とりあえず書き終えたので投稿します。
それでは第17話です。
第17話 目的地は北側だそうですよ?
時は進んで一ヶ月、雲一つ無い晴天に恵まれたノーネームの農場跡には二人の少女が佇んでいた。
見渡す限りに荒廃しきった大地を前にエプロンドレス、所謂メイド服を着込んだレティシアは沈痛な面持ちでその場にしゃがみこむ。
「…………酷いな。此処があの農場区とはこの目で見ても信じ難い。石と砂利しかないじゃないか」
此処にたったの三年前までは豊潤な実りをもたらしていた土壌があったとは、その光景を知らない者は出来の悪い冗談だと思うだろう。
その隣に居た黒ウサギも陰鬱な表情のまま顔を伏せる。
「申し訳ありません。せめて水の都合がつけば子供達でも手を入れる事も出来たのですが…………」
「ああいや、お前達を責めるつもりで言ったんじゃない。お前達は良くやってくれているのは分かっているさ。ただこれは子供達の、いや人間の手に負えるものじゃないよ」
「…………そうですか、やはり」
「ああ、土地が死んでいるんだ。たとえ水があっても生物が生きていける状態ではない。この土壌に再び命が芽吹くのには膨大な時間がかかるだろう」
「…………はい」
二人は同時に溜め息を吐く。以前の豊かな土地を知る二人にとって、石と砂利ばかりの荒野と化した土地は思わず目を逸らしたくなるものだった。
「…………いやはや、彼の魔王の力には驚愕を禁じ得ないな。これほどまでの力を持った魔王ともなれば私が相対した者の中でも片手の指で足りるぞ」
「時間操作による土地の自壊等、星の運行を支配できる高位の星霊でもなければ不可能でしょう」
「星の運行を司る星霊ともなれば…………太陽の主権を有する階層支配者・白夜叉か、もしくは黄金の魔王“クイーン・ハロウィン”と比肩するレベルという事になる」
「つまり、彼の魔王は箱庭における“最強種”である、と」
「その通りだ…………質の悪い冗談ならどんなに良いか」
命の息吹きを感じさせない渇いた風を浴びながら二人は力無く笑った。ノーネームを衰退の憂き目に追いやった魔王の力はそれほどまでに強大だったのだ。
どこか憔悴した様子のレティシアを元気付けるつもりなのか、黒ウサギは力強く笑ってレティシアを励ます。
「だ、大丈夫でございますよ! 今のコミュニティには十六夜さんや鈴香さんを始めとした強力なギフト保持者が居ます! 皆様が力を合わせれば土地を復活させる位容易いのですよ!」
「黒ウサギ…………ふふ、そうだな。私も主殿達ならばこの苦境も容易く乗り越えられるだろう」
レティシアとてそれが空元気なのは違える事無く察している。だがしかし三年間コミュニティを守り続けた黒ウサギの言葉はどこか心地好い説得力があった。
それに箱庭の外より招かれた四人の同士に彼等の影響で加わった二人の同士。自分を救い出し、僅かな時間でコミュニティに多大な恩恵をもたらした彼等とならば、どんな困難も乗り越えて往ける。
漠然とではあるが、僅かな希望と共にそう思うレティシアだった。
「く、黒ウサギのお姉ちゃあああああああん! レティシア様あああああああああ! た、大変ですうううううううう!!」
それから少しの間、コミュニティの方針を話し合っていた黒ウサギとレティシアだったが、本拠から酷く慌てた様子で狐耳の少女が走ってきた。
「リリ!? そんなに慌ててどうしました!?」
「じ、実は飛鳥様が十六夜様と耀様を連れて…………あ! こ、この手紙を黒ウサギのお姉ちゃんに!」
息を切らせて黒ウサギに手紙を渡すリリ。パタパタと忙しなく動く二本の尾がどれだけ慌てているのかを物語っていた。
『黒ウサギへ。
北側の四○○○○○○外門と東側の三九九九九九九外門で開催される祭典に参加してきます。
貴女も後から必ず来ること。レティシアと東雲さんもね。東雲さんは何処に居るのか知らないけど。
私達に祭りの事を意図的に黙っていた罰として今日中に私達を捕まえられなかった場合、
P,S ジン君は道案内に連れて行きます』
「……………………」
「……………………?」
