魔法科高校の立派な魔法師   作:YT-3

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どうも、1日も経たずに書き上げたYT-3です。
さて、ついに突入。ここから入学式編最後の山場です。

それではどうぞ。


第二十話 廃工場

 

「十文字さん、レオくん。お願いします」

『任せろ!』

 

 そして廃工場前。

 当然のように代表者の連絡先にも、工場のインターフォンにも反応がなく、ここに交渉の可能性はなくなった。

 

『ってナギくん!そこ邪魔!退いて!』

 

 そしていざ突入となった時、車の進む先にナギが躍りでるという作戦と異なる行動をしたのだ。

 

「大丈夫。そのまま全力で走ってきて」

『いや、全然大丈夫じゃないって!』

「あと、舌を噛んだり体を打ち付けないように、しっかり口を閉じて掴まっててね」

『え?』

 

 ナギの言葉を信じた十文字の運転で、車はもう目の前まで来ている。ここまで来てしまったら、ナギの言うことを信じるしかないと、車に乗っている全員が衝撃に備える。

 

「——【(フラン)(ス・バ)(リエー)(ス・ア)(エリア)(ーリス)】‼︎」

 

 そして、ナギの魔法により超圧縮空気の障壁が完成する。

 障壁は、車の前にジャンプ台のように展開され——

 

 ———車が空を飛んだ。

 

『『きゃああぁ!?』』

 

 端末からの悲鳴を聞きながら、ナギは瞬動で柵を飛び越える。

 その先には、タイヤの跡を地面に引きながら停車する車の姿があった。

 

「大丈夫ですか?」

『……あんなことしておいて、大丈夫?じゃないわよ!」』

 

 上級生も乗っていたので丁寧に聞いたナギだが、返ってそれが頭にきたらしく、エリカが怒鳴りながら降りてきた。最後の方は端末と本人からの声がシンクロしている。

 ナギは端末を切ると、相手からしたら急だったろう方針変更に謝った。

 

「ごめんね。でも、こうしなくちゃ問題になるから」

「どういうことだ春原?」

 

 このままだと頭に血が上っているエリカがナギを襲いかねないと、最年長の十文字が間に入る。

 

「どうもこうも、ボクたちはあくまで正当な権利に基づいて入ってきたところを攻撃されたので、反撃して鎮圧した、という名目で突入するんですよ。

 それなのに、正門を破壊して入ってきたから攻撃した、という大義名分を与えちゃダメじゃないですか」

「なるほど。なら、なぜ先の作戦会議の際にそれを言わなかった?」

「言いましたよ。でも、『突入方法ですが……』『車で正門から入ればいいだろう。相手の思惑に気づいていることを悟らせない方がいい』『ですが、その場合門は……』『こじ開ければいい。確か西城は硬化魔法が得意と言っていたな?』『それだと権利とかが……』『そのぐらい、後でどうとでもなる』って感じで全く聞かなかったじゃないですか」

「……そうだったか?」

「ええ」

 

 十文字の表情は変わらないが、その顔に冷や汗を幻視したのは、その場にいる全員だった。

 

「まあ、今はそれは置いておきましょう。

 それで、これからの計画には変更はないんだな?」

「うん。そうだよ。

 それじゃあ決めてあった通り、十文字先輩と桐原先輩は裏口からお願いします」

「うむ」

「応!」

 

 それでも、いざ実戦を前にして平常心に戻るのはさすがといったところか。

 桐原の方も、この中で一番意気込んでいると言ってもいいぐらい、戦意に満ちている。

 

「エリカさんとレオくん、幹比古くんは、ここで待機。正面から出ようとする人を、最悪でも食い止めて」

「食い止めるなんて言わず、全員やっつけちゃうわよ!」

「了解。トラップまでは調べる余裕はないけど、相手の位置が分かったら端末に送るね」

「……お、おう。ナギたちも、気をつけろよ」

 

 約1名、すでに消耗している者もいるが、それでも食い止めるだけの実力はある者たちだ。頼りにしても大丈夫という雰囲気は出している。

 

「屋外だから、狙撃には気をつけてね。

 それで、達也くんと深雪さんは、ボクと一緒に正面突破。いけるね?」

「もちろんだ」

「足手まといにならないよう気をつけます」

 

 達也たち兄妹にとっては、出来ることなら二人きりの方が『機密』を気にしなくてもいいので楽なのだが、友人との信頼関係を気にすると贅沢も言ってられない。『後付け』をうまく使って結果を出すしかない、と考えている。

