「へい、チャーシュー大盛りもやし増し増ししょうゆラーメンおまちぃ」
「あざーっす」
屋台のおっちゃんが景気よくラーメンをテーブルに乗せてくれる。友野と同席しているオーフィスはそれをまじまじと見つめ、友野に習って箸を手に取る。
どんぶりから見えるのは天高く聳え立つもやしの山だ。それはおっちゃんがラーメンと言わなければただの野菜の大盛り合わせなどんぶりと見紛うほどの迫力であり、無限の龍神たる彼女にとって有限でこそあるものの未知である点は認めるものであった。
「なに、これ」
「んぐ、チャーシュー大盛りもやし増し増ししょうゆラーメン。あ、チャーシューはもやしの最底辺にあるから」
「そうじゃない」
「あ、おっちゃん。餃子茹で5、焼き5、ニンニク増量ね」
「ユデ5、ヤキ5、ニンニクゾウリョウ」
「……ロボ?」
オーダーに応じたのは明らかに人間とは違う合成音声から放たれた音だった。よくよく見れば屋台裏に現代的なロボットとは言い難い、まるで段ボールをツギハギに組み合わせて着込んだロボのような店員が拙い手捌きで餃子を作っていた。こっそり体の部品らしき捻子が紛れ込んで見えたのは気のせいだと思いたい。
「いいかオーフィス、こいつは換算すれば4,000円相当する物量だが10分で喰えばタダなんだ」
「タダ」
「つまり無料、早い者勝ちなんだよ。おら早く喰え」
いつの間にかラーメンとの永きに渡る格闘を繰り広げていた。屋台のカウンターにはストップウォッチが既に稼働を初め1分経過していた。オーフィスもまず山の如くどっしりと構えるもやしを食べに取り掛かる。
「これ、ラーメン違う」
「そりゃもやしだからな。お、チャーシュー発見」
「ギョウザ、オマチ」
「……何、頼んでるの?」
「早食いチャレンジ中に頼んだ物は時間内に完食すればそれもタダ。いやぁおっちゃん太っ腹だなぁ」
「食い終わってから言いな」
友野の口元から伸びる麺が物理学的にあり得ない軌跡を描いて口内へ吸い込まれていく。その麺中にはギトギトに煮込まれた塩分過多もへったくれもない冒涜に塗れたスープと頼んだ餃子が紛れ込んでいるが、友野は意に介すこと無くバキュームの如く食べ続ける。オーフィスも店長も乾いた笑いしか出てこない。
「いや、嬢ちゃんも十分凄いんだけどな」
まだ時間を半分残してるにも関わらず増し増しなもやしの山が目減りして、既にラーメンの本体が見え始めている。無限の龍神にかかればこれしきのことは朝飯…いや、夜食前くらいではあるかもしれない。何故ならば普段の鉄仮面の如く微動だにしない表情筋が苦悶で緩み、灼熱のスープを啜る度に汗が滲み出ているのだから。
「いいかオーフィス、食事は格闘技なんだよ」
カラン、とどんぶりの底にレンゲが落ちる音が響いた。
奮闘中のオーフィス、店長、ロボ店員の三名に電流走る。
「あと4分あるなぁ。おっちゃん流し餃子やろうず」
「チッ、表出ろや」
用意してあるからよ、と続けて悔しそうな声音で店長が続けて言いながら屋台の外へ出る。餃子専用ロボ店員は覚束無い動きで水餃子を乗せた皿をハンドル型アームで掴んで続いた。
誰がどう見ても混沌だった。
「…ごちそう、さま」
どんぶりの底にレンゲを落として完食の合図を送る。常人から見れば混沌であっても、オーフィスから見ればなんら特別性のない光景なのかもしれない。暖簾を持ち上げて屋台の外を覗くと、洗車用高圧洗浄機で餃子を半分に割った竹に滑らせるおっちゃんと、それを神速の箸使いで掬い上げてからの早食いコンボを延々と繰り返す友野の姿があった。
以前友野は言った、人間こそ混沌そのものだと。
成る程この光景は確かに混沌たる人間が生み出せる状況なのか、オーフィスは一人納得した。
「ゴチになりましたー」
「…ゴチ、なる」
「二度と来るんじゃねぇ暴食カップル!」
