魔法科高校の武闘派   作:紅茶パフェ

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色々なフラグがへし折れているが、逆に構築されるフラグがある模様


入学編2

一真がお花摘みを終えて講堂に入った時には既に半分の席は埋まっていた。

特に座席の指定は無いのだから、最前列だろうが最後列だろうが、端だろうが真ん中だろうが自由に座れるのだが、一真は座っている生徒を見て思った。

 

(誰だこの流れを作り出したのは)

 

前半分が意匠を凝らした花のエンブレムをもち、その事から花咲くブルームと呼ばれる一科生、後ろ半分が花咲く才能が無いと揶揄される雑草のウィードと呼ばれる二科生にきっちりと別れていたのである。

 

「在校生ではなくて生徒自身でしょうね」

 

「思考を読むな」

 

一真が周囲を見渡し、どういう流れなのかを考えていると会長との話が既に終わったらしい達也とリナが近づいてきていた。

 

「まあ、これも一種の生きる知恵だ」

 

「差別を享受する、ね。最初からこういう流れなのだから逆らわない方が楽なのだろうけど」

 

「前に行かないからな?」

 

注目の度合いではなく、普通の高校生活を送りたいがゆえに最初から大きく反抗するような事は避けるべきだと判断する。

別に入学してから時間がたって注目される分には構わないが、挑戦を行う必要など皆無である。

ただ、一緒にいる時間が長いゆえに麻痺しているのだろうが、リナや深雪と深くかかわっている以上注目を浴びない選択は既に不可能ではある。

 

「それじゃ、IDカード交付後に集合で……まだ先だが」

 

「そうだな、俺は前の方へ座るとしよう」

 

「都合よく一番前が空いてるからね」

 

前に座るのはまだしも一番前に座るのがほんの少し抵抗があるだけで誰かしらが座ればその流れで埋まる筈である。

リナのような容姿で目立つ人間が座るのであれば納得される可能性は高い。

そういう理由で二人は堂々と最前線の中央に向かっていった。

 

「あのあたりでいいか」

 

それを見届けた後で一真は後ろ三分の一の中央寄りの空き席を見繕って座りに向かった。

左右ともに空きが目立つが、いずれ席は埋まっていくだろう。

そういったところで手持無沙汰になった一真は脳内で相手を想定して戦闘を行い始めようとして、自分に向けられる意識に気が付き、中断した。

 

「隣、いいですか?」

 

「どうぞ」

 

控え目にかけられた声に気が付いたふりをして視線を声の主に向けた。

まだ空きは多いのに、何故こんな所に来たのか気になったものの、他にも伺っている気配の数と周囲の席を観察して納得した。

四人でいっぺんに座れるスペースはこのあたりにしかなさそうだ、と。

 

「良かったね~」

 

「これで一緒に座れるね」

 

「4つとなると探すの大変だもんね」

 

許可を出す必要はなかったが、出したところで三人の少女が合流して四人の少女が次々と座りだす。

左胸に意識を向けて全員二科生だと確認しつつ、思考を遮り下手に瞑想を行って隣の女子に体が若干動いてぶつかるのを避けるために見ていないと母親に何か言われそうだと思い、壇上に視線を向ける。

時計が視界の隅にあったので確認したところ、まだ二十分ほどは時間があるが、それほど苦ではない時間である。

 

「あの……」

 

すると、横から声がかかった。

間を挟んで掛けられた方角の逆側すぐ横には人がいないので、一真は自分に声をかけたのだと判断し、視線をそちらへと……それだけでは威圧してる感じになるかもしれないと思ったのか、一真は顔を動かした。

 

「私、柴田美月って言います。よろしくお願いします」

 

「夜津一真、こちらこそよろしく」

 

気の弱そうな声での自己紹介に、何故声をかけてきたのだろうか考えたが二科生同士で近くに座った縁で話しかけた、としか判断できない。

初対面でもあるし、自分の事を知っているわけでもなさそうだと思い、特に警戒することなく自己紹介を返す。

相手はレンズの向こう側の瞳でほっとした感情を浮かべていた。

眼鏡があまりないと聞いているが、ファッションでつけている人もいるとも聞いているので特に気にすることなく視線を感じたので一真は更に奥の少女へ視線を移した。

 

「あたしは千葉エリカ。よろしくね夜津君」

 

「こちらこそ」

 

明るい感じの少女の声に、話しやすそうだと思いながら返事を返す。

数字が入っていそうな名字だが、一真の脳内では判断できないので、後で達也にでも聞こうかと忘れているかもしれない事を脳内にメモしておいた。

そんなことを考えていたせいかもしれないが、残り二人の自己紹介を聞き忘れ、名前を理解できない状態のままとなってしまっていた。

隣ではないから問題ないかもしれないが、翌日に会った時などに声をかけられたらどうしようもないなあ、と若干己自身に呆れていた。

 

 

 

 

深雪の答辞は達也の予想した通り、見事なものであった。

一番近くで達也が見ているかもしれないが、声に喜びが混じっており、はっきりと透き通っている。

この程度で躓くなど達也もリナも思っていなかったものの、聞いている最中で内心ひやひやする発言が聞こえ出していた。

 

(みんな等しく、平等にって……波紋を呼ぶような単語を強調し過ぎじゃないの?)

