ここまでやってガルドすらまだ倒してないのってうち位ではなかろうか……
でもなあ、色んな所でオリキャラを絡ませたいし…………
うーん、難しいですね。
「ここが我々のコミュニティで御座います。しかし本拠の館までは此処から更に歩かなければいけないのですがその辺りは御容赦ください。でもまあ、皆様には魔王との戦いの名残を見ていただきたかったのである意味丁度良かったとも言えるのですが」
「戦いの名残だと? 噂の魔王サマとの、か?」
「は、はい」
「丁度良いわ。箱庭最悪の天災が刻んだ爪痕、見せてもらおうじゃない」
実は飛鳥の機嫌はすこぶる悪かったりする。というのも、先程白夜叉に“お前では魔王とは戦えない”と断じられたのが心底気に入らないのだ。その辺りはプライドの高い彼女らしいと言えるだろう。
しかし飛鳥のそんな態度も長くは続かなかった。黒ウサギが開け放った門の先に広がる一面の廃墟を見たために。
「っ、これは…………」
「なんて渇ききった風なの…………命の息吹が全く感じられないなんて」
十六夜は木造の廃屋に近づき、転がっている木片を手に取る。しかし拾い上げた木片は砂細工の様に塵となって崩れていく。
「おい黒ウサギ、魔王とのギフトゲームがあったのは──────今から何年前の話だ?」
「はい、僅か三年前で御座います」
「たったの三年前? こんなの作物が一切取れない程の大飢饉が何年も続いたとしてもなかなかありえないわよ?」
「東雲の言う通りだ。この風化しきった街並みがたったの三年前のものだと?」
鈴香と十六夜がありえないと言うのも無理はない。ノーネームのコミュニティは数百年レベルの長い時間を掛けて緩やかに滅んでいったような有り様だったのだから。
「…………断言するぜ。俺が知る限りどんな力が振るわれ、ぶつかり合ったとしてもこの有り様はありえない。この木片なんてもはや砂の塊だ」
「バルコニーのテーブルの上のティーセットがそのままになってるわ。まるでついさっきまでいたはずの人が忽然と消え失せたみたい…………」
「生き物の気配が全くしない……普通なら整備されなくなった人家なんて獣の溜まり場になるのに…………」
「…………駄目ね。土地に活力が一切無い。まさしく命の枯れ果てた死の大地ね」
十六夜達の発する言葉も重くなっていく。そんな十六夜達に黒ウサギは目を伏せながらぽつぽつと言葉を溢していった。
「…………魔王とのゲームはそれほどまでに未知の戦いだったので御座います。彼の魔王がこの土地を敢えて取り上げなかったのは一つの見せしめなのでしょう。現に僅かに残った仲間達も皆心を折られ、コミュニティから、箱庭から去っていきました」
強大な力を持つ者が
皆が気を沈ませるなか、十六夜と鈴香の顔が歪む。
しかしその目に宿す感情は正反対だった。
十六夜は瞳に好戦的な光を灯し、鈴香はまだ見ぬ魔王に敵愾心を燃やす。
「魔王、か。ハッ、いいぜいいぜいいなオイ。想像以上に面白そうじゃねえか…………」
「魔王…………随分と舐めた真似をしてくれるじゃない。…………いつかその喉元を引き裂いてやる」
しかし宿した感情こそ違うものの、彼の魔王を打ち倒すという意思は共通していたのだった。
五人と一匹は廃墟を抜け、徐々に外観の整った空き家が建ち並ぶ場所に出る。ここは所謂居住区と呼ばれる場所だ。
と言っても無人の居住区に用事などあるはずもなく、一行はそのまま居住区を素通りしていった。
そして一行はこの先にあるという貯水池に向かった。
一行が貯水池に行くとそこで先程別れたジンが他の子供達と清掃用具を手に彼等を出迎えた。
「あ、皆さんお帰りなさい! 水路と貯水池の整備は終わってますよ!」
「御苦労様ですジン坊っちゃん♪ 皆も掃除を手伝いましたか?」
「黒ウサのねーちゃんお帰り!」
「眠たいけどお掃除手伝ったよ!」
「ねえねえ、新しい人達って誰?」
「強いの? カッコいい?」
「YES! とっても強くて可愛い人達ですよ。皆にも紹介するので一列に並んでくださいね」
黒ウサギはそう言うとパチンッ☆ とフィンガースナップを響かせる。すると子供達は一糸乱れぬ動きで横一列に並ぶ。
(マジでガキばっかだな。半分位は人間以外のガキか?)
(そ、想像以上に多いわね…………これで六分の一ですって?)
(…………私、子供苦手なんだけどな)
(ふふっ♪ 良いわね、皆可愛いじゃない)
各々が心の中で感じた事を呟く。それは子供が苦手であるとか可愛い子供だとか、様々である。
黒ウサギが一つ咳払いすると十六夜の紹介を始めた。
「右から逆廻十六夜さん、久遠飛鳥さん、春日部耀さん、東雲鈴香さんです。皆も知っている通り、彼等はコミュニティを支えてくれるプレイヤーです。ギフトゲームに参加出来ない者達はプレイヤーを支え、励まし、力にならなくてはなりません」
「あら、私は気にしないからもっとフランクにしてくれても」
「駄目です。それではコミュニティが成り立ちません」
「飛鳥、私のいた時代でも子供が働くことは珍しくないわ。これも必要なことなのよ」
飛鳥の申し出を黒ウサギと鈴香が厳しい声で遮る。
「鈴香さんの言う通りです。コミュニティはプレイヤーがもたらす恩恵によって成り立ちます。今から子供達を甘やかせばそれこそこの子達の為にならないのです」
「…………そう」
黒ウサギの有無を言わせない雰囲気に飛鳥も黙るしか出来ない。そして飛鳥達は悟った。自分達に課せられた責任は自分達が思っていたものより遥かに大きいものであると。
「此処にいるのは子供達の年長組です。何か申し付ける際はこの子達を使ってくださいな。皆も良いですね?」
「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」
黒ウサギの言葉に子供達が音響兵器もかくやというほどの叫びで返す。
「ハハッ、元気で良いじゃねえか」
「ふふっ♪ 子供達はこうじゃないとね」
「そ、そうね…………」
(…………本当にやっていけるのかな、私)
十六夜は子供達の様子にヤハハと笑い、鈴香は微笑ましいと笑顔を浮かべるが、飛鳥と耀はなんとも複雑な顔をしていた。
「さて、自己紹介も済んだ事ですし、水樹を植えましょうか。十六夜さん、ギフトカードから水樹を出していただけますか?」
「あいよ」
「かなり大きい貯水池ね。でも最近は使ってなかったみたいね?」
「はい、設置するギフトもありませんでしたから。三年前までは龍の瞳を加工して作ったギフトがあったのですが、それも魔王に奪われてしまいました」
それを聞いた十六夜の目がキラリと輝いた。
「龍の瞳? 何それカッコいいし超欲しい。何処で手に入るんだ?」
「さあ? 黒ウサギにも判りかねますね。知っていても十六夜さんには教えられませんけど」
十六夜の問い掛けを軽くあしらう黒ウサギ。仮に教えて龍に挑みに行かれては堪らないし、黒ウサギが知らないのは事実である為、教えたくても教えられないのだが。
「それでは今から水樹の苗を植えるので十六夜さんは屋敷への水門を開けていただけますか?」
「あいよ」
しかし思いの外、水樹から溢れる水の勢いが強く、水門を開けていた十六夜は驚いて叫ぶ。
「ちょ!? 少しは待てやゴラァ!! 流石にこれ以上は濡れたくねえぞオイ!」
慌てて跳躍するも再びずぶ濡れになった十六夜は忌々しそうに恨み言をこぼす。
「クッソ、また濡れた。こりゃ水難の相がマジであるんじゃねえか?」
「ふふっ、災難だったわね十六夜。慰めるついでに抱き締めてあげましょうか?」
「ケッ、茶化すなよ」
十六夜と鈴香がそんなやり取りをするなか、二人の横にいたジンが感嘆の声を上げた。
「……凄い!これなら生活以外にも水が使えるかもしれない!」
「何だ、農作業でもするのか?」
「近いです。水仙卵華などの水面に花のギフトを栽培すれば、ゲームに参加せずともコミュニティの収入になりますから」
「へえ? で、水仙卵華ってどんなのだ御チビ」
「す、水仙卵華とは別名アクア・フランとも呼ばれ、浄水効果のある亜麻色の花です。確か噴水広場にもあったはずです」
「ああ、あれか。なら一個位採っとけば良かったな」
「な、何を言うんです!? あれはギフトゲームのチップにも使われるんですから採ってしまえば犯罪です!」
「ガキのくせに細けえ事気にすんなよ御チビ」
ジンは十六夜の物言いに癪に障ったのか言い返そうとするが、十六夜の右手に制される。
「悪いが俺が認めない限り、お前の事を“リーダー”なんて呼ばねえぞ? この水樹だって気が向いたから貰ってきて、気が向いたから此処に
水樹に視線の送る十六夜にジン何も言えない。
「召喚された分の義理は返してやるが、果たした時にこのコミュニティがつまらねえ事になってたら、俺は躊躇う事無くコミュニティを抜ける。良いな」
「私も貴方達に見込みがないと判断すれば出ていくわ。あくまで私は貴方達を見届ける為についてきたんだから」
ジンは十六夜と鈴香が本気で言っているとすぐに悟った。だからこそジンは覚悟を決めるように強く言い返す。
「僕らは“打倒魔王”を掲げたコミュニティです。何時までも黒ウサギに頼るつもりはありません。明日のゲームで…………それを証明します」
「そうかい、頑張れよ。御チビ様」
「ふーん? 良いわ、やって見せなさい。特別に扇子は貸したままにしておくから」
ケラケラと軽薄な笑みを浮かべる十六夜に、あくまでも自分を試すような鈴香。ジンはただ手を握り締めるだけだった。
(明日のゲーム…………僕が頑張らないと)
四人は案内された屋敷で自分に宛がわれた部屋を確かめた後、来客用の貴賓室に集まっていた。ちなみに黒ウサギは暫く使われていなかった大浴場を見て、
「一刻程お待ちください! すぐに綺麗にしますので!」
と言って慌てて清掃に取り掛かった。どれだけ悲惨な有り様だったというのか。
『お嬢、ワシも風呂に入らなアカンか?』
「ああ、私もお風呂は人の姿を取れるまでは嫌いだったわね」
『おお! ねえちゃんは分かってくれるか! せやからお嬢』
「駄目。ちゃんと綺麗にしないと」
「ふーん? 聞いてはいたけどオマエは本当に猫の言葉が分かるんだな」
『オイワレ、お嬢をオマエ呼ばわりするとはどういう事や! 調子に乗っとるとお前の寝床を毛玉だらけにするぞ!』
「やめたげなさい」
「駄目だよ。そんなこと言っちゃ」
端から聞けばにゃーにゃーとしか聞こえないが耀と鈴香は普通に会話している。はっきり言ってかなりシュールである。
それからすぐに黒ウサギがやって来た。
「湯殿の用意ができました!女性様方からどうぞ!」
「そう、先に入らせてもらうわよ、十六夜君」
「気にすんなよ。女なら風呂好き位が丁度良いんだからな」
「私は最後で良いわ。ちょっとそれまで一眠りするから」
そう言って鈴香と十六夜は女性三人を大浴場に向かわせる。十六夜は寝入ったフリをする鈴香に目を移すと声をかけた。
「さてと…………今のうちに外の奴等と話をつけておかないといかないよな。東雲、お前もそう思うだろ?」
声を掛けられた鈴香は片目をパチリと開いて十六夜に答える。
「ええ、招かれざる客にはお帰り願わないと、ね」
十六夜の月が辺りを照らすなか、十六夜は子供達が眠る別館の前で仁王立ちするかのように腕を組んで立っていた。ちなみに鈴香は別館の壁に寄りかかっている。
「おーい…………そろそろ決めてくんねえか? 俺が風呂に入れねえだろうが」
「そうね。ここを襲うのか、襲わないのか、いい加減はっきりしてほしいわね」
それでも何も反応を示さない連中に十六夜は呆れた様子で小石を拾い上げ、木陰に向かって軽く投石する。
しかしたったそれだけで爆撃と見紛う程の衝撃が周囲を襲う。そして十六夜の投石によって吹き飛ばされた人影が瓦礫と共に落ちてくる。
「ど、どうしたんですか!?」
別館から何事かと慌てて出てきたジンが十六夜と鈴香に問う。
「侵入者よ。大方フォレス・ガロの奴等でしょうね」
意識の有る者達はよろよろとかろうじて立ち上がる。
「な、なんというデタラメな力!…………蛇神を倒したというのは本当だったのか」
「…………これならガルドの奴を倒せるかもしれない!」
「ホラ、さっさと要件を言えっつってんだろうが」
十六夜が鬱陶しそうに言うと侵入者達は意を決して頭を下げて頼み込む。
「恥を忍んで頼みたい! 魔王の傘下であるフォレス・ガロを完膚なきまでに叩き潰していただけないでしょうか!」
「嫌だね」
「断るわ」
彼等にとっては決死の想いで発した言葉を軽く流され、彼等は絶句し、固まってしまった。
「どうせお前らもガルドに人質を取られていて、今回も命令されてガキ共を拐いに来たんだろう?」
「は、はい。その通りです。その為我々はガルドに逆らうことも出来ず」
「あら、そうなの。でも既に人質はこの世にいないわ。残念だったわね」
「なっ…………」
「鈴香さん!!」
ジンが慌てて割って入ってくる。しかし鈴香だけでなく十六夜も冷たい声音で接する。
「隠す必要があるのかよ? お前らが明日のギフトゲームに勝てば知れ渡る話だろうが」
「それでも言い方があるでしょう!!」
「ハッ、気を使えってか? うちのガキ共を拐いに来た連中に? 拐われれば例外無くガキ共は死ぬのに? 冗談キツいぞ御チビ様」
「全くよ。それに分かってる? 私と十六夜が此処に居なければ子供達は拐われてたのよ? そんな連中に気なんて使えるはずないでしょう」
そこでジンはようやく気づいた。人質を救うためと称して新たに人質を拐ってきたということは殺された人質の半分は彼等が殺したも同然である事に。そしてもう少しで自分の友人達が死ぬところだったという事に。
「俺からすればコイツらもガルドも大差ねえよ。そんな奴に頼まれてまで悪党狩りなんてする気はねえぞ」
「そ、それでは、本当に人質は」
「はい、ガルドは人質を拐ってきたその日の内に殺していたそうです」
「そんな…………」
彼等は聞かされた事実に膝から崩れ落ちる。なかには誰かに対して謝りながら泣き崩れる者も見受けられた。
そんな彼等を見て、十六夜が何か思いついた様にニタリと笑う。
「お前ら、フォレス・ガロが、ガルドが憎いか? 叩き潰されてほしいか?」
「勿論だ! 今まで俺達がどんな目にあってきたか……」
「そうだろうなぁ。人質を取られた上で顎で使われて来たんだろう、奴等を憎んで然るべきだ。だがお前らにはガルドを倒す力がないと」
「十六夜?」
「ア、アイツはあれでも魔王の配下なんだ、ギフトの格も遥かに上なんだ!とてもではないが俺達では……それに万が一勝てても魔王に目を付けられたら」
「確かにな。だが、その魔王を倒す為のコミュニティがあるとしたら?」
その場にいた全員が十六夜に視線を向ける。十六夜はジンの肩を掴むと爆弾発言を落とした。
「このジン坊っちゃんが魔王を倒す為のコミュニティを作ると言っているんだよ」
「! そういうことね」
十六夜を除いた全員が困惑するなか、十六夜の意図を理解した鈴香がニヤリと笑う。
「魔王を倒す為のコミュニティ? そ、それは一体?」
「言葉の通りよ。私達は魔王のコミュニティ、又はその配下のコミュニティから全てのコミュニティを護る」
「そして護られたコミュニティは口を揃えてこう言ってくれ。“押し売り・勧誘・魔王関係お断り。まずはジン=ラッセルに御問い合わせください”ってな」
「じょ、」
冗談でしょう!? と言おうとするジンの口を鈴香と十六夜が塞ぐ。既に十六夜だけでなく鈴香もノリノリである。鈴香はその目に作り涙を浮かべて失意の底に沈む彼等に対して熱弁を振るう。
「人質の事は残念だったわね…………けど安心なさい! 明日ジン=ラッセル率いる精鋭が貴方達の家族の仇を取ってくれるわ! その後の心配もしなくて良いの。私達のジン=ラッセルが全ての魔王を倒す為に立ち上がったのだから!」
「おお…………」
十六夜と鈴香が大仰な口調で語る。そんな二人とその間にいる一人の少年に彼等は希望を見出だす。
「さあ、早くコミュニティに帰るんだ!」
「そして言いふらすの!」
「「我等がジン=ラッセルが魔王を倒してくれると!!」」
まるでカルト教団の洗脳演説である。こうなってはもう誰も止められない。
「わ、分かった。明日は頑張ってくれジン坊っちゃん!」
「ま…………待っ…………」
ジンの叫びも届かず、彼等の姿はあっという間に見えなくなった。
腕を解かれたジンは茫然自失となって膝から崩れ落ちた。
「良いね。なかなかやるじゃねえか。東雲」
「ふふっ♪ 貴方もね。十六夜」
ちなみにその後ろで十六夜と鈴香がガッチリと手を握りあっていたとか。
読んでいただきありがとうございます。