復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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今回は胸糞の悪い描写があります、ご注意を。


東京編3

 ブランの暗殺を辛うじて成功させたシュンは、計画の際に参加する予定だったメンバーが負傷したので、その再選を行った。

 無傷なのは自分とガイドルフを初め、桜田に安原、木下、真栄田の六名だ。あの中年の男も含まれていたが、ブランの教え子たちを拘束する際に抵抗を受けて負傷したらしい。

 幹部以外で参加させる人選は、訓練の中で自分が優秀と認めた者だ。代わりを含め、あと一人追加しても良いだろう。

 そう思ったシュンは、自分が認めたもう一人を銀行強盗計画に加えた。

 訓練で二番目に優秀だった男だ。ここに来る前は引きこもりであり、ネットで愛国的な書き込みや、女性に対する侮蔑的な書き込みをしていた。

 ようやく現実に目を向けて来たのか、この極右政治団体の門を叩いたようだ。半年前に入って来てもまだ脂肪が残っていたが、シュンが鍛えたおかげか、真面な身体つきになった。

 射撃の腕も申し分ないので、計画の人員に加えた。二人目は三番目に優秀な成績を残した男、山田。彼も問題ないので加える。

 武器に関しては、桜田達が西側のAR-15系統ライフルを要求して来た。扱い易いが、命中率が悪いAK系統に不満があるらしく、室内戦でも取り回しの効くM4カービンを欲しているようだ。

 それらに関しては、ガイドルフが用意してくれた。シュンは精密機器であるM4系統のライフルを嫌っており、彼の分は用意されなかった。

 

「よし、これで良いだろう」

 

 人選を終えれば、装備が来るまでの間、銀行強盗に参加する者達の戦闘訓練を行った。

 流石に実弾を使う訳には行かないので、BB弾を発射するモデルガンで訓練を行う。購入したのはM4カービンだ。無論、M4は一挺で、後はクローンモデルである。

 訓練で休憩中、シュンは桜田になぜ銀行強盗をするのかを問う。前々から気になっていた疑問だ。あのブランが居なくなったので、桜田は気軽に答えてくれた。

 

「なんで銀行を襲って金を奪うんだ? お前ら金持ちだから、小遣いでも強請れば…」

 

「小遣い? 国家転覆の為に父たちが出す訳ないでしょ。直ぐに足がつきます」

 

「それもそうだな。俺がお前らの親父なら、引っ叩いて止める。でっ、銀行を襲う理由は?」

 

「それは、売国奴共が我々よりかすめた資金を取り戻す為ですよ」

 

 桜田は政治的思想でやっていると答えた。無論、それで銀行を襲って良いと言う理由にはならないが。シュンは呆れた様子を顔には出さず、桜田が語る理由を聞く。

 彼が言うには現政権では日本が終わるそうで、その為に資金が必要である。いや、自分等が早く政治の表舞台に立つための準備金が必要なのだ。つまり、民衆から支持を得るため、自作自演のテロをやるつもりである。

 そう語る桜田に対し、シュンは中半怒りを感じ、無関係な人間を殺傷するテロに頼らず、地道にやらないのかと問う。

 

「お前ら政治家のせがれだろ? そんな事をしなくても、政治家になれるじゃねぇか」

 

「それでは駄目なんです! 我々が悠長に議員になるために勉学に励んでいては、この国が外敵や売国奴共によって崩壊してしまう! だからこれは必要な犠牲なのです! 無関心な者には、直接身に危険が及ばなければ分からないのです!」

 

「それが理由になるのか? 無関係な人間を巻き込む理由に? その責任は取れるのか?」

 

 自分等の主義の為に、無関係な人間を巻き込むことを厭わないと答える桜田に対し、シュンは我慢できなくなり、胸倉を掴んで問い詰める。

 理想を語るように意気揚々と必要な犠牲であると語る桜田であるが、罪も無い人間を巻き込む事態、ブランとほぼ変わらない。

 シュンが胸倉を掴む中、桜田はやや震えていたが、理想を口にし続ける。

 

