猫又少女も異世界から来るそうですよ?   作:グリアノス

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第6話です。





第6話 喧嘩を売っていたそうですよ?

なんでだ、どうしてこうなった。

 

黒ウサギの心の声を簡潔に語ってしまうとこのようになるだろう。

 

あの後、世界の果てを見に行き、その後箱庭に戻ってジン達と合流したのは良い。だが、だがしかし、

 

「な、なんであの短時間で"フォレス=ガロ"のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になってるのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備の為の時間やお金もありません!」「一体どういう心算があってのことです!?」

 

「聞いているのですか三人共!?」

 

「「「ムシャクシャしてやった。後悔はしてないけど反省はしています」」」

 

「黙らっしゃい!!」

 

示し合わせたかのような言い訳に黒ウサギのキレのあるツッコミが唸る。それにしても三人揃って一字一句変わらないとは無駄なチームワークである。そこにケラケラと笑っていた十六夜が止めに入った。

 

「良いじゃねえか。別に見境無く売った喧嘩じゃねえんだからよ」

 

「十六夜さんは面白ければ良いかも知れませんが、ああもう鈴香さんもなんとか言ってください!」

 

黒ウサギは堪らず鈴香に助けを求めるが、

 

「黒ウサギ、少し落ち着きなさいな。先ずは事情を聞きましょう?」

 

「…………はい」

 

あくまで自然体を崩さない鈴香になにも言えなかったのだった。

 

 

 

 

 

飛鳥達から事情を聞く限りでは何でもフォレス=ガロのガルド=ガスパーというのがジン達が外の世界から呼び寄せた事を知り、飛鳥達を勧誘してきたらしい。……ジン達のコミュニティを目一杯扱き下ろした上で。

 

しかし飛鳥達は勧誘を断り、逆にガルドにギフトを使って聞き返したらしい。何故お前がコミュニティをそこまで大きく出来たのか、と。

 

そこでガルドから語られたのは実に胸くその悪い話だった。奴らは狙ったコミュニティから人質を取ってゲームを強制させたらしい。しかも人質はその日の内に殺され、死体は喰われたそうだ。そしてギフトを解いた飛鳥に襲いかかったガルドを耀が捩じ伏せて宣戦布告、ゲームをする流れになったそうだ。

 

話を聞き終え、皆が思い思いに憤慨するなか、鈴香は目を閉じたまま何かを考えていた。

 

「…………ねえ、貴方達にいくつか聞いておきたいのだけど」

 

そして目を開いた鈴香は飛鳥達に質問を投げ掛けた。

 

「え?」

 

しかし飛鳥達は意味が分からなかった為に間の抜けた声を上げた。

 

「だから聞きたい事があるのよ。答えてくれるかしら」

 

「え、ええ。なにかしら?」

 

「先ず、フォレス=ガロはこのあたりのコミュニティを吸収併合して大きくなったのよね?」

 

鈴香の一つ目の質問にはジンが答えた。

 

「は、はい。確かにフォレス=ガロはギフトゲームを用いてこのあたりのコミュニティを取り込んで大きくなりました」

 

「……そっ、次の質問よ。これは黒ウサギに聞くわね? 箱庭の貴族は箱庭において重宝される存在なのよね?」

 

問い掛けられた黒ウサギは戸惑いながらも鈴香の質問に答えた。

 

「YES、黒ウサギ達、月の兎は"審判権限"等の特権を持っているのであらゆるコミュニティで重宝されるのですよ」

 

「なるほどね。最後は飛鳥、貴女に聞くわ。ガルドとやらは貴女と耀に黒ウサギ共々うちのコミュニティに来ないかと言われたのよね?」

 

飛鳥も鈴香の質問に答えるが、皆と同じく鈴香の意図を図りかねている様であった。

 

「ええ、ガルドは確かにそう言ったわ。でもそれがどうかしたの?」

 

「ええ、言いたいことはいろいろあるけど、とりあえず私に言えるのは…………お手柄よ貴女達」

 

「鈴香さん!?」

 

いろいろ聞いてきたかと思えば突然喧嘩を売った三人を誉める鈴香に黒ウサギは思わず叫んだ。黒ウサギ程ではないものの他の皆も目を白黒させていた。

 

「分からないのなら貴女達にも説明してあげるわ。まず、フォレス=ガロはこのあたりを支配している、次にうちのコミュニティには黒ウサギが居る、最後にガルドがコミュニティを大きく出来たのは人質を盾にコミュニティを懸けたギフトゲームを強要出来たから」

 

「ここまでは良いわね? さて貴女達に聞きたいのだけど、箱庭の貴族を擁しているにも関わらず、私達が居なければゲームに参加出来る人材がジンしかいないコミュニティを果たしてガルドが何時までも放って置くかしらね?」

 

ジンと黒ウサギは鈴香の言いたいことを理解して顔を青ざめさせた。飛鳥と耀もなんとも言えない複雑な顔をしている。

 

特に飛鳥はガルドの言いぐさと所業が気に入らなかったから喧嘩を売ったのにそれがコミュニティを救うファインプレーだったのだから。それに己の意図とは無関係の為なのもいまいち実感を持てない理由だろう。

 

十六夜はまあ、

 

(ヤハハ、やっぱコイツが一番面白えな)

 

こんな事を考えていたりする。

 

「そ、そんな、それでは……」

 

「ええ、恐らく私達が居なくても早晩ガルドにゲームを挑まれていたでしょうね。勿論人質を取られた上で、ね。ガルドが事を急いだのは運が良かったわ。対策も練れるし、後手に回る事も無くなった。特に後者は大きいわね」

 