 

「それじゃあ、ミッションスタート!」

 

 ナギの合図とともに、作戦が決行された。

 

  ◇ ◇ ◇

 

 ナギたち正面突入班の布陣は、先頭にナギ、中央に深雪で後方に達也の縦一列。

『知覚系魔法』を持つ達也を後方に据えることで挟み撃ちを防ぎつつ両サイドを警戒し。

 強力な干渉力を持つ深雪を中央に据えることで、解除の難しい魔法的トラップを、彼女を中心にした領域干渉で通りすぎる間無力化する。

 そして、ナギの役割は……

 

「それにしても、ナギのトラップ発見率は異常だな。一つ残らず事前に察知して、すぐに無力化出来る者はさっさとしていくぞ」

「そうですね。

 おかげで楽ができますし、安全といえば安全なのですが……。

 ナギくんはそんな技術を一体誰に教わったのでしょうか?

 あの、可愛らしい妖精達のような知覚系魔法も気になりますし」

「……いや。あれは『知覚魔法』と言うよりも『探知魔法』と言うべき代物だ」

 

 ナギが次々とトラップを解除していくのを尻目に、達也はその『眼』で解析したことを小声で妹に教える。

 

「探知魔法?それはどういったものなのですか?」

「簡単に言えば、一定範囲内の全エイドスデータのうち、特定の情報パターンがないかを検索し、該当があった場合に反応を示すようにした魔法だ。

 情報強化や俺の『眼』と違い、理解する必要はないから魔法使用者の負荷になりにくいし、そもそもナギは術式と検索するものを精霊に提供するだけで、情報の読み出しは精霊に任せているから負担はほとんどない」

 

 正確には術式も精霊が編んでいるのだが、それは彼の『眼』では視れないことだし、『精霊魔法』の真髄に関わることだ。分からないのも仕方がない。

 

「今回ナギが設定しているのは、火薬や爆薬に特徴的に含まれるパターンと、魔法式のように情報を上書きしているサイオン体、それとおそらくだが非活性状態の精霊の三種類。あの妖精のようなものは、魔法を発動している精霊の化成体だ」

「化成体、ですか?」

「化成体と言うのは古式魔法の一種で、霊的エネルギーである精霊を可視化させようとしたものだな。光波振動系で幻影を作り、加重・加速・移動系魔法で肉体があるように見せかける魔法だ。

 だが、ナギのあれは正確には幻影を作っているだけだから、化成体擬きと言うべきか。

 ……しかしなるほど。俺は正直コストの高い意味のない技術だと思っていたんだが、ナギのように探知魔法で幻影のみに絞れば、魔法的なものを視覚で認識できるようになるのか」

「何事も使い方次第ということですね。

 あっ!ナギくん!吉田くんから敵の位置が送られてきました。次の角を左に曲がった先の扉の奥に十三人だそうです」

「了解。そこまでにトラップが……多分あと一つかな?

 感圧床で、多分踏むと爆発するから、先に無力化するね」

 

 そう言って解体作業に取り掛かる。

 加重系魔法で小さな刃を作り、次から次へとコードを切っていくさまは、軍で似たような訓練を受けている達也からしても熟練の技だった。

 

  ◇ ◇ ◇

 

「やあ、こんにちは」

 

 扉の前で達也の『知覚系魔法』で幹比古の情報の裏付けを取り、特に妙案もなかったため堂々と扉から入った三人に向けられたのは、いっそ清々しいと言ってもいいこの言葉と、ハイパワーライフルの銃口だった。

 

「司波達也くんと妹の深雪さん、それと友人の春原凪くんだね?

 私のことは知っているかもしれないけど、一応名乗らせてもらうよ。ブランシュ日本支部リーダーの(つかさ)(はじめ)だ」

「御託はいい。武器を置いて投降しろ」

 

 そう言うと、達也はCADを向ける。

 まるで銃口など見えていないかのような立ち振る舞いに、司一は苦笑を漏らした。

 

「堂々と扉から入ってきたことといい、ずいぶん肝が据わっているんだね。

 でも、それは勇敢なんじゃなくて蛮勇だよ。

 この銃があるのが見えないのかい?対魔法師用のハイパワーライフルだ」

「それがどうした」

「つまり、魔法が苦手な君はもちろん、例え一年生トップの君の妹であろうとも、弾を防ぐことは無理だということだ。

 そっちの春原くんのほうはかなり強力な障壁を張れるみたいだし、ただのマフラーで弾くなんてバカげたことをしてのけたけど、それに期待するのはやめておいたほうがいい」

「ほう?何故だ」

 

 達也は『マフラーで弾く』あたりで驚きの表情を見せたが、それよりも目の前の男が妙に自信に満ちていることが気になったのだろう。続きを促した。

 

「簡単なことだよ。アレだけ強力な障壁を、何の準備もなしで展開できるわけがないし、もし既に準備を終えているとしても、いつまでも展開し続けることは無理だろう?

