始祖の揺籠   作:一ノ原曲利

7 / 10
初めての前書きです。

本来ならば書くつもりはありませんでしたが、7月19、20日に日間ランク17→22→19→15→3と高い順位をキープし、お気に入り数も200件→700件近くまで増加というという快挙を成し遂げたので、嬉しさあまって書きました

初期に更新して少しずつ増えていく評価とお気に入りを見て微笑ましく思いながら書いてましたが、『ハイスクールD×D』という原作名のジャンルでも平均評価で数ページ目に出てくる、まさかの日間ランキング一桁台突入など、二次創作活動を続けていて初めての快挙を成し遂げ大変感無量で言葉が出ません。それほど、読者様方々に言葉に出し尽くせない感謝を抱いております
感想を書いてくれた方々、訂正箇所を指摘してくれた方々、評価点を入れてくれた方々、本当にありがとうございます

その感謝を胸に、本来であれば木曜投稿の予定(※なお今週更新する予定は無かった)でしたが急遽執筆致しました

拙い文ではありますが、これからもご愛読して頂ければ幸いです



それではどうぞ


愉しい愉しい戦争を始めようか

 

 

 ノア。

 

 その名は旧約聖書『創世記』第五章『アダムの系図』の書において初めて登場される全人類祖である。

 

 最も有名なのが、誰もが知っている『ノアの方舟』伝説であり、近代では舟の残骸や地層から読み取れた洪水の跡から、伝説は史実に基づいたものであるという見解も出ている。

 

 地上に蔓延る悪を嘆いた神が、たった一人、同時代において最も正しく最も全き人として選ばれたのがノアであり、彼は神託に従い舟を造り、生命根絶の大洪水から逃れ人類の繁栄を約束した人であった。

 

 だが、彼は満950歳という大往生を遂げて亡くなった。

 

 はず、である。

 

 

 

 

 

「友野が…ノア…!?」

「………」

 

 衝撃の真実に誰もが驚愕を刻まれた。何故、どうして、そもそも死んだのでは――様々な憶測が飛び交いまともに思考が機能しない中、オカルト研究部員でもたった一人だけは、その事実を冷静に分析していた。

 

「……ああ、漸くわかりましたわ」

 

 リアス・グレモリーの眷属が一人、『悪魔(イーヴィル)(ピース)』『女王(クイーン)』の座に君臨する少女、姫島朱乃である。彼女だけは、当事者であるノアとそれを知っていたコカビエルを除いて、そのありのままの事実を受け止めていた。

 否、胸のつっかえが取れた、と言うべきか。

 一人だけ真実を疑わずして納得する様を見ていたのか、ノアは満足そうにほくそ笑んだ。

 

「勘が鋭いなァ、姫島朱乃。いや、母のそっくりさんよ?」

「朱乃さんが…母ァ!? なんだそのうらやまけしからん呼び方は!? 俺もママと呼びたいぞ!」

「お前がいると話が弾むよ、イッセー。そう思うだろ? コカビエル」

「下らん、だがお前が来たともなれば…全面戦争は避けられなさそうだなぁ! そうだろう!?」

「―――ああ、勿論だ」

 

 やや含みのある溜めを感じさせはするものの、まさかコカビエルを肯定するような言い回しにグレモリー達は疑問を感じていた。同時に、冷や汗が止まらない。

 

 まさか。

 

 

「なぁ、コカビエル」

 

 

 この男が。

 

 

「戦争しよう」

 

 

 戦争を肯定し、受け入れようとは。

 

 

 

「『天の鎖(エルキドゥ)』よ」

「なっ―――!?」

 

 瞬間、虚空から無数の黄金の鎖が姿を現す。それはまるで蛇の様に空を撓み、しなり、蠢き、天を羽ばたくコカビエルを拘束せんと迫る。

 友野――否、ノアの戦争発言は味方かと思っていたリアス達は勿論、まさかGOサインを人類祖たるノアが出すとは思いもしなかったコカビエルに、僅かだが意識の空白を生んだ。それを生み出したのは間違いなく彼であり、その全てが謀略の内。虚空から果てしなく伸びる無数の金鎖は猛スピードで回避するコカビエルを蛇の如く追い詰め、次第に腕、足、翼、胴体と絡み付き、肉体部分が見えなくなるまで覆い尽くした。ギチ、ギチと金属特有の不協和音を奏でながら、『天の鎖(エルキドゥ)』はコカビエルを締め上げんとその力を強めていく。だが。

