ここでブレイブルーのキャラがようやく参戦。
ハザマの口調、これで合ってるかな?
「向こうの方で、派手な戦闘が行われていたようだな…」
「あぁ、敗残兵が奴らに見付かってドンパチやってただろうな…今の俺たちじゃ、助けることも出来ねぇぜ」
イオアンが敗走する連邦と都市同盟の部隊を追っている頃、チーフとシュンが属するアルファ分隊は、増援が来るLZまで向かっていた。
追撃戦はここから遠くの方で行われているのか、光る月夜に黒煙が微かに見える。それに暗い夜を照らすかのように、閃光弾と爆発で落雷が起きたかのように光っている。
少し急げば間に合うかもしれないが、たかが一個分隊が加勢したところで、状況は全く変わりはなしないだろう。
そう思いながら、赤外線スコープを着けて夜道を歩く海兵隊員らは、大勢の戦友を助けることが出来ない自分等を情けなく思いながら、先に行くシュンとチーフ、ポイントマンと共に目的地であるLZを目指した。
警戒しながら進むこと三分、余りにも時間が掛かる所為か、チーフはLZまで直ぐに行ける近道を左腕のアーマーに付いてある端末を操作して割り出し、近くにある薄気味悪い森に向けて視線を向け、そこを通って近道しようと、一同に知らせる。
「よし、近道をしよう」
「なんか…気味の悪い森だな…チーフ、本当にここが近道なんですか?」
「この森を真っ直ぐに突っ切れば、LZまで五分で着ける」
やってくる増援のために先に着いて安全を確保するため、チーフはこの森に通ることを、気味悪がって文句を言う隊員に告げる。そんな隊員に対し、シュンは馬鹿にしたような言葉を口にする。
「なんだお前、怖いのか? 海兵のクセして」
「う、うるせぇ! ゴーストが出ようが、俺のバトルライフルで除霊してやるよ!」
「意気込みは良いようだな。行くぞ」
馬鹿にされたことで腹を立てたのか、BR85HBバトルライフルを持つ隊員は、自分の愛銃で幽霊でも仕留められると豪語する。その言葉を聞いてか、チーフはこれから入る森に進んでも大丈夫と認識し、ポイントマンと中尉、シュンと共に先に薄気味悪い森へと足を踏み入れた。
森に入れば、月の光を木の枝や葉が遮り、ライトや赤外線スコープが無ければまともに進めない程の暗さであった。ヘルメットや胸に小型の懐中電灯を身に着けている隊員らは、仕方なしとそれを付け、暗い森を照らす。
「マジでなんか出そうな森だな」
「止めろ、ゴリラ。マジで出てきたらどうする」
光に照らされた一本一品の木々が余りにも不気味な形をしているため、シュンは幽霊の類が出ると思って口にすれば、中尉が小さく怒鳴り付けて黙らせる。
他の隊員等も、怒鳴られるかと思って口を噤み、周囲警戒を行いながら一歩一歩前に進む。
街道は長い間整備されていないのか、雑草だらけであり、踏む度に微かな音を鳴らす。そればかりか、この惑星で行われた古い戦場跡らしき異物が大量に残されていた。それを見た隊員は、前を進むシュンに何故これほど残っているのかを問う。
「おい、この惑星は中世のルーマニアっぽい世界じゃないのか? なんで第二次世界大戦期のドイツ戦車や死体が転がってる? 東部戦線も兼ねているのか?」
彼が見て言った通り、この中世的文化である惑星に、第二次世界大戦後期でドイツ戦車であるパンターG型中戦車と、ドイツ国防陸軍の野戦服を着て完全に白骨化した多数の死体が転がっていた。それを灯りで照らして確認したシュンは、どうにも腑に落ちない言葉を漏らす。
「あぁ? 東部戦線も兼ねてる? 俺の知る限り、ここは完全に中世しまくってる世界のはずだぞ。確か大昔にこの星を居座ってた百合帝国の残党から俺の古巣がぶん捕ったが、この時の残骸は全部片付けられたはずだが…なんでこの気味の悪い森だけ残ってんのは分からねぇな」