 マフラー弾きのほうも簡単だ。彼は今マフラーをしてきていないし、そもそも『弾く』なんてものを室内で使ったら跳弾が怖い。当人以外を守ることもできないだろう」

 

 実際のところ、『(クラテ)(ィステ)(ー・ア)(イギス)』を維持する魔力量よりも自然回復する量のほうが多いため、半永久的に展開することが可能だが、これはナギとエヴァたち以外誰も知らない事実だし、常識的に考えてありえないことだ。

 

「さて、僕たちの優位性が確認できたところで、交渉に入ろうか?

 君たち、ブランシュに入らないかい?」

「俺たちに寝返れというのか?

 それは無理な相談だ。犯罪者に与するつもりはない」

「犯罪者じゃない、革命家だよ。

 総じて優れた革命家は、時の政府に犯罪者扱いされる。そこに真の正義があるにもかかわらず」

「そんなこと、どちらでもいい。

 大体、お前たちは反魔法師団体だろう?何故魔法師見習いの俺たちを勧誘する?」

「それは勘違いだ。僕たちは『現行の魔法師社会』に反対しているだけで、魔法師そのものは否定していないよ。

 現に、一高に行った彼らの中には、一高を受験して落ちた人や古式魔法師の人もいただろう?

 今の魔法師社会の問題は十師族だ。彼らが、自分たちの利権のために魔法師の数を絞り、古式魔法師と歩み寄ろうとしないせいで、国内の足並みが揃わない。それでは外国にすぐに置いていかれてしまう!

 だからこそ、君たちを勧誘しているのだよ。十師族至上主義、引いては魔法力至上主義に風穴を開けられる人材である君たちを!」

 

 司一は、それこそ自称している革命家のように自らの意見を述べ、堂々とした物言いで達也たちを勧誘する。

 

「……なるほど。確かにお前の言うことも一理あるかもしれない」

 

 それは、甘い甘い蜜のようで……

 

 

「だが、何度も言わせるな。俺たちはお前に与するつもりはない」

 

 

 それでも、達也を動かすには至らない。

 

「……それはまた、どうしてだい?」

「どうしても何も、俺たちは()()生活を案外気に入っているんだ。

 大体、自分の言っていることが正しいと思うなら、選挙にでも出て政治家になればいいだろう?この国は独裁政治じゃないんだ、発言の自由は保障されている。

 それなのにわざわざ武力行使に出た時点で、お前に共感する理由もなくなった」

 

 そう言って、改めてCADを構え直す。

 

「もう一度だけ言う。大人しく武器を置いて投降しろ」

「……はぁ。交渉で穏便に済ませることは出来なかったか」

 

 司一は、そう言うと眼鏡に手を掛け——

 

「ならば、無理にでも我が同士に——」

 

 サイオンが爆発した。

 

「使い古された手品だな。眼鏡を放り投げる動作で視線を集め、その隙に逆の手でCADを操作する。

 僅かに視えた起動式から察するに、光波振動系の(イビル)(・アイ)か?人間の認識限界を超えた間隔で、催眠パターンの光信号を点滅させて洗脳し、意識干渉系の系統外魔法だと謳っていたものだ。確か、新ソビエト成立前のベラルーシで研究されていたものだったか?」

「……なるほど、起動式が読めるというのは事実らしい。

 それに、今のは術式解体(グラム・デモリッション)だね?」

「ほう?ただの阿呆ではないらしいな」

 

 そう。達也は司一が不意打ちで食らわせようとした催眠魔法を、対抗魔法で撃ち抜いたのだ。

 

「なるほど。まさか術式解体(グラム・デモリッション)を実用化しているとは、その自信にも理由があったらしい。

 そうなると、ここで事を構えるのは些か不利かな?」

 

 そう言うと、急に背後に振り向いて走り出す。

 それと同時に、残り十二人が引き金に指をかけた。

 

「深雪!ナギ!」

 

 達也がそう叫ぶのと、引き金が引かれたのは同時だった。

 

「なんだ!?」

「なんで弾が出ねぇ!?」

 

