IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

65 / 196
第61話 アンタが戦闘のプロだって言うなら、俺は火事場の天才だぜ!

「行けぇぇぇ!一夏!!」

 

 タイミングは完璧。

 ここで一夏が福音を撃破すれば、その瞬間に共闘は終了だ。

 

《瞬時加速の熱量を探知!》

(よし!行ける――)

《――白式、直下へ加速(・・・・・)!!》

「何ぃ!?」

 

 慌てて標的を変更。デュエルではなく福音の方へ、強引に加速する。

 そんな雑な剣が当たるわけもなく、福音は再び俺をいなし、ビームとエネルギー弾を発射し始めた。

 あ……危ねぇ!

 今デュエルを斬ってたら、また三対一の状況に逆戻りするとこだったぜ!

 

「一夏!何をしている!?せっかくのチャンスに――」

 

 箒の怒鳴り声が、リンクしたネットワーク越しに俺の鼓膜を振わせる。

 

「船がいるんだ!海上は先生たちが封鎖したはずなのに――ああくそっ、密漁船か!」

 

 三度(みたび)シールドに隠れて、一夏を見やる。ちょうど、一夏の手の中で、雪片弐型が光を失うのが見えた。

 ――これで、一夏はもう使えない。

 

「馬鹿者!犯罪者などをかばって……。そんなやつらは――!」

「箒!!」

 

 戦闘中だと言うのに、一夏と箒の雰囲気が険悪だ。

 お前ら……

 

「説教は後にして、状況を見ろ!」

「彼の言うとおりだ。白い騎士殿、エネルギー切れだろう?そこの船に着地しなさい」

「コイツに言われるのは癪だろうが、後は俺達でやる!」

「紅也、エッジさん……。すみません、任せます!」

 

 一夏はISを展開したまま、船に着地する。船に乗っていた密漁者らしき女は、突然のISの襲来に動揺しているように見えた。

 これでいい……。後は、俺の仕事だ。

 

「箒!さっきの発言は聞き流してやる。

 今、エネルギーはどのくらい残ってんだ?」

「ま、待て!残り……50を切った!持久戦は厳しいぞ」

「私の残量も心もとないですね……。PS装甲も、持って後3分といったところでしょうか」

「そうかい!じゃあ、何としても3分ギリギリで決着をつけねぇとな!」

「すでに倒した後の算段とは……。足下をすくわれますよ?」

 

 俺のエネルギーも、そう多くは無い。

 もしもビームサーベルを全力で使えば、30秒以内に具現維持限界になっちまう。

 しかも、その後デュエルを撃破しなきゃいけない……。これは、はっきりいって不可能だ。

 

 撤退するか?

 

 当初の作戦目的は、すでに達成困難だ。事前の情報も誤っていた。

 この任務の失敗に、俺達の落ち度は全くない。

 

 ―――だが。

 

 成功すれば、Xナンバーを一機鹵獲できる。これは大きなメリットだ。

 たとえそれが、特殊な兵装を一切持たないデュエルだとしても、N.G.Iに恩を売ることは可能。

 

 さて、どうする?

 

 ビームサーベルは、デュエルに対して使いたい。

 ああは言ったものの、俺達2人は、後3分も戦闘を続けられない。

 ならば、デュエルとはPS装甲がある状態で戦うことになる。くそっ、葵がいてくれれば……。

 しかし、福音のエネルギーをゼロにして、活動限界を迎えさせるためには、ビームでないと……。

 

 ――待てよ。

 エネルギーをゼロにする必要はない。

 ただ、奴の動きさえ止められれば――!

 

「策は成った!」

「な、いきなりどうしたんだ、紅也!」

「静かにしてください、紅い騎士殿。――策とは、どのような?」

「基本的にはさっきと同じだ。ただ、箒に俺達を運んでもらう。

 ――箒、残りのエネルギーを全て推進力に回せるか?」

「全て、だと?いいのか?」

「どうせ一回きりだ!……エッジ、これが通じなかったら、俺は任務失敗だ。福音は好きにしろ」

 

 攻撃を回避しながらの、一瞬の交錯。バイザー越しに、緑と緑のデュアルアイが視線を交わらせる。

 

「元より、私一人ではどうにもできんのだ。この刃、貴公に預けよう」

 

 ……こいつ、本当に俺と敵対してるって自覚があるんだろうな?

 任務のためだから、斬れと言われたら斬るけど、なんだか罪悪感が……。

 前話の自分が、ひどく汚いものに見えるぜ。

 

「じゃ、説明するぜ!