「この森だけ残ってる? 何故だ?」
「あぁ。ある程度知ってる俺が言うのもなんだが、気味が悪過ぎたから、放っておいたじゃねぇのか?」
この星でかつて百合帝国と呼ばれる大帝国の残党とワルキューレが支配権を巡って争い、後者が惑星の支配者となったことをシュンが話せば、それを耳にしたチーフは何らかのトラップが仕込まれていたと判断してか、話した本人に問い掛ける。
それに不気味過ぎて回収するのが怖くなったと茶化した答えを返すシュンであるが、彼も罠の可能性があると判断し、周囲にライトを照らして辺りを探る。地面の方を照らしてみると、同行している海兵隊員と同じ装備をした幾つもの死体が地面に転がっていた。
「こ、こいつは…! 海兵の死体!?」
「第三小隊の分隊の死体じゃないか!!」
一個分隊分の人数の死体を見付けたシュンがそれを声に出せば、顔で彼らの事を自分と同じ中隊に属するメンバーであると中尉は即座に判断する。それに彼らが生前に‟何か‟と戦った形跡なのか、多数の空薬莢が転がっている。死体は海兵隊員だけなく、取り残された連邦兵の死体も幾つか確認できる。
「なんでこんなところに奴らの死体が…?」
「見ろ、何かに引き裂かれた跡が残ってるぞ…! こっちはヤベェモンで殴られた跡がある! ペシャンコだぜ!」
味方の死体を確認した隊員たちが口々に言う中、一人が死んでいる味方の兵の死因となった傷を見て知らせる。彼の言う通り、鋭利な刃物か、鈍器のような物で殴られた跡が残っている。敗残兵たちも同様に、海兵らと同じ武器で殺された形跡があった。
隊員等が味方の死体を見て驚く中、シュンは落ちている空薬莢を一つ手に取り、まだ温かいことを確認する。つまり、彼らは死ぬ前に、正体不明の敵と交戦したと言う証拠だ。
「空薬莢がちょいと熱いな…こいつは死んでからまだ経ってねぇってことだな」
ライフル弾の空薬莢を持って、シュンが死んでから時間がまだ経っていないことを告げれば、同じく死体を調べていたチーフも、彼の言う事が間違っていないことを、他の死体の推定時刻も付け加えて隊員等に告げる。
「奴の言う通り、死亡推定時刻は四十分前だ。敗残兵の死体は二時間か三時間前、昨日の物まである。射殺された死体まである…銃創からは連邦軍共通規格のライフル弾が摘出された」
「昨日に味方同士で撃ち合う? マジか…」
ここで新たな情報、一日前に殺された遺体や味方を撃ったと思われる死体が出た為、シュンはある最悪なことを思い出した。
「だとすると…質の悪いことになるぜ、こりゃあ」
「質の悪い? まさか死体を操って彼らを殺したとでも?」
「あぁ、あんたの言ったことと同じさ。ここら辺に、死体を操ってそいつ等を殺させた魔方陣か魔導士が潜んでる」
そのことを口にすれば、中尉は味方を殺したのは死体なのかと問えば、シュンはそれが合っていることを告げた。更に詳しく、彼はチーフと中尉、他の隊員等にも分かるように告げる。
「こいつは、メガミ人共が編み出した死んだ奴の死体を操って敵をぶっ殺させる質の悪い魔法だ。どっかに魔方陣でも書いて、ここに来る連中を殺すために、トラップ代わりにしたんだろうぜ。それか地面とか木に杖をぶっ刺したとかな。何にせよ、同胞は殺さないのに死んだ奴を何故か戦わせる奴らだ。もう発動してるかもしんねぇぜ」
笑みを浮かべながらシュンが言えば、心臓が鼓動していないと動かないはずの死体がビクビクと微かに動き始めた。
「お、おい…死体が動いたぞ!」
「どうやら、発動しちまったみてぇだな…」
死体が動いたことを一人の隊員が確認して言えば、シュンは持っている盛田式アサルトライフルの安全装置を外し、目前に居る連邦兵の死体に向けて構えた。同じくチーフも凄まじく自分等にとって不利な状況であると感知して、アサルトライフルの安全装置を外して周囲を警戒する。
