蝶の影響による生存者登場
そして、四葉にとっての大体の情報入手源の人物を仄めかす
ビルス達との宴会が終わり、見送った後、入浴・就寝を済ませ朝を迎えていた。
高校生二日目の朝もいつものような朝であった。
入学したからと言って(出来る存在は要るが)地球の自転が変化するはずもなく日常は変化しない。
「一真……またかけっぱなしで寝たの?」
「これでも設定は低いぞ?」
地球上の重力を基準として
これだけでも通常の人間では過ごせないであろう環境なのだが、サイヤ人として肉体強度のある一真はともかくとして深雪が平然としているのはおかしい筈の出来事である。
「……私がそれほど体力を使わない程度の重力に抑えるのはわかっていますけど、体調の悪化の時に動けなくなる可能性があるのですから控えなさい」
「だったら寝る時だけは5倍に落とす」
それでも地球の重力に準拠する事は無いようである。
深雪は10倍に抑えさせようと考えていたのでそれ以上に落とす意見に対して随分と進展したと思っていたが。
「毎日そうする」
「……まあ、その重力でなら構いません」
時々かけ続ける重力よりはましだと判断して諦めた。
強さを求めるのは本能と聞いているので諦めてスルーする事にした。
そうして着替えを行うであろう一真から離れるために部屋から出ようとすると、何かに気が付いたかのように一真が声をかける。
「何か機嫌が悪いが、どうかしたのか?」
「……少し、嫌な事があっただけです」
一瞬だけ立ち止まり、理由を簡潔に述べて深雪は部屋を出ていった。
何があったのかを考えてみたが、考えても答えは見つからないとすぐに思考を切り替えて達也にでも聞けばいいやと考えて服を着替える。
エンブレムの無い学生服を見て、劣等感を感じることなく同居人達と仲間外れになってるなあ、と軽く考えて。
そうして着替え終えた後に廊下に出ると達也とリナに遭遇した。
「達也、額が赤いぞ」
「寝ぼけた
「待ちなさいタツヤ、今変な二重音声が聞こえてきたわよ」
一真の指摘にリナが視線をそらそうとして達也の発言により断念せざるを得なかった。
深雪に起こしに行かされたのであろう達也のプチ災難を見つつ、一真は気になった事を何の躊躇いもなく聞いた。
「深雪の機嫌が悪かったが、何か知らないか?」
「俺に親父からの連絡が無かっただけだ。深雪に対してはあったようだが」
達也の言葉に対して、リナも一真も「あー」と言うのが似合う表情で納得していた。
色々な事があって評価はかなり低いのに、更に下げてどうするんだ、と。
「ただ、
「それで気温の低下が起きてないのね」
「ま、それより朝飯か……深雪がキッチンに入れてるって事はあの人か……」
◇
「達也君、リナさん、一真君。入学おめでとう」
「叔母上の護衛はどうしたのですか?」
一真が感じた気配の通り、そこには深雪以外の人間が居座っていた。
本来の任務を放っておくような性格はしていなかったはずだが、と達也が思いつつも実際にいるのだから何かあるのだろうかと思ったのだが。
「今の当主様と奥様があなた達とビルス様方以外に後れを取ると思いますか?」
「ビルス様の居る
自信満々に言い放った女性に対してリナがあっさりと発言する。
他にもこの世界での
「この世界で、に訂正しておきましょうか」
「油断は大敵なんですけどね、穂波さん。序列四位のあの人みたいな輩が居ないとも限りませんよ」
既に隠す必要はないのだが、ここにいる人間はすべて日本を代表する魔法師の中でもトップクラスの十師族の一つ、四葉の関係者である。
そして達也の話した序列というのは執事に割り振られている偉さのようなものだ。
「輩って……一応私の夫なんですけどね?」
「士郎さんの事じゃなくて似たような人の事ですよ……まあ、
「……タツヤ、あまりそういう議論は」
リナが終わりそうなところを見計らい、中断させようと声をかけた瞬間……ものすごい爆音が鳴り響いた。
爆発でも攻撃を受けたわけでもなく、近くから鳴り響いた音だ。
「……すまん」
「いや、そうだな。こういう話は本邸の方が最適だった……一真が腹を空かせていることですし、穂波さんもすぐに戻るでしょうから素直に祝いに来たと認識しよう」
(お母様自身がこの場に来ないだけ自重しているでしょうし)
深雪は、直接会って祝いの言葉を掛けたいのだろうという深夜の思考をある程度読み切っていた。