「我々はこの国のためにやっている! 立ち上がらず、危機に目を背け、平和を甘受し続ける者達の目を覚まさせるためにやっているんだ! 国を棄て、好き勝手に戦地を渡り歩く貴方には分かるまい!」

 

 怒りを見せるシュンに桜田が理想を語る中、彼の仲間たちが自分等のリーダーの胸倉を掴む大男たちに銃を突き付けた。

 まさか自分の教え子たちに銃を向けられるとは、周囲を見ながらシュンは思う。

 訓練中はぺこぺこと頭を下げ、大きな声で返答し、自分に感謝していた訓練者達だが、ここに来て恩をあだで返してくるとは思わなかった。

 人を殺したことがあるとはいえ、彼らはまだ慣れていない。シュンがその気になれば、瞬きする間に皆殺しに出来る。

 桜田を降ろさず、手近な男に標的を定めて殺そうかとしたが、ガイドルフが慌てて入って来て両者を宥めた。

 

「おいおい、止せ! 仲間だろ! これから強力するって言うのに何で殺しあおうとするんだ!? 銃をおろせって!」

 

 この時にガイドルフは真剣な表情を浮かべ、両者ともに手を下げなかったが、数秒後にシュンが桜田を降ろした。

 

「…はぁ! 今は貴方の力が必要だ、この国の未来のために」

 

「自分たちのことの間違いだろうが」

 

 苛立ちながらシュンが降ろした後、桜田達は銃に安全装置を掛け、ホルスターに仕舞ってからこの場を後にした。

 桜田達が立ち去って行く中、ガイドルフはシュンになぜ他人を気遣うような行動に出たことを問う。復讐のためなら、鬼になると思っていたのに、見ず知らずの他人が被害に遭うことなど知った事では無い筈だ。

 

「連中がテロを起こそうが、お前さんには知ったことが無い筈だ? 一体どうしちまったんだ?」

 

「あいつ等にムカついただけさ。夢見がちなガキの様だ。俺一人で銀行に強盗した方が楽に思えて来る」

 

 本当は、ブランと同じく無関係な人間を殺すことを厭わない桜田達に対し、怒りを感じて掴み掛かったが、ガイドルフにはそれを明かさず、嘘をつく。

 

「それが理由か? 何所で影響を受けたか…まぁ良い、計画の時は殺し合いにならんようにな。それとお前一人じゃ、警察にお縄になるだけだぞ」

 

 シュンの嘘にガイドルフは気にせず、計画の為、桜田を殺さないように警告してからその場を去った。

 一人残ったシュンは、近くのパイプ椅子に座り込み、なぜ見ず知らずの他人の犠牲になるのを気になったのか自問する。

 

「何処かで悪い影響で儲けたか…? やれやれ、先が思いやれるな」

 

 

 

 計画実行日、八名が乗れるほど大きい大型のバンに乗ったシュン達は、目当ての銀行の前に車を止めた。

 違法駐車であるが、一分ほどなら問題は無い。運転手の木下を残し、動き易いビジネススーツを着たシュンを含める七人は金を入れるための旅行用の鞄を担ぎ、顔が割れるのを防ぐためにシュン達はバラクラバを被り、銀行へ入店する。

 流石に怪しまれ、警備員が呼び止める。

 

「ちょっと、貴方たち。一体何の…」

 

 その警備員に、シュンは開いていたバックよりレミントンM1100散弾銃を取り出し、ストックで腹を殴打して昏倒させた。

 直ぐに悲鳴を上げようとした客の女性であったが、シュンが散弾銃を出したのと同時に、桜田達は鞄からアメリカの突撃銃であるM4系のカービンライフルを取り出し、安全装置を素早く外して銃口を向ける。取り出した全ての銃の銃口には、発砲音を抑えるための消音器が取り付けられていた。