してやったり、満腹顔で屋台から出て帰路の着く友野。無限の龍神であるオーフィスも食事は唯の栄養摂取に過ぎず、その気になれば永遠に断食を繰り返したところで死ぬことはないのだが、常人どころか悪魔や天使など人外でさえも食い倒れそうな物量を腹に収めたせいか、心なしか顔色は優れない。
「いやー満腹満腹。今度は牛丼とかいいなー。いやー人間界にはこういう面白いのがあっていいねぇ~」
大きく口を開けて、虚空から現れた水を大量に飲み込む。それから明らかに人間が発するとは思えない音が体内から響き渡り、次の瞬間には友野の口からは清潔な匂いしかしなくなった。
何のことはない、お得意の《水》で体内を強引に洗浄したのだ。能力の無駄遣いもいいところである。
「やる?」
「遠慮、する。我、必要ない」
無論それはオーフィスにも言えることであり、いくら油ギトギトで暴力的で冒涜的な食べ物であろうとも体調に異変をきたす範囲ではない。染みついた匂いは一瞬で消え去り、油臭い少女というレッテルが張られる心配は無くなった。
「それで、どうする?」
「何を?」
「堕天使」
一変して真面目な話題に戻り、友野からすれば酷く面倒そうに顔を歪めた。
「あー、そういえばオーフィスよ」
「何?」
「お前最近どっかのグループに入ってるだろ」
「………」
「名前は」
「
友野の探るような眼は心の奥底まで見抜く観察眼だ。その気になれば隠したい過去はおろか、これから歩むであろう未来の運命でさえも目視してしまう可能性を持つ眼だ、それは種族が違えど龍とて例外ではない。何故ならば龍も人も生物であることに変わりはないのだから。
その眼を向けられた瞬間理解した、この男の前に隠し事は無粋だと。
故に話した。己がグレートレッド討伐の為に力を貸している団体の名を。
「……誰がいる?」
「それは、わからない」
「わからない?」
「沢山、人、覚えるの面倒。グレートレッド、倒したい奴、いる」
「あ~…、うん。大体分かったわ。察した。理解した」
世にも珍しきグレートレッド討伐を目的とする存在はそういない。この時点で友野の中である程度人物は絞り込めたが、オーフィスの言う「沢山」が別の可能性も示唆していた。
組織というのは一枚岩である方が珍しい。少数精鋭ならばまだしも、無限の龍神・オーフィスの力に肖り野望を叶えようとする七面倒くさい連中は種族問わずして出てくるだろう。あわよくば内部分裂で自然消滅、若しくは内部反乱で自滅してくれれば何ら問題はない。
そう、人間界に危害が及ばなければ。
友野が最も大事とするのは人間であり、それは己が最後に人間を裁く存在であるからだと自覚していることに繋がる。
故に、裁く前に数を減らされたり絶滅されてしまっては興醒めなのだ。特に天使、悪魔、堕天使といった人間とは全く異なる別種の種族の手によって壊滅させられるのは、最も気にくわないところであった。
人間を滅ぼすのは友野であって。
他種族に横取りされるなど認められるものか。
その上で問題なのが、目下進行中の堕天使組織幹部コカビエルと大司教バルパー・ガリレイの『聖剣計画』だ。この駒王の町中の烏や鳩など様々な動物の《聲》を聞いたが、事態は相当悪い方向へ進んでいるらしい。これから駒王学園の近くのカフェテリアに一休みがてら様子を見に行くつもりだが、状況によっては介入することも厭わない。
だが悪いだけではないらしい。教会勢力の聖剣使い二人、イリナとゼノヴィアが悪魔勢力のグレモリーの眷属と協力体制を敷いたとのことだ。一応助言は残したが、あの堅物の二人が如何に悪魔と手を組んだかが気になるところではある。
「■■は」
「ん?」
「今の世界、満足してる?」
「………」
先頭を歩くオーフィスが無垢な瞳を友野に向けて、こてんと首を傾げていた。
難しい問いだ、友野はそう思う。