「チーフまで銃を…!? こいつはヤベェ状況だぞ!」
「全員、周囲警戒! 何かヤバい事が起こるぞ!! セーフティーを外せ!!」
チーフが警戒し始めれば、彼らは危機的状況であると判断して、中尉の命令に従って銃の安全装置を外して周囲警戒を行う。
「お、おい! 一人生きてるぞ! 大丈夫か!?」
「馬鹿野郎! そいつはもう死んでる!!」
「えっ? グェ…!?」
だが、一人が出血多量で死んだ女性海兵がまだ生きていると判断して、駆け寄って水筒の水を飲ませようとした。シュンが呼び止めて止めさせようとしたが、既に彼は蘇った味方に、コンバットナイフで喉を切り裂かれた後であった。
斬られた個所から勢いよく血が噴き出る中、死んでいた連邦兵や海兵らが起き上がり、まだ生きている自分等に、生前の如くライフルを扱い、引き金を引く。
「ちっ!」
シュンは味方の兵士を撃ち殺した女性海兵の頭部に向け、銃弾を撃ち込んで無力化すれば、続けて二人目を撃つ。だが、間に合わず、一人が撃たれて地面に倒れ込む。
「ぐわっ!?」
「ブランコ!」
「撃て、撃て! 奴らは敵だ!!」
「十時方向より…軍服を着た骸骨が接近! なんで動いてる!?」
「落ち着け! 連中に撃たせるな!!」
一人が喉を切り裂かれて死に、一人目が銃弾に倒れて負傷すれば、彼らは少し動揺するが、指揮官の怒号で持ち直し、即座に遮蔽物となる場所へ身を隠して、自分等に襲い掛かる敵に向けて銃弾を撃ち込む。
同じく隊員等と共に遮蔽物へ隠れたチーフは、シュンと同じように的確に頭部へ向けて単発で銃弾を撃ち込み、次々と無力化して行く。やはり頭が弱点であり、他の急所部分である胸や太腿を狙っても怯む程度であった。地中から這い上がってくる歩く骸骨には、直ぐにバラバラになるが、幾ら叩いても湧いてくる。
「キリがねぇな…こいつで行くか!」
銃弾でちまちまと仕留めるのが面倒になったシュンは、素早く片付けるためにライフルを地面に落とし、背中の鞘に収まっている大剣を引き抜き、その鉄塊のような刃を死体になりながらも生前と同じような動きをする連邦兵に向け、振り下ろした。
胴体から右半分を失うと言う酷い状態であるが、物の見事に元の死体へ戻り、多少の返り血がシュンの身体に降り掛かる。一人目を斬り殺せば、続けて近くに居る二人、三人、四人と次々と斬り殺していく。偶然に近くにあった木を背にしている五人目を斬り殺せば、勢いよく振り翳された刃は、木ごと標的を切り裂く。
「す、すげぇ…」
次々と襲ってくる味方の死体や骸骨を大剣で斬り倒していくシュンの姿を見て、隊員らはやや呆然とした。
しかし、チーフの方が大剣で派手に暴れ回るシュンよりも敵を倒していた。
次々と頭部に外すことなく命中させ、近付いた際には成人男性の頭でも軽く吹き飛ばす拳を打ち込み、脅威となる敵を倒していく。
「まるでフラットだな」
過去に似たような物と戦った経験のあるチーフは、そのことを思い出しつつ、次々と這い出て来る骸骨を己の手足だけで砕き回る。銃すら不要と言った感じだ。
二人だけなら敵を殲滅できるだろうと思う海兵たちであるが、無理やり甦らされた敵は、普通の人間である彼らにも、その場で手にした武器で襲ってくる。それに敵の数も増えるばかりだ。
「キリがねぇな」
「あぁ、フラットの時は簡単だったが」
襲い来る敵を倒しつつ、シュンが近くで戦うチーフに向けて言えば、彼は過去で似たように集団で襲い掛かって来た太古の化け物の事を口にし、ライフルの銃座で骸骨を殴り付けてバラバラにする。
二人が奮闘してくれているが、このままでは数に押し切られ、皆殺しにされてしまうだろう。