 当然、達也だけが話に参加して、深雪とナギは何もしていなかったわけではない。

 深雪が、C()A()D()()使()()()()発動した魔法は、振動・減速系の『凍火』(フリーズ・フレイム)。対象物の保有する熱量を一定レベル以下に抑制する魔法である。

 それによって燃焼を封じられた弾丸は、火薬に引火することもなくただ沈黙するのみとなった。

 

 そして、扉の前での役割分担の通り、達也が時間を稼ぎ、深雪が銃の発射を防いだ相手を、ナギが拘束する。

 

術式・解凍(アギテ・エクストラティオー)!」

「なっ!?ぐわっ!」

「い、いつのまに!?」

 

 深雪の魔法により混乱していたブランシュ構成員たちは、ナギが密かに設置していた魔法陣から放たれた帯に巻きつかれ、身動きが取れなくなった。

 

「よくやった、深雪、ナギ」

「ありがとう。でも、首謀者を逃しちゃった」

「それは仕方がないだろう。あのタイミングで逃げ出すことは予想ができないし、ナギのそれが設置型だということを聞いて作戦をたてた俺のミスでもある。

 それに、外に逃がしたというわけでもない。ナギの用意したマップによると、この先は研究区画で行き止まりになっている。捕まえるチャンスはまだあるさ」

「そうだね。でも、例の護衛がここにいないことが気になるんだ。

 情報によると、中学生ぐらいの女の子らしいけど……」

「こいつらの中に女はいないな」

 

 つまり、まだ本格的に殺すつもりで来ていたわけではなく、なんらかの手段で達也たちのことを確認して、本当に勧誘に来たということだろう。

 

「まあ、それは行ってから考えればいい。

 まずは、ここにいる奴らを気絶させよう」

「そうだね。結構その場凌ぎで組んだから、10分ぐらいしかもたないし」

「いえ、それは私にお任せください」

「深雪?」

「ナギくんの感じている嫌な予感が当たっていて、先に十文字会頭と桐原先輩が着いてしまったら、万が一があります。

 お兄様とナギくんは先に行って、あの男を追いかけてください」

「でも……」

「分かった。すぐに終わらせて追いついてこいよ。

 行くぞナギ。深雪なら心配は無用だ」

 

 そう言うと、達也は奥の通路へと足を向ける。

 ナギは僅かに逡巡すると、深雪の方を見ながら達也の方へ駆け出した。

 

「じゃあ深雪さん。お願いします!

 追いついてくるときは、トラップに気をつけて!」

「はい!分かりました!」

 

 そうして、部屋には深雪と男たちだけが残された。

 

「さて、どうしましょうか」

 

 男たちにとって不幸だったのは、深雪が、達也を傷つけようとした存在を許すはずがなかったということだ。

 

(パララ)(イズウ)(ェーブ)やハイバネーションジェイルですと効果が切れたときが不安ですし……。ナギくんとの約束もありますから殺してしまうわけにもいきません」

 

 そのまま十数秒間考えて、結論が出たのだろう。

 深雪がCADを操作すると、男たちの意識が遠のいていく。

 

「とりあえずMIDフィールドで気絶させて、武装解除したら両手両足をまとめて、氷漬けしてしまいましょう」

 

 まるで、ゴミ掃除をしているかのような気軽さで、男たちの意識を落としていく。

 

「そのまま何時間も放置していたら壊死してしまうかもしれませんが、そのぐらいは自業自得でしょう?」

 

 そして、天使(あくま)の笑顔とともに、男たちは意識を手放した。

 

  ◇ ◇ ◇

 

「達也くん!深雪さんを置いてきて本当によかったの?」

「ああ。深雪なら問題はないはずだ」

 

 二人はそう言いながら、トラップの仕掛けられた通路を駆ける。

 いちいち解除している時間が惜しい。

 飛んで、跳ねて、ときには壁を走って。当たらないトラップは無視して走り抜ける。

 

「それよりも、そろそろ最奥部だぞ」

「……そうだね。深雪さんを信じるしかないか」

 

 そして、二人は最後の扉に辿り着く。

 すでに、幹比古からの情報と達也の『知覚系魔法』で、この奥には二人しかいないことが分かっている。銃器も持っていない。

 躊躇う理由も無く、二人は扉を開け放った。

 

「やあ、また会ったね」

 