 

(……いや、みんな深雪に見入っているようだ、気にされてない)

 

可憐な容姿と堂々としながらも初々しい態度に、上級生新入生の区別なく男どもの心を鷲掴みにしていた。

これは、明日以降確実に賑やかになるだろう、とリナは何処か他人事のように考え、達也は達也でいつも通りの展開になるだろう、と確定された未来を考えていた。

 

「労ってやりたいが、既にカードは配られているだろうな……」

 

「あの人垣の中に突っ込む前にさっさとIDカードを受け取りに行きましょ?」

 

そうして達也とリナは交付受付へと向かっていった……リナの姿を確認した瞬間、男子の大半が道を譲りかけたが、順番は守るべきだと考えたリナは達也を盾にして並ぶように動いた。

 

「……リナ」

 

「早く帰るに越した事は無いでしょうけど、横入りはご法度よタツヤ」

 

そうではなく、男子の視線が鋭くなったんだが、という言葉を飲み込んで達也は大人しくリナの言うとおりにしておいた。

並んでいるうちに会話をさばき終えたのか深雪がリナと達也の横に並びだした。

新入生総代はIDカードを受け取っていると生徒は知っているため、知り合いに話しかけようと思ったのだろうと推測し……リナと並ぶ様子に納得してしまった。

 

「私はAクラスなのだけど、同じクラスになれるかしら?」

 

「……クラスで均等になるように分けるから私とミユキは無理じゃないかしら」

 

「残念だが、俺も深雪とは別になりそうだ」

 

主に兄妹だからという理由で分けられている可能性が高い。

リナに対しては残念そうにしていたが、達也に対してはこの世の絶望が訪れたかのように落胆していた。

とはいえ、付き合いが長くなければ気が付かない程度であり、周りも周りで深雪とリナの対極的ではあるが美しい容姿の少女へのフィルターで余計に気が付いていなかった。

 

「まだ可能性はゼロでは無いはずです……!」

 

「まあ、まだ見てないから何とも言えないけど――」

 

「……兄妹云々は関係なかったようだ」

 

順番が来てIDカードを受け取った達也はクラスを確認してAクラスであることを確認した。

兄妹関係なく成績を均等にするために一科生での最低と最高を同じように編入させたのだろう、と同じ教室であることは好都合だと思いながらしっかりと保管しておいた。

 

「……私もAね」

 

「俺のはまだ理由が付くが……リナと深雪は」

 

途中で達也は言葉を区切った、同じクラスになった事に疑問が浮かばないでもないが、せっかく同じになったのだから無粋であるだろうと考えて。

そして、聞き耳を立てていた生徒(主に男子)はリナと深雪のクラスを聞いた直後にIDを持つものは確認して一喜一憂し、受け取ってないものは神に祈るようなポーズをとっていた。

 

「あ、そうそう答辞、良かったわよ」

 

「ふふ、ありがとう」

 

「俺もわが「司波さん!新入生代表の答辞、とても素晴らしかったです!!」」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

達也がほめようとしたところで乱入者が混ざり、誰にも気が付かれないレベルで深雪が眉をひそめる。

すぐに人当たりの良い笑顔に切り替え、無難な返事を行っていた。

そうして、一人が話しかけたところで、周囲で伺っていた輪が縮まり深雪包囲網が完成していた。

なお、脳内でリナが命名しただけであり、普通にただ周囲を囲まれているだけだ。

 

「そう言えば、司波さん達はこれからどうするんだい。皆でこれから親睦を深めるために食事に行こうかと言う話をしていたんだ」

 

「ごめんなさいね。先に帰る約束をしている人がいるの」

 

深雪は人当たりの良い令嬢の印象を与えるために笑顔のまま。

が、リナに関していえば特に言われていないので、強引に話をきるべく笑顔のまま対応する。

……笑顔とは本来攻撃的なものである、という言葉を周囲の人間は思い出していた。

リナのような美少女がやるならなおさら攻撃力があるだろう……今までの経験ではこの時点で勝負(?)は決し、このまま去れるのだが今回の敵(?)は根性があるようだった。

 

「じゃ、じゃあ!その人も誘って――――!!」

 

深雪、リナの二大美少女目当てな為か、意外とめげない男子生徒。

周囲もそんな彼に勇気づけられて踏ん張って耐えていた……彼にはカリスマ性があるのかもしれないと、面倒に思いつつも達也は笑顔で追撃をかけることにした。

……殺意こそないが、妹に手を出そうとする相手に対する兄のような笑顔で(実際にその通りではあるのだが)、だ。

 

「用事がありますので」

 

リナと深雪には見えない角度に顔を動かして……笑顔ではあるが、笑顔と表現するには恐ろしい形相を浮かべている達也についに敵(?)はひるんだ。

膝が生まれたての小鹿のようになってしまったカリスマ(?)男子はそれでもなんとか言葉を紡ぎだした。

 

「そそそそそうか…分かった。其れじゃあしし司波さん、また明日」

 

「……え、ええ」

 

兄がどのようにして退けさせたのか深雪はきになったものの、既に普通の表情であり、追求するのは憚れた。

リナと顔を合わせつつ、今のうちにこの場から移動しておこう、と意見が合致し、三人で移動をし始めた。





達也が一科生であっても演説内容を変えない深雪さんでした。
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