元より神の最後の奇跡の結晶である己には決定権がない。神が目論む
天使、悪魔、堕天使も全て滅ぼしてしまう程の規模だというのが、堕天使幹部にして神器狂いアザゼルの見解だ。
そも、瓶に貯まる水は友野の意志で増えるものではない。一滴一滴が全生物の絶望、破壊欲求といった破滅を願う悪の意志である。
「決まってるだろ。飯を食えば美味いし、遊べば楽しい。まだ見ぬ地平や景色だってある、見たことのない魂の輝きだって望めるだろう」
「―――」
だが、導き手たる友野の意志で減らすことが可能だ。
「この世に渦巻く混沌の全てが絶望に叩き込まれたとしたらそれも運命、だがお前との出会いもまた一つの運命。これからも、また」
戦争が起きるならば、食い止める他無いだろう。
哀れな堕天使一人が引き金になるというならば、誰も止められないならば。
「嗚呼、愉しいよ。醜くて汚らしい世界に満足している」
友野が動かない理由は、最初から存在しなかった。
駒王学園。
一見外から見れば何もないように見えるが、それは駒王学園生徒会長ソーナ・シトリーとその眷属達による魔法防壁によって周囲への被害を防いでいることに起因する。聖剣融合の儀、ケルベロスの暴走、堕天使の戦闘が繰り広げられる中から外部の街へ攻撃の手が伸びるのを防いでいるのだ。
だがソーナ達の魔力も無尽蔵ではない。中で戦っているであろうオカルト部もとい、リアス・グレモリーとその眷属達の奮闘を期待――信じるしかない。ここで食い止められなければ、台風の目であるコカビエルを中心とした三勢力を巻き込んだ戦争が始まる、始まってしまう。
『大きな戦争』では三勢力全てが痛手を負い、多大な死者を生んだ。結果、戦争に決着は付くことなく優劣も決められず、それはそれで良かったのかもしれない。
だがその沈黙が我慢ならなかった。
もしあの時止めなければ、もし戦争を続けていれば。
我々が勝っていたかもしれないと、そんな思いを『大きな戦争』後ずっと燻り続けていた。その不満はバルパー・ガリレイの『聖剣計画』を筆頭に戦争賛成派は水面下で共謀していた。
「まさか…こんなところで皺寄せがくるなんて…」
「同感です…くッ」
結界を維持している椿姫達から苦悶の声が上がっていた。人間より魔力量が多い転生悪魔とはいえ、広範囲の結界維持は魔力持って行かれる。現在生徒会メンバーによる魔力の並列運用によって負担を軽減しているが、効果が切れるのも時間の問題だ。
「ちょっといいか」
「ごめんなさい…見ての通り忙しくて…って」
「え?」
「…誰?」
そんな生徒会の魔力結界の前に立つ男が一人。
教会特製のローブに身を包み深めに被ったフードで鼻頭辺りまで隠れていて顔は伺えない。
だが分かる、限界まで釣り上がった口角は愉悦に歪んでいる。
それ以前に、悪魔であるのに人間と思わしき男から発せられる形容しがたい気配に近づくことは叶わない。
「…いろいろ話して3分ってとこか」
「あ、貴方は一体…」
「砂時計置いとくから、砂全部落ちたら離れなよ」
「え」
足下にコトリと砂時計を置く。呆然とする生徒会メンバーを意に介すること無く愉悦を浮かべた男はピッと人差し指を伸ばして結界を指す。ピュルーっと光る指先で結界の表面に円を描く。お世辞にも上手いとは言い難い円だが、二度三度と描くことで漸く繋がった。
「じぇえい」
「え」
「え」
「ええっ!?」
パコン、と描かれた円を中心に蹴りを見舞うことでいとも簡単に結界に穴が空いた。にもかかわらず、生徒会メンバーには結界の破損という事象を感知できていなかった。つまり結界に傷を付けずして穴を開けたということだ、その矛盾が受け付けられない。
「警告はしたからな、シビれたくなきゃ従えよー」
