花妖怪は恋をする   作:『向日葵』

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はい、またもや思いつきです。……だもなぜか、今まで書いた小説の中で一番文字数多いというね:(っ`ω´c):!おかしいなぁ。

と、とにかく、花妖怪は恋をする、どうぞ!


花妖怪は好敵手に恋をする

「ほーらほら、どうしたのかしら?あなたの力はそんなもの?」

 

「ーーー殺す」

 

きん、っと。音が鳴り響く。殺意を持って、相手が相手を殺す音が。

 

だがそんな音ですら、今の私には……いや、『私達』には聞こえない。相手を殺すこと。ただただそれだけに集中している私達は、周りの音など気にしている余裕などないからだ。

 

……いや、私にはまだ全然余裕があるのだが、いちいち音など気にしては彼の刀で首を切られてしまうかもしれない。

 

「まったく、ほんとちょこまかと逃げるわね、あなたって人は」

 

「うっせぇよ、そもそも一撃でも当たれば死ぬ攻撃に、逃げようとしない奴なんていないだろうに」

 

あら、それはごもっともね。死んだら元も子もないし。これは一本取られたわ。……まぁ、命まで取られるつもりはないけど。

 

彼の鋭い太刀筋を愛用の日傘で拮抗していた私は、彼の横腹を狙って右ミドルを繰り出す……が、彼は後ろへ後退することでこれを回避。再び刀を構え、こちらを睨みつける。

 

 

ーーーこの戦いが始まって、実に一時間は過ぎようとしていた。

 

 

最初はただの遊技のつもりだった。戦いを挑んできた相手が人間だったから、拍子抜けしながらも、まだこの私、大妖怪『風見(かざみ) 幽香(ゆうか)』に挑もうとする人間がいたなんて、と驚きもしたが……所詮は人間、楽勝だろうと考えていた。

 

だが、結果はどうだ?

 

今現在も、私はこうして彼に有効打を一回も与えられていない。いくら本気を出していないにしても、この私が人間相手に、だ。

さすがの私も、これには彼に対する評価を改めるほかない。即ち、ただの人間ではない、と。

 

……興味の湧いた私は、今までの攻防でどう攻めようかと考えているのだろうか、未だに刀による構えをしたまま、少し離れた位置でこちらを警戒している彼に話しかけてみることにした。

 

「かなり研鑽を積んできたのね……その腕がありながら、一度も噂になることもなく、あなたは一体何処で何をしていたのかしら?」

 

そう、一番気になるのはそこ。彼なら人里で有名になるのはおろか、そこら辺の低級妖怪ならば話題で持ち切りになるほどの腕前を持っている。妖怪に知れ渡っているならば同じ妖怪たるこの私にも、かなり腕の立つ青年がいる、という話くらい伝わるはずだ。

 

……が、それがなかった。それが意味することは、つまり。

 

「……ふん。研鑽なら積んできたさ。幻想郷では知られてない場所、冥界でな」

 

やはり。彼の言葉を聞いて、考えは確信に変わる。

 

ここ、幻想郷では人里、ならびにごく一部の妖怪にしか知られてない場所、冥界。この私ですら、ただ冥界が幻想郷にある、という話しか聞いたことがなく、場所など検討もつかない。

そんな場所で修行すれば、妖怪など彼のことを知ることなどできないで当然だろう。人里もまた然り。納得納得。

 

……さて、と。いつの間にか私たちは殺し合うことを止め、お互いがお互いの出方を伺う、要は警戒状態に入っていた。これを機にと、私は彼に問う。

 

「人に知られず、妖怪にも知られず。そんなあなたが、なんで私を狙ってきたのかしら?」

 

「……俺の師匠が言っていたのさ。ここ、太陽の畑には、師匠をも超える化け物、風見幽香がいるってな」

 

「あら、それは光栄ね」

 