 

「ォ、オォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!! 俺を舐めるなよォオオオオオオオ!!!!」

「ち、やっぱ『友達の友達』の持ち物じゃお得意の神性縛りほどランクは高くないな。高位の堕天使を締め上げるには至らないか…いや、時間稼ぎには十分だな」

 

 ジャリ、ジャリと拘束する金鎖が歪み内部から響く光と爆発音と共に傷付き始める。原理は全く持ってして不明だが、あの鎖には堕天使であろうとも一時的に拘束する力を持つらしい。

 

「さて、コカビエルも一時休止に入ってくれたようだし、余計な混乱を防ぐ為にも最低限話をする必要があるな」

「……助かるわ、簡単には受け入れられない真実ですもの」

 

 ノアは校庭に転がっていたフリードを蹴飛ばして頭から茂みに突っ込ませると、砕け散った聖剣を拾い上げてポケットにしまってから、拾った『破壊の聖剣』(エクスカリバー・デストラクション)を校庭に突き刺してガリガリと一本線を引いた。

 

「何、簡単なことさ。俺が朱乃と似てるのは母が朱乃そっくりだと言っただろう? それもそのはず、姫島朱乃は堕天使バラキエルの娘であり、生前の俺の母親も同様にバラキエルの娘なんだよ」

「貴方、今それを…!」

「大丈夫よ、リアス」

「朱乃…!」

 

 何の前置きも無く朱乃が最も気にし、嫌悪している自身が堕天使と人間のハーフであるという事実の曝露は事情を知るリアスにとって憤怒に値する発言であった。だが唇を噛み締めつつも耐える朱乃を見て、リアスも放とうとしていた魔力を引っ込める。

 

「え…朱乃さんが堕天使のハーフ…?」

「そこ今はスルーなイッセー。聖書を読んだことがあるアーシアとゼノヴィアならある程度内容は知ってるだろ? ノアがどんな人物なのか。主に家系図」

「あ、あぁ…井伊は…じゃなかった、ノアは堕天使バラキエルとメトシェラの姉妹の間に出来た、娘であるビテノシと……あと、誰だっけ…?」

「レメクですっ…イラデの子であるメホヤエルの子のメトサエルの、そのまた子供のレメク…との間に生まれた子…です」

「そ。叔父さんと曾おじいさんと曾々おじいさんの名前も知ってるなんてアーシアは博識だなぁ。兎に角そういうこと、聖書のバラキエルと今いる堕天使バラキエルは一致してるから、遠い昔に結婚したメトシェラ姉妹の娘のビテノシは、朱乃のそっくりさんだったってワケ。要は生まれ変わりみたいなもんだ」

「……成る程、だから朱乃と似ていたのね…」

 

 ガリガリと一直線を書き切ったノアは線の向こう側からイッセーを掴んで校庭中心側に引き寄せ、怪我人やその他諸々は線の向こう側に移動させた。

 

「まぁ旧約聖書の偽典『ヨベル書』でそこんとこ結構書かれてるんだけどな、簡単に言えば堕天使のクォーターだったと分かれば十分だ」

「えっ、じゃあ友…じゃなくて、ノア。お前も堕天使の翼が生えたりするのか?」

「いいや? それは無理。だって俺人間だもの」

「へ?」

「…それは、どういうことだい? 言ってることが矛盾してるじゃないか」

 

 木場の質問は最もだ、とノアは肩を揺らして笑いながら二本の聖剣を担ぐ。

 

「いいや、どこも矛盾してないぞ? 確かに堕天使や天使、悪魔を親に持つならばその血はハーフとなって受け継がれ、翼も魔力も継承される。無論能力の一部もな」

 

 ぎろり、と妖しい光を放つ眼光が朱乃に突き刺さり、思わず自身のトラウマを呼び起こされ僅かに震えた。父とも違う、だが有無を言わせぬ雰囲気が朱乃を飲み込まんとする。

 

「だが流石にクォーターとなると血の存続は難しい…それは冥界側も同じだろ? 純血悪魔の存続でかの不死鳥の名を持つ一族の三男坊のライザーも結婚を持ちかけたそうじゃあないか。それは堕天使にも言えることだ、それにそもそも俺が堕天使だったら人類皆堕天使だろ?」

