タイトルで分かるように、あの人の登場です!
第85話 三年生?初めて見た……
9月になり、IS学園の新学期が始まった。
久々に顔を合わせた人も、そうでない人も、皆が楽しそうに思い出話に花を咲かせてる。
当然、私も例外じゃない。
久しぶりに会ったクラスメートたちの話を聞いたり、紅也の話をしたり、ついつい口が軽くなってしまう。
……驚いた?ちゃんと友達いるのよ、私。
それはさておき。
今は全員で校庭に集まり、クラス毎に分かれて整列してる所。
何で校庭かって言うと、これから起こるちょっとしたイベントが原因だ。
……と、いっても、それを知ってるのは、この学園内ではごく僅かなんだけど。
私と、紅也と、エルシアさん、クリスさん、
後は学園の教師と、生徒会などの一部生徒。
ともかく、私が言いたいのは、これがサプライズだってこと。
「えー、以上、学園長のお話でした。では、次は――」
さて、そろそろだ。
次の学園主任からの話が終われば、そのタイミングで行動が起こる。
私の役目はないけど、観客として楽しませて貰おう。
「――特に3年生の皆さんは、今学期のうちに国家や企業から――」
後少し。
予定では、あと2分後。
「――ですから、最上級生として、世界に羽ばたく人材として……」
「先生!不明機が3機、学園内に侵入しました!」
「なんですって!?」
――始まった。
マイクによって全校生徒に届いてしまったその報告により、周囲がにわかに騒がしくなる。
特に一年一組。
あのクラスには、紅也を除いても5人の専用機持ちがいる。
その全員が集合して、即座に迎撃態勢を整えてる光景は、やはり圧巻の一言に尽きる。
「映像、出ます!」
誰かの声と共に、空中に巨大なディスプレイが浮かび上がる。
そこに映ったISを見て、誰もが驚愕の表情をする。
モニターに映し出されたその機体は、珍しい全身装甲タイプ。
白と赤で彩られた手足に、黒い胴体。
背部には真っ赤なフライトユニットが装着されており、左腕にはシールドが。
そして、特筆すべきは、右腕に握られたビームライフル。
「レッドフレーム……?」
「紅也……なのか?」
ざわめく開場の中で、誰かがこぼした呟き。なぜかその声だけははっきり聞こえた。
が、その声も、続く映像によって引き起こされた騒ぎにより、あっさりとかき消される。
「ねえねえ、見て!あの機体……」
「えー!?レッドフレームが、三機……?」
「うっそー!紅也くんが三人?どうなってるのよー!」
そう。
モニターに映し出された機体は、一機ではない。
三機。
最初の一機に続き、後ろから二機が随伴していたのだ。
「ISが三機も……」
「先生!何故専用機持ちを出撃させないんですか?」
「大丈夫だ。何も問題はない」
「え……?」
騒ぐ生徒たちとは対照的に、教師たちはあくまで冷静だ。
「あれは……。みんな、多分戦う必要はないよ」
「シャルロット……?」
一組のみんなも、映像を見て何かに気付いたシャルロットの言葉により、警戒態勢を解く。
それにより、一部生徒たちの騒ぎはだんだんと小さくなっていった。
……あーあ、もっと盛り上がると思ったんだけど。
しょうがない。じゃ、セカンドステージを始めましょうか。
「……そろそろ出てきて」
「極めて了解!」
ごく短い通信。
でも、相手は私の意を酌み取って、即座に行動を開始する。
「! 織斑先生、校内に不明機の反応が……」
「なんだと?予定と違うぞ……」
織斑先生の言葉を皮切りに、教師の間にも動揺が広がる。
……計画通り。
「すぐに映像を出せ!」
「待ってください!今出しま……あ、あれ!?」
増えたモニター。しかしそこに映し出されたのは、白色の光の残滓のみであった。
「な、なんて速さですの……」
「信じられん。紅椿と同等か、それ以上か……」
専用機持ちから漏れる、驚愕の叫び声。
これだ。これが聞きたかった。
そして間もなく、三機の不明機が肉眼で見える位置に現れる。
三機とも全力でスラスターを吹かし、かなりのスピードで校庭に接近している。
しかし――
それを嘲笑うかのように、新たな不明機が三機を追い越していった。
なるほど。
データでは知っていたけど、確かに速い。
知っている私でもこうなのだ。他の人から見た衝撃は、どれほどのものなのか。
「……………………」
現に、簪なんか固まってるし。
それだけ、この機体は非常識なのだ。
生徒たちの上空で、不明機は静止する。
まず目についたのは、真っ赤な胴体。そしてそこから伸びる、すらっとした白い手足。
さらに背中にはとても短い赤い翼と、そこから伸びる光の翼。
既存のどの機体とも違う、
その姿に、ここにいる誰もが目を奪われた。
不明機を囲むように、
……そろそろいいだろう。
私は、学園長に向かって合図を送る。
「えー、ここで皆さんにお知らせがあります」