「……………………!?」
という風に、リリから渡された手紙にはなんともふざけた内容が書かれていた。手紙にあしらわれているポップなウサギのイラストがなかなか憎らしい。
たっぷりと黙り込む事三十秒。黒ウサギは怒りのあまり渡された手紙を握り潰す。
「な、何て事を……………………あんの問題児様方ああああああああああ!!!!」
ここのところは大人しかった為に忘れていたが彼等は────
────世界屈指の問題児達なのである。
一方のリリに手紙を預けて本拠を後にした十六夜、飛鳥、耀、ジンの四人はコミュニティ“六本傷”のカフェテラスで腰を下ろして、北側への移動手段について話し合っていた。
「それで北側まではどうやって行けば良いのかしら?」
殆ど普段着となりつつある深紅のドレスを身につけた飛鳥はジンに問い掛けた。
「…………北に行くのならとにかく北に向かって歩けば良いんじゃないかな?」
「オイオイ、ソイツは流石に無計画過ぎるぞ春日部。ここは我等がリーダーに素敵なプランをご教授してもらおうじゃねえか」
耀の提案をやんわりと切り捨てた十六夜はニヤニヤとした笑みを浮かべながらジンを見下ろす。
そんな十六夜に対して、いつものダボダボをローブを着込んだジンが大きく溜め息を吐く。
「…………予想はしてましたけど皆さんは北側の境界壁までの距離を知らないんですね」
「ああ、知らねえな。けどそんなに遠いのか?」
「遠いですよ。此処は少し北寄りなので……………………そうですね、大雑把に言って980000km程でしょうか」
「「「うわお」」」
ジンによって聞かされた外の世界ではおおよそ縁の無い途方もない距離に、三人は示し合わせたようなタイミングで声を上げる。
「いくら何でも遠すぎるでしょう!?」
「だから僕は遠いと言いました!! だから此処に来るまで何度も止めましょうって言ったじゃないですか!!」
テーブルを叩いて抗議する飛鳥に負けない迫力でジンは叫び返す。
「…………じゃあペルセウスとのゲームの時みたいに外門同士を繋いで行けば良いんじゃないかな」
「…………耀さん、それは境界門の事を言ってるんですか?」
耀の提案にジンは飛鳥に向けていた厳しい視線を耀に移す。
「断固却下します!境界門の起動には凄くお金がかかります! 一人サウザンドアイズ発行の金貨を一枚! 全員分で金貨四枚!! これはコミュニティの全財産に匹敵します!!」
蓄えを使い果たせばコミュニティの子供達が餓死してしまうという事は容易に想像出来た為に耀は苦々しい顔で黙り込む。もはや打つ手の無い三人にジンは諭すように説得する。
「…………今ならまだ笑い話で済みますからもう戻りませんか?」
「断固拒否」
「右に同じ」
「以下同文」
十六夜達もあんな挑発的な手紙を残してきたのに目的を果たせずにおめおめと帰る訳にもいかないのだろう。それこそ十六夜言っていた“吐いた唾を飲み込む”事に他ならないのだから。その答えを予想していたジンはガクリと肩を落とした。
「黒ウサギ達にあんな手紙を残してきたのに今更引けるものですか! 行くわよ二人共!」
「おう! こうなったらダメ元でサウザンドアイズへ交渉に行くぞゴラァ!」
「行くぞコラ」
勢いよく立ち上がってヤケクソ気味に声を上げる十六夜達は勇み足でサウザンドアイズを目指してカフェテラスを出ようとする。
「貴方達、朝っぱらから何を騒いでるの」
そこに同士である猫又少女に声を掛けられたのだった。鈴香の顔を見た瞬間、ジンを除いた三人の顔がひきつった。逆にジンは唯一の救いを見出だしたかのようにすがる眼差しを向けてきた。
そこに三人を代表して十六夜が口を開く。
「…………あー、東雲? 黒ウサギは一緒か?」
「黒ウサギ? いえ、私は朝早く目が覚めたから散歩していただけよ?」
「そう、なら良いわ。東雲さん、貴女も一緒に来なさい!」
「鈴香さん! どうか皆さんを「ジン君、黙りなさい!」────ッ!?」
ここで救いの手を逃すまいとジンは声を上げるが飛鳥に阻まれる。
「気にすんな東雲!