「……待ってくれ、今更ながらなんだが、何故ノアと名乗っている? 本当にノアなのか?」

「あー、そこ話してなかったな、いや朱乃が俺との関係性について話して欲しいって目ェされちゃったからさ」

「私に責任を押しつけますか…まぁ、否定はしませんが」

 

 人間臭い言い訳を宣うノアにどこか剣呑な眼差しを向ける朱乃。いや、こんな言い逃れをする存在が堕天使であるとは――成る程、確かにそうとは思えない。

 

 ()()()()、ではなく本当に真人間なのだ。

 

「俺はノアだよ、旧約聖書の前半辺りなんか俺の付けた日記みたいな感覚だ」

「その程度で証明になるなら詐欺師は要らないわ」

「ま、そうだわな。まぁそれは追々証明するとして……まず第一、俺は神に生き返させられた」

「……は?」

 

 何で、いやどうやって、といった表情が見て取れる。そうだろう、神に生き返させられるなんてご都合主義な話も大概にしろと言いたいのだろう。イマドキのお流行(はや)りな神様転生とか、転生特典とか、転生先の世界決定権とか、下らない。本当に下らない。死んだらそれで終わり。善行を積んだから、まだ寿命があったから、可哀想だから、神様の手違いで死なせてしまった―――だから、生き返らせる? 馬鹿を言うなよ夢は寝てみろそこまで世の中甘くない、現実を知れ。

 ノアも概ねその意見には同意である。

 

「第二に、俺は――」

「まてまてまて! 理由聞いてない、生き返ったっていう理由聞いてない! それに生き返ったって信じられるかよ!? 頭おかしいんじゃねぇの!?」

「……転生悪魔のようなシステムか何かなのかい? いや、だが彼は人間のまま…」

「そうだ、俺は人間のまま死に人間のまま生き返った。なぁアーシア、別に生き返った人間がいないわけじゃないって昔教えたよなぁ?」

「えっ――でも、それは…」

「……まさか、イエス・キリストのことを言ってるのか!」

 

 イエス・キリスト――キリスト教という、今なお現世にその名を刻む代表的な聖人である。大天使ガブリエルの告知を受けた聖処女マリアから生まれた『神の子』イエスは、ゴルゴダの丘で十字架の刑に処され死に至る。だがその3日後に奇跡の復活を遂げ、選ばれた彼の弟子である十二使徒を中心にキリスト信仰が伝道された。

 

「有り得ないような、それこそ二度目など不可能だと思われた奇跡。それを体現したのが俺だよ、『大きな戦争』で死ぬ直前に起こした神の最後の奇跡さ」

「あの三つ巴の戦争で遺した神の、奇跡…!?」

「ちゃんと理由ならあるぞ? 神が無秩序に復活させるなんて普通ならあり得ないからな」

 

 確かにそれはそうだ、でなければ神の存命の時には何度死んでも蘇る、狂える信徒たちで現世は生者と死者の境界すら崩壊していただろう。

 それほどまでに復活とは運命を湾曲させるほどの大事(おおごと)なのである。だがその奇跡を起こして復活――いや、それは少し違う。そこでゼノヴィアは観点を変えた。

 

「…そのような奇跡を起こさせてまで、ノアを復活させなければならなかったのは何故だ?」

「簡単なことだよ、()()()()()()()()()()()()()()

 

 くい、と聖剣を持たない方の手が手繰る。まるで何かを招くように。

 

Flood(大洪水)

 

 その動きに応じて、先の鎖の時と同様に虚空から水の奔流が出現し空中で海流の如く蠢いた。

 

「水!?」

「なに…これ…!?」

 

 驚くのも無理はないが、リアスの驚愕は別の所ところにあった。

 いま現在ノアが操っているであろう水流。大公バアル家出身の母ヴェネラナから受け継いだ、かの四大魔王たるサーゼクス・ルシファーの『滅殺の魔弾』(ルイン・ザ・エクスティンクト)と呼ばれる消滅の魔力を幾度と無く見てきたリアスだからこそ分かる。波に込められたる不安定でありながら桁違いの消滅の魔力。

 水流の一滴一滴が病のようなまでに帯びた魔力であり、人肌が受ければ瞬く間に泥と消え、その力は悪魔や天使、堕天使でさえも全身に覆えば泥人形と化してしまうだろう。

 