鈴香はジンの言いかけた事を裏付ける様に言った。

 

後手に回る事を避けられたのは鈴香達にとって幸運だった、というのにも理由がある。

 

先ず、この場合における後手というのはコミュニティの子供達を人質に取られる、という事である。これの最大の問題点は鈴香達が居ようが居まいが起こりうる事、という点だ。

 

一度人質に取られてしまえばその時点で子供達の命は無かったのだから、ガルドが目先のエサに目を奪われて尻尾を掴ませたのはあらゆる面で運が良かったと言えるだろう。

 

「さて、黒ウサギ、貴女はこれでも三人を責められるかしら?」

 

「うっ……」

 

鈴香の言うことにぐうの音も出ない黒ウサギ。その様子を見ていた鈴香は次に飛鳥に向き直るとジトッとした視線を向ける。

 

「飛鳥? 貴女も白紙の契約書に名を記す様な真似は関心しないわね?」

 

飛鳥は鈴香の発する妙に迫力のある雰囲気に少し怯む。

 

「うっ、それはそうだけど、でもあの程度の相手なら……」

 

「窮鼠猫を噛む、よ。慢心は己を滅ぼすわよ?」

 

「この場合、猫のガルドが鼠役だけどな」

 

『おい小僧! あんな奴とワシ等を一緒にすんな!』

 

「十六夜、貴方はちょっと黙ってて頂戴」

 

要らない茶々を入れてきた十六夜を軽く睨む鈴香。彼女も本質は猫に近い為、十六夜の言ったことは聞き逃せないものがあったからだ。三毛猫も反論する辺り、猫には猫なりの誇りがあるのだろう。そこで剣呑な雰囲気が漂いそうになったのをいち早く察知した黒ウサギが二人の間に割って入った。

 

「ま、まあまあ、二人共落ち着いてください。今はフォレス=ガロとのゲームをどうするか話し合いましょう。まあフォレス=ガロ程度なら十六夜さんか鈴香さん一人居れば楽勝でしょうけど」

 

「「「え?」」」

 

すっとんきょうな声を上げたのは鈴香、十六夜、飛鳥の三人である。

 

「何言ってんだよ。俺は参加しねえよ」

 

「私も参加しないわ」

 

「当たり前よ。貴方なんて参加させないわ。勿論東雲さん、貴女もよ」

 

これには流石に黒ウサギも待ったをかけた。

 

「だ、駄目ですよ! 皆さんはコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」

 

「黒ウサギ、お前の言いたいことは分かる、だがこの喧嘩はコイツらが売って、奴らが買った。それなのに此処で俺がしゃしゃり出ていくのは無粋だろうが」

 

「そうね。自分で蒔いた種位は自分で始末を着けないと、ね?」

 

「ええ、精々見てなさい?」

 

「……ああもう、好きにしてください」

 

一日中振り回され、疲れ果てた黒ウサギはもうどうにでもなれと匙を遥か彼方に全力で投擲したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「コホン、そろそろ行きましょうか。本当は皆さんを歓迎する為に素敵なお店を予約して色々とセッティングしていたのですが、不慮の事故続きで今日はお流れとなってしまいました。また後日改めて歓迎を、「バチンッ!!」あうっ!?」

 

咳払いと共に切り出した黒ウサギ。しかし黒ウサギの話を鈴香がデコピンを打ち込んで遮った。

 

「まったく、コミュニティが崖っぷちなんだから無理しないの。それより黒ウサギにジン? 貴女達は私達に言うことがあるんじゃない?」

 

「も、申し訳ありません。皆さんを騙すのは気が引けたのですが黒ウサギも必死だったのです」

 

「僕の方からも謝罪します。どんな理由があれ、皆さんを騙す様な真似をしてすみませんでした」

 

鈴香は黒ウサギとジンに対して暗にケジメを着けろと言うと、二人共意味を違えずに感じとり、各々の形で謝罪した。

 

「謝ってくれた以上、私から言うことは無いわ。それに元々組織の水準はどうでも良かったし。春日部さんは?」

 

「私も怒ってない。……あ、けど」

 

「どうぞ気兼ねなく聞いてください。僕達に出来ることなら無理の無い範囲でさせてもらいますから」

 

「そ、そんな大それたものじゃないよ? ただ、毎日三食お風呂付きの寝床があればって」

 

しかし耀の言葉にジンが固まった。 箱庭において水自分達で用意出来なければ他所で買うか、数キロ離れた大河から汲んで来なければならないという。つまり、水の確保が儘ならない場所において風呂は一種の贅沢品であると言えるのだ。

 

「それなら大丈夫です! 十六夜さんがこんなに大きな水樹の苗を手に入れてくれましたから! これで水を買う必要も無くなりますし、水路を復活させる事も出来ますよ♪」

 

それ故に黒ウサギが言ったことは皆にも大変嬉しいものだった。特に湖にぶちこまれた面々は風呂には是非とも入りたかったからだ。

 

「そう、でかしたわ十六夜君」

 

「うん、十六夜、超グッジョブ」

 

これには飛鳥も素直に礼を言い、耀もサムズアップで答えた。

 

「あ、あはは…………それじゃあもうコミュニティに帰る?」

 

「あ、ジン坊っちゃんは先にお帰りください。皆さんのギフトの鑑定をお願いしたいですし」

 

「ギフトの鑑定、ねえ? それは何処で出来るの?」

 

鈴香の質問に黒ウサギは満面の笑顔と共に答えた。

 

「それは箱庭の東西南北・上層下層の全てに精通する超巨大商業コミュニティ」

 

 

 

 

 

 

「"サウザンドアイズ"で御座います♪」




読んでいただきありがとうございました。


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