ここで、私には心当たりができた。彼の太刀筋、そして師匠という言葉。……数十年前、ここで彼みたいに喧嘩をふっかけてきた二刀流の半人半霊って種族の老人。確か名は……『魂魄(こんぱく) 妖忌(ようき)』といったか。やけに強く、いい戦いだったので、名を覚えている。

 

あの時は紫の邪魔があったから、殺し損ねたけど。なるほど、弟子、というわけか。道理でこの太刀筋に覚えがあったわけだ。

 

「俺は、俺の師匠こそが最強だと信じている。そして、その最強を超えて俺は、最強になる。……だからこそ、今は師匠より弱い俺があんたを殺して、師匠が負けたなんて嘘だって証明してみせるんだ!」

 

そう言って、彼はこちらへ向かってきた。妖忌のように二刀流ではなく、彼は一刀流。それはまあ、即ち。

 

「……見え見えね、太刀筋が」

 

向かってくる彼をよそに、ため息を吐く。

 

そう。彼が師匠の妖忌と違い一刀流なのは、二刀流をまだ完全に扱えていないということ。要は、妖忌より弱いのだ。まぁ、腕は確かだ。半人半霊より身体能力が大いに劣っている人間の身でありながら、ここまで戦える時点で、私が今まで出会った人間の中ではワースト五位に入るほどだ。

 

 

 

 

 

 

「……仕方ないわね」

 

 

 

 

 

 

気が済むまでお姉さんが相手してあげるわ、人間。……まぁ、それまでに私が殺しちゃいそうだけどね?

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

結果的に言えば、妖忌より弱い彼に私が負ける道理もなく、勝負は呆気なく方がついた。まぁ、私が本気を出しただけなのだが。人間相手に、大人気なかったかしら。だが本気にさせる彼が悪い。そう、彼が悪いのだ。逆に言えば、人間相手に私に本気を出させた彼に称賛を送りたいところだ。

 

ーーーあの後。私が本気を出した途端ボロボロにされた彼は、特攻覚悟で突っ込んできたのだが、そんな彼の上段を日傘でいなした私は、がら空きの彼の顔面に必殺の一撃を入れようとして……止められた。そう、紫に。理由は妖忌が悲しむ、そしたら幽々子も悲しむから、らしいが、まあ、つまり殺せなかった。

 

だが筋はほんとによかった。彼ならあと数十年すれば、本気の私相手でも一時間は持ちこたえられるかも……って、思ってたんだけど。

 

「……あなた、懲りないわねぇ。昨日あれだけボロボロにしてあげたのに」

 

「うっさい。黙れ。この妖怪女。俺はまだ負けだなんて認めていない」

 

刀を昨日と全く同じ位置で構え、こちらに敵意を向ける彼。……いやほんと、なんで来たのよ。普通あれだけぼこぼこにされたら懲りて来ないでしょうに。もしかして、そっちの気があるんじゃないだろうか?と疑ってしまうほどだ。

 

「……負けず嫌い?」

 

「よく言われる」

 

これ、妖忌も苦労してるだろうなぁ、なんて他人の心配をしてしまうあたり、私も腑抜けたものね。だって絶対面倒な性格してるでしょ、この子って。先が思いやられるわ。

 

「……はいはい、わかったわ。紫に殺すなって言われてるから、とりあえず半殺しで許してあげる」

 

「俺はお前を殺すがな」

 

やってみなさいな、人間。

 

構え、だなんて到底呼べないような構えをしながら、彼を笑いながら睨みつける。右手には日傘を持ち、戦いの準備は万全である。

 

「行くぞ、風見幽香!!」

 

「来なさいな、人間」

 

 

 

 

こうして、私と彼の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

例のごとく、ぼこぼこにしてやった。疑いの余地もなく、ぼこぼこに。一瞬これ死んでるんじゃ?と思うまでやったが、うん、すっきりしたわ。いいサンドバッグだった。

 

……さて。

 

「あなた、マゾ?マゾなのね?さてはマゾなんでしょ?」

 

「うっさい。黙れ。このドS女」

 

