猫又少女も異世界から来るそうですよ?   作:グリアノス

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今回はリアルの忙しさも相まってなかなかの難産でした。

というわけで第14話です。





第14話 ペルセウスとのゲームだそうですよ?

「……………………これは初めての経験だわ」

 

レティシア、およびペルセウスとの一件の後、自室にて目を覚ました鈴香は今の自分の姿を見て頭を抱えた。

 

あれからどれだけ時間が経ったとか、

 

あの後話はどうなったのかとか、

 

体内の気の流れが乱れに乱れまくってるだとか、

 

妖気もいつもの半分位しかないとか、

 

気になる事はそれなりにあるが鈴香にとってそんな事は些細に思えた。何故なら、

 

「…………ええと、何百年前だったかしらね?」

 

白夜叉相手に妖気全開のガチバトルを繰り広げた影響か、鈴香は今…………

 

 

 

 

 

 

「子供の姿になるなんて」

 

 

 

 

 

 

それなりにあった背丈が縮み、女性らしい膨らみも消え失せていた。つまりロリ状態である。

 

まあ、早い話が幼女になった、というわけだ。ちなみに外見は大体十二才前後である。

 

「…………というかこれってどう説明しようかしら?」

 

鈴香は寝過ぎた事によって上手く働かない頭を回してこれからどうするかを考え始めた。が、その前に鈴香は自分の服装に目を向けた。

 

着ていた寝間着も袖はダボダボで手首から先が余っていて、肩から半ばずり落ち鈴香の健康的な白い肌が晒されておりそういう趣味の者から見ればまさしく堪らない姿。これでは考え事すら儘ならないと思い、一先ず着るものを探そうと立ち上がってこの部屋を出ようとする。

 

「…………まずは自分に合う服ね。これは十六夜達に見つからないように「鈴香さーん、お加減はいか、が……」あっ…………」

 

部屋を出ようとする鈴香だったが、そこにタイミングの悪い事に鈴香の様子を見に来た黒ウサギと扉の前で鉢合わせた。

 

声を掛けながら部屋に入ってきた黒ウサギは、ですか? とは続けられなかった。理由はずっと眠っていた彼女が目を覚ましていた、というのもあるがやはり彼女の姿が原因だろう。黒ウサギはただ口をパクパクと動かすばかりだった。

 

しかし全く以て来なくて良い時に限って来るのは彼の軍神に似ての事なのか、単に彼女の間が悪いのか判断に迷うところである。

 

「な、え、」

 

「あ、嫌な予感」

 

鈴香は黒ウサギの様子から自身の本能が警鐘を鳴らすのを感じた。このままだと碌なことにならないと。

 

しかしそれに従おうにも時既に遅く、

 

「ええええええええええええええええええええええ!!!?」

 

「うにゃあああああああああああああああああああ!!!?」

 

黒ウサギの絶叫が彼女の猫耳を襲った。黒ウサギの絶叫を至近距離で浴びた鈴香は普段出すことの無いような叫びを上げながらのたうち回る。

 

黒ウサギ程ではないものの鈴香の聴覚はそれなりに高い部類に入るのだが、そこで耳を塞ぐ前に至近距離で本拠の隅々まで響く程の絶叫を食らえばどうなるか。もはや言うまでもないだろう。

 

しばらくぶりに目覚めたというのに今度は同じコミュニティの同士に沈められた鈴香は黒ウサギの叫びを聞いて走ってくる皆の足音を聞きながら再び気を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

黒ウサギの絶叫を聞いて走ってきた十六夜、飛鳥、耀の三人は目を回して倒れている鈴香と、その鈴香を抱えながら謝り続ける黒ウサギの姿があった。

 

「おい黒ウサギ。どうして東雲がロリになってるんだとかコイツは何をしようとしてたんだとかなんかえらい眼福だなとか色々言いたいことはあるんだが、それよりコイツはなんで目を回して倒れてるんだ?」

 

「そうね。大方服でも探そうとしてたんじゃない? この格好では人前には出られないもの」

 

「……………………可愛い」

 

三人は口々に今の状況を語る。一名程、微妙にずれた事を言った者も居たが。

 

「まあなんだ、とりあえず原因はお前だとして」

 

「ええ、状況からして間違いないわね。というわけで」

 

「…………オシオキが必要、かな。そういうわけで」

 