 この部屋は、元はこの工場のバイオ燃料研究の中枢だったのだろう。壁は分厚いコンクリートに覆われ、天井のブルーライトだけが灯りをともしている。

 しかし、その機械は全て運び出され、今はただ広い空間があるだけだ。大体、平均的な体育館の二分の一ぐらいか。

 

「まさか、あの状況で怪我の一つもないっていうのは驚いたよ。

 妹さんは……その様子だと怪我とかをしたってわけじゃなさそうだね。彼らを完全に無力化するために残ったのかな?」

「そんなことはどうでもいい。

 もう一度だけ言う。大人しく武器を捨てて投降しろ」

 

 そこに、先ほど逃した司一と、もう一人、チャチャゼロが気をつけるように言っていた少女がいた。

 確かに、その立ち姿を見ただけでもかなりの使い手だということが分かる。その上、その気配がすごい。ナギの前世での教え子たちの、上位に匹敵するほどの圧力がある。

 だが、ナギは何かが意識の狭間に引っかかっていた。

 

(なんだろう?なんで彼女のことを危険だと、本能が訴えてくるんだ?)

「投降?」

「そうだ。

 先程、仲間から連絡があった。別働隊も、待ち受けていた部隊を一人残らず無力化した。

 あと残っているのは、お前たち二人だけだ」

「へえ、そうなのかい?さすがは『十文字』、と言ったところかな?」

 

 達也から仲間が全滅したということを聞いても、まるで動揺した様子も無い。それだけ後ろの少女の力をを信頼しているということだろうか。

 

「まあ、全て予定内さ。

 あの部隊で殺せればそれで良し。ダメだとしても、ここで全員殺して仕舞えばいい」

「なに?」

(どうしてボクも、彼女ならそれが出来ると分かるんだ?)

「何せ彼女は……ああ、丁度いいところに。ほら、お仲間が来たよ」

 

 そう言われて司一のすぐ後ろの壁を見た二人の目に入ってきたのは、壁から生えてきた刀だった。

 恐らく、桐原が回り道が面倒になり、壁を切り抜いて道を繋げようとしているんだろう。

 そして、司一ともう一人はそれを止める気配も無く、目の前で壁が切り払われるのを眺めていた。

 

「おう、春原に司波兄。先に着いてたか」

 

 そして予想通り、壁に空いた穴から桐原と十文字が出てきた。

 桐原はその場にいた残り二人を睨みつけると、達也たちに問いかける。

 

「それで。どっちが壬生を誑かしやがった奴だ?」

「恐らく男の方だと。先程洗脳用の魔法を使われかけました」

「そうか、テメェが壬生を……」

 

 桐原が、刀を握る手に力を込める。

 しかし司一は、囲まれていることをまるで気にしていないかのように、桐原を挑発する。

 

「壬生?ああ、そんな奴もいたね。捨て駒の中に」

「……テメェェェッ!」

「ダメです桐原先輩!」

 

 そして、桐原がそれに乗ってしまう。

 もう護衛の少女のことなど目に映っていない。持っている刀を振り上げると、斬りかからんと走りだす。

 

(このままだと桐原先輩は殺される!でも、十文字さんの障壁が、いや意味がない。……なぜ?)

 

 当然それは看過できないのだろう。少女が桐原と司一の間に入る。

 それにより少女に気がついたのだろう、もはや『殺さないように』が抜け落ちている桐原は、全力で刀を振り下ろす。

 

「そこをどけぇ!」

「……ふっ!」

 

 しかし、桐原の、しかも高周波ブレードを纏っている刀を、少女はその腰に帯びていた()()()刀で斬りとばす。

 それと同時に、驚愕しながらも桐原を守るために、桐原の後方で事態を見守っていた十文字が二人の間に物理障壁を展開する。

 

「なあっ!?」

「……」

(彼女はCADをしていないから現代魔法師ではない。武器はあの刀、おそらく野太刀一本だけ。

 …………()()()

 多少広いと言っても、室内で?)

 

 その瞬間。ナギの頭の中で何かが繋がった。

 

(古式魔法師もいる……現代魔法師に恨みを持つ……障壁は意味がない……野太刀……そして、退魔の剣(じゃくてん)

 …………まさか彼女は!)

「ダメだ!避けて‼︎」

 

 少女は、目の前の十文字の障壁とその向こうの桐原、回避を促すナギの悲鳴のすべてを嘲笑うかのように口を歪ませ、剣を構え、そして——

 

 

 

(ざん)(がん)(けん)———()()()

 

 

 

 ———防御不可能の銀閃が舞った。




今回は、あえて何も言いません。

それでは次回にお会いしましょう。
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