「この水はかの大洪水でも流れた滅びの奔流だ。人間も、他の動物も、そしてこの世界に跋扈していた巨人共(ネフィリム)もこの水の前に泥と消えた破滅の奔流だよ」

「てめぇ…これで、人類を滅ぼすつもりなのか!」

「いやそんなつもりは無いけど?」

「やっぱ敵なんだな上等だ手前ェ! コカビエル諸共――え?」

「だから、人類を滅ぼすつもりなんか無いって」

 

 なんでそんな敵意剥き出しなんだよ? と大層不思議がられた。

 どうして、いやそこまで言っておいて滅ぼすつもりは無いとはどういうことなのか。なんだか話せば話すほど混乱に陥っている様が見て取れるようで、流石のノアも「忙しい人向けの倍速説明総編集は難しいな」と呟く。

 同時に、ジャラジャラと不協和音を奏でる鎖の音が大きくなり、鎖の隙間から覗く堕天使特有の光の槍がコカビエルの解放が間近であることを示していた。 

 

「兎に角、俺は神に生き返させられ第二の終末へ導く代行者と成った訳だけど、俺自身はそんな気無いから問題ないよってこと」

「……信じられ無ぇな…」

「え? 俺が終末の引き金を引かなければイッセーが望むハーレム王になれるぞ? そしてずっとエロいことができる」

「マジか!?」

「イッセー!? それだけで信じるの!?」

「…ドン引きです……イッセー先輩…」

「何言ってるんだよ。なぁゼノヴィアも聖書読んでるんだから洪水が終わって方舟から出た後、神が言った言葉くらい知ってるだろ?」

「えっと…『産めよ、増えよ、地に群がり、地に増えよ』…だったか?」

「つまり現代風に言えば『好きな女侍らせてハーレム作っていっぱいエロいことしような!』って意味だよ。信じるだろ?」

「おお! よし信じる!」

「即答かいイッセーくん!?」

 

 煩悩に染まった一誠を信じさせることは容易かった。一誠はこういう悪魔だった…転生悪魔になってから誰よりも一誠と共に行動していたオカルト研究部もとい、リアスの眷属だったからこそ分かる。一誠の行動理念と底知れぬ力の原動力は、すべてハーレムを作るという煩悩から生まれるものなのだということを。

 

「ノォオオオオオオオアアアアアアアア!!!!」

 

 放射線状に光の槍が放たれ、怒号と共に遂に金鎖は引き千切れた。飛び散った光の槍と金鎖は凶器と成って牙を剥き、無防備なリアス達に降り注ぐ。既にケルベロス、フリード、そしてコカビエル達との連戦でボロボロのリアス達にはそれを防ぐ手立ては無かった。

 だがそこに、荒れ狂う水流が過ぎる。

 

Watery(水よ)

 

 津波は全てを飲み込んだ。金鎖の破片も、鋭利な光の槍でさえも、水流に触れた瞬間に慣性の法則を無視し、そのなにもかもを汚泥に変えて消滅させた。そして不思議なことに、水であるはずなのに独自の光の屈折による歪みを見せない水流はノアが聖剣で引いた(ライン)上に壁のように立ち上り、リアス達を守らんとしている。

 

「これは…あの時の見えない壁なのか…?」

「ちょっと違うな、俺の絶対防御は()()じゃない。これ以上被害を出す気は無いんでな、線を越えれば…あとは分かるな?」

「……ありがとう、ノア」

「礼には及ばんさ。あ、イッセー借りるぞ」

「だから俺こっち来てたのか!」

「トーゼンだ、お前も戦力に加えてる。聞こえてるかードライグ」

『何だ、久しいじゃねぇかノア』

「げっ、お前、何喋って…!」

「落ち着け落ち着け」

 

 どうどう、とノアが宥めて一誠の腕に発現している『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』に話しかける。

 

禁手化(バランス・ブレイク)は出来るか?」

『…代償が要るな。しかも時間は短い』

「ゲッ。ま、また腕とかやめろよ!?」

「代償か。なら、これでどうだ」

 

 『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の真上に腕を差し出す。ノアは聖剣『デュランダル』の切っ先を手首に添えて僅かな傷を作り、流れ出る血の一滴を籠手にある緑の宝玉に垂らした。

 

『おいやめろ! お前の血は結構ヤバ…Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) Over(オーバー) Booster(ブースト)!! 『赤龍帝の鎧』(ブーステッド・ギア・スケイルメイル) !!』