話の展開についていけずにきょとんとしていた鈴香だったが十六夜の言葉を聞くと目の色が変わった。
思い出してほしい、彼女は十六夜達と同じように退屈な世界を捨ててこの箱庭にやって来たのだと。彼女にとって“そっちの方が面白い”等と言うのは如何なる果実よりも甘美であるのだろう。
「そっちの方が面白い、か。ふふっ♪ 良いわよ、何処へ行くの?」
「北側に行くためにサウザンドアイズに交渉しに、だ」
「お帰りください」
「まだ何も言ってないでしょう?」
サウザンドアイズの支店前で店前の掃除をしていた女性店員は、四人を前に恭しく一礼すると門前払いの言葉を掛ける。
ここのところ、此処の女性店員とはちょくちょく顔は合わせてはいたのだが十六夜、飛鳥、耀の三人はどうにも嫌われているのか会うたびに絡まれていた。
「それなりの常連客なのだからもう少し愛想よくしてくれても良いと思うのだけれど」
「常連客というのは店にお金を落としていく方の事を言うのです。換金しかしない相手は常連客ではなく取引相手です。現に鈴香は貴方達とは違ってちゃんとお金を落としていってくれてます」
女性店員の言葉に飛鳥は心底驚いた顔をする。鈴香は悪戯っ子のように笑いながら答える。
「東雲さん、それ本当なの?」
「ええ、でもノーネーム相手に直接取引はしてくれないからちょっと裏道を使って、ね?」
「裏道って?」
「ふふっ♪ 取引してもらえないなら取引してもらえる人にしてもらえれば良いのよ」
鈴香は女性店員に目を向けながら飛鳥に言う。女性店員は少し居心地が悪そうに咳払いをすると、その所作を見て裏道とやらを察した十六夜は納得したようだった。
「持つべきものは人との繋がりって事よ。私はこの娘に必要なお金を渡して欲しい物を買って貰ったってわけ」
「へえ? 上手く規則を掻い潜ったじゃねえか。というわけでお邪魔します」
そしてしれっと侵入する十六夜達。そんな彼等の前に女性店員は両手を広げて立ち塞がる。
「だからうちはノーネームお断りです!オーナーが居る時ならともかく今は「いぃぃぃぃやっふぉおおおおおおお!! ようやく来おったか小僧共おおおおおおおおおお!!」はぁ…………」
女性店員の言葉を遮って空の彼方より飛来した和服を着込んだ白髪少女は白夜叉。件の招待状を送り付けた張本人である。
女性店員が綺麗に集めていたゴミや埃を物の見事に吹き飛ばした白夜叉に本人を除いて唖然とする中、十六夜は女性店員に声を掛ける。
「おい女性店員、此処のオーナーはぶっ飛んで現れねえといけない決まりでもあんのか?」
「…………………………………………いえ」
ぶっ飛んだ上司に頭を悩ませる女性店員はたっぷりと間をとって否定する。
鈴香はそんな女性店員に憐れみの視線を向けながら懐から扇子を取り出す。そして扇子から生み出した風を操って周囲に立ち込める土煙と再び散らかったゴミを一纏めに集めていたのだった。
そんな中、耀は白夜叉に招待状を見せながら話しかける。
「白夜叉、北側で開かれるお祭りに招待してくれてありがとう。けど私達だけじゃ行けないんだ…………」
「ふむ、それは路銀の事であろう? 私からも話しておきたい事もある事だし、詳しい話は中でゆっくりと聞こうかの」
「話? それって楽しい事?」
「ふふ、それはおんしら次第、とだけ言っておこうか」
白夜叉が耀に意味深な言葉を送る傍らで女性店員はここ最近酷くなってきた頭痛に苛まれていた。彼女は額に手を当てながら溜め息を吐く。
「……………………はぁ」
そのあまりにも痛々しい女性店員に鈴香は以前のように身を寄せて労るように声を掛ける。
「…………楠葉、今度の休みにゆっくり話を聞くわ」
