話は短いのですが、そこは、その、すいません!!
「ーーー今の俺の目には、お前しか写っていない!!」
「ーーーっ!!ぬ、ぬぁ、うう……」
ーーー殺し合い。そう、これは殺し合い。
他でもない、私の命を狙ってくる彼と、そしてそんな彼から自分の身を守るための、そんな戦い。命のやり取り。わかっている。彼にはそんなつもりはない。そんなつもりで言っているわけではない。わかっている、はずなのに。でもーーーなんで、
「そんな勘違いさせるようなこと言うのよぉぉぉぉ!!」
「ぐあああああああああっ!!」
ただ今私こと風見幽香は、自分の命を狙っている彼に、絶賛片想い中なんです。
❁❀✿✾
「……あぁ、問題だわ」
我が家のリビング中央に置かれてあるテーブルの前で、椅子に座りながらそう呟く。
呟いたとおり、問題すぎる。問題すぎるのだ。よりによって、自分の命を狙う相手を好きになるなんて。おかげで動きは鈍くなるし、でも彼が私をまっすぐ見てくれるのは嬉しいし、そのせいで彼の言葉一つ一つに惑わされるし。
何よ、お前しか写っていないって。ジゴロか、お前は。天然女殺しか。
そんなツッコミを入れたいほどに、今の私は困っていた。困り果てていた。
そまそも、ことの始まりは妖忌だ。妖忌を倒しちゃったから、彼が来るようになったのだ。つまり、妖忌が全て悪い。うん、そうだ。正しくそのとおりだろう。……だなんて。
「現実逃避なんかしてても、意味、ないわよねぇ……」
はぁ、とため息をついて、テーブルの上に腕で頬杖をつく。どうしたものか、と悩んで、回答がわからないから現実逃避。何やってるのかしら、私は。
ーーー私は、彼が好きだ。
人間なんて、花のことをただただ綺麗だからと引きちぎって家に飾ったり、愛人に渡したりして自己満足する、花自身のことなど何も考えない種族って、そう思ってたのに……彼は、違った。
『そんなやつらを、斬れるわけないだろ』
彼は、戦ってる最中まで花達のことを考えていた。あの子たちのことを。多分、そこからだと思う。私が、彼を腕の立つ人間ではなく、『一人の男』として見始めたのは。
それからいつものように毎日彼はここを訪れて、それが当たり前になっていて……私はいつの間にか、彼が来るのを楽しみにし始めていたんだ。
なのに、彼は、ある日を堺に来なくなって。待っても待っても、彼をいくら待っても、姿を表してくれなくて。だから彼が一ヶ月以上ここに来なかった時、私は気付いた。気付いてしまった。
ーーーあぁ、私は、彼のことが好きなんだ、って。
「……はぁ」
気付いてしまったからには、もう自分の気持ちを偽れない。彼がここに来るのを楽しみにしていたのも、彼を見るたび嬉しかったのも、そう、全部彼が好きだったからだ。
だからこそこうして、深いため息をついてしまうのだ。だって、気付いてしまったから。無視、できなくなってしまったから。……私は一体、どうすればいいのだろうか。
「このまま戦いを続ける?」
そんなことしてたら、いつかは彼は死んでしまう。それでなくとも人間。寿命の問題だってある。でも、こうして戦い続けたところで、私は自分の想いすら伝えることもできず、また、彼から好きになられることもない。
「いっそのこと私がここからいなくなる?」
そしたら向日葵の世話は誰がするのよ。彼がするとでも?彼には彼の居場所があって、そこの世話があるのだ。……それに、ここから離れて彼の前からいなくなっても、私自身が悲しいだけだ。
「ままならないものね……」
自分自身で呟いた案を否定し続けるっていうのも、珍妙なものだわ。ほんと、どうすればいいのやら。解き方のわからぬ問題ほど難しいものはない。恋の方程式、なんてものがあればねぇなどと考えるが、そう甘くはない。
「……はぁ」
今日何度目になるかもわからないため息をつく。
自分の気持ちに気付いてから早一週間。この一週間彼と戦う度に、彼はまるで、口説いてるんじゃなかろうか、と勘違いしてしまうほどの言葉を口に出す。これもため息の原因の一つ。
『ふん、会いたかったぞ、風見幽香!一ヶ月以上もぶっ続けで修行したんだ、今日こそお前を倒す!』
『く、っそ!なんで当たらないんだ!俺のこの思いを受け止めろ!!』
『本気でこい風見幽香!俺の思いに応えろ!!』
そして終いには、俺の目にはお前しか写っていない発言。そんな数々の言葉を聞けば、そりゃ勘違いしちゃうっての。昨日も恥ずかしくて本気で殴っちゃったじゃない。なのになんで毎日毎日来れるのかしら……ほんとに人間?
『ーーー風見幽香ぁぁぁぁ!!』
……いや、人間じゃないわね。うん、今日、たった今確信したわ。あれ人間じゃない。絶対人間じゃない。
「ほんっと、よくもまぁ毎日毎日懲りずに……ふふ」
ほんと、なんでかしらね。毎日毎日、彼が来る度に笑っちゃうのわ。……答えなんて、わかっているけど。照れ隠しだ、これは。
玄関の横に置いてある愛用の日傘を片手に、今日も私は外に出る。この扉の外で私のことを待っているであろう、想い人の元へと。
ーーーじゃあ今日も、楽しい楽しい殺し合い(お話)でもしましょうか。
❁❀✿✾
とある冥界にて。
『師匠!!教えてほしいことがあります!!』
『ほぉ、なんだ、言ってみろ』
『ある化け物みたいな女を相手にしているのですが、あの顔を見ているといつもいつも胸の鼓動が収まらないのです!!これは一体なんなんですか!?』
『……ふむ、なるほど。詳しくは、私の口からは言えぬがーーー』
『ーーー斬ってみれば、わかる』
ゆうかりんが途中で思った、全部妖忌のせいよ、という現実逃避は、あながち間違いではございませんでしたまる!
評価、感想、批評等、心よりお待ちしております!!あと前回も言いましたが、ネタ提供などがあれば、軽い気持ちでどうぞ!!