外した結界の壁を内側に進入してから元に戻すように嵌め込む。すると最初から穴が空いてなかったとでも言うような具合にすぅっと切断痕は消えていた。ふりふりと手持ち無沙汰に手を振って別れを告げる。あまりに短すぎて、唐突な邂逅だった。
幻でも見たのか、そう思いたいのは山々だが足下で滑り落ちる砂時計の砂が現実とタイムリミットを告げていた。
「しかし、仕えるべき神は既に死んでいるというのに、お前達はよく戦うものだな」
「…どういう意味?」
「どういうことだコカビエル!? 主を亡くしたとは…!?」
「おおっと、口が滑ったか?」
ああそれ、バラしちゃうのか。でも話す手間が省けるのは好都合か。
「ハハハ――そうだなそうだった! 戦争を起こすというのに今更隠す必要など無かった! 先の大戦では四大魔王もろとも神も死んだんだよ! だが神が死んだなどと誰も言える筈がない、人間は神がいなくては心の均衡と定めた法も機能しない不出来な烏合の衆に過ぎん低俗な生物に成り下がるからだ! だが我ら堕天使、悪魔さえ下々にそれらを教えるわけにはいかなかった、どこから神が死んだと漏れるかわかったものじゃないからな。三大勢力でもこの真相を知っているのはトップの一部の者達だけだ、先ほどバルパーが気づいたようだが」
いい空気吸ってるなぁ、戦争終わってショボくれてた頃とは大違いだ。
純粋に嬉しいのだろう、戦争を望む者の代表としてきっかけになれることが嬉しいのだろうなぁ。
「嘘だ…」
「神が死んでいた…!? そんなの聞いたことも無いわ!」
「戦後残されたのは神を失った天使、四大魔王と上級悪魔の大半を失った悪魔、幹部以外ほとんどを失った堕天使。どこの勢力も人間に頼らねば種の存続ができないほどまでに落ちぶれ、特に天使と堕天使は人間と交わらねば種を残せない。堕天使は天使が堕ちれば数は増えるが、純粋な天使が増えることは叶わず、悪魔とて純血種が希少な筈だ」
「そんなこと…ッ!?」
「天使、堕天使、悪魔共…三大勢力のトップは神を信じる人間を存続させるためにこの事実を封印したのさ」
「…嘘だ…嘘だ…!」
遠くでゼノヴィアが膝をついて崩れ落ちていた。イリナがいないが脱落してしまったかな? 死んでいないことは確かだが…杖代わりにしているのは聖剣『デュランダル』か。神の不在による信仰力の低下で輝きは見えないほどくすんだ刀身が見えた。
「もう大きな戦争など故意にでも起こさない限り再び起きない。それだけどこの勢力も先の戦争で多大な被害を被った…お互い争う大元である神と魔王が死んだ以上、戦争継続は無意味だと判断したのさ! アザゼルの野郎も戦争で部下を大半亡くしちまったせいか「二度目の戦争はない」と宣言する始末だ! 耐え難い、耐え難いんだよ! 一度振り上げた拳を収めるだと!? あのまま継続すれば俺達堕天使が勝てたかもしれないのにだ! それを奴はッ! 人間の神器所有者を招き入れなければ生きてはいけぬ堕天使共などに何の価値がある!?」
残念だよコカビエル。俺はお前達堕天使には恩義がある、なんせ人間がこうして現代社会を築き上げめざましい発展を遂げてきたのは、
だが戦争を起こすとなれば話は別だ。
「主がいない…主が死んでいる…? ならば、ならば私達に与えられる愛は…」
「そうだ。神の守護、愛がなくて当然なんだよ。神は既にいないのだからな。奴が生き返ったのが良い証拠だ…おっとこれは流石に禁則事項だったか?」
「奴…だと?」
「なんだ、あれほど近くにいて何も聞いていないとは不憫だな…いや、余程教会側も切羽詰まっていると見える。神の不在はお前等の前で井伊友野と名乗っているガキがそれを証明している」
「井伊が…!?」
「どういうことだよ!? なんで友野が関係してるんだよ!?」
「俺様が説明する義理がどこにある? それにミカエル
あっこれは俺が言わなきゃならない流れだな、結構面倒な事情だから長くなる。説明フェイズはここで終わらせたかったけどあと1回は必要か。
