子は、真っ赤になってうつむいている。
「……で、葵は反応ナシ、か」
「……紅也の焦りが伝わって来なかった」
「そうかい」
室内にいる俺が無反応だったことから、最初から勘違いオチだと見当をつけていた葵。
……とはいえ、俺がセシリアの下着を見たと勘違いして、最初に突っ込んできたのを、俺は忘れてない。
「……ところで山代」
「「はい」」
「……山代兄」
「はい」
「お前、風呂には入ったのか?」
「え?まだですけど……何か?」
「部屋を汗臭くされては困る。行って来い。……一夏、お前もだ」
「? わかりました」
何だ?
わざとらしく俺と一夏――つまり、男子を部屋から追い出し、女子だけで残った理由は。
……ピキーーン!閃いた!!
あれだ、これって、いわゆる「ガールズトーク」じゃないのか?あるいは、女子会?
……すっごくワクワクする響きだな。
8をつかみ、一夏と共に部屋を出る。
ドアを開けたときに振りかえったら、織斑先生と目があった。そして「しっしっ」と追い払うジェスチャー。……そんなに邪魔か?
(葵ー?聞こえるかー?)
(聞こえてる)
(内容が気になるから、トーク内容の中継を……)
ぶちっ。
リンクを切られた。
◆
〈side:山代 葵〉
(……馬鹿)
仕事ならともかく、プライベートな女子トークなど、兄に聞かせられるわけがない。
しかも……と、葵は部屋にいるメンバーを見渡す。
一夏に思いを寄せていると思われる3人――箒、鈴、シャルロット。
紅也に気があるそぶりを見せるハイエナ――ラウラ。
どっちなのかわかんない――セシリア。
そして火中の男子の身内である、私と織斑千冬。
このメンバーで始まる話など、一つしかないのではなかろうか?
だから、通信を切った。
ここからは、男子禁制のガールズ・トーク。そこに紅也の出歯亀はいらない。
……と、思ってたけど。
「「「「「……………………」」」」」
沈黙が続く。誰も、何も口にしない。
別に、怒られるわけじゃないんだから、何かしゃべればいいのに。
……私? 私は、自分から話すキャラじゃないから、いいの。
「おいおい、葬式か通夜か?いつものバカ騒ぎはどうした」
そんな空気に耐えかねたのか、いつもの調子で話し始めたのは、織斑先生の方だった。
それにより場に「しゃべっていい」空気が広がり、委縮していた生徒たちも次々に話し始める。
「い、いえ、その……」
「お、織斑先生とこうして話すのは、ええと……」
「は、はじめてですし……」
まずは箒、シャルロット、セシリアがそう切り出す。とはいえ、織斑先生に威圧されているのか、お世辞にも饒舌とは言えない状態だった。
「まったく、しょうがないな。私が飲み物を奢ってやろう。篠ノ之、何がいい?」
あ、箒、驚いてる。
いきなり声をかけられたとはいえ、昔から知ってる人に対して、そこまで緊張しなくてもいいのに。いや、むしろ昔から「恐ろしさを」知ってるからこその反応かな?
返事がないことを気にしていないそぶりで、織斑先生が冷蔵庫を開ける。そしてくるりとこちらに振り返ったその手の中には、6本の飲料缶が。……どういうバランス感覚だ。
「ほれ。ラムネとオレンジとスポーツドリンクにコーヒー、紅茶にマサイの戦士だ。それぞれ他のがいいやつは各人で交換しろ」
そう言いながら織斑先生は、箒・シャルロット・鈴音・ラウラ・セシリアに順にドリンクを渡していく。
最後に残ったのは私。余った一本は「マサイの戦士」。
……何で旅館に「マサイの戦士」なんてマニアックかつレアなアイテムがあるんだろう?
