猫又少女も異世界から来るそうですよ?   作:グリアノス

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どうも、第9話です。

戦闘描写が難しいです。






第9話 ギフトゲームだそうですよ?

十六夜達が挑戦したギフトゲーム、鷲獅子の手綱はグリフォンに強い興味を持っていた耀が挑むことになった。

 

このゲームにおけるクリア方法である“力” “知恵”“勇気”のいずれかでグリフォンに認められる、という条件を満たすには大まかに二つの方法に分けられる。

 

一つは力勝負や知恵比べでグリフォンを打ち負かし、屈服させる方法。もう一つはグリフォンに対して揺るがない覚悟を示し、その心を認められることである。

 

今回、耀が選んだ手段は後者。グリフォンに対して勇気を示し、認められる方法だった。

 

耀は自身の持つギフトでグリフォンと言葉を交わし、彼の誇りに対して命を懸けることで耀は彼に認められたのだった。

 

当然、飛鳥や黒ウサギは考え直すように耀を説得するが、白夜叉と十六夜が厳しい声で制する。

 

そして何より、

 

「グリフォンに認められるには全力でぶつからないといけないから」

 

と、耀が言ったことで二人は何も言えなくなったのだった。

 

「耀、言いたいことは色々あるけど…………無事に勝って帰ってきなさい」

 

「うん、行ってくる」

 

そして鈴香が耀に激励の言葉を掛け、グリフォンとのゲームが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄明の空に飛び出したグリフォンは大気を踏みしめ、文字通り夜空を駆ける。

 

耀はグリフォンの風を切り裂くような疾走に伴う強烈な圧力に苦しみながらも歯を食いしばって耐え続けた。その様子を見て、もはや手心は不要とみたグリフォンはその強靭な四肢だけでなく巨大な翼も用いて旋風を操る。

 

グリフォンは大気の壁を貫くような疾走に加え、旋回をも交えて耀を振るい落としに掛かる。耀は死んでも離すものかと手綱を握り締め、グリフォンもそんな彼女を振るい落とそうと旋回を繰り返す。

 

そしてゲームの結果は耀はその背から身を投げ出されながらも手綱を掴み続け、グリフォンの全力疾走に見事耐えきり、彼女が勝利したのだった。

 

 

 

 

 

 

彼とのゲームを経て、得られたグリフォンの旋風を操るギフトを使い、皆の元に帰ってきた耀を三毛猫と鈴香が迎えた。

 

『お嬢! 怪我はないか!?』

 

「大丈夫。指がジンジンするのと服がバキバキになっただけだよ。ただいま鈴香、ちゃんと勝ってきたよ」

 

三毛猫を撫でながら鈴香に帰ってきたと告げる耀。

 

「お帰りなさい。まったく、さっき怒ったばかりなのに無茶するわね」

 

鈴香は呆れの混じった微笑みを浮かべながら耀を優しく抱き締めた。

 

「ごめん。でもね鈴香、グリフォンの背に跨がるのは私の夢の一つだったんだ」

 

「そう、叶って良かったわね」

 

「うん、ありがと」

 

耀はそう言うと鈴香の胸に顔を埋めた。鈴香も耀の頭を優しく撫でていた。

 

(温かいな。それに凄く落ち着く…………そういえばこうやって誰かに抱き締められるのっていつぶりだっけ)

 

耀は鈴香の胸に抱かれながらそんな事を思っていると、そこにパチパチと拍手を送る白夜叉と感嘆の眼差しで耀を見つめるグリフォンが声を掛けてきた。

 

『見事だ。お前が得たギフトは私に勝利した証として使ってほしい』

 

「うん、大事にする」

 

「いやはや大したものだ、このゲームはおんしの勝利だの。ところでおんしの持つギフトだが、それは先天性のものか?」

 

「違う。お父さんに貰った木彫りのお陰だよ」

 

「木彫りとな? よかったらその木彫りを少し見せてくれんか?」

 

耀はペンダントとして首に掛けていた丸い木彫り細工を白夜叉に手渡した。

 

「これは…………これは凄い!! 本当に凄いぞ!! 本当に人造ならばおんしの父は神代の大天才だ! まさか人の手で独自の系統樹を完成させ、あろうことかギフトとして確立させるとはな! 素晴らしい!これは正真正銘“生命の目録”と呼べる名品だ!」

 

白夜叉は耀から手渡された木彫りを見ながらぶつぶつと何か呟き、木彫りがどういった物かの答えに行き着くと心底驚いたように声を上げた。

 