「大天使ミカエル様と井伊が神の不在を認めている…!? では、我らは…!?」
「神が使用していた『システム』が機能していれば神への祈りも祝福もある程度動作する。だが、神がいる頃に比べ信徒の数は目に見えて減ったがな。そこの小僧が聖魔剣を創りだせたのも神と魔王のバランスが崩れているからだ。本来なら水と油の如く聖と魔は交じり合わない、だが聖と魔のパワーバランスを司る神と魔王がいなくなれば様々なところで特異な現象も起こる。そこな小娘が悪魔を癒せたのも特異現象の一つとして観測されている」
本来教会側に宿った聖なる神器の恩恵は聖のファクターしかないから悪魔を癒そうものなら逆に浄化する始末。だがアーシアの清廉な精神に加えて神と魔王の消滅が拍車を掛けて悪魔でさえも癒すという現象を生んだ。故にミカエルは苦渋の決断として追放したのだが、その保護に付く予定だったのが俺だ。
来てみれば死んで悪魔に転生していたが。
「俺は戦争を始める、これを機に! お前たちの首を土産に! 俺だけでもあの時の続きをしてやる! 我ら堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも見せ付けてやる!」
「ざっけんなぁ!!」
良き啖呵。だが悲しいかな、この叫びは人間ではなくもう既に悪魔と化してしまった男の慟哭だ。同じ人間のままならば、手放しに賞賛し拍手を送っていたことだろう。
「お前の勝手な都合でこの街を、仲間達を、消させてたまるかァ!! それにな…俺はハーレム王になるんだぁ! テメェなんかに俺の野望を邪魔されてたまるかぁああ!」
「ふん、威勢だけは立派だと評価してやろう…………さて」
ぐるりとコカビエルの血走った目と俺の目が合う。他の連中は気付いていないだろうが、馴染みある気配から俺を辿れたと考えれば必然の流れだ。
「なんだ、神の最後の奇跡ご本人がいるじゃないか。もっと早く声を掛けたらどうだ? ええ?」
「あのまま全部話しても良かったのに。なぁコカビエル」
ずるりとフードを外して白髪を晒す。舞台上に立った最初の役者はコカビエル、次にイッセー、そして俺か。注目が集まるのも無理はない、戦力外の非戦闘員が戦場に立つなんてあり得ないからな。
「友野くん!?」
「友野!? なんでお前がここにいるんだよ!?」
「え? いちゃ駄目なの?」
「いやそれは…」
素で返したら困惑された。解せぬ。
「よーぉゼノヴィア、息災か」
「ああ…いつもと変わらないお前を見て、少し心が和らいだよ。だがさっきの話は…」
「全部真実だ」
転がっていた聖剣『デュランダル』と聖剣『
「何より俺がいることが、神が死んだ何よりもの証明だ」
「どういうことだ…教えてくれ井伊…!」
「オイオイ、この期に及んでそんな名前を翳し続けるつもりか? トモノ・イー」
「トモノ・イー……? あ、英語圏での名前…え…!?」
「どうしたんだアーシア?」
これがヒント。なぁに、そこまで難しくもない。名前にヒントはあったし何より朱乃と似ているのが最大の鍵だ。
「ちょっと待って下さい…トモノ・イー…Tomono Ii…あっまさかトモノさん!? 貴方は…!」
「Tomono Ii…noi…ノイ…え!? おい井伊……いや、この場合は」
「大正解」
うざったい前髪を掻き上げてオールバック。暴れるのは久し振りだから気合い注入だ、なんせ俺の戦闘は荒っぽいからな。いい加減朱乃との差別化も図りたいところだった。
「その通りだ、キリスト教の正教会で『ノイ』はある一人の聖人を指す。現存する数少ない聖人の中でも最古の聖人だ。そうだろう? 司教枢機卿
「―――そうだな、〝はじめまして〟我が愛し子ら」
※評価を付けて下さる方は今後の文章力向上のためにどの点が悪かったのか理由を添えて教えて下さい