このデスゲームが始まってもうすぐ2ヶ月。犠牲者は約2000名まで到達した。しかし未だゲームクリアまでの100層の内、第1層の攻略も出来ていない状態だった。死ぬことを恐れ始まりの街から出ない者も少なくない。
そんな中、私は……
「これでレベル16!!」
かなりこのデスゲームをエンジョイしていた。
正直、茅場からの通告を受けた当初はそれなりに悲観もしていた。しかし生活環境により培われたプラス思考のおかげだろう。思ったよりも早く現実を受け入れ攻略に向かうことが出来た。
「結局……クリアすればいいんでしょ」
自分でいうのもなんだが、なんて単純なのだろうか。しかし前向きに今も迷宮区でレベル上げをしている自分を思うと、この世界ではほんと得な性格なのだと改めて感じた。
「さてと……そろそろ街に戻ろうかな」
十分に経験値は得ただろう。無理をして死ぬくらいなら疲れが溜まる前にレべリングを終える……それが私の鉄則だった。
そうして引き返そうと後ろを向こうとしたそのとき。
グオォォォォォ
迷宮区の奥からモンスターの雄叫びが鳴り響く。
誰かがモンスターと戦っているのだろう……それが少し気になり、私は自然と足をそちらに向けていた。
=============================================================
私の人生は戦い続きの連続だった。
母からは学区内でのテストでは1位が当たり前といわれ、勉強に励み続けそれをキープしていく。学校内での重要な役職を自ら志願し周りからの評価も上げ続けた。将来、両親の期待に応えられる存在になるため。そして少しでも失望されないため。友人も作らず戦い続けた。
しかしそれもこのゲームが台無しにした。
普段はゲームなどやるはずの無いものであったけど、ニュースでも取り上げられたゲームを兄が手に入れる。そんな事実がより身近にさせ興味を沸かせてしまった。兄が帰ってくる前に少しやってみてしまおう。そんな出来心が私を絶望へと落としたのだ。
デスゲーム?ゲームから出られない?
模試は?成績は?受験は?
今までの苦労はどうなってしまうの……そんな不安が胸を締め付け続けた。それでも最初は少しでもクリアに望みを感じていた。
しかし2ヶ月が経っても1層クリアの情報は流れない。もし今日にでも1層がクリアできたとしても、これが後99層……このままのペースなら16年と8ヶ月かかることとなる。
そんなの無理に決まっているではないか。
「もう……いいや」
何もかも忘れるべく何日間も迷宮区で戦い続ける。
戦い続ければいつか倒れる日が来るだろう。走り続け、自分が全力で生きたことを証明しよう。そしてやり切って消えよう。
そうして今
グオォォォォォ
腕を振りかぶる1匹のモンスター。
この一撃でようやく死ねる。
そう思っていたのに……
パリンッ
和服の似合う美少女が一瞬でモンスターを消し去っていた。
===========================================================
「大丈夫……そんな戦い方してると死んじゃうよ?」
フードを被った少女がやられそうだったけど何とか間に合った。膝をつき、今にも倒れそうな少女を立たせようと手を差しす。
「余計なことしないで。なんで……たすけたのよ……。どうせみんな死ぬんだから……せめて満足して死なせなさいよ!!」
差し出した手は握られることはなく、悲痛な叫びで返された。顔を歪めて話す姿はなんとも痛々しかった。
「あなたは……ここでの生活に価値を感じていないんだね」
「ここに何を感じろというの。それに生活って何?たかだかゲームなのよ。人生無駄にするようなところに閉じ込められ、2ヶ月経っても1層すら突破できてないじゃない。その間に2000人も死んでるのよ。もう……私達は帰れない」
ついには泣きそう顔を見せていた。
「人生無駄にするようなところか……私はそうは思わないけどね。私達はここで確かに生きている。そして得られる物は確かにあるはずなんだよ。ただあまりに死に近すぎてそれを感じる余裕がないのさ」
なんと応えたらいいか分からないのだろう。少女がなかなか反応しない。それならばと話し続ける事にした。
「それにね……私はクリアする気満々だよ」
「えっ」
あまりに自信満々に、そして笑顔が綺麗だったせいか少女は見惚れてしまった。
「とりあえず、行こうか」
ぐいっ
少女の手を少し強引に引っ張ると慌てたように聞いてきた。
「え、どこに行くのよ」
少女の顔を見ることなくそのまま目的地に歩き続け、口を開いた。
「第一層攻略会議だよ」