「ええい、なんということだ。これ程の芸術がまさか人の手で産み出されるとは…………素晴らしい!実にアーティスティックだ! おんしさえ良ければ言い値で買い取りたいぐらいだ!」

 

「ダメ」

 

耀は白夜叉の申し出を考えるまでもないと一蹴し、再び首に掛ける。白夜叉はお気に入りの玩具を取り上げられた子供のように未練がましく手を伸ばす。

 

「ううむ、残念だの。だがまあ売りたくなったら何時でも言ってくれ。さて、次はおんしの番だの」

 

…………ついにきたか。

 

鈴香は僅かに頬をひきつらせながら心の中で呟いていた。

 

「…………はぁ、良いわ、何をさせるの?」

 

「ふむ、こんなので良いだろう」

 

 

『ギフトゲーム名 “天を射る一撃”

 

・ゲームマスター名

 

・白夜叉

 

・プレイヤー一覧

 

・東雲鈴香

 

・クリア条件 ゲームマスターと闘い、認めさせる。

 

・敗北条件 降参、又は相手の殺害、プレイヤーが上記の条件を満たせなくなった場合。

 

宣誓 上記を尊重し、御旗と誇りとホストマスターの名の下に、ギフトゲームを開催します。

 

“サウザンドアイズ印”』

 

 

 

 

「…………いやいや、なによこれ。こんなの出来るわけ無いじゃない…………とか言っても無駄なんでしょうね」

 

「そんなに自分を卑下にするな。なに、おんしならさほど問題はあるまい」

 

鈴香は契約書類を読むとあからさまに嫌そうな顔をする。まあ何せ先程、皆に喧嘩を売るなと言った相手と喧嘩をするはめになったのだ、嫌な顔の一つや二つしてしまっても仕方がないと言える。

 

とは言うものの鈴香も断れない事を悟っているのだが。

 

「…………はぁ、貴方達、少し離れてなさい。巻き込まれても責任持てないわよ?」

 

鈴香の忠告を聞き、皆が少し離れた場所に行ったのを確認すると鈴香は少し腰を落として構えをとった。

 

「それじゃあ、始めましょうか」

 

「うむ、存分に掛かって来るが良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴香と白夜叉が向かい合うなか、先に動いたのは鈴香だった。

 

鈴香はそのしなやかな指先に妖術で作り上げた炎を灯し、円を描く様に指を馳しらせる。

 

「回れ! “火車(ヒグルマ)”!」

 

鈴香が生み出した炎は彼女の言霊により次第に高められ、身の丈程の燃えさかる炎の車輪となった。炎の車輪の内包する熱量は苛烈にして絶大。その威力たるや並みの幻獣を一瞬で焼き尽くす程である。

 

そして白夜叉に向かって炎の車輪が放たれた。

 

「ほう、なかなか良い炎を放つの。…………だがまあ」

 

白夜叉は手に持った鉄扇を一振りすることであっさりと炎を散らした。

 

「私に届かせるには程遠いな」

 

白夜叉は鉄扇を口元に当てて鈴香の次の一手を待つ。

 

「まあ、この程度でなんとかなるとは思ってないわ。“火車(ヒグルマ)二連(ニレン)”!」

 

今度は両手に火車を作り、それを白夜叉に放つ鈴香。

 

「一つで駄目なら二つで、か? 随分と芸が無いな」

 

白夜叉は落胆と共に鉄扇を振るおうとするが、放たれた二つの火車は白夜叉の目の前でぶつかり合い、その勢いを爆発的に高めた。

 

「まだまだ! 砕け!“風琴玉(フウキンダマ)”!」

 

そして鈴香は自分の目の前に風を集めて何方向にも複雑に乱回転する球体状の風を生み出し、いまだ燃えさかる炎に向かって撃ち出した。

 

放たれた風琴玉は燃えさかる炎に吸い込まれ、そして次の瞬間、大爆発と言っても過言でない程に炎の威力が増した。威力も規模も先程とは桁違いで、トリトニスの大滝の蛇神すら焼き尽くせる程である。それなりに離れた位置に居る十六夜達ですらその強烈な熱気に晒されているのだから、如何に強力なのかが窺える。

 

「む、少し驚いたぞ……ん?」

 

白夜叉も半ば本気で炎を振り払う。その体もどこか煤けている様だった。白夜叉の疑問の声は目の前にいたはずの鈴香の姿が見えなくなっていたからだ。

 