 直ぐに本物であることを分からせるため、床に向けて撃つ。

 撃ったのは桜田で、手にはM4カービンベースとした他社のLWRC M6カービンが握られている。

 彼らが持っているM4カービンのクローンモデルが直ぐに本物であると分かった客たちは、直ぐに声を上げるのを止め、震え始めた。

 そんな普段は体験しないであろう銃による恐怖に怯える客や銀行員たちに対し、桜田は抵抗しなければ撃たないと告げる。

 

「姉ちゃんよ、死にたくなかったサツを呼ばねぇことだ」

 

 この間にシュンとガイドルフは、直ぐにカウンターに近付き、警察に通報する隠しボタンを押そうとした女性の銀行員に銃口を向けて止めさせ、外から見えないようにシャッターを閉鎖させるボタンを押して銀行を封鎖した。監視カメラは、消音器付きのカービン銃で全て破壊する。死角とされるトイレなどの箇所の制圧も素早く済ませた。

 

「お静かに。不要な抵抗を見せなければ我々は発砲しません。それに我々は貴方がたを怖がらせるために来たのではありません。ここに保管してある現金、否、売国奴共が溜め込んだ金を奪い返しに来たのです!」

 

 桜田は自分等の政治的思想を語りながら、標的は客や銀行員たちでは無いと告げた。

 これに銀行に運悪く居合わせた左派系党に属する議員が、堂々として帰るように訴える。

 

「君たち! そんな物騒な物は棄てて早く帰りたまえ! 今の発砲は見逃してやるが、一円でも奪えば直ぐに警察を、ギャァァァ!?」

 

 憎き売国奴と決め付けた左派政党の議員に対し、桜田は容赦なく二射目を左腿に向けて発砲した。

 左腿に感じたことも無い凄まじい痛覚を感じた議員はその場でのた打ち回り、悲鳴を上げる。

 これにはシュンとガイドルフは驚いたが、桜田は本気である事を伝える。

 

「これで我々が本気であることは分かりましたね。この売国奴のようになりたくなければ、英雄願望は棄てる事だ」

 

 撃たれた議員がうめき声を上げる中、桜田は怯える人質たちに伝えれば、無言のハンドサインで真栄田らに指示を出す。

 それに応じて見張り役を残し、真栄田たちが鞄を持って金庫へ向かう中、シュンは発砲した桜田に近付き、なぜ撃ったのかを問う。

 

「おい、なんで撃った?」

 

「こいつは撃たれなければ分からん奴だ。これで、以下に自分が馬鹿げた思想だったのかを理解した事だろう」

 

「あぁ、そうかい。それじゃあ俺は金を回収するぞ」

 

 平和主義や非武装主義を唱える政治家に、身を持って知らせるために撃ったと桜田が答えれば、シュンは単に撃ちたかっただけだと見抜いて、金庫の方へと向かった。

 引きこもりだった男も、金庫へ向かおうとしたが、見張りは最低でも三人必要なのか、桜田に見張るように呼び止められる。

 

「待て。お前は山田と一緒に人質を見張れ。俺は外を見張る」

 

「分かりました」

 

 山田と共に見張るように指示されれば、元引きこもりは人質たちを見張った。

 人質は銀行員や警備員を含めて三十一人ほど。男性が先の撃たれた議員も含めて十六人で、女性は十四人、子供は十一歳の少女が一人だ。金庫を開けられる銀行の店長は除く。

 一方でシュン達は店長に奥の金庫まで案内させ、暗証番号を入力させて分厚いドアを開けさせようとする。

 店長は警察が来るまでの時間稼ぎとしてか、わざと暗証番号入力を遅らせようとしたが、シュンに見抜かれて散弾銃の銃口を向けられる。

 

「変な真似するんじゃねぇ。あんたがもたつくと、あの偉いおっさんが死んじまうかもしんねぇぞ」

 

「うっ、わ、分かった…」

 

 低い声で一度脅せば、店長は暗証番号を素早く入力して金庫を開けた。

 

「さぁ、給料日だ」

 