 ……8、作戦データを転送してくれ!」

《リンク確立……転送完了だ!》

 

 するとさっきまで別個に行動していた2機が、俺の元へと集まってくる。

 それを確認した俺は二枚のシールドを構え、デュエルの前に立つ。

 

 一機で駄目なら二機で。

 

 デュエルはバックパックのスラスター噴射が当たらない位置に手を添え、俺を押し出すような格好になる。

 

 二機で駄目なら三機で。

 

 最後に箒がデュエルの背中に手を添え、準備が整った。

 

「「「突撃!!」」」

 

 まずは箒が展開装甲を調節し、瞬間的に最高速度へと到達する。

 急な加速度から生じる力により、体が悲鳴を上げているが、俺は歯を食いしばって耐える。

 紅椿による加速が一段落した所で、今度はデュエルが加速する。箒はどんどん遠ざかっていき、代わりに福音が接近する。

 

 加速中の防御は、全て俺が行っている。二枚の楯が削られるも、直撃はない。

 あの急加速だ。いくら福音とて、ロックオンが追い付かなかったんだろう。光弾は全て、俺達の後方を狙っていた。俺はそれらを置き去りにし――福音すらも追い越していく。

 

 二つの影が重なった刹那、エッジが背後から飛び出した。今度はクロスさせたビームサーベルではなく、二刀を使った手数による攻撃。それらは福音の装甲を大きく抉るも、未だ致命傷には至らない。

 

 ――作戦失敗?

 いや、作戦通りだ!!

 

 福音の背後に回った俺は機体を反転、減速させる。左手に構えたのはビームサーベル。ただし、そのエネルギー量はごく僅かだ。刃を維持するのが精一杯。だが、それでいい。どうせオトリだ。

 

 ビームサーベルを振る。気付いた福音はデュエルに急接近し、蹴り飛ばすことで引き離し、俺の方を向く。

 なんという早業。なんという技量。

 俺はこれを作り出した技術者と、性能を引き出す操縦者に、心の底からの賛辞を贈ろう。

 

 サーベルの刃が、福音に迫る。

 すると予想通り、福音はわずかにスラスターを吹かし、ひらり!と刃を回避した。

 俺の右手に武器は無い。

 それを好機とみた福音は、翼の片方、24の砲口を俺に向ける。

 

 だが、俺はそんなものは気にしない。

 

 残る推進剤と、ついでにレッドフレーム本体のエネルギーを込めて、瞬時加速を行う。

 狙うは、むき出しの胴体。そこへ向け、俺は右手を開いて突撃した。

 

 俺の右手は無手だ。武器は持っていない。

 だが――武器など必要ない。俺にはあと一つ、使える切り札が残っている。

 

 右手の掌。そこから、ビーム兵器にエネルギーを供給するためのプラグがせり出す。

 そこにレッドフレームのエネルギーを送り込むと、黄色いエネルギー球が形成された。

 

 ――光雷球。

 

 昔、ガーベラストレートにエネルギーを纏わせようとしたときに、たまたま開発したこれは、対象にエネルギーの塊をブチ当てることで、システムダウンを引き起こす技だ。

 

 ガキイィィィン!!

 

 俺の右手が、福音の腹に押しあてられる。

 だが、福音は止まらない。――くそっ、効果が薄いのか?

 

「8!次の戦いに影響しない範囲で、限界までエネルギーを注ぎこめ!」

《右腕が壊れるぞ!》

「――直しゃあいい!!」

 

 今度は右腕全体から、光があふれる。

 限界を超えたエネルギーが、エネルギーバイパスからあふれ出しているのだ。

 光雷球は輝きを増し、福音の動きも鈍くなっていく。しかし輝きが増せば増すほど、右腕から出る火花は増え、装甲にもひびが入っていく。

 

 数秒の接触。

 そしてレッドフレームの右腕が砕け散る。

むき出しとなった俺の右腕は、ところどころISスーツが切れて血が滲んでいるも、どうにか無事だった。

 ちらり、と福音を見やると、福音は硬直したまま、ゆっくりと海面に向かって落下していくところだった。

 

「……やった」

 

 呟いたのは、誰だったか。そんなことはどうでもいい。

 俺達の任務は終了した。同時に、()との同盟も。

 

「協力は感謝する。だが、それもここまでだ」

 

 ビームライフルを俺に構えたデュエルが、俺の正面に浮かんでいた。

 PS装甲はまだ生きている。装備も、シールド以外は無事。

 圧倒的に優位な立場にいても律儀に待っているのは、やはり彼女が「騎士の誇り」を重んじるからなのだろうか?

 

「あー、こっちは右腕壊れてんだけど、ハンデとかは……」

「笑わせるな。貴公も、戦闘中に私を狙っただろう。そんな者に譲歩など……」

「……だよな」

 

 無傷だった左腕で、再びビームサーベルの柄を握る。

 刃は出さない。もう、エネルギーを無駄遣いする余裕はないからな。

 

「ま、待て!紅也、私も助太刀するぞ!」

 

 箒の紅椿が、俺の隣に立つ。

 エネルギーはわずかのはずだから、どこまでやってくれるかは分からないが……。

 

「……頼めるか?」

「ああ、任せろ!」

「……ってなわけだ。別にいいよな?」

「構わん。そういう約束だ」

 

 本当は一夏の助けも借りたかったが……今は遠くの船の上だ。諦めるしかない。

 三人は、それぞれの得物を構える。

 

 そして――

 

「仇討ちもまた、騎士の務め……。死んでもらいます!」

 

 新たなる戦いの火ぶたが、切って落とされた。

 




紅也、箒、大ピンチ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。