「鈴音、交か……」
「パス1で」
「…じゃあ、ラウr……」
「パス2だ」
「…ほうk……」
「すまん、無理だ」
「言っておくけど、僕も」
「わたくしも遠慮しますわ」
……みんなひどい。
ドリンク交換は行われず、みんなは「これは私のものだ」と宣言するかのように、一斉に飲み物に口をつけた。
「どうした、山代。飲まないのか?」
織斑先生は私の口元――否、指先に注目している。
……おそらく、これは何らかの対価の先払い。これに手をつければ、何らかの義務を負わされることは想像に難くない。
とはいえ、ここで飲み物を飲んでおかなければ、私が織斑先生に不信感を持っていることがバレてしまう。そうなれば、後々の学園生活が面倒だ。
「……これ、苦手……です」
とりあえず、言い訳をしてみる。……本当に言い訳だよ。本音じゃないから。
「そうか、じゃあ、こっちはどうだ?」
再び冷蔵庫を開き、出てきたのはドクターペッパー。某狂気のマッドサイエンティストも愛飲している、知的な飲料だ……って、紅也が言ってた。
「……いただきます」
マサイの戦士を返品し、ドクペを受け取る。そして不信感をぬぐい去るかのようにプルタブを開け、一口飲む。
「……キンキンに冷えてやがる」
始めて飲んだドクペは、なんだか不思議な味だった。
「飲んだな?」
「は、はい?」
「そ、そりゃ、飲みましたけど……」
「な、何か入っていましたの!?」
「失礼なことを言うなバカめ。なに、ちょっとした口封じだ」
「だから貴様は、アホなのだ~」
「なっ、葵さん!?」
「……淡々と言われても、面白くないわよ、それ」
鈴音からのつっこみはさておき。
この「買収」の目的は、どうやら口封じであったようだ。まあ確かに、ジュース一本で無茶な要求はできないとは思ってたけど。
そう考えている間に、織斑先生は
プシュッ!と景気のいい音を立てて飛沫と泡が飛び出す。それを自分の口に近付けた織斑先生は、そのままゴクゴクと喉を鳴らす。
私以外の全員が、その光景にあっけにとられている中で、織斑先生はどこか上機嫌な様子で自分のベッドに腰かけた。
「ふむ。本当なら一夏に一品作らせるところなんだが……それは我慢するか」
いつもとは違う、傍若無人……いや、良く考えればそれはいつものことだったけど。他にも生徒の前でビールを飲んだり、姿勢を崩したり、そもそも浴衣だったりと、いつもの『堅苦しい織斑先生』の姿は、そこには無かった。一夏の呼び方も『織斑』じゃなくなってるし。きっと、こっちの方が本来の織斑千冬の姿なんだろうな。
――私の本来の姿っていうのは、いったいどっちなんだろう?
ふと、そのようなことを考えた。戦闘時の私と、普段の私。どちらも私だし、どちらも私じゃないと言える。……多分、本来の私は、あのときから――
「おかしな顔をするなよ。私だって人間だ。酒くらいは飲むさ。それとも、私は作業オイルを飲む物体に見えるか?」
「……飲むんですか?」
「飲むか、馬鹿者」
私の思案顔をどう捉えたのか、軽口を叩く織斑先生。それに対して、私もまた軽口で返事をする。
「た、確かに意外ですけど……」
「でもその、今は……」
「仕事中なんじゃ……?」
「堅いことを言うな。それに、口止め料はもう払ったぞ」
そう言ってニヤリと笑う織斑先生。私はその笑みに、悪だくみをする紅也の姿を幻視した。
「「「「「あっ!」」」」」
驚く女子一同。ようやく、ジュースの意味に気付いたみたい。
「さて、前座はこのくらいでいいだろう。そろそろ肝心の話をするか」
いまだに呆然としているラウラに命令し、追加のビールを取りに行かせる織斑先生。……弟さんが、『人にあれこれやらせるクセがつくと人間バカになるぞ。』って言ってたけど、それってもしかして実体験からの言葉だったのかな?だとしたら……一夏、かわいそうな子!
「お前ら……一夏について、どう思う?」
ビールを飲みながら、とんでもない爆弾を投げてきた。
……いや、まあ、このメンツが集まった時点で、こういう話が出るのは分かってたんだけど。
「わ、私は別に好きとかではなく……以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけですので」
と、ラムネをちびちび飲みながら箒が。
「あたしは、腐れ縁なだけだし……」
スポーツドリンクのふちをなぞりながら、もごもごと鈴音が。
「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけです。後、今のギャグキャラ扱いは――」
ツンとした態度で、そして後半は切実にセシリアが、そう告げる。
「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておこう。それと、オルコットは諦めろ」
「「言わなくていいです!」」
「わたくしだけひどくありません!?」
必死な感じで詰め寄る3人を、はっはっはっと笑い声で一蹴する織斑先生。そしてまたこちらを見ると、「お前らは?」と視線で問いかけてきた。