 金庫に保管された大金を見てシュンが呟けば、現金を回収するチームは鞄に大金を手早く入れ始める。

 素早く鞄に現金を入れる訓練をしたので、回収チームは手早く大金を鞄に入れ込むことが出来た。シュンは大金を素早く鞄に入れた後に店長を脅し、目当ての水晶の破片を保管している金庫の場所を問う。

 

「おい、宝石の類は何所だ?」

 

「あっ、こ、こっちです…!」

 

 店長は大男の脅しに抵抗することなく従い、シュンを宝石の類を保管してある金庫へと案内させる。大金の入った鞄を渡されたガイドルフも同行し、シュンの代わりに店長を監視する。

 宝石を保管している金庫へと辿り着けば、探知機である心臓と開けるための工具を取り出し、鼓動が強い方へ翳せば、直ぐに目当ての宝石の破片は見付かった。

 

「よし、これで一つ目だ」

 

 保管している棚の戸を工具で力尽くでこじ開け、目当ての水晶の破片を懐へ心臓と共に仕舞う。

 これで桜田達とオサラバ出来ると思ったシュンは、大金を背負ったガイドルフと共にその金庫を後にした。

 

「でっ、次は北京か? ソウルか?」

 

「ソウルにしよう。最初は出来る所からな」

 

 東京が終わったので、水晶の破片がある銀行のどちらかに行くのかを問うガイドルフに対し、シュンはソウルに決めた。

 休戦状態とは言え、いつ戦争になるか分からない緊張状態がある韓国なら、平和な日本のように鍛えずに済むからだ。

 そう話し合っている間に、大金の回収を終えた真栄田達と合流してカウンターを抜け、広間に戻る。

 

「回収を終えました」

 

「よし、撤収だ。桜井を戻せ」

 

 真栄田から現金の回収を終えたとの報告を受ければ、外を見張る桜田は成功したと判断し、元引きこもりを呼び戻すように山田に告げる。

 これにシュンは嫌な予感を抱き、呼び戻そうとする山田の肩を掴み、元引きこもりが何所に行ったのかを問う。人質の少女が居なかったのだ。母親らしき女性が、心配そうな表情を浮かべている。

 

「おい、そいつは何所に行った?」

 

「何って、嬢ちゃんがトイレに行きたいからその見張りの為に…」

 

「ありがとな」

 

「ちょっと! それは俺の…」

 

 山田の言い分も聞かず、シュンはトイレ、女子トイレへと急行した。

 廊下を凄まじい速さで駆け抜け、女子トイレまであと少しとなった所で、少女の悲鳴と男の大声が聞こえて来た。

 どうやらあの引きこもりの男、少女を強姦するつもりでトイレまでついてきたようだ。

 なぜ見ず知らずの少女に、シュン自身はどうでも良かったが、幼少期のトラウマを思い浮かべたか、ここで行動せねば、後で後悔すると思ったからだ。

 悲鳴が聞こえる個室へ近付き、ドアを力尽くで抉じ開け、強姦しようと抵抗する少女を抑え付けようとする元引きこもりの男を引き剥がす。

 

「な、なにを!?」

 

 男はシュンになんで攻撃されているかも理解できず、顔面を思いっ切り壁に叩き付けられた。叩き付けた力は強く、男の鼻は折れ、壁には血痕が残る。歯も何本か抜けており、黒いバラクラバなので分かり辛いが、口元と鼻の辺りが濡れている。

 直ぐにシュンは男の胸倉を掴んで壁に押し付け、どうして少女を犯そうかと思ったのかを問い詰める。

 

「おい、ロリコン! なんでこんな行動を起こすんだ? あぁ?」

 

「や、止めてぇ…! お。おねがい…!」

 

 恐喝染みた問いに、男は見っとも無く命乞いをする。これにシュンは後頭部を叩き付け、同じ問いを行う。

 

「勝手な行動は慎めと言われてなかったか? ましてや嬢ちゃんを襲うなんてな」

 

「ひっ、ヒィィ…! は、白状しますぅ! 実は逃げるつもりだったんですぅ…!」

 

