猫又少女も異世界から来るそうですよ?   作:グリアノス

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長くなったのでバッサリと切りました。

続きも今週中に投稿出来たら良いなぁ。


それはともあれ、第22話です。


第22話 決勝戦が始まるそうですよ?

「此処には遅れてきたが鈴香と耀の舞台には何とか間に合ったな、リーナ」

 

「ふふ、そうですね。間に合って良かったです」

 

十六夜達より一日遅れでやって来たテオとリーナは鈴香と耀の活躍を見るために闘技場の観客席にて、二人の出番を待ちわびていた。十六夜と飛鳥には自分達と特等席で見ないかと誘われたが、こういうのは観客席で見たいということで断った。

 

「しかし一つ上の六桁のコミュニティが相手か…………厳しいだろうな」

 

「そうですか? 私はそうは思わないですよ」

 

「へえ? なんでそう思うのか聞いて良いか?」

 

テオはそう言って顔をしかめるが、リーナは何も心配は要らないと言わんばかりに落ち着いていた。その泰然とした様子をテオは不思議に思い、問いかける。

 

「簡単な事ですよ。確かに耀だけだったら勝ち目はありません。でも」

 

 

 

 

 

 

「あの子は一人じゃありませんから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───これが僕の知っている“ウィル・オ・ウィスプ”の情報です。参考になりそうですか?」

 

「もちろん。どんな情報でも知らないよりは十倍マシよ」

 

「うん、ケースバイケースで臨機応変に対応するから」

 

出番を間近に控えた鈴香と耀は舞台袖にてささやかなブリーフィングを行っていた。決勝の舞台ではジンとレティシアがセコンドとしてついてくれている。

 

会場では黒ウサギの手によりゲームはつつがなく進行し、いよいよ出番が迫ってきた。レティシアも次第に気分が高揚してきたのか、鈴香と耀に激励の言葉をかける。

 

「君達二人ならば心配は要らないな。さあ、目一杯楽しんで来ると良い」

 

「うん、二人でちゃんと勝ってくるよ」

 

「ええ、優勝して勝利の凱旋と洒落込もうじゃない」

 

グッと拳を握って意気込む耀と好戦的な笑みを浮かべる鈴香に、ジンとレティシアは二人につられて笑顔を浮かべる。

 

『それでは選手に入場していただきましょう! 第一ゲームのプレイヤー・ノーネームの春日部耀とウィル・オ・ウィスプのアーシャ・イグニファトゥスです!』

 

黒ウサギのコールを受けて、二人は背筋を伸ばして舞台まで歩いていく。

 

しかしそんな二人の目の前を高速で飛来する火の玉が横切った。

 

「YAッFUFUFUUUUUUUUUuuuuuuuuuu!!」

 

「わっ…………!」

 

「っと、大丈夫?」

 

いきなり目の前を通りすぎた火の玉に驚いた耀は危うく尻もちをつきそうになったが、隣にいた鈴香が咄嗟に耀の手を取った為に衆人の前で倒れ込む事は無かった。

 

二人が頭上に視線を移せば、火の玉に乗った人物に目が留まる。

 

「ちぇっ、なんだよそこは無様に転ぶところだろ~? 空気読めよな~、折角このアーシャ様がノーネームの無様を笑ってやろうってのにさ。まあ良いや、アーシャ様の勝ちは決まったようなもんだけど少しは楽しませろよ? この“名無し”」

 

「YAッFUFUFUUUUUUUUUuuuuuuuuuu!!」

 

アーシャが鈴香と耀に対して挑発すると、観衆の一部からも無粋な野次が飛んでくる。決勝の舞台にノーネームが立っている事が気に入らないと言ったところだろうか。

 

「その火の玉…………もしかして」

 

「はぁ? 何言ってんのオマエ。このアーシャ様の作品をそこらの火の玉と一緒にすんな。こいつは我らがウィル・オ・ウィスプの名物幽鬼! ジャック・オー・ランタンさ!」

 

「YAッFUFUFUUUUUUUUUuuuuuuuuuu!!」

 

アーシャが高らかに宣言するように言うと火の玉は纏っていた炎を散らしてその姿を現す。

 

妖しい炎を灯したランプに浅黒い襤褸切れのような外套、そして人の十倍はあろうかと思わせる巨大なカボチャ頭。

 

そのジャック・オー・ランタンの威容に観客席に座する群衆は言葉を失う。

 

「へっ、たかがノーネームが私達より早く紹介されるなんて生意気だっつのおおおおおおおおおおっ!?」

 

