やばい存在登場
本来行く店が未だに開店準備中だという事で、エリカの勧める店に向かい、帰路についた。
平均的な一般家庭よりもやや大きい家であり、四人で住むにはかなり大きい。
「お兄様、何かお飲み物でもご用意しましょうか?」
「そうだね、じゃあコーヒーを頼む」
いつも通りの光景、とはいえ達也が命令しているわけではなく深雪が望んで行っている行動だ。
ここで断っても、押し切られることがわかっているからこそ、気にしていない様子で対応しているのである。
「分かりました。リナもコーヒーでいいわよね?」
「ええ、お願い」
リナもリナで深雪の淹れたコーヒーの方がおいしいと感じているのでソファに座りながら答えを返す。
「一真はどちらに?」
「いつも通り、訓練室でしょ」
とにかく体を動かすことが好きな一真は既にここにはおらず、地下にある訓練室に向かっていた。
いつもであれば達也を誘ったりしているのだが、今日はたまたま一人で訓練したい気分なのだろう、とこの場にいる全員は考え込んでいた。
「そう……だったら簡単なスポーツドリンクを作りましょう」
(なんで特製とはいえスポーツドリンクを一から作れるようになったのよ)
少し考え込んで、ストック補充の為と出来立てを渡すために作成しようと考えており、深雪の考えを読んでいるのかリナが最近深雪がスポーツドリンクを作り始めた事を思い出しながら改めてスペックの違いを思い出しつつ若干呆れていた。
そんな考えもつゆ知らず、深雪はキッチンへと足を進めていたが。
「……目のやり場に困る服装よね」
「女性から見てもそうなら俺にとってもそうなんだが……とはいえ、深雪の自由にさせておくさ」
妹に非常に甘いと自他ともに認める達也の発言にリナは半ばスルーする。
家の中で、かつ親しい者が居る時にしか見せてないとはいえ、女性から見てもつい見惚れる白く透き通る肌を見て何も感じないわけにはいかない。
そう考えてる間にも豆を挽く音とお湯の沸騰する音、それにスポーツドリンク用の果実を切っているのか包丁のリズムが聞こえる。
「私達相手には絶対に手を抜かないわよね……特に達也に対してだけど」
「コメントに困るな」
以前達也が趣味なのだろうか、と妹に聞かず目の前の少女に聞いたときは若干半目で睨まれつつ、そうじゃないけど深雪には聞かないようにと言われて以来聞かないようにしているとはいえ、かなりの手間だと思っているのだが妹の好きなようにさせるしかないしやめさせる理由もない。
「そういえば、やたらと私に対しての困惑の視線が多かったわね」
「……あの人が言ってた
入学式の空気でスルーしていたが、美貌に対してではなく、それ以外の感情でリナを注視していた生徒が複数見受けられた。
リナと、そして深雪と同行している達也に対する睨みもあったが、その中にはありえないという感情が含まれるものが多かった。
美少女と不釣りあいな人間が同行していると思っていたが、そういう視線とは趣が違っていた。
「まあ、チョッカイかけてこない限りはどうでもいいけど。ある意味恩人みたいなものだし」
「……確かに少なくない数の知り合いの恩人だな」
知り合いの従者が語った事を思い出しつつ、今の状況が悪いものと思っていないため干渉して来ない限りはスルーのスタンスだ。
一応顔ぐらい拝んでおけばよかったかと双方共に思っていたが、帰宅して落ち着いてから思い出した程度なので気にも留めなかった。
「そういえば深雪、聞くまでも無いだろうけど今晩の準備は済ませたの?」
「ええ、終わってるわ……仕込みだけは終わらせてあるからいつ来ても十分以内には出せるわよ。お兄様、リナ、コーヒーをどうぞ」
深雪の来る気配を感じ取ったのかリナがチラリと視線を向けて色々と綱渡りになるだろうイベントの事を考えて言葉とは裏腹に若干不安を感じたことを尋ねる。
深雪も深雪で過剰ではない程度に自信があるのか不安もなく、トレイに乗せたコーヒーを兄とリナの前に静かに置いた。