 今度は殺されると思ってか、男はこの場からPWS MK1と、ロシアのMP443自動拳銃を持って逃走しようとしたことを白状した。

 こんな男がそのような危険な武器を持って都会に出れば、日本においては前代未聞で、欧米のような無差別殺人事件になるだろう。

 全ての武器を取り上げて見逃したとしても、男は同じことをやる。ここでは未然に防いだが、見逃せば二人目は確実に犯される。この男を危険な人間に育て上げた自分が、責任を持って始末しなければならない。

 そう判断したシュンは、懐からナイフを引き抜き、確実に始末しようと心臓に向けて突き刺そうとした。

 

「行け…! 早く行け!」

 

 背後より少女の視線を感じた為、シュンは少女に怒鳴り付けてこの場から追い払う。

 まだ幼い子供の前で、人を殺すことは何かしらの影響を与える。そう思って追い払ったのだ。子供の視線が無くなった今、殺されると分かって抵抗する男の胸に向けてナイフを突き刺す。

 

「い、嫌だ! やめてぇ! グァ…! あぁ…!!」

 

 男は無駄に暴れ回るが、シュンの尋常ならぬ力で抑え付けられており、引き剥がそうとしてもその手は離れない。

 数秒後、ナイフの尖端が心臓を貫き、男は暫く痙攣してから息絶えた。

 完全に息の根がない事を確認したシュンは、死体を床に乱暴に打ち捨て、武器や装備の類を剥ぎ取り、女子トイレを後にしようとする。

 そんな時にと言うか、シュンが男を始末するのを待っていたのか、山田が入って来た。

 

「終わりましたか?」

 

「てめぇ、見てただろう? お前、こいつを始末するつもりだったのか?」

 

「えぇ、こうなる事を予期して、始末する予定でしたよ。まぁ、話は来るまでしましょう。警察が来る」

 

 シュンは待っていたと見抜き、山田に自分が殺した男を始末するつもりだったのかを問えば、彼は首を縦に振って答えた。

 理由を話そうとしたが、悠長に話していたら警察に踏み込まれると思ってか、車に行くように伝える。

 これに警察と一戦したくないシュンが応じれば、山田は男の装備を代わりに持って、急いで裏口に止めてある車まで小走りで向かう。

 

「おい、遅いぞ! 何をやっていた!?」

 

「教官殿が代わりに桜井を始末しました。銃も使わずにナイフで」

 

「そうか、それより早く乗れ。盗聴している無線機から、パトカーが銀行に急行して来る」

 

 苛立ちながら待っている桜田に、山田はシュンが代わりに始末したと答えれば、直ぐに乗るように伝えた。

 どうやら桜田は、最初から男が脱走すると分かっていたようだ。山田に始末を頼んでいたようだが、シュンが勝手に始末したので不問とした。

 大金の入った鞄を同じく積み上げられている場所に詰み込み、山田が始末した男から回収した装備一式をそこらに載せれば、桜田は助手席に座り込み、運転手の木下に出せと命じれば、運転手は車を走らせる。

 桜田がバラクラバを取り、周囲を確認すれば、遠くの方でざわついている人々が見えた。どうやら警察が来たようだ。早く現場を立ち去らねばと思うが、スピードを出し過ぎれば返って怪しまれるので、ここは道路を走る乗用車と同じ速度を出す。

 安全が確認されれば、シュン達はバラクラバを取って計画の成功を祝した。

 

「よし、売国奴共から金を奪い返したぞ!」

 

「さて、こいつをどう使うかわね」

 

 幹部の面々が成功を祝う中、シュンは山田にあの男を始末する理由を問う。

 

「でっ、なんであいつが逃げると分かったんだ?」

 

「顔に書いてあったからですよ。計画の実行に選ばれた時に。まぁ、確証は無かったですが、桜田さんに相談したら、監視するように言われましてね」

 