そう中尉が思った時、上空からUNSC全軍が装備している降下艇であるペリカンが現れた。
「騒音? ペリカンだ!!」
ペリカンのエンジンが発する騒音を聞き付け、海兵たちは援軍が来たと喜ぶ。乗っているパイロットが森の中で戦っているシュンやチーフたちを熱源センサーで確認すれば、60mの所でホバリングを行い、乗っている援軍を送るべく、後部ハッチを開ける。
援軍は三名であり、チーフと同じミニョルアーマーを身に着けていることから、彼と同じスパルタンであると分かる。しかし、男性は一人であり、残る二人はアーマーと体格からして女性であった。ハッチが完全に全開になると、三名はパラシュートも無しに、60mの高さから一気に同胞のチーフと戦友の海兵隊員等が戦う戦場に向けて飛び降りる。
普通なら落下死するほどの高さであるが、ミニョルアーマーはそれを考慮しており、足元のスラスターを吹かせて、見事に地上へ降り立った。
「ブルーチームか」
ウジャウジャと湧いてくる骸骨を倒しつつ、チーフはやって来た援軍が自分の率いるチームであることを確認する。
降り立った三人は、周囲から湧き出て来る古い軍服を着た骸骨を即座に敵と判断して、手に持っている散弾銃にマークスマンライフル、二挺の自動拳銃の安全装置を解除し、襲ってくる骸骨集団に向けて放った。
「倒れない?」
「頭だ、頭を狙えば物と骨に戻る。殴るのも良い」
「了解!」
狙った胸に正確に当たるが、倒すには至らなかった。ここでチーフが無線で骸骨の弱点を告げ、彼らは弱点である頭部に向けて撃ち、近い距離に居る骸骨に対しては、殴るか蹴るなどして続々と排除して行く。
「なんて強さだ…」
「俺たち必要なくねぇか…!?」
スパルタンが四人に増えたところで、増え続ける骸骨が減り始めた。一秒間に十数体の骸骨が彼らの常人を超えるパワーでバラバラにされ、頭蓋骨を銃弾で砕かれる。背後から壊れて鈍器と化している銃で殴り掛かろうとも、一瞬で感づかれて肘打ちを受け、バラバラに砕かれる。
敵となった味方の死体に関しては、チーフとシュン、海兵隊員等が殆ど殲滅していたため、元の死体に戻っている。残る動く死体は、空から来た三人のスパルタンに一分も経つ前に頭を撃たれて全滅した。
「や、やべぇ…!」
数分後、四人のスパルタンの足元には多数の骨が散乱していた。
「あいつ等ヤベェな…」
大剣を振るって纏めて骸骨を倒していたシュンは、新たに空から来た三人のスパルタンが自分より数多くの骸骨を倒しているのを見て、巨大な刃を肩に担ぎながら、空いている左手で側面から飛び掛かってくる骸骨の頭部を、ワルキューレの将兵の死体から拝借したFNハイパワー自動拳銃で撃ち抜き、元の白骨死体へ戻す。
頭蓋骨を撃ち抜かれた骸骨が動かないのを確認すれば、素早く自動拳銃をホルスターに戻し、大剣の柄を両手に取り、骸骨を倒し続ける。
「あっ、テメェ!?」
大剣を振るって凄まじい音を鳴らしつつ、骸骨を纏めて倒していると、マークスマンライフルを持つ女性スパルタンが、シュンに向けて左手に握られたUNSC規格の自動拳銃を向けた。これに対し、敵でないことを訴えるシュンであるが、彼女は何の躊躇いも無く引き金を引いた。
「っ!? あっ…?」
「後ろが疎かね」
流石のシュンも、これは死んだと思っていたが、彼女が狙ったのは背後から迫る回兵の死体であった。頭を撃ち抜かれた最後の動く死体とされる海兵の死体は、糸が切れた人形のように地面に倒れ込み、持っている鋭利なコンバットナイフを手放す。
完全に動かなくなったのをシュンが確認すれば、彼女は背後にも目を配るように注意した後、向かってくる骸骨をマークスマンライフルで撃った分の数だけ仕留める。
「これで最後だな」