「…………そう言ってくれるのは貴女だけよ。鈴香」
そう言って女性店員改め、楠葉は静かに涙を浮かべた。
店の入口をくぐり、中庭を通って白夜叉が私室として使っている座敷に招かれた五人。白夜叉は座敷の上座に腰を下ろすと徐に口を開く。
「さて、本題の前に一つ問いたい。“フォレス・ガロ”の一件以降、おんしらが魔王に関するトラブルを引き受けるとの噂を耳にしたが、それは真か?」
「ええ、その話は事実よ」
「ジン、それはコミュニティの方針として相違無いか?」
「はい。僕達に名前と旗が無い以上、この方法がベストであると判断しました」
ジンの返答を聞いて、白夜叉はスッと目を細めてジンに鋭い視線を向ける。
「随分と大それた事を言うのだな。リスクは承知の上か? そのような噂が立てば魔王を引き寄せる事にも繋がるぞ」
「虎穴に入らずんば虎児を得ずってね。白夜叉、私達が目的を果たすにはこれくらいの無茶は通さないといけないのよ」
白夜叉は己の問いに答えた鈴香に目を向ける。白夜叉自身、鈴香の事は直情的な部分こそあれ、ノーネームにおいて一歩退いた目線で見渡す事が出来て、なおかつ間違った方向に進もうとすればそれを正せる気概を持っていると評価していた。
白夜叉はジン達の言い分を己の中で反芻してゆっくりと口を開く。
「おんしらの言い分は分かった。しっかりと考えて選んだ道ならばこれ以上は言うまいよ」
「納得してくれたようでなによりね。さ、前置きはこれくらいにしてそろそろ本題を聞かせて頂戴」
「あいわかった。実はその“打倒魔王”を掲げたコミュニティに東側のフロアマスターから正式な依頼をしたいのだ。内容は此度の北側の祭典についてだ。よろしいかな、
「は、はい! 謹んで承ります!」
白夜叉は口調を普段の砕けたものから公の場で使われる畏まったものに変えてジンに問うた。ジンもいつもの子供扱いではなく、一介の組織のリーダーとして扱われた事に喜色を隠しきれない様子だった。
白夜叉はその様子に小さく笑うと徐に口を開く。
「さて、肝心の内容だが、おんしらは北のフロアマスターの一角が世代交代したのは知っておるかの?」
「そうなのですか?」
「うむ。何でも急病を患い引退する運びとなったとか。まああやつは亜龍としては高齢だったからな、迫る年波には敵わなかった、というところだろう。そこで後進の者にフロアマスターの座に就かせようというわけだな」
「なるほどな。その為の舞台が」
「そう、此度の火龍生誕祭というわけだ」
白夜叉の説明に一同は納得した様子だったが、それと自分達への依頼とどう関係するのかが分からなかった。そこで飛鳥は白夜叉に詳しい事情の説明を求めた。
「ねえ白夜叉、フロアマスターが世代交代したのは分かったわ。それと火龍生誕祭が関係してるのもね。でもそれと私達の依頼とどう関係するのか分からないのだけど」
「そう慌てるでない。そのフロアマスターを襲名するのが五桁・五四五四五外門に本拠を構えるコミュニティ“サラマンドラ”の党首であるサンドラ=ドルトレイクという少女なのだが……ジン、おんしはあやつと以前交流があったな」
白夜叉に話の矛先を向けられたジンだったが、その前に聞かされた話にそれどころではないと身を乗り出して白夜叉を問い詰める。
「ちょ、ちょっと待ってください! 党首がサンドラだなんて初耳です! サラマンドラには他にも長女のサラ様や次男のマンドラ様がいらっしゃる筈でしょう!? 彼女はまだ十一歳ですよ!?」
「あら、ジン君も十一歳で私達のコミュニティのリーダーをしてるじゃない」
「飛鳥さん! 七桁のノーネームと五桁のフロアマスターが同列な筈がないでしょう!」
