まあ抜刀術のほうが書きやすそうだから……
私こと一之瀬蛍は華道の名家に生まれた。そんな中で母は口ぐちに言う。
「どうして、女の子じゃなかったの」
一之瀬家では代々女性が家元として継いでいく。そのため男であった自分はいつも母に責められていた。父も自分が幼い頃に病死……そのため新たな子宝に恵まれることは無かった。これから一之瀬家はどうなっていくのか……母は悩み、苦悩し、ついに壊れた。
ある日のこと、朝起きると母は
「おはよう、蛍ちゃん」
私はこの日から母の頭の中で女の子となる。それからの生活は徹底的に服装を女性物に変えられ、髪もロングのストレート、話し方も矯正された。当時は自分のことを俺と呼んでいたが、母に怒られ私と呼ぶよう改める。いつしか私と呼ぶことに違和感が無くなってしまった。家元になるための作法も学んだ結果か……仕草なども女性らしくなった。声変りはほとんどせず、高いまま。身長も170に届くことも無い。正直周りから見たらかなりの美少女なはずだ。
母に女として育てられることは昔の自分を否定されているようで、初めのころは嫌で仕方なかった。しかしだんだんプラス思考に考えるよう心がけていたら
「まあ……似合うならいいかな」
うん……慣れってほんと怖いよね。
そうして割と家元としての教育に楽しみを覚えてきたある日のこと。母と2人でテレビを見ていると茅場晶彦が開発したソードアート・オンラインの特集をみていた。
それを見たとき
「おもしろそうね」
無意識に言った言葉ではあったがしっかりと母の耳には届いていたようだ。今まで母の教育に逆らわず従ってきたおかげなのだろう。母が独自のルートからソードアート・オンラインを買ってくれることとなった。
「ゲームは買ってあげるけど、ちゃんと家元として勉学をおろそかにしないようにね」
照れながら話す母を見ているとなんだろうか……昔よりよっぽどいいお母さんしているきがした。
数ヵ月後……今日ソードアート・オンライン、通称SAOの正式サービスが始まる。ナーブギアをかぶった時、感情の高ぶりは最高潮だった。
さあ、行こうか。
「Link Start」
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壮大に広がる自然、日本ではありえない街並み。それでいて現実と何ら変わりない感覚。あまりの完成度に感動を持たない者はいないだろう。
プレイヤー名「hotaru」
容姿は性別に合わせて男のアバターにしているが、声が高いせいかあまり男らしく無いものだった。
「さて、感動に浸っているのもいいけど……レベル上げでも始めようかな」
風が心地いい……ここでなら一生暮らせる。いやいっそこちらが現実ではいいかもね……そんなことを思った4時間後。
「このゲームから脱出する方法はたったひとつ……ゲームをクリアすることだ」
SAO製作者、茅場明彦の声が始まりの街に響き渡る。容姿は現実世界で見慣れた自分になっていた。こうして私のデスゲームが始まりを告げるのだった。