チーフが最後の骸骨の頭蓋骨を殴り潰せば、周囲に敵影が居ないことを確認し、持っているアサルトライフルの弾倉を外して残弾数を確認する。
「そのようだな」
動いている骸骨が一体も居なくなれば、シュンも大剣を背中に背負っている鞘の専用ラックに取り付ける。
一方での海兵隊員らは、皆が息を切らしており、その場に座り込む隊員も居るほどこの戦闘に疲れていた。死んだ隊員からは認識票が外され、負傷した隊員には医学に精通している隊員が治療に当たっている。
「クリア! 敵影無し!」
「さて、チーフ。今度の敵は何だ?」
他三名のスパルタンは敵が居ないことを確認した後、ライフルを持つ女性スパルタンが辺りの安全を確保したことを告げれば、男性スパルタンがチーフに、敵がどんな物なのかを問い掛けて来る。どうやら馴染みのある戦友のようだ。この問いにチーフは正直に答える。
「中世の地球に存在した串刺しで有名なワラキア公国だ。そして質の悪いファンタジーの魔物たちだ」
「最高だな」
敵がかつて存在した串刺し公で知られ、ドラキュラの異名を持つブラド公の統治下のワラキア王国と、質の悪いファンタジーであると答えれば、それを聞いた彼は皮肉を呟きつつ、ライフルを機関銃も付けてある背中に引っ付けた。
「で、そこの馬鹿デカい大剣を持ってる彼は?」
「現地協力者だ、敵じゃない」
「…」
「信じてくれ」
「チーフが言うなら本当だな。よろしく頼むよ、大剣さん」
「あっ!? あぁ…」
海兵隊員でもスパルタンでもないシュンを見た狙撃銃を持つ女性スパルタンが問えば、チーフは敵でないことを告げる。それを聞いてヘルメット越しから疑いの目を向ける三名であったが、「信じろ」の一言で疑うのを止め、男性スパルタンはシュンの肩を軽く叩く。
普通に叩いてしまえば、幾ら頑丈のシュンとは言え、脱臼する恐れがあるため、力を調節するが、それでも叩かれた本人はやや痛覚があったのか、叩かれた右肩を左手で抑える。
「それで、俺たちを呼んだ理由は?」
「イオアンを…」
「それは、彼を殺してもらうためです」
自分等ブルーチームの招集を掛けたリーダーであるチーフに、男性スパルタンが問えば、彼がその理由を言おうとしたが、何所からともなく若い男の声で遮られる。
「誰だ!?」
その声に反応した一同は、声がした方向へ向けて一斉に銃口を向け、いつでも撃てるように安全装置を外し、引き金の近くに指を添える。
この場に居る一同が銃口を向ける方向から来た声の正体は、シルクハットを被り、値打ちのあるタキシードを着た黒ずくめの若い紳士であった。髪の色は薄い緑で、瞳が見えない細い目をしている。最初に何者かを問う中尉の声に、若い紳士は素直に答える。
「どうも、私は統制機構諜報部…とっ、言っても元ですが、現ワルキューレ諜報機関に属する少佐、ハザマと言う物です。どうぞよろしく」
「ワイルドキャットの諜報部の人間が、俺たちに何の用だ!?」
「何の用…? それは、この惑星の現領主とその息子、イオアン・シルヴァニアを暗殺して貰いたいのです。あなた達の手で」
偽名であろう名前と属しているとされる諜報組織を名乗れば、一人の海兵が散弾銃の引き金に指を掛け、何の用で来たのかと怒鳴り散らす。またも問われたハザマと名乗る紳士は一切顔を歪めず、チーフらスパルタンと海兵隊にやってもらいたいことを口にした。
「暗殺…だと…!?」
「おい、あんた。統制機構とか諜報機関とかなんだか知らねぇが、いきなりやってきてこの惑星の領主を殺せだとか、イオアンを殺せだの一体何様のつもりだ?」
中尉が目前の男が自分等に暗殺をやれと言って驚きの声を上げれば、シュンはどういう理由でチーフと海兵たちに暗殺をさせるのかを問う。この問いにもハザマは、シュンに嘘か本当か分からