IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第62話 閃光の刻

「くそっ……。一体、どうなってんだよ……」

 

 密漁船の上。今や戦場からはやや離れた場所にあるそこから、一夏は戦闘を見ていた。

 福音を紅也が撃破して、そしたらエッジさんが紅也に銃を向けて……。

 

(何でだよ!何で、戦うんだよ!)

 

 さっきまで共闘していた者たちが、突然対立する。一夏にしてみれば、訳のわからない状況だった。

 

「あらあら、あかんなぁ。あんな状態で戦闘なんて」

 

 船にいた女が突然しゃべりだしたため、一夏は驚いてそちらを見る。

 女は口元に手を当て、どこか楽しそうに空の彼方を見ていた。

 

 ――いや、待て。

 俺がISのハイパーセンサーを使って見ている光景を、たかが密漁者が見ている!?

 

「兄さんも、あかんなぁ。鈍い男は嫌われるで」

 

 ドン!と腹部に衝撃が走る。それと同時に、白式のエネルギーが切れて、装甲が消えてしまった。

 

「お……お前は……?」

 

 倒れた一夏が僅かに顔を上げると、そこには見たことのない、全身装甲のISが立っていた……。

 

 

 

 

 

 

〈side:海上の戦闘組〉

 

「どりゃぁぁぁぁ!!」

 

 先手を取ったのは俺だ。不意打ち同然の瞬時加速&抜刀で、ビームライフルを切り落とす。

 確かにビームライフル本体は貴重だが、機体の方が最優先だ!

 

「なんとっ!?まさか、武器を狙うとは……」

「へっ!まさか武器までPS装甲じゃあないからな!」

 

 そして即座に距離をとる。その判断は正しかったようで、さっきまで俺がいた空間を、ビームの刃が薙いだ。

 

 ――いや、刃を伸ばしたのか?

 

 レッドフレームの胸部装甲は、わずかに切り裂かれていた。

 

「言い忘れていたが、私は接近戦の方が得意だ」

「見りゃ分かるっての!」

 

 くそっ!厄介だな、ホント!

 

「紅也!援護を……」

「ダメだ!箒はエネルギーを使うな!やるなら、実体剣だけでやってくれ」

「しかしっ……」

「いいか、『私なら倒せる』とか思うな!今俺が互角に戦えてるのは、あいつがお前を警戒してるからなんだよ!」

 

 箒から入った通信に答えつつも、刃からは目を放さない。

 ちょっと乱暴に返答しすぎたか?だけど、気を使う余裕はねぇ!

 避けるべきものは避け、よけきれないものはシールドで防ぐ。

 とにかく、今必要なのは時間だ。

 奴のPS装甲が切れれば、後はガーベラで……。

 

「――時間稼ぎなど、無駄なことだ」

 

 二刀を持ち、さらに手数を増やすデュエル。

 嵐のような連撃を前に、俺は距離を取るしかない。

 

 そろそろ、バックパックの推進剤が底をつきそうだ。

 

(くそっ……8!プロペラントタンクを分離後爆破!奴の視界を塞ぐぞ!)

《ガッテンだ!》

 

 レッドフレーム本体のエネルギーを消費し、加速する。デュエルもそれに動揺はせず、正面から突っ込んできたが――俺はそれを回避する。

 そしてデュエルの頭上に、推進剤をわずかに含んだタンクを投下。奴はすぐに迎撃したが、それが災いした。

 

 ドン!

 

 小規模な爆発が起こり、デュエルの装甲表面を焦がす。

 好機が、来た。

 

「今だ!箒!!」

「はあぁぁぁぁ!!」

 

 〈雨月〉から、無数のエネルギー球が放たれ、煙に穴をあける。

 そこに敵を見た俺は、ビームの刃を実体化させ、トドメを刺すべく動こうとしたが――

 

 ――ゾクリ。

 

 不意に、脳の奥が冷たくなる。

 何か、嫌な予感がする。俺は、攻撃を躊躇してしまった。

 そして――

 

 俺とデュエルの間を、黄色い閃光が走りぬけていった。

 

「ちょっと待ちぃ!こっからは2対2や。フェアプレーの精神でいこうや!」

「なっ!?新手?」

 

 慌てて砲撃を行ったISを探す。

 発見。カーキ色の機体に、全身に搭載された火器。あれは――

 

「GAT-X103、バスターか!」

「よう知っとるな、その通りや!」

 

 自分の感覚に従って正解だった。

 あのままあそこにつっこんだら、俺は焼け死んでただろう。

 

「一体、どこにいたのだ!?」

 

 箒が叫ぶ。

 

「姉ちゃん、アホやなあ……。敵に『自分は船におりました』なんて言うわけないやろ!」

 

 …………言っとる。

 じゃ、なくて!船だって!?

 

「まさか…さっきの……?」

「当たりや、兄ちゃん。迂闊やで?戦場で、敵の言葉に従うなんて……」

「チョッパー!あれは、あなたの船だったのですか?」

「……は?エッジ、自分何を言うとんねん!」

 

 ……もういいや。

 デュエルは復活したが、装甲がところどころ抉られている。

 さすがは第四世代か。PS装甲を貫通するとは……。

 

「ま、待て!では、一夏は……」

「あの兄ちゃんか?今はおねんねしてるで?ホンマに間抜けやったな……」

「黙れ!」

 

 箒が激昂し、バスターへと突っ込んでいく。

 確かに、あの機体に接近戦武装はないけど……ちょっと待て!

 策も無しに勝たせてくれるほど、相手はヤワじゃないぞ!

 むしろこれは……

 

 ハメられたか!!

 

 バスターの両肩の6連装ミサイルポッドが開き、左右合計12発のミサイルが箒を襲う。

が、箒はそれを紅椿の機動性でかわし、距離を詰めようとする。

 

 俺が見ていられたのは、ここまでだった。

 

「なにをボサっとしている!」

 

 俺の正面にはデュエルが。

 とっさに赤いシールドを突き出すも、耐ビームコーティングを失っているそれは、あっさりと切り裂かれた。

 

「さっきの爆発は良かったが……こちらが一人と油断したな!」

「まったくだぜ!騎士が不意打ちとはな!!」

 

 もう出し惜しみはしていられない。ビームサーベルから刃を出し、切り合いに応じる。

 

「ふっ、私は自分のルールを他人に課すほど、融通の効かん人間ではないさ!」

「その言葉、どこぞの教師に聞かせてやりたいな!」

 

 一撃、二撃。

 相手のビームサーベルも一本だ。どうやら、さっきのでだいぶエネルギーを減らしたらしい。――これなら、付け入る隙があるはずだ!

 

「互いにエネルギーが心もとないな!どうする?決闘でもするか?」

「三歩歩いてズドン!か?じゃあ俺は一歩目で撃つぜ!」

「では私は振りかえらんぞ」

「そうかい!」

 

 冗談の応酬をしてはいるが、斬り合いも続いている。

 こっちとしては、斬られる=死ぬだから、かなり気を使うんだが!?

 いいよな!絶対防御って奴はよぉ!

 

 ……と、唐突にデュエルは俺から距離をとる。

 見れば、ビームサーベルも輝きを失って……時間切れか!

 

「俺の……」

「勝ちだ、とは言わせへんよ」

 

 ガキイィィン!

 俺の背中に、何かが衝突した。

 レッドフレームは体勢を崩し、状況がつかめない。

 手足を動かし、8がスラスターを制御してどうにか前を向くと――

 

 正面には、合体させた二つの筒を腰だめに構えたバスターがいた。

 

「はん!そんなモンが当たるとでも……」

「ぐっ……紅也……」

 

 ――冷やりとした。

 

 背後から聞こえたのは、箒の声。

 何故?

 決まっている。

 さっき激突した物体は、紅椿だったのだ。

 成るほど。だからデュエルは撤退したのか。

 俺を追い込んだから。

 そうかそうか。

 

 これは

 

 まずい。

 

「二人まとめて、吹き飛びィ!」

 

 ビーム・マグナムの比ではない。極太の火線が、俺達を呑み込もうとする。

 

 

 

 ――箒を連れて逃げられるか?

 

 無理だ。

 

 ――俺一人なら?

 

 ギリギリ間に合う。

 

 ――じゃあ箒は?

 

 絶対防御がある。大丈夫だ。

 

 ――じゃあ、お前は……

 

 ――巻き込まれた一般人を、見殺しにするのか?

 

 いや……

 

 ――なら、どうする?

 

 決まってんだろ。弟子一人守れなくて、何が師匠だッ――!

 

 

 

「うおぉぉぉぉっ!!」

 

 葵から借りた、ブルーフレームのシールドを構える。

 損傷は、さっき壊れたレッドのシールドよりも、若干マシというレベル。

 こんなんで大丈夫なのか?

 

 ――大丈夫だ、問題ない!!

 

 着弾。

 あまりの衝撃で機体が傾くが、スラスターを吹かしてふんばる。

 シールドにひびが入っていく。やはり、限界なのか……?

 

「あ……紅也……」

 

 いや、限界なんて知るか!せめて箒だけでも、きっちり逃がしてやる!

 

「箒……逃げ……」

 

 そして――

 暴力的な破壊の光が、俺の左腕を呑み込んでいった……。

 




紅也の「大丈夫だ、問題ない」は……。
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