しかし白夜叉は慌てることなく鉄扇を振り上げる。そしてガキンッ!! と甲高い金属音が響く。

 

白夜叉の後ろに回り込んでいた鈴香は妖気を纏わせた刀を彼女に振るうがそれも難なく防がれた。

 

「……これも防ぐか」

 

「いや、少し危なかったぞ。いやはや、あれほどの炎が私の視界を潰すための囮とはな。ふむ、それではそろそろこちらもいくぞ?」

 

白夜叉はそう言うと鉄扇で鈴香の刀を弾くと鉄扇を開いて一振りする。たったそれだけで鈴香は数十メートルも吹き飛ばされた。そして今度は白夜叉が鈴香の視界から消える。

 

「ほれ、どこを見ておる」

 

一瞬で数十メートルの距離を詰め、鈴香の背後に回り込んだ白夜叉は鈴香に鉄扇を振るおうとする。が、突然白夜叉は身を仰け反らせた。というのも白夜叉の首があった所を妖気を纏わせた尻尾が振るわれていたからだ。振るわれる尻尾に白夜叉は直前で気づいた為にその一撃は白夜叉の髪を数本散らせるに留まった。

 

「…………えー、今のもかわすの?」

 

「いや、今のは少々肝を冷やしたぞ」

 

「かわしておいてなに言ってんのよ。こっちはあの一撃の為に色々仕込んだのに」

 

そして改めて向き直った二人は…………ゆっくりと構えを解いた。

 

「……まあ、今回はここまでね」

 

「うむ、それが良かろう。これ以上は命を懸けた死闘になるだろうしな」

 

こうして鈴香のギフトゲーム、天を射る一撃は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで白夜叉、この場合の勝者はどっちかしら?」

 

「なに、この私が勝ちきれんかったのだ。おんしの勝ちで構わんよ」

 

「そっちは殆ど攻撃らしい攻撃をしてないのによく言うわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてゲームを終えて十六夜達の元に鈴香と白夜叉が戻ると皆が二人を迎えた。

 

「鈴香さん! お怪我はありませんか!?」

 

黒ウサギは図らずも先程の三毛猫と同じ様な聞き方をしてくる。そんな黒ウサギが可笑しくて鈴香は小さく笑う。

 

「ふふっ、そんなに心配しないで黒ウサギ」

 

「ほ、本当にご無事で良かったのですよ……」

 

黒ウサギは鈴香に怪我が無いと判るとウサ耳のへにょらせて膝から崩れ落ちた。

 

「それにしても炎を出したり凄まじい速さで動いたり、東雲さんは色んな事が出来るのね」

 

「うん、凄かった」

 

鈴香の傍に近づいてきた飛鳥と耀は鈴香にそう賞賛の声を掛ける。

 

「そう、ありがとう」

 

鈴香は賞賛の言葉を素直に受け取る。

 

「ヤハハ。おい東雲、今度は俺と闘おうぜ」

 

「はいはい、また今度ね」

 

「おう、それじゃあ今度闘えよ」

 

そしてしれっと闘う約束を取り付ける十六夜に皆が苦笑したり、呆れの籠った視線を向けたりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで黒ウサギ、結局今日は何の用で此処に来たのだ? ゲームの斡旋か?」

 

白夜叉は思い出したかのように黒ウサギに声を掛ける。黒ウサギもすっかり忘れていたと声を挙げた。

 

「そうでした! 今日はギフトの鑑定をお願いするために来たのですよ!」

 

「うぬっ、よりにもよってギフトの鑑定か。専門外どころか無関係も良いところなのだが。まあ、四人共素養は高いのは判る。だがそれだけではなんとも判断しかねるな。おんしらは自分のギフトをどの程度把握しておる?」

 

「企業秘密」

 

「右に同じ」

 

「以下同文」

 

「妖怪です」

 

「小僧に小娘は真面目に答えんか! それでは話が進まんではないか!もう一人を見習わんかもう一人を!」

 

「別に鑑定なんて要らねえよ。人に値札張られるのは趣味じゃねえ」

 

ハッキリと拒絶する十六夜に頭を抱える白夜叉だったが、何か閃いたと言わんばかりにニヤリと笑った。

 

「まあなんにせよだ、“主催者”として試練を乗り越えたおんしらには“恩恵”を与えねばならんのだ。四の五の言わずに受け取れ。これはまあ、少々贅沢な代物だがコミュニティ復興の前祝いとしてなら丁度良かろう」

 

白夜叉がパンパンと柏手を打つと、四人の眼前に光り輝く三枚のカードが現れる。カードにはそれぞれの名前とその身に宿るギフトが記されていた。

 

 

コバルトブルーのカードには逆廻十六夜・ギフトネーム“正体不明”

 

 

ワインレッドのカードには久遠飛鳥・ギフトネーム“威光”

 

 

パールエメラルドのカードには春日部耀・ギフトネーム“生命の目録” “ノーフォーマー”

 

 

サンライトイエローのカードには東雲鈴香・ギフトネーム“大妖・猫又” “祀り神” ”圧し切り長谷部“

 

「ギフトカード!」

 

「お中元?」

 

「お歳暮?」

 

「お年玉?」

 

「なにこれ?」

 

「皆さん仲良しですね!? このギフトカードは顕現しているギフトを収納出来る超高価な代物なんですよ! 耀さんの生命の目録も収納出来て、好きなときに顕現させる事が出来る物なのですよ!」

 

「つまり素敵アイテムって事でオッケーか?」

 

「だから何で適当に聞き流すんですか! あーそうです素敵アイテムなんです!」

 

黒ウサギは必死にギフトカードの有用性を説くが、面倒くさそうに聞き流す十六夜達に黒ウサギは匙を投げた。

 

「へえ……なら水樹ってやつも収納出来るのか」

 

十六夜はギフトカードを水樹にかざす。すると、水樹は光の粒子に姿を変えてカードに吸い込まれていった。

 

「おお、面白いなこれ。なあ、水もこのまま出せるのか?」

 

「出せるとも。試しに出してみれば良かろう」

 

「だ、駄目です! そんな無駄遣いせずにコミュニティの為に使ってください!」

 

「くくっ、それの正式名称を“ラプラスの紙片”と言う、まあいわば全知の一端だ。そこに刻まれたギフトネームを見れば鑑定こそ出来ないものの、おおよそのギフトの正体も判るだろう」

 

「へえ? じゃあ俺のはレアケースって事だ」

 

「何?」

 

白夜叉は十六夜が手に持つギフトカードを覗き込む。そこには“正体不明”と刻まれている。それを見た白夜叉の表情が劇的に変化した。

 

十六夜のギフトカードを真剣な眼差しで見つめる白夜叉は不可解だと呟く。

 

「“正体不明”だと?…………いや、そんな馬鹿な。全知の一端であるラプラスの紙片がエラーを起こすなど」

 

「何にせよだ。俺のは鑑定出来なかったって事だろ。まあ、俺にとってはこの方がありがたいさ。それよりも俺は東雲のギフトの方が気になるな。おい東雲、お前のギフトって何なんだよ?」

 

十六夜はポケットにギフトカードを仕舞い込みながら鈴香に問い掛ける。

 

「私? うーん、私のはこんなやつよ」

 

十六夜の問い掛けに鈴香はなんとも言えない表情を浮かべながらギフトカードを見せてきた。

 

「なになに、“大妖・猫又”に“祀り神”それに“圧し切り長谷部”っておいおい、お前神様だったのか。それに“圧し切り長谷部”だと? 何でお前がこんな物持ってんだよ?」

 

「“祀り神”に関しては私が聞きたいわよ。“圧し切り長谷部”ってこの刀の事? これは吉法師っていう子からの貰い物で良い業物だな位に思ってたんだけど」

 

「吉法師って、織田信長じゃねえか」

 

十六夜の呟きに反応したのはまたしても白夜叉だった。

 

「なんだと!? おんし、あの者の縁者か!?」

 

白夜叉は鈴香に掴みかかる程の勢いで鈴香を問い詰める。鈴香はその勢いに少し押されながらもありのまま答えた。

 

「い、いえ、縁者っていうほどでもないわ。あの子は私の居た山によく遊びに来ていて、それからちょくちょく関わりを持っていた位よ」

 

「そうか。一つ聞いておきたいのだが、あやつは生きておるのか?」

 

「いえ、もう何十年も前に死んだわ。家臣の裏切りにあってね。まあ、あの子を殺したあの男は戦に負けて逃げていた所を私が殺したんだけど」

 

「おいおい、じゃあ何だお前が明智光秀を殺ったのか」

 

「ええ、火車で灰も残さず焼き尽くしたわ。ところで白夜叉、あの子がどうかしたの?」

 