また来たわよ、この子。いやもうこれはマゾでしょ。昨日あれだけぼこぼこにされて、翌日によく来れるわね。ほんとにマゾでしょ。ゾクゾクするじゃない。

 

「ぼこぼこにやられるためだけに来てるのかしら?」

 

「ふん、その減らず口を今すぐ閉じさせてやる!!」

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

『……いや、ほんと、また来たの?』

 

『うっさい。黙れ。このドSおっぱい女』

 

次の日も。

 

『……最近、ちょっとあなたとの戦いが楽しくなってきたわ。ええ、愉快な意味で』

 

『うっさい。黙れ。このドSおっぱいババーーー』

 

また次の日も。

 

『あら、やっと来たのね。こう毎日来られると、まるで通い夫みたいよ?』

 

『うっさい。黙れ。このアルティメット・サディスティック・クリーチャー』

 

そのまた次の日だって。

 

『……今日は随分と遅かったわね?』

 

『うっさい。黙れ。この……って、なんでお前不機嫌なんだーーー』

 

 

 

 

……そして、時はあっという間に過ぎて、一年。

 

彼は、未だに戦いを挑んでくる。毎日、毎日。そしてコツコツと成長していく。その姿が、何故か嬉しかった。お母さんというのは、こんな気持ちなんだろうか。彼の成長を喜ぶなんて、一年前の私では考えられなかったわ。

 

 

ーーーいつの間にか、彼が来るのを毎日のように心待ちにしていた。

 

 

何故かはわからない。だがしかし、無性に嬉しくなるのだ。理由はどうであれ、彼が私に会いに来てくれるのが。ほんと、何故嬉しいのかはわからないが。あれだ。多分、今日はどのくらい成長してるのか、って考えるとワクワクするから、それだ。うん、きっとそう。

 

「……今日は、いつにもまして遅いわね?」

 

向日葵に囲まれた家の中で一人、そう呟く。

 

もう夜の十時は過ぎている。いつもなら早くて朝、どんなに遅くても日が沈むまでには姿を現す彼は、何故か未だに姿を現さない。

 

「……寝てるのかな?」

 

そんなわけない。妖忌がそれを許してはくれないだろう。紫に聞いた話だと、あそこは屋敷らしいから、掃除等もあるだろうし。必ず朝早くから起きているはずだ。

 

……じゃあ、なんで現れない?

 

「……」

 

……今日は、もう、寝よう。

 

 

 

 

 

❁❀✿✾

 

 

 

 

 

『……いや、ほんと、また来たの?』

 

『うっさい。黙れ。このドSおっぱい女』

 

次の日も。

 

『……最近、ちょっとあなたとの戦いが楽しくなってきたわ。ええ、愉快な意味で』

 

『うっさい。黙れ。このドSおっぱいババーーー』

 

また次の日も。

 

『あら、やっと来たのね。こう毎日来られると、まるで通い夫みたいよ?』

 

『うっさい。黙れ。このアルティメット・サディスティック・クリーチャー』

 

そのまた次の日も。

 

『……今日は随分と遅かったわね?』

 

『うっさい。黙れ。この……って、なんでお前不機嫌なんだーーー』

 

それから一ヶ月以上経っても。

 

 

 

 

……彼は、姿を現さなかった。

 

 

 

 

「ーーーなによ、私」

 

ここ数日、いや、ここずっとかもしれない。調子がおかしい。何もかもが狂いっぱなしだ。家でぼーっとしてる時が増えたし、何故か、無性にーーー寂しい、だなんて。思ってしまう、ことがある。

 

「何なのよ、私は」

 

たった一人、人間がここを訪れなくなっただけ。そうだ、毎日あそこまでボロボロにしたんだ。普通なら一日で来なくなる。来なく、なるはずだったのに……彼は、彼だけは。

 

 

『うっさい。黙れ。このーーー』

 

 

一年間で聞きなれた、彼の口癖、声音、姿、形……それらを、思い出して。ーーーまた無性に、寂しくなった。

 

「……名前、聞いとけばよかった」

 