「普通、向こうが用意する側なのだろうが」
「祝いにかこつけて料理を食べたいだけでしょ?下手な国家元首より偉いんだし気にしたら負けよ」
下手な、どころか世界中の偉人よりも確実に上位の存在なのだが、かなりの頻度で出会った居るためか若干麻痺している。
懐柔する事は不可能ではあるが、敵対はなんとか回避可能な存在、それは――――
「……一真に持って行こうと思ったけれど、来るわね」
「バランス大佐には一応メールで伝達しておくわね。こちらに一任するでしょうけど」
「こっちも叔母上にも報告しておくか」
連絡を受けた側は間違いなく胃薬か胃の痛みに有効な魔法を扱える魔法師を呼ぶことだろう。
隠そうともしない、否来訪を知らせるためだけに放出されている
その気配を感じ取り、疑似的に設置してある扉の方向へと視線を向ける。
『おーい、とっくに気が付いてるんだろう。開けろー』
『すいませーん、両手が塞がってチャイムが押せないんですよー』
「チャイムならさないで想子をあふれさせた理由はそれなのね……」
そう言って、リナが本来は
すると何やら大きな箱を持っている長身で中性的な男(ただし人間とは思えぬ青肌な為、人間とは思えぬ男だが)と後ろ手を組んでいる猫の頭を持った紫肌の男と称していいのかわからぬ存在がそこにはいた。
「いらっしゃいませ、
「やあ、入学祝とやらに来てやったぞ」
「四人とも第一魔法科高等学校に入学おめでとうございます……おや、一名はトレーニングですか」
祝い事を理由に料理を食べに来ただけだろという突っ込みを三人とも堪え、お祝いの品をきちんと持ってきただけと納得させる。
用意したのはおそらくウイスの方なのだろうが、特に指摘せずに
「世界が違えどやっぱり
「ビルス様が来た事には想子の放出で気が付いているでしょうし、着替えてから向かってくると思います」
恭しく、相手を不快にさせない礼で深雪が言葉を掛ける。
人に対して(意図にかかわらず)魅了する事に長けた確実に有効なこの動作はしかし目の前の存在には通用しない。
「それよりもこういう時はご馳走があると聞いたぞ」
「下ごしらえは済ませておりますので、少々お待ちを」
そう言って一礼し、深雪はキッチンへと移動した。
出来立ての方が美味であると理解し、それほど時間を掛けずに用意するだろうと考えたのかビルスは何が出てくるのかを楽しみにしながら達也の前のソファに座り込む。
「魔法科高校はどんなところだ?破壊しがいはありそうか?」
「そこは普通楽しめそうか、だと思うんですが」
ビルスの発言に達也は呆れた声色で返す。
達也の目の前にいる存在が破壊神という事を考慮すればもしかすれば社交辞令のようなものかもしれないが、一応常識に照らし合わせた会話に戻そうとしたのだ。
「まあいいか。で、僕を感じ取れるようにはなったかい?」
「……いえ、無理ですよ。イデアを超えている情報を把握しろというのは」
少なくとも先ほどのようにわざと想子を垂れ流しにしなければ、目の前にいる事はわかるのに把握が一切できないのだ。
「まあ、いいか。その分、僕がここでおいしい食べ物を食べれるってだけだからな」
「なんで目を付けられてるのかしらね、タツヤ」
「俺の魔法のせいだろうな」
ビルスのある目的に見合う能力を持つものが達也だという話であり、その為に……神としての気配を認識させようとしている。
が、達也のスペックは未だにそこまで到達しておらず、ビルスの訪問は何度も繰り返されているのである。
「前菜ができました、一真は運ぶのを手伝って」
「わかった」
料理が出来たため、深雪が運ぶのを手伝わせるために一真を呼びに来た。
ご馳走に舌を満足させつつ、祝い用のケーキが出されたりしながら、たまに起こりうる夜は更けていった。
入学編が終わったあたりに、原作との相違や登場人物の紹介をします。