が、今はそう言う事が気軽に出来ない以上、信頼できる筆頭の人間である穂波を送り込んだと想定できる。
「ちなみにビルス様が滞在する予定がありましたので」
「ちょっと待ちなさい。ソレ、逃げてきてるだけじゃないの」
この場に来れない最大の理由が判明したと同時に、どうにかできる最大筆頭が居るのに護衛対象から離れてこちらに来ていることをリナは冗談交じりで非難した。
……行動を起こされたとして、居ても盾にすらならないのだから責める事は出来ないと知っているので本気で非難など出来よう筈がない。
「目的が達成されても居座るんだろうなあ……」
「今よりはマシになるだろうが、な」
◇
昇降口で一真と別れ、1年間世話になるであろう1-Aの教室達也達が入ると一斉に視線が集中していた。
一部の生徒からは達也とリナに対しての疑念が混じった視線が送られてきている。
(わかりやすすぎないかしら)
(都合がいいが、これに慣れていると隠すのが上手の者が居る場合、判断が付きにくい、か)
「皆様、おはようございます」
とはいえ、その視線もすべて深雪が挨拶をした事によって反らされ、深雪に集中している。
その視線は他の者と同様に熱いものが含まれていた。
その視線については深雪は耐性があるので特に気にすることなく、座席の振り分けを確認した。
「座席は深雪の近くかと思ったが……どうやらランダムで振り分けていて離されたらしいな」
「!?」
「……ミユキ、そんなこの世の終わりが来たような顔をしないの、同じクラスなんだからまだいい方だとしておきなさい」
ちなみにリナは深雪の横の席だった。
纏まっていてくれた方が達也としてもありがたかったが、贅沢をいうのであればもう少し近くの席に配置して欲しかった、と心の中で呟いていた。
「俺は席についている」
「まだ時間はあると思うけど?」
「離れた位置で、少しな」
もう少し的を絞るために、あえて離れて観察した方が
達也が近くにいる現状ではただ単に美少女二人に付随する羨ましい人物としての嫉妬の目線でしか見られないとも判断できるからだ。
「……そうね、余りお兄様にばかり構っていたらリナが望む学生生活を送れませんから」
「友人を作れるといいのだけれど、ね」
そういいつつ、教室に入った段階でリナ・深雪、達也で別れて割り振られた席へと歩んでいく。
深雪の席の方では首の位置からヘアゴムでふたつに分けて括ってある少女が、もみあげの長めな少女に言われて慌てていた。
そのまま錯乱したのかどうか定かではないが……深雪の目の前で盛大に転び、顔面を床に打ち付けるかと思われたが。
「大丈夫ですか?」
「あ、その……ありがとうございます司波さん」
間一髪で深雪が受け止めていた。
咄嗟にではあったが、相手の体の部位に負担を強いることなく、完璧な動作で。
その動きに対してクラス中の人間から尊敬のまなざしが差し込まれていた。
「顔を打ち付けなくて良かったわね……えっと?」
「あ、光井です。光井ほのかです!」
「司波深雪です。仲良くしてくださいね、光井さん」
少々興奮気味に話す光井ほのかに深雪は苦笑しかけたが、日頃より慣れている猫かぶりに揺さぶりは起きなかった。
その分を補うかのようにリナが苦笑して……敵意や害意の無さを確認し終えていた。
「工藤リナよ、もしかしてこの子おっちょこちょい?」
「うん」
近づいてきた少女に対してリナが聞くと、その少女は同意を示すかのように頷いていた。
「し、雫!」
「リナもあまり人の事は言えないでしょう?」
ほのかは声をあげて雫と呼ばれた少女に心外だと言いたいかのごとく突っ込みを入れて、深雪は深雪であきれ顔でリナを見ていた。
表情を崩しているのは、リナと深雪はそれだけ仲が良いのだという事を示す為であり、そこに関しては深雪は一切妥協をしていない。
「北山雫です。お名前はかねがね……ほのかがファンなんです」
「ちょっと!」
「……試験場で熱心に見ていた子かしら?」
「そう、一目惚れしたそうです」
「余計な事言わないでえ!」
2人の様子に、仲が良いのだと感じながら、リナは仲良くできそうだなと思いつつ……何故かはわからないが光井ほのかとは衝突する可能性を感じていたのだ。
命のやり取りなどではなく、何か別の事で。
ビルス様の行動で四葉の胃がマッハ状態。
機嫌を拗ねると下手すりゃ世界がボカンな爆弾とか胃が痛くなる。