緊迫した状況の中、突如響き渡った学園長の声により、生徒たちが正気を取り戻す。
「このたび、オーストラリアの国営企業、モルゲンレーテより……第三世代相当の量産機が提供されることになりました!」
「「「「ええええええええっ!?」」」」
その一言で、生徒たちは再びざわめく。
「だ、第三世代……?」
「学園の打鉄やラファールは、第二世代機なのに……」
「どういうこと?戦力増強?」
「あー、だから三咲たちいなかったんだ」
一方、専用機持ち達も。
「やっぱり……」
「やっぱり、って。どういうことだよ、シャル?」
「あの機体、夏休みに見かけたんだよ。モルゲンレーテで」
話し声が徐々に大きくなる中、学園長の言葉は続く。
「もっとも、提供されたのはフレームのみで、コアは学園で用意しましたが……。
それでも、この機体の性能は驚異的なものです。では、紹介しましょう!学園専用の新たな練習機……その名は、『M1アストレイ』です!」
その言葉に応じるかのように、三機のレッドフレーム――M1アストレイが降下する。
やや遅れて中央の不明機も、光の翼を広げながらゆっくり下りてきた。
「M1、アストレイ……?」
「そういえば、嫁の機体も『アストレイ・レッドフレーム』だったな。道理で似たような機体であるわけだ」
「……あ!葵の専用機も『アストレイ・ブルーフレーム』だったわ」
「なるほど。だから葵さんだけは動じてなかったんですわね。
……で、シャルロットさん。最後の一機は何者ですの?」
「それは……僕にも、分からない。でも、状況から考えるなら、あれは……」
「――紅也に違いない」
一夏、ラウラ、鈴音、セシリア、シャルロット、そして箒が話し合い、答えを導き出す。
すると、答え合わせをするかのように、中央の不明機から声が発せられた。
「――以上、モルゲンレーテの新型量産機、および最新鋭機のお披露目でした!
IS学園の皆さま、ご協力に感謝いたします!」
聞こえてきたのは、まぎれもなくあの声。
一ヶ月以上、この学園内では聞かれなかった、あの声だ。
同時に、不明機の姿が霞み始める。
手足は崩れて光の粒子となり、崩壊は腕や脚へと及ぶ。
そんな幻想的な光の中に、人間の手足が見え隠れしている。
やがて、身体の全てが光となり、その光が消え去ったとき――
そこに、一人の少年が立っていた。
夏を経て日焼けし、褐色がかった肌。
いつの間にやら染め直した紅い髪と、今までには無かった白いヘッドバンド。
手足には僅かに傷跡も。なんだか最後に会ったときより、ワイルドになった気がする。
そして、最大の特徴。それは、私と同じ黒みを帯びた碧眼。
――私の兄、山代紅也がそこにいた。
◆
そのまま全校集会は終わり、私は体育館裏へと急いだ。
全力を出すまでも無くすぐにたどり着いた私が見たのは、三機のM1と紅也の姿だった。
「よう、葵!どうだ?成功か?」
「……バッチリ」
親指をグッ、と上げることで、計画の成功をアピールする。
あれだけのことを、IS学園の始業式でしでかしたのだ。
ビーム兵器搭載型量産機の情報は、すぐに各国政府や企業に伝わるだろう。
「先輩方も、お疲れさまでした。すみませんね、こんな茶番につき合わせてしまって」
次いで紅也は、M1に向かって挨拶をする。
「いいっていいって!こっちも、上からの命令だからな!」
「気にしないで、紅也くん、葵ちゃん。私も、M1に乗れて嬉しかったし」
「残念なのはー、コレがウチらの専用機じゃないことだよねー」
すると三機のM1から返事が返ってくる。
……当然だ。普通のISは、人がいなければ動かない。
このM1に乗っているのは、私達と同じくモルゲンレーテのテストパイロット。
上からクリスティーナ・キャンベル、エルシア・グリーンフィールド、
モルゲンレーテ社内では、「新・三人娘」なんて呼ばれてる。
ちなみに、三人とも2年生。私達の先輩だ。
でも、専用機は持ってない。私より弱いから。
「それでも、ありがとうございます。俺にも見せ場を作ってもらって」
「律儀だなー、紅也は」
「えっと、カッコ良かったよ、紅也くん」
「それにはどうかーん。ま、
「ちょっと三咲、また彼氏自慢!?」
「ハハハ……。とりあえず、そのまま学園の倉庫まで行ってください。M1を届けるまでが、俺達の仕事ですよ」
長くなりそうだった話を途中で切り、紅也は三人を追い払う。
それに不平をこぼす三咲さんをエルシアさんとクリスさんがなだめ、三人は倉庫へと飛んでいった。
紅也は、それを見送るかのように、じっと空を眺めてる。
「……で。そろそろ出てきたらどうだ?」
でも、唐突に。
私の後ろをこっそりついてきた数名に向かって呼びかけるかのように、そんな言葉を発した。
「あ……バレてたか……」
一夏の言葉を皮切りに、ぞろぞろと人が出てくる。
その数、総勢8名。
――8名?