「あやつは、いや、織田信長はこの箱庭に三度召喚されて三度共魔王になったのだ。それ故、あの者の生死はこの箱庭において大きな意味を持つのだ」

 

「そう、でもあの子は確実に死んだわ。仙術を使ってもあの子の魂を見つけられなかったから」

 

「そうか」

 

ならば良い、とは口にしない。それは鈴香にとって彼の者は魔王・織田信長ではなく、一人の少年、吉法師なのだから。

 

「この刀もあの子が死ぬ数日前に突然渡されてね。まったく、私に戦の無い世を見せるとか言ったのにあっさりと死んじゃうんだから」

 

そう言うと鈴香は何処か遠くを見つめる。箱庭では魔王と為りうる危険人物でも彼女にとっては大切な人だったのだろう。当時の事を語る彼女の目にはうっすらと光るものが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の目的であるギフトの鑑定をイレギュラーな形ではあるものの、良い形で終えた五人と一匹は店前にて、白夜叉に一礼する。

 

「今日はありがとう。また遊んでくれると嬉しい」

 

「あら、駄目よ春日部さん。次に挑戦するときは対等な条件で挑むのだから」

 

「だな。吐いた唾を飲み込むなんて格好つかねえからな。次に挑む時は渾身の大舞台で、だ」

 

帰りの挨拶の筈なのに抜かりなく挑戦状を叩きつける十六夜達に鈴香ははぁ、と溜め息をつき、白夜叉は愉快愉快と笑い飛ばす。

 

「はぁ、懲りないわね、貴方達」

 

「それも若さ故だ。多少は勘弁してやれ。だがまあ、その時を楽しみにしておこうかの。…………ところでだ。おんしらは自分達のコミュニティの状況を理解しておるのか?」

 

「名前と旗の事なら聞いてるぞ」

 

「そうか。ならば全て承知の上で黒ウサギのコミュニティに加入するのだな?」

 

黒ウサギは心臓を鷲掴みにされた様にビクリと体を跳ね上げる。

 

「そうよ。打倒魔王なんて格好良いじゃない」

 

「格好いい、か。そんなおんしらに忠告しておこう。おんしらが考える以上に魔王というのは危険な存在なのだ。このままだと娘二人は確実に命を落とすぞ」

 

「死にたくなくば力をつけろ。いつの時代も未来ある若い命が無惨に散る様は悲しいものだからな」

 

白夜叉の心からの忠告に飛鳥と耀は何も言い返せない。永い時を生きてきた白夜叉の言葉が自分達の中で留まり続けていたために。

 

「…………忠告ありがとう。肝に銘じておくわ。次は貴女の本気のゲームに挑むから覚悟しておきなさい」

 

「ふふ、望む所だ。私は三三四五外門に本拠を構えておる。何時でも遊びに来るが良い。…………ただしチップに黒ウサギを懸けてもらうがな」

 

「嫌です!」

 

「まあ、そうつれない事を言わんでも良かろうに。三食首輪付きの個室も用意するぞ?」

 

「明らかにペット扱いではないですか!」

 

「むう、ならばおんしはどうだ? 破格の待遇を約束するぞ? 無論の事、三食首輪付きでな」

 

黒ウサギに拒否されるや否や、今度は鈴香を標的にする白夜叉。どうやら鈴香は色々な意味で白夜叉に目をつけられた様だった。

 

「遠慮するわ。私は黒ウサギ達を見届けるって決めてるから。それに」

 

 

 

 

 

 

「猫に首輪は似合わないわ」

 

 

 

 

 

 

白夜叉の遠回しな勧誘を軽く断る鈴香。彼女は気儘な猫である為に。

 

「ふむ、黒ウサギといい、おんしといい、なかなかつれんな」

 

「ふふっ、私は猫なんだから、ね。さて貴方達、そろそろ帰りましょう」

 

鈴香の一声に従い、身を翻す面々。鈴香もそれに続いて歩き出すが、そこで白夜叉が引き留める。

 

「おんしを見込んで頼みがある。どうか黒ウサギ達を助けてやってくれ」

 

鈴香と白夜叉はお互いの目を見つめる。そして先に口を開いたのは鈴香だった。

 

「……そっ、黒ウサギを気に入ってるのは貴女だけじゃない、とだけ言っておくわ」

 

鈴香はそう言うと振り返る事なく黒ウサギ達を追いかけていった。




鈴香のギフトについてなんですが、実はとある方の感想が的中してて凄く焦りました。

それでは、読んでいただきありがとうございます。

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