「なんだ御チビ、えらく慌ててるがそのサンドラってのは恋人か?」
「ち、違っ、違いますよ! 茶化すのは止めてください!」
大慌てのジンをからかう十六夜と飛鳥。その様子は年相応でなかなか微笑ましいと言えるものだった。
しかしそんなやり取りにも目を向けただけでそこまで気に留めなかった耀が白夜叉に話の続きを促す。
「白夜叉、話の続きをお願い」
「うむ。して、今回の祭典の主催者は次期フロアマスターであるサンドラが務めるのだが、フロアマスターといってもあやつはまだまだ幼い。故に東側のフロアマスターである私に対して共に主催者を務めてほしいと依頼してきたのだ」
「ですが北側には治安の悪さから複数のフロアマスターが居る筈。普通ならそちらに依頼するのでは?」
「…………あー、うむ。おんしの言う事ももっともだ」
ジンの指摘に白夜叉の歯切れが目に見えて悪くなった。少し目を逸らしながら頬を掻く様子に得心した鈴香が助け船をだす。
「あれね、幼い権力者を良く思わない友好関係にない組織があるってところかしら」
「うむ、まあそんなところだの」
「…………箱庭に集った神仏でも思考回路だけなら人間と大して変わらない、といったところかしらね」
「いやはや、手厳しい限りだ。だがそれを否定する言葉を私は持ち合わせてはおらんのだよ。私に依頼を持ちかけてきたのにも込み入った事情がある、という事だの」
そこまで話を聞いていた十六夜達だったが次第にそわそわしだした。その様子に白夜叉と鈴香は訝しんでいると耀が焦りを滲ませながら白夜叉に問い掛ける。
「ねえ白夜叉、その話ってまだまだ続く?」
「ん? ううむ、少なく見積もって小一時間と言ったところかの」
「まずいかも…………黒ウサギに追いつかれる」
「し、白夜叉様! どうかこのまま「ジン君、黙りなさい!」」
静止の声を上げたジンの口をまたもや強引に塞いだ飛鳥に鈴香は次第に怪しさを感じ始めていた。
「ねえ貴方達、何か私に隠し事してない?」
「あー、そのなんだ、白夜叉! 今すぐ北側に向かってくれ!」
「ちょっと! 答えなさい貴方達──むぐっ!?」
「む、むぅ? 私は構わんが急用か? というか内容を聞かずに受諾して良いのか?」
「構わねえから早く! 事情は後で話すし、何より
十六夜の言い分に白夜叉は目を見開いてきょとんとするが、すぐに呵々と哄笑を上げて頷いた。
「そうか、面白いか。いやはや、それは大事だ! 娯楽こそ我々神仏の生きる糧なのだからな。二人には悪いが面白いなら仕方ないとは思わんか?」
「ジン君、そのままじっとしてなさい!」
「────!!────!?」
「んーーーー!? んーーーー!?」
やらかす気満々の白夜叉の顔にジンと鈴香は何とか声を上げようとするがジンは飛鳥の威光のギフトで縛られ、鈴香は三人がかりで取り押さえられており、何も出来ない。
そんな二人を尻目に白夜叉はパンパンと柏手を打つ。
「────これで良し。ほれ、北側に着いたぞ」
「「「は?」」」
ジンと鈴香を押さえつけながら三人は間の抜けた声を上げる。それもその筈、誰が一秒にも満たない時間で980000km等というお馬鹿な距離を移動出来るというのか。
しかし唖然としていたのも一瞬の事、三人はすぐさま店外に走り出した。
「はぁ…………はぁ…………あんのガキ共、舐めた真似を…………!」
三人が走り去った後、店内に残された鈴香は怒りに震えていた。その姿に白夜叉は顔をひきつらせ、ジンはその迫力に完全に萎縮してしまっていた。
その姿、まさに阿修羅が如し。
白夜叉は勢い任せで此処まで飛んだのは失敗だったかなー、とぼんやりと考えていた。
それでは、読んでいただきありがとうございます。