「えっと……そちらの3年生は、どなたでしょうか?」
そう言って紅也が指さしたのは、紅也以上に褐色肌の女子生徒。
私も見たことが無いけど……ホントに誰?
「私か?私はダリル・ケイシー。アメリカの代表候補生だぜ」
どことなく紅也と似たしゃべり方の女は、荒っぽい口調でそう答えた。
「で、そのケーシィ先輩はどのようなご用件でしょうか?
……ま、まさか!後輩を体育館裏に呼び出して、この人数でリンチする予定とか!?」
「んなわけあるか!こいつらとは別件だ、別件!お前ら二人に礼を言いに来たんだよ!」
「礼……?アメリカ……?褐色肌……!
うわぁぁぁぁぁ!命だけは……いや、いっそサクッと殺してくれぇぇぇ!!」
「……紅也?」
何か変なスイッチが入ったかのように、紅也が取り乱し始める。
その様子に私は勿論、ケイシー先輩や一夏たちもあっけにとられていた。
「バ、違ぇよ!お礼参りじゃねえ!
純粋なお礼!Thank youって言いに来たんだよ!だから落ちつけ!!」
「……ホント?ホントに、あいつの手先じゃないのか?」
「あいつってのが誰かは知らんが、違うから安心しろ!」
「……良かった」
そう言いながら、涙をぬぐう紅也。
……夏休みの間に、新しいトラウマでも増えたのかしら?
「グスッ……で、ケーシィ先輩、俺達、礼を言われるようなことはしてませんけど」
「……同意」
これは本当。
確かにN.G.Iに恩は売っていても、アメリカ自体には何もやってない。
少なくとも、私達個人としては。
「ああ、確かに、直接的には何もないけどよ。間接的に、お前らは私のためにしてくれたことがある」
言うなり胸元に手を突っ込み、何かを探し出すケイシー先輩。
それを見た私は――
「えーと、葵?頭が痛いんだけど……」
「見ちゃダメ」
反射的に紅也にアイアンクローを決め、視界を塞いでいた。
一方……。
「シャルに……鈴か?前が見えないんだが」
「いいの!見えなくて!」
「むしろ、見たら殺すわよ!」
一夏の方も、似たり寄ったりの状況だった。
「何やってんだよお前ら……。ホラ、これ、見てくれよ」
先輩の手に乗るそれを確認した私は、紅也の拘束を解く。
未だに頭を押さえ続けている紅也は、薄く開けた目でそれを見て、なにやら納得したようだ。
「カーキ色のペンダント……。成程、これは……」
「……ISの、待機形態」
「そうだ!お前らが奪還した機体。それが私のモノになったんだ!」
……やっぱり。
なんとなくそんな気はしてたけど、間違いない。
この色合い、このタイミングを考えると、これはあの機体に違いない。
「はあ……。じゃ、礼は葵に言ってください。奪還作戦でコイツと戦ったのは、葵だったんで」
「いやあ、紅也の活躍も大きかったって言ってたぜ。N.G.Iのテストの人が」
……エイミーさん。
「では、ありがたく受け取っておきます。
……もう奪われないで下さいよ。俺、
「奪われたのは私じゃなくて、N.G.Iにいた誰かだろ?ま、せいぜい気をつけるよ」
「……ホントに、気をつけて」
「ああ。じゃあ、ありがとな、紅也!葵!」
「どういたしまして、ケーシィ先輩」
「……礼には及ばない」
私達は先輩に手を振り、その後ろ姿を見送る。
――が、突如その後ろ姿が反転したかと思うと、ケイシー先輩は唐突に紅也を指さし、言った。
「それから紅也!お前、私のこと『ケーシィ先輩』って言ってるけど、『ケイシー』だからな!」
――ああ、今更ツッコムんだ。それ。
楯無さんだと思った?残念、ダリルさんでした!
原作7巻部分までの情報で書いているので、色々原作と違う部分も出てくると思いますが、ご了承ください。