「うおぉおおおおお!? なんか台詞遮っちまったけど一気に禁手化(バランス・ブレイク)出来た!?」

「そりゃ聖人の血だからな、対価は十分。時間はドライグが言った通り短いだろうが大丈夫だろ」

『こンの阿呆が! 勝手に血を使って強制的に禁手化(バランス・ブレイク)させるのはもうやめろ! 何回やってんだよこの流れ!』

「ハハハ、悪い悪い。確かに普通であれば聖なる血は悪魔の身には応えるだろうが…龍であるドライグなら問題ないだろ。むしろ数十年来のカンフル剤になっていいじゃないか」

『いつも急過ぎるのが、お前の悪い癖だ』

「ってぇ…ドライグ、お前ノアを知ってんのか?」

『あん? 歴代の『赤龍帝の籠手』(ブーステッド・ギア)所持者と共に何度か会ってるからな』

「じゃあやっぱり本物のノアなんだな…」

「え? 今更?」

 

 ニィ、と頬を裂くような凄惨な笑みに思わず一誠は鎧の中で震えた。別に恐ろしいとかそういうわけではないが、あえて言うならリンクしているドライグが感じているノアへの苦手意識が伝播しているせいかもしれない。

 ノアと一誠が準備完了したと同時に、完全に金鎖を払い落としたコカビエルが憤怒の表情を浮かべ、四対の黒翼を羽ばたかせて宙に浮かび上がった。

 

「覚悟は出来ているかぁ!? ノォオオオオオオアアァアアアアアアア!!」

「うわー…あれガチなおこだよ怖」

「怒らせたの主にお前のせいだろ!?」

「そうだっけ?」

 

 ノアはとぼけつつも、迫り来る光の槍の連弾を形成した水の矢で迎撃する。対消滅させる矢の威力は、とても片手間に撃つものではないと流石の一誠でも分かることだった。

 

「さて、終幕と洒落込もうぜイッセー。合わせろよ」

「共闘なんて初なんだが…」

「あいつボコったらリアスがおっぱい好きにしていいって」

「ちょっと!?」

「マジっすか部長!?」

 

 何を勝手なことを! とキツイ視線が突き刺さるのもなんのその、煩悩漬けの一誠に一番効く一言と、それを断ることが出来ないお人好しなリアスの人柄を利用するノア、神聖にして真性の外道である。ヒヒヒと笑いつつ、線の向こう側にいる朱乃と目を合わせた。

 初めから見ていたのか、それとも今気付いたのかは不明だが、目を合わせればこれほど鏡合わせな存在はいないということを否応無しに理解した。否、本当はもっと前から深層意識下で互いに確信していたのだ。

 

 同時に、全く違うとも。

 

 関係性は水と油。まさに液体という面では同じだが決して交わらない二物という関係性は、過去現在未来、どれほどの悠久の時が過ぎようとも変わることはないだろう。

 

「さて、そろそろ三分か」

 

 ぴ、と指が天を突く。

 

 前々から思っていた、確かに被害の拡大を防ぐのに結界は()()()()だ。

 

 だが、これから始まる戦争を前には些か小さい空間だ。

 

「 バベル バル ベル 」

 

 その時、ずっとノアを見ていた朱乃は気付いた。己に向けて、嘲笑とも、冷笑とも違う笑みを浮かべていることに。

 

「 バル バレル 」

 

 それは、自身を苛む呪縛であるはずなのに。

 

「堕ちろ神雷! 突き抜け天蓋!」

 

 どこか、惹かれる白い光があった。

 

「見よ! これがバベルの塔を襲った神の鉄槌だ!」

 

 

 虚空から発光する指先へと落下する稻妻。

 

 闇夜を斬り裂き視界を塗り潰す極光。

 

 空気を震わせ鼓膜を突き破る轟音。

 

 一陣の輝きは、天の頂きに昇らんとする愚かな人間に下した神の雷。

 

 

「 Ba la l(大 混 乱) ‼︎ 」

 

 

 それはそれは、(いくさ)の始まりに鳴り響く鐘に相応しい轟砲だった。

 

 

「さぁ! 愉しい愉しい戦争を始めようか! 人間と龍と堕天使の、たった三人だけの『小さな戦争』だ!」

 

 




 ※評価を付けて下さる方は今後の文章力向上のためにどの点が悪かったのか理由を添えて教えて下さい

(2015/07/21微訂正)
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