更に挑発を重ねようとするアーシャが台詞の最後を不自然に伸ばした。

 

と言うのも、アーシャの顔面のスレスレを熱線が通りすぎたからである。後少し熱線がずれていればアーシャの顔面の風通しが良くなっていたであろう事は想像に難くない。

 

「あら、少しずれちゃったみたいね」

 

「テメェ…………」

 

鈴香は指先から仄かに硝煙を立ち上らせながらいけしゃあしゃあとそんなことを宣う。その顔は笑顔だが目が一切笑ってないという典型的な怖い顔だ。鈴香は仲間を侮辱されたり、舐められたりするのに対して感情の振れ幅が大きくなる、まあぶっちゃけ非常にキレやすくなるのだ。

 

つまりアーシャはこの猫又の持つ地雷を見事に踏み抜いたという事になり、それを見ていた黒ウサギはその身から発せられる怒気にブルリと体を振るわせる。黒ウサギとてアーシャの言い草には憤りを感じていたが、それも鈴香が先程放った熱線によって既に掻き消されていた。

 

(うわぁ…………鈴香さん確実に怒ってますよね。あの子生きて帰れると良いのですが)

 

怒った鈴香には出来れば触れたくない黒ウサギだったが、ゲームの進行を任されている以上このまま乱闘をおっぱじめそうな二人を放置するわけにもいかない。

 

黒ウサギは脆弱な心臓に鞭を打ち、お腹をしっかり括って大きく声を張り上げる。

 

『し、東雲鈴香! アーシャ=イグニファトゥス! ゲームのコールはまだされていませんよ! 両名共無用な挑発行為は控えるように!』

 

「…………チッ、はいはい、分かりましたよ~」

 

「…………暴れる場所は此処じゃない、か」

 

片や苛立ちを隠そうとせずに、もう一方は幾分落ち着きを取り戻し、耀と共に舞台に上がる。剣呑な空気を作り出していた二人は黒ウサギの仲裁によってこの場でぶつかり合う事はなかった。

 

耀はそんな二人を意に返さずに周囲を見渡して、最後にバルコニーにいる飛鳥達に小さく手を振った。

 

先程の件もあってか虫の居どころが悪いアーシャは耀に対して突っ掛かるようにして言葉をかける。

 

「ハッ、大した自信だねーオイ。私とジャックを無視して客とホストに尻尾と愛想振るってか? 何? 私達に対する挑発でしょーかね?」

 

「さあ? そう思いたければそう思えば?」

 

耀は挑発には挑発をの精神で返答すると、ピキッとこめかみの辺りに青筋を浮かべるアーシャを見て耀は内心で、

 

(あ、ちょろい)

 

こんなことを思っていたりする。まあ此方はいきなり転ばされそうになったのだからこれくらいはしても良い筈だと思うので特に顧みる事はなかった。精々、思いの外挑発が効いてラッキー程度だ。

 

黒ウサギはその様子に自身の胃が悲鳴を上げるのを感じて、さっさと始めないとまずいとバルコニーに手を向けて高らかに宣言する。

 

『────それでは第一ゲームの開幕前に、白夜叉様から舞台に関してご説明があります。ギャラリーの皆様はどうかご静聴の程を』

 

すると観客席を包んでいた喧騒がピタリと消える。誰もが白夜叉の言葉を聞き逃すまいと心を一つにした瞬間である。

 

バルコニーの前に出てきた白夜叉は静寂に包まれた会場を一望すると、満足そうに頷いた。

 

「うむ、協力感謝するぞ皆の者。私は見ての通りの姿なので如何せん大きな声を出すのは些か億劫なのだよ」

 

「────さて、それでは舞台についてだが、先ずは手元の書状を見て欲しい。そこにナンバーが書いてあるであろう?」

 

白夜叉の説明を聞きながらも慌ただしさを以て会場は僅かに喧騒を取り戻す。一早く書状に目を通す者、慌てて鞄の中を探す者、はたまた拠点に書状を置いてきた者、一喜一憂する観客達をまるで母のような温かい視線を向けながら説明を続ける。

 

「皆確認したかの? それではナンバーが“サウザンドアイズ”の三三四五番となっておる者が居れば招待状を掲げ、コミュニティの名を叫んでおくれ」

 

「こ、ここにあります! “アンダーウッド”のコミュニティが三三四五番の招待状を持っています!」

 

おおお、と周囲から歓声が上がる。白夜叉はクスリと笑うとバルコニーから一瞬で招待状の持ち主である樹霊の少年の前に降り立っていた。

 