 顔に書いてあったからだと答えたが、確証が無く、桜田に相談した所、監視するように命じられた。

 少女が用を足したくてトイレに行きたいと言った際、若干ほど確証があったが、悲鳴が聞こえるまで待っていた。だが、聞こえてこなかったので、それに金の回収が済んだので呼びに行こうとしたが、悲鳴が聞こえる前にシュンが勝手に始末しに行った。

 悲鳴が聞こえて駆け付けたが、既にシュンが始末しようとしている所であった。殺すまで待っていたそうだ。

 

「まぁ、あいつ。訓練受ける前に名残惜しかったのか、紙とかに幼女の絵とか描いてましてね。そう言えばあいつ、入団する前は重度のロリコンだったな。桜田さん達がその歳で漫画やアニメを見ている奴は社会不適合者で、カスだ何だとか言ってたな。そん時のあいつ、殺意丸出しだったな」

 

 山田はシュンが殺した男を知っていたそうで、訓練を受ける前の男の様子を話した。

 聞けば、自分が好きな漫画やアニメ、それを見ている人間を桜田達は罵倒し、しまいには社会に不必要な人間だと言われて相当腹に立ったようだ。

 桜田達曰く、漫画やアニメ、ゲームこそが日本人の品位を下げ、現実に向き合う力を削ぎ、愛国心や戦う力まで削いでしまう堕落した娯楽であるそうで、自分等が政権を握った暁には、それらを日本から消し去るため、法律を作るつもりらしい。

 シュンの訓練に参加したのは、そんな桜田達に対して反乱を起こす為だそうだが、あくまで山田の想像である。

 漫画や映画、アニメ、ゲームに関してはチンプンカンプンであり、良い大人なのにそれに熱中する人間を気持ち悪いと思う所があるシュンだが、それを堕落した人間になると言って取り上げようとは思っていない。

 ペットボトルの水を飲みながらそのことを話す山田の話を聞き、シュンはますます桜田達の元から去りたくなった。

 

 

 

「着きました」

 

「よし、金を降ろせ! 直ぐに金庫へ入れるんだ!」

 

 車がアジトへ辿り着けば、桜田の指示を受けた構成員達は直ぐに銀行から奪った金品が入った鞄を金庫へと運んで行く。これも訓練の一環でやっており、作業は円滑に進んだ。

 もう用が終わったシュンは、早く桜田達の元から離れたいので、一切の報酬金を貰うことなく離れると告げる。

 

「済まねぇが、俺はここまでだ。謝礼もいらん。目当ての物は手に入ったしな」

 

「そうですか。出来れば、次の新兵訓練もやって貰いたかったですが、今度から別の傭兵にやってもらいますよ」

 

 脱退はあっさりと上手く行った。報酬は要らないと言えば、桜田は直ぐにシュンの脱退を認めたのだ。

 これにシュンは、桜田に秘密を知ってしまった自分を生かしておくのかと問う。

 

「随分あっさりしてるな。色々と知り過ぎちまった俺を殺さないのか?」

 

「直ぐに雇い主の秘密を喋る傭兵など、今後の就職場所に困るのでは? まぁ、我々の事やこの国の事などどうでも良いと思っている貴方なら、喋らないと思いますが」

 

 桜田の言う通り、雇い主の秘密を敵に売るような傭兵は信用されない。雇い主が酷ければ別だが、高い報酬だけ貰って跡は裏切るなど、詐欺師に他ならず、今後の就職に苦労する羽目になる。

 自分を殺す気がない事を確認したシュンは、侮蔑を込めた別れの言葉を述べる。

 

「そうだな。これで俺も再就職が出来る。そんじゃ、あばよ。愛国ごっこ、頑張れよな!」

 

 この侮蔑を、桜田達は安い挑発と捉えて何も言い返さなかった。心底腹を立てたが、ここは外なので、下手に銃を撃てば近隣住民に通報される。

 それを知って侮蔑的な言葉を掛けたシュンは、次なる宝石の破片を求め、ソウルとへと向かった。




次回はソウル編です。

銃撃戦を始めたいと思っています。
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