彼の名前すら、わかってない。知らない。あれから紫も現れない。神出鬼没なスキマ妖怪の彼女のことだ、何処か外の世界にでも行ってるのだろう。……だから、会いに行くことすらできない。

 

「会いに、行く……?」

 

何を言ってるのだろうか、私は。会いに行って、行ったところで、何をする?また戦う?違うだろ、風見幽香。ほんとは気付いてたはずよ、私は彼と戦うことが嬉しかったんじゃなくて……私は、私は。

 

 

 

 

 

 

 

「負けず嫌いなら、私に、また会いに、来なさいよぉ……!この、ばかぁ……っ!!」

 

 

 

 

 

 

ーーー私は、彼と会えることが、嬉しかったんだから。

 

 

 

 

一度湧き出した感情を抑えることは難しく、ボロボロと涙が出てくる。寂しくて、切なくて。こんな感情自体抱くなんて思ってなかった私には、抑えるなんてことができなかったのだ。

 

なんで、彼と会えることが嬉しかったのか?それはもう、わからない。わかるはずがない。このモヤモヤとした気持ちなんて、わかるはずがないのだ。だって……そう、彼は。もう、ここには来ないんだかーー

 

 

 

 

 

 

 

『風見幽香ぁぁぁぁぁーーーー!!!』

 

 

 

 

 

 

「ーーーっ!!」

 

不意に、雄叫びが外から聞こえた。あぁ、そうだ。一ヶ月以上も前に、それはもう、毎日のように聞き飽きた声。それを聞いただけで、私の心臓の鼓動が高まる。

 

ーーーあぁ、なんだ。

 

 

今になって、やっとわかった。彼と会えることが嬉しかった理由。声を聞いた瞬間、窓から見える彼の姿を見た瞬間、わかってしまった。

 

 

 

 

そうだ、私は。風見幽香はーーー

 

 

 

 

 

「さぁ、今日こそお前を超えてみせる!!ここずっと、師匠とーーーって、あ、あれ?お前、なんで泣いてるんだ?」

 

「な、泣いてなんかないわよばか!!あくびしてただけ!!……もう、ほんと。いいから、来なさいな。どこまで強くなったか見てあげるわ、人間!!……それから、戦いが終わったら、名前を教えること!!」

 

 

 

ーーー絶対に負けないって目をしたあなたに……負けず嫌いな、あなたに。……恋を、してたんだ。

 

 

 

そう、今思えば、あの時から。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『く、っそが……ちくしょう、動けねぇ……』

 

『……ねぇあなた、なんで周りに咲いてある向日葵ごと私を斬らないの?何度かチャンスもあったはずなのに、あなたはいつもそれをしない』

 

『……斬れるわけ、ねぇだろ』

 

『ーーーへ?』

 

『太陽に向かって、一生懸命咲いててさ……前だけ向いて、自分をアピールしてやがる。そんなやつを……俺は、斬れない。斬れるはずがない』

 

『……』

 

『……だから、そんな花をここまで魅力的に咲かせるあんたには、尊敬してるところだってあるんだ。だってーーーこんなにも、綺麗なんだから』

 

『……ふ、ふん!ほ、褒めたって、何も、でないわよっ!?』

 

『何ニヤついてんだ、お前。気持ちわーーーぐふっ!』

 

 

 

 

 

 

『褒められたのは……認められたのは、初めてなんだから。ニヤついたって、いいじゃない……ばか』

 

 




どうでしたか?こんなゆうかりんも、いいではありませんか。さて、この一話で終わらせるか、続編考えてみるか……悩みますね:(っ`ω´c):。

あ、ついでになんですが。何か、こんなゆうかりん見てみたい!っていうのがあれば、メッセージにでも送ってくれれば、そこから作者がこれはいい!と思ったのを選んで書きますよ!え?つまりネタを提供しろって?い、いやいや、そんなわけないじゃないでございます(困惑)!!ついででいいですからね!

評価、感想、批評等、心よりお待ちしております。
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