「おめでとう、“アンダーウッド”の樹霊の童よ。ふふ、後で記念品を送らせてもらうぞ。よろしければコミュニティの旗印を拝見しても構わないかな?」

 

少年は興奮したように勢いよく首肯し、身に着けていた指輪を白夜叉に手渡す。その旗印をしばし見つめていた白夜叉は微笑みながら少年に指輪を返すと、再びバルコニーに降り立つ。

 

「────今しがた、決闘の舞台が決まった。それでは皆の者、お手を拝借」

 

白夜叉と観客達が目の前に両手を広げ、パンと柏手を打ち鳴らす。

 

 

 

 

 

 

 

そこで世界は一変した。

 

 

 

 

 

 

 

鈴香と耀は以前経験したゲーム盤に跳ばされる感覚に身を任せ、今度はどのような所に跳ばされるのかと気を昂らせていた。

 

二人は投げ出された先は、バフンという僅かに柔らかさをもった地面、否、樹木の上だった。

 

「これは樹、かしらね? いえ、」

 

「うん、地面だけじゃない。此処は樹の根に囲まれた場所だ」

 

「あらあらそりゃあどうも教えてくれてありがとよ。そっかそっか此処は樹の根の中なのねー」

 

「「……………………」」

 

今度は相手にしないと努めて無視を決め込む二人。しかしそれが図らずとも挑発となったようで、彼女のこめかみには再び青筋が浮かび上がった。これには鈴香と耀も、

 

( (いや、いくらなんでも短気過ぎじゃない(かな)?) )

 

と、内心で思う程だった。

 

そこにプレイヤーより遅れて跳ばされてきた黒ウサギがこの場に降り立ち、掲げた契約書類を高らかに読み上げる。

 

 

『ギフトゲーム名“アンダーウッドの迷宮”

 

・勝利条件

 

一、プレイヤーが大樹の根の迷路から脱出する。

 

二、対戦プレイヤーのギフトの破壊。

 

三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった(降参を含む)場合。

 

・敗北条件

 

一、対戦プレイヤーが勝利条件を満たした場合。

 

二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。』

 

 

「“審判権限”の名において、以上が両者不可侵である事を御旗の前に契ります。お二人共、どうか誇りある戦いを。此処にゲームの開始を宣言します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

黒ウサギの宣誓により始まったゲーム、複数の勝利条件がある以上初手は様子見がベターとされるのだが、

 

「ここは先手必勝、風上を奪うわよ」

 

「了解」

 

二人はのっけから最大速度で駆け出した。目の前の少女など最初から眼中に無いと言わんばかりに。

 

アーシャはまー、先手位は譲ってやろうかなーと考えていたが、一瞥すらされなかった事に唖然とし、そして沸々と沸き上がる怒りに身を震わせる。

 

「~~~~~~~ッ!!オ、オゥゥゥゥゥゥケェェェェェェイ!! とことん馬鹿にしやがるらしいな! そっちがその気なら加減なんざしねえ! 行くぞジャック! 樹の根の迷路で人間狩りだ!!」

 

「YAHOHOHOHOHOhohoho~!!」

 

怒髪天を衝く怒りに身を任せ、鈴香と耀を猛追するアーシャ。鈴香は周囲の樹の根に無数にある小さな窪みを軽やかに跳び回り、耀は通路らしき隙間を駆け抜ける。

 

アーシャは鈴香と耀の背を視界に納めると叫ぶように言う。

 

「地の利は私達にある! 焼き払えジャック!」

 

「YAッFUUUUUUUUUuuuuuuuuuuuuuuuuu!」

 

アーシャが右手を翳すとジャックの右手にあるランタンとカボチャ頭から噴き出した業火が瞬く間に二人を焼き尽くさんと迫る。

 

しかし二人は最小限の風と妖気を操って炎をかわす。

 

(避けた? いや、違う。今の風…………あれがあいつらのギフトか?)