「僕――あの、私は……やさしいところが……好き、です……」
――リアル回答ktkr。
うつむきながらそう言うシャルロット。……6月の紅也だったら、「だが男だ」とか言ってたに違いない。
「ほう。しかしなぁ、あいつは誰にでもやさしいぞ」
「そ、そうですね……。そこがちょっと、悔しいかなぁ」
あはは、と照れたように笑いながら、赤くなった頬をパタパタ扇ぐシャルロットの様子は、どう考えても照れ隠しだった。隠せてないけど。
「で、お前は?」
「……正直、最初はいい印象を持っていませんでした。しかし……教官の弟にふさわしい、芯の強い男だと思います」
……へえ、ラウラって一夏のこと、そう思ってたんだ。
そういえば、相互意識干渉で、お互いに語り合ったって言ってたよね。
「ほう……意外な評価だな。最後になったが山代。お前はどうだ?」
そう話を振られ、6人分の視線が私に集中する。特にシャルロット。ガン見しすぎ。
一夏の印象、ねぇ……。
「……良く言えば熱血。悪く言えば直情的。でも――」
「「「「「でも?」」」」」
「――そういう男は、嫌いじゃないわよ」
戦闘時のような、挑発的な口調で、さらなる爆弾を投下してみる。
誰とは言わないけど、この発言を聞いてあたふたする数人の態度が、すごく面白い。
その場の空気が、にわかに騒がしいものへと変化していく。織斑先生はその騒ぎをうっとうしげに見てから、パンッ!と手を叩いた。
「少しは落ち着け、お前たち。では、次の質問だ。……山代についてどう思う?」
「……私?」
「違う、兄の方だ。……というか、お前、わざとやっているだろう」
「……お約束だから」
それはそうとして。
やっぱりきたか、この質問。これも計算通りです。……なんてね。
「で、まずは篠ノ之。どうだ?」
「そうですね……。紅也は腕も立つし、剣の扱いも上手いし……。……普段のノリの軽さを除けば、尊敬できるやつです」
……なんだか、高評価だ。箒は、一夏のことしか見てないと思ってたんだけど。……いや、でも、紅也に弟子入りしてるって話だから、やっぱりリスペクトしてるってことかな。
「うーん、一言で言うなら『悪友』ね。なんというか、からみやすいというか……」
『悪友』……ぴったりな言葉だと思う。普段から即興漫才をやってたりするし、妙に波長が合ってる感じがする。
「わ、わたくしも……。子供っぽいところはありますが、頼りになる方だと思いますわ。ただ、ギャグ要員扱いを止めて――」
セシリアは、6対4くらいで紅也の方に興味ありかな?でも、そんな半端な思いは許さない。もっと自分を磨いてから出直したら?
それと、扱いに関しては、いい加減諦めたら?
「うーん、確かにみんなが言うことも一理あるんだけど……。なんていうか……黒い?」
「「「あー」」」
シャルロットの発言を、先に言った三人が肯定する。
……確かに暗躍してるし、それは私も否定しない。特にたまに見せる『悪役笑い』から、そんな印象を持たれるのは当然だと思う。……私は、ああいう顔もかっこいいと思うんだけど。
「はい、嫁のことは好きでが……。どこが好きかといえば……わかりません」
……分からない?
「ほう……。何故だ?」
「はい……。特定の『何か』があるわけではありませんが、紅也の言動、生き方、それらがどうしようもなく眩しく見えて、それで……」
「……ふっ。変わったな、ラウラ」
「はい。これも、紅也が教えてくれたことですから」
……驚いた。一番驚いた。
ラウラ、それはね……『ベタ惚れ』っていうのよ。
見なおしたわ、ホント。もし私が紅也の母親だったら、たぶん二人の交際に反対なんてしないだろう。
でも……私は認められない。
だって、なんか嫌だから。
紅也には、私を置いていって欲しくない。
そりゃ、いつかは紅也も結婚するし、私以外の女を大事にするようになるだろう。
でも、その『いつか』は、今じゃなくてもいい。少なくとも今はまだ、私を大事にしてほしい。そのために、私は強くなったんだから。
「で、最後は山代妹だが……聞くまでも無いな」
「……区別、反対」
「そうは言ってもな。……山代、もし話すとしたら、どのくらいになる?」
「……今夜は寝かせない」
「……と、いうわけで却下だ。異論は無いな?」
「「「「「はい、ありません」」」」」
「……おーぼー」
あおるようにドクペを流し込む。何とも言えない爽快な味が、喉を潤していった。
「織斑先生、こんな話をわざわざした、ということは、もしかして一夏を――」
「言っておくが、やらんぞ」
「「「「ええ~……」」」」
「女なら、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。なあ、山代?」
「ええ、私もそう思いますよ、織斑先生」
互いに口角を釣り上げた私と織斑先生は、どちらともなく乾杯をした。
――それにしても、織斑先生って、結構ブラコンだったんだ……。
葵と千冬のブラコンコンビ、略して「ブラコンビ」結成!
……なんだかブラ○モリみたい(笑)
感想欄でも触れましたが、ヒロインズの