「「「覚悟は良いか黒ウサギ」」」

 

口を揃えて死刑宣告を告げる三人を前に黒ウサギの顔はどんどん青ざめていく。

 

「あ、あの? 御三名様? か、顔が怖いのデスヨ? あ、え……フ、フギャアアアアアアアアアアアアアアアア!!!?」

 

そして再び本拠に黒ウサギの絶叫が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

鈴香が黒ウサギによって撃沈されてから一時間程で鈴香は再び目を覚ましていた。今この部屋に居るのは十六夜と鈴香と悲劇の元凶である黒ウサギの三人だ。ちなみに飛鳥と耀はギフトゲームに参加するために出掛けている。

 

鈴香は再び目を覚ました後、十六夜から自分が寝ていた間に何があったのかを聞いていた。鈴香はそこで自分が丸々三日間眠っていたのと、あの騒動から一週間後、つまりは四日後にペルセウスとのゲームがあることを知った。

 

…………ついでに自分が黒ウサギ共々ゲームの景品にされた事も。

 

「まあなんだ、災難だったな東雲」

 

「…………ひどい目に遭ったわ。白夜叉のところで良いものがあるか探してみようかしら」

 

十六夜と鈴香は部屋の隅で太ももに石を乗せて正座している黒ウサギにじっとりとした視線を向けながら言葉を交わす。黒ウサギは既に一時間以上もこのままのために目の端に涙を滲ませながら震えていた。

 

「で、目覚めたのは良いがお前はなんで縮んでるんだよ?」

 

「…………さあ?」

 

「あ?」

 

「嘘ですごめんなさいふざけすぎましたよく判らないけど起きたらこうなってました恐らく白夜叉との喧嘩で力を使いすぎたのが原因だと思われます」

 

鈴香は自分でもよく判らないのもあって曖昧に言葉を濁そうとするが、十六夜が割と本気で睨んできたため直ぐに手のひらを返して判る範囲で説明する。

 

流石に今の弱ったこの身で規格外極まりない十六夜と喧嘩など御免なのだ。

 

「…………はぁ。で、どうするんだ?」

 

鈴香の変わり身に十六夜は一つ溜め息を吐くと鈴香に対して今後の方針を確認してきた。鈴香にこのような変化があって以前と同じように戦えると思うほど十六夜は呑気ではないために。

 

いつもの軽薄な笑みを消して真剣な眼差しを向ける十六夜に対して鈴香はなんでもないかのように答える。

 

「とりあえず今出せる力は今までの半分程度ね。体内の気の流れも乱れてるから仙術も使えないわ」

 

「…………思ったより良くねえな」

 

十六夜は自分と同等以上に戦える鈴香の弱体化が想像以上に激しい事に対してどうしたものかと思案する。

 

「大丈夫よ。私に考えがあるわ」

 

「考えだと?」

 

「この機会に私のもうひとつのギフトの“祀り神”について、つまり神格の使い方を教わっておこうと思うのよ」

 

「神格の使い方ねえ? 世界の果てにいるあの蛇にでも教わるのか?」

 

十六夜は鈴香の考えを聞いて悪くないと感じるが、同時に一つの問題点を指摘した。

 

自分が知る限り神格を持っているのはトリトニスの蛇神くらいなものである。しかし言葉にこそしたもののトリトニスの蛇神ではどうにも力不足感が否めない、鈴香が誰に教わるつもりなのかはっきりと聞いておく必要があると十六夜は思っていた。

 

「違うわ。もっと神格に通じる人がいるじゃない」

 

「……………………そんな奴居たか?」

 

「白夜叉よ。白夜叉はあの蛇神に神格を授けたらしいし、神格にも詳しいでしょ。それにこういうときは自分より長く生きてる人に教えを乞うのが一番なんだから」

 

「…………それもそうか。確かにアイツなら問題ねえだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、二人揃って私の所にやって来たと。しかしなんだ、おんしは随分と可愛らしくなったな?」

 

「用件についてはその通りね。後、姿に関してはあまり言わないで頂戴」

 

「俺からも頼む。あのお坊っちゃんに負けるつもりはねえが、それでも打てる手は打っておきてえんだよ」

 

「うーむ、協力自体は吝かではないのだが、おんしらは今ペルセウスとのゲームを控えておるしあまり手心を加えるわけにもいかんのだ」

 

ところ変わって鈴香と十六夜は白夜叉を訪ねてサウザンドアイズに来ていた。理由はもちろん神格について白夜叉に師事するためだ。しかし今回、ノーネームの戦う相手は曲がりなりにも自身の所属するコミュニティの同士であるため、白夜叉もなかなか首肯できないでいた。

 

故に鈴香は手札を一枚切る事にする。…………多少の屈辱は覚悟の上で。

 

「…………なら、叶えられる範囲でなんでも言うことを聞きまし「そうか! 私もできる限り協力しよう!」頼む相手を間違えたかしら?」

 

「東雲、一つ良いことを教えてやるよ。ああいう奴にそれは一番言っちゃいけねえってな」

 

「………………………そこまで?」

 

「ならあっち見てみろ」

 

鈴香は十六夜の示す方向に目を向けると同時に顔をひきつらせた。

 

「ふーむ、この衣装が良いか……ああいや、こちらも捨てがたいの……」

 

そこにはほんの少し目を離した間に大量の衣装を持ち出してきて、どれが良いか吟味している白夜叉の姿があった。白夜叉の持ち込んだ衣装は様々なジャンルを取り揃えており、白いワンピースのような清楚なものからちょっと、いやかなりきわどい水着なども見受けられた。着せる相手? 勿論鈴香である。

 

「……………………本格的にしくじったかしら」

 

「だろうよ」

 

「…………ねえ十六夜、今すぐ帰り「よし、ではおんしには先ずこれを着てもらおうかの!」…………なんでもないわ」

 

鈴香は十六夜に対して今すぐ帰ろうと持ちかけるが白夜叉がこちらに向き直った事で逃げられないと悟る。願わくば酷い事にならないのを祈るばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして四日間という時間あっという間に過ぎてペルセウスとのゲーム当日となった。今回ゲームに参加する十六夜、飛鳥、耀、鈴香、テオ、リーナ、ジンと審判を任された黒ウサギの八人はペルセウス本拠である宮殿前に来ていた。が、鈴香はゲーム前から既に満身創痍である。飛鳥は一体何があったのかと鈴香に聞くが、

 

「え、えーと、東雲さん? だ、大丈夫なの?」

 

「……ええ、問題ないわ。ただ何があったのかは聞かないで頂戴……」

 

「…………そ、そう」

 

虚ろな目をしながら言われては何も言えないし、聞けなかった。飛鳥は本当に何があったのかと思いながら鈴香からそっと目を逸らした。

 

まあ、敢えて語るなら、

 

 

 

 

「それも似合うではないか! では次にこれをだな……」

 

「もう勘弁してよ!? 十六夜、貴方もなんとか言ってよ!!」

 

「そうだな。おい白夜叉……………………超グッジョブ」

 

 

 

 

 

というわけである。

 

この四日間、ある意味自分以外に味方のいない状況での修業は鈴香にとって困難などと言うには生ぬるいものだった。鈴香自身、困難や苦境は成長を促すと思っているが、こんな形で思い知るとは思ってもみなかっただろう。

 

神格について理解を深められたとはいえ、あの時は地獄だったと鈴香は後に語った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、肝心のゲームがこれか」

 

十六夜は壁面に張り付けてある契約書類を読み上げる。

 

 

『ギフトゲーム名 “FAIRYTALE in PERSEUS”

 

・プレイヤー一覧

 

逆廻十六夜

 

久遠飛鳥

 

春日部耀

 

東雲鈴香

 

テオ=クライン

 

リーナ=クライン

 

・“ノーネーム”ゲームマスター

 

ジン=ラッセル

 

・“ペルセウス”ゲームマスター

 

ルイオス=ペルセウス

 

 

・クリア条件

 

ホスト側のゲームマスターを打倒

 

・敗北条件

 

プレイヤー側のゲームマスターの降伏

 

プレイヤー側のゲームマスターの失格

 

プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合

 

 

・舞台詳細・ルール

 

*ホスト側のゲームマスターは白亜の宮殿の最奥から出てはいけない

 

*ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない

 

*プレイヤー達はホスト側のゲームマスターを除く人間に姿を見られてはならない

 

*姿を見られたプレイヤーは失格となり、ゲームマスターへの挑戦権を失う

 

*失格になったプレイヤーは挑戦権を失うだけでゲームそのものは続行できる

 

 

宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します

 

“ペルセウス”印』

 

 

 

「…………なるほどな。姿を見られたら失格、つまりペルセウスを暗殺しろってことか」

 

「流石に伝承通りに眠っているとは考えづらいですよ。あの様子を見る限り油断は有り得ないと思います」

 

「YES。それにルイオスよりまず先に宮殿を攻略しなければなりません。不可視のギフトを持っていない以上、綿密な作戦が必要なのですよ」

 

今回のギフトゲームはギリシャ神話のペルセウスの伝説に一部倣ったものだ。ホスト側に見つかってはならないというルールに飛鳥は難しい顔をする。

 

「見つかるとゲームマスターへの挑戦権を失う。なら大まかに三つの役割分担が必要かしら」

 

飛鳥の隣で耀が役割分担について補足する。

 

「うん。まず、ジンと一緒にゲームマスターを倒す役割。次に索敵、不可視のギフトを持った敵を迎撃、撃破する役割。後は敢えて失格になって囮、露払いをする役割、だね」

 

「索敵は五感に優れる春日部が適任だな。黒ウサギが審判としてでしか参加できない以上俺と東雲が奥に行ってあのお坊っちゃんを叩き潰すのがベストだろうよ」

 

「なら私は囮と露払いをしろって事?」

 

少し不満げな声を漏らす飛鳥をよそにテオは黒ウサギに声を掛ける。

 

「黒ウサギ、ちょっと良いか?」

 

「なんでしょうか?」

 

「確認なんだが、姿さえ見られなければ(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)良いのか?」

 

「その通りなのですよ。それが何か?」

 

「ああいや、すまない、聞き方が悪かった。そこに居るのが(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)分かっていても(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)姿自体を見られなければ失格にならないのかって聞きたかったんだ」

 

「問題ないと思われますが……」

 

何故こんな事を聞くのかと黒ウサギはテオの真意を図れずにいた。宮殿の攻略法は十六夜達の言うように役割分担をして進むのが正しいと思っていたのに、テオにはそれ以外の手段があるかのようだった。

 

「なら皆、面白い策があるんだが乗るか?」

 

「「「「「「「面白い策?」」」」」」」

 

テオの言葉に皆が一斉に聞き返す。テオはニヤリと笑って言う。

 

「ああ。恐らく誰もしたことのない方法だ。ペルセウスの連中の度肝を抜いてやろうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、宮殿内では装具を纏った騎士達がノーネームを待ち構えていた。皆、気合いに満ち溢れていて今なら如何なる相手にも負けないといった様子だった。

 

「そろそろ名無しの奴等が来るぞ。皆、準備は良いか?」

 

「勿論だ。同士の敵討ちだ、覚悟しろ名無し!」

 

「どうせアイツらも囮を使ってくる。そいつを捕らえて残りをあぶり出せば良い」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!

 

各々が意気込むなか、宮殿そのものを揺らすような地響きが起こる。

 

「うおっ!? なんだ!?」

 

「判らん!! ええいなんだと言うんだ!?」

 

騎士達は突然起こった異常事態に先程までの余裕を無くして狼狽える。宮殿に響く地響きはさらに大きくなっていき、

 

 

 

ゴバァァン!!

 

 

 

もっとも大きくなったところで正門の扉が吹き飛ばされた。吹き飛ばされた扉は辺りのきらびやかな装飾品を砕きながら宮殿の奥に転がっていく。

 

一体何事かと騎士達は土煙の立ちこめる場所を注視する。土煙がうっすらと晴れて視界がはっきりとしていくとそこには石造りの戦車が鎮座していた。

 

ズッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!

 

土煙が晴れると石造りの戦車は石でできた車輪を動かしてゆっくりと宮殿の内部に進入していく。

 

戦車が再び動き出した事で呆けていた騎士達は正気を取り戻す。

 

「総員! こいつらはノーネームだ! 何としてでも進ませるな!!」

 

この場の指揮を任されていた騎士はそう言うと各々の武器を手に戦車に攻撃を加えていく。しかし石造りの戦車に対して剣や槍が通用するはずもなく、自らの攻撃で武器を破壊する事ばかりだった。

 

「ひ、怯むな!! これは我等の旗印が懸かった戦いだ!! 何があってもここを通すな!!」

 

叫んだ騎士も戦車に向かって果敢に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………えげつねえ」

 

「否定はしないけど……思ったよりつらいわね」

 

「……うん。どんどん力を持っていかれる。正直かなりしんどい」

 

「悪いな。これは一人で使うには消耗が激しくて使い物にならないんだが、こういう風に力を供給する奴が複数いればなかなか強力なんだよ」

 

ペルセウスの騎士達の妨害を無視して悠々と進む石造りの戦車。それを造り上げたのはテオの持つギフトの為せる業だ。

 

彼のギフトは特殊な加護を与えた砂や岩、石を組み上げて造り上げた物を自在に操るものである。造り上げた物は絶大な堅牢さを持つためにこの場では無類の強さを誇るのである。

 

「はい。それに私の歌声と合わさればこの程度の攻撃でやられることはあり得ません。『護り唄“甲”』」

 

La♪と戦車の内部でリーナの歌声が響く。すると戦車全体を包み込むように白いオーラが広がっていった。

 

先程まででも大した足止めすらできなかったのにここにきてさらに強化されたとあってはもはや騎士達に止める術はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………つくづく気に障る奴等だ」

 

宮殿の最奥でノーネームの面々を待ち構えているルイオスは忌々しそうに吐き捨てる。常に自分の予想を斜め上に裏切る鈴香達にルイオスの苛立ちは止まるところを知らなかった。

 

「ふん、まあ良いよ。あんな役立たず共に期待した僕が間違っていただけの話だ。まあこれで誰のお陰でコミュニティが存続出来ているのか無能共も理解しただろうね」

 

ルイオスは首に掛けたチョーカーを握り締めて呟く。

 

「二度と立ち上がれないように徹底的に潰してやるよ。ノーネーム」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう、この先が最奥だな。皆、覚悟は良いか?」

 

宮殿内を突き進み、階を隔てる階段を砕きながら進み続けて、一人も欠ける事なく最奥に続く扉を前までたどり着いたノーネームの面々。

 

扉を前にテオが他の皆に声を掛けるが、

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「おーい御チビにお嬢様に春日部ー、生きてるかー」

 

「三人共もうすぐ目的地に着くわよ。よく頑張ったわね」

 

「逆廻さん、東雲さん、ここは休ませてあげましょう」

 

しかしテオの言葉に返事を返す者は居ない。鈴香、十六夜、リーナの三人は息も絶え絶えといった様子で力無く突っ伏していた飛鳥と耀とジンに声を掛けていた。

 

「あー、三人には流石に厳しかったか。まあ俺とリーナも余裕は無いから後は任せるぞ」

 

「まあ誰も欠ける事なくここまで来れたんだから上等だろ」

 

「私と十六夜の分まで頑張ってくれたんだもの、後は私達の仕事ね。テオ、リーナ、貴方達は三人を見ていてくれるかしら」

 

「はい、分かりました」

 

「俺達なら心配いらない。だから安心して戦って、そして勝ってくるんだぞ」

 

「任せな。それにしてもだ、こういうときは景気よくいくべきだと思わねえか?」

 

十六夜がとびっきりの悪戯を思い付いたようにニヤリと笑いながらそんなことを口にする。十六夜の言葉にきょとんとする三人だったが十六夜の意図を察すると続いてニヤリと笑う。

 

「確かにな。だったらコイツにはもう一働きしてもらうとするか!」

 

四人を代表してテオが声をあげると戦車に残った力を注ぎ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーネームは必ずここまで来る。そんな確信を持って待ち続けるルイオス。黒ウサギはその様子を見ながらルイオスに慢心は無い事を悟った。

 

(皆さん、どうか此処まで…………)

 

テオの策もあるために滅多な事は無いとは思っているが、黒ウサギは十六夜達が此処までたどり着けるようにそっと目を閉じる。そこでふと、何やら奇妙な音が聴こえる事に気づく。

 

(このそれなりに重いものが動く音は!)

 

黒ウサギが聴こえてくる音の正体に確信を抱く。すると聴こえてくる音は次第に大きくなり、周囲に轟音を響かせる程になっていく。

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

 

 

 

 

 

「な、何だ? 何が起こってる!?」

 

既に鳴り響く音はルイオスも感じる程である。しかしルイオスの疑問をよそにふと、鳴り響いていた音が止まる。

 

そして次の瞬間!

 

 

 

 

 

ゴバァァン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

最奥部に繋がる扉が石造りの戦車によってぶち破られた。

 

 

 

 

 

 

 

これにはルイオスも鳩が豆鉄砲を食らったかのように口を開いて絶句していた。此処にたどり着くには不可視のギフトであるハデスの兜を奪うしか無いと思っていたのに誰が戦車を用いて真正面から進撃してくるなどと想像出来るというのか。きっと初代ペルセウスですら想像していなかっただろう。

 

そんなルイオスを余所に戦車の側面の一部が開いてそこから十六夜達が出てきた。鈴香と十六夜とリーナの三人を除いて疲労が色濃い様子だったが皆揃って此処までたどり着いた事に黒ウサギは感極まった様子で声を上げた。

 

「皆さん! 無事に此処まで来れたのですね!!」

 

「おう、なかなかの乗り心地だったぜ」

 

「皆頑張ってくれたんだもの、当然でしょう?」

 

黒ウサギの感極まった言葉に十六夜はヤハハと笑い、鈴香は可憐にウインクと共に答えた。

 

「ふん、本当に使えない連中だ。みすみす此処まで来させるなんてね…………まあ良い。ようこそ白亜の宮殿の最上階へ。ゲームマスターとして貴方方のお相手しましょう」

 

ルイオスは十六夜達に対して恭しく宣言すると、ゴーゴンの首の紋が刻まれたギフトカードから燃え盛る炎の弓を取り出す。

 

「炎の弓? ペルセウスの武器で戦うつもりはない、ということでしょうか?」

 

「勘違いするな。持てる手段を使って戦うだけさ」

 

黒ウサギは十六夜達を名無しと侮らず、驕りを完全に捨て去った様子のルイオスに対して内心で焦りを募らせる。もしも彼があのギフトを使えば強大な力を持つ十六夜と鈴香とてただでは済まないと。

 

「ああ、そうだ。ここで僕のギフトを披露しておこうか」

 

ルイオスの呟きに十六夜と鈴香は身構え、リーナはジン達を護るようにその背に庇う。

 

そしてルイオスはその表情を獰猛に歪めて叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「目覚めろ────“アルゴールの悪魔”!!」

 

 

 

 

 

 

「ra…………Ra、GEEEEEEEEEEYAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「な、何て絶叫を」

 

「避けろ黒ウサギ!!」

 

「『護り唄“甲”』」

 

突如として白亜の宮殿に響き渡った絶叫に思わず耳を塞ぐ。そこに十六夜の鋭い声が掛けられた。

 

えっ、と体を硬直させる黒ウサギを鈴香は抱き抱えるとその場から飛び退き、リーナはジン達を護る為にその場で唄を紡いで障壁を張った。

 

直後、空から巨大な岩塊が次々と降り注ぐ。十六夜達はそのすべてを避け続け、そして防ぎ続けた。

 

「うん、すべて避けてくれたようで何より。流石に石化した雲程度でやられたりはしないか」

 

「く、雲ですって!?」

 

「リーナ、ジン達を頼んだわよ」

 

「ああ、護ってやる余裕は無さそうだ」

 

「任されました。二人共、存分に戦ってください」

 

「い、十六夜さん、鈴香さん」

 

ルイオスとアルゴールを前に戦意を燃やす鈴香と十六夜にジンが声を掛けた。

 

「起きたか御チビ。死にたくなかったらそこでじっとしてろよ」

 

「ああ、そうそう。ジン、例の件は覚えてるかしら?」

 

「は、はい」

 

「目論見が外れたわね。魔王への対抗策となり得たレティシアは神格を失って以前の力を失ってしまったわ」

 

「どうする? 例の作戦は止めておくか?」

 

鈴香と十六夜の真剣な問いかけにジンは迷う事なく首を横に振った。

 

「十六夜さん、鈴香さん、僕たちにはまだお二人がいます。僕たちはお二人が魔王に打ち勝てる存在であることを────信じてます」

 

「OK。よく見とけ御チビ」

 

「期待には応えないと、ね」

 

 

 

 

 

 

「さ、それじゃあ準備は良いかゲームマスター」

 

「この身の全力を以て──往くぞ、ペルセウス」

 

二人は揺るがぬ意志とみなぎる戦意と共に足を踏み出す。ペルセウスとのゲームは今、最終局面を迎える。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。



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