 

炎による初撃がかわされた事に舌打ちしながらも炎を放ち続ける。

 

しかし炎を連続で放っても、三発同時に放っても二人は悉く避けて、弾いて、駆け抜けていく。

 

「クソ、やべえぞジャック! このままじゃ逃げられる!」

 

離れた所を攻撃出来ても、ステージにおいて炎は強力な攻撃手段でも、それは二人に対しては決定打にならず、アーシャは次第に焦っていく。

 

「うわっ!?」

 

そして牽制として飛んでくる鈴香の炎の礫がアーシャの移動力を着実に削いでおり、アーシャは全速力を出せずにいた。次第に小さくなっていく二人の姿を前にアーシャは悔しそうに表情を歪める。

 

「くそったれ。正直悔しいけど後はアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、ジャックさん(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

分かりました(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「えっ……」

 

「耀!!」

 

思わず振り返った耀はジャックの姿を探すが、遥か向こうにいたはずの場所にはジャックの姿はなく、鈴香の警告の声を聞いて前を向くとそこにはカボチャ頭から怪しげな炎を湛えているジャックがいた。

 

「嘘」

 

「嘘じゃありません。失礼、お嬢さん」

 

ジャックの巨大な掌による薙ぎ払いが耀を襲う。耀は何とか防御の姿勢を取ったものの、その威力を前に壁面まで弾き飛ばされた。

 

壁面まで弾き飛ばされ、体を強かに打ち付けた耀は息を詰まらせる。

 

「猫又のお嬢さん、貴女もです」

 

「くっ」

 

耀の傍に駆け寄ろうとした鈴香にジャックは先程とは比べ物にならない程の炎を撒き散らして足止めする。

 

その間にアーシャはジャックの所に追いついたようで、ジャックはアーシャに声をかける。

 

「さ、早く行きなさい。このお嬢さん方は私が足止めします」

 

「悪いねジャックさん。本当は私の力で勝ちたかったけど…………」

 

「それは貴女の油断と怠慢が招いた事です。このお嬢さん方のゲームメイクを見習い、猛省なさい」

 

「う…………了解しました」

 

アーシャはそう答えると、鈴香と耀を追い越して走っていく。耀は慌てて追いかけようとするが、ジャックの炎が行く手を阻む。

 

ジャックの炎は瞬く間に勢いを強め、分厚い壁のように燃え上がる。

 

「耀!! 旋風を出しなさい!!」

 

「う、うん!!」

 

耀は自分の傍に駆け寄ってきた鈴香の指示に従い、全身に風を纏う。それに合わせて鈴香は圧し切り長谷部を構え、周囲の旋風を刀に集束させる。

 

「耀、実戦初の合わせ技、いけるわね?」

 

「うん! やってみせる!」

 

「やらせません!」

 

「もう遅い!」

 

鈴香は刀を逆手に握り直し、耀がそれに手を重ね、同時に叫ぶ。

 

「「真技(シンギ)風神旋(フウジンセン)!!」」

 

叫ぶと同時に鈴香と耀は刀を地面に突き立てる。

 

そして技の発動と共に周囲三六〇°に発生した吹き荒ぶ暴風にジャックの炎は一瞬で消し飛ばされる。その瞬間に鈴香は耀に声を張り上げる。

 

「耀、今よ!!」

 

「鈴香、此処はお願い!!」

 

「待ちなさい!」

 

わき目も振らずに駆け出す耀にジャックはランタンから炎を放とうとするが、

 

「貴方の相手は私よ!」

 

鈴香は灼熱の業火を湛えたジャックのランタンを真っ二つに斬り飛ばした。

 

巻き起こした風の勢いを背にアーシャの追撃を再開した耀を後目に、鈴香は自身を中心とした半径二十メートル程の結界を築く。効果は移動阻害に物理耐性、耐炎効果の三つである。

 

全ては目の前の強敵に耀の邪魔をさせない為に。

 

鈴香を無視して耀の元へ移動しようとするジャックだったが鈴香の張った結界に阻まれ、それは叶わない。

 

「ヤホホ、やってくれましたねお嬢さん。やれやれ、後はアーシャ次第ですか」

 

「全ては貴方が招いた油断が為に、ってね。というか子供同士の喧嘩に大人が本気になるんじゃないわよ」

 

「これはこれは、一本取られました。貴女の言う通り、私も猛省せねばなりませんね」

 

鈴香は圧し切り長谷部をギフトカードにしまいながらジャックと言葉を交わす。

 

「さあ、此処からは私と踊って貰うわよ? ウィル・オ・ウィスプが誇る不死の大怪物、“ジャック・オー・ランタン”さん」

 

「ヤホホホホ♪ 良いでしょう。この聖人ぺテロに烙印を押されし不死の怪物、このジャック・オー・ランタンがお相手します!」

 

僅かに腰を落として構える鈴香と真っ白な大きな手を握り込んで拳を構えるジャック。

 

視線をぶつけ合う事数秒、同時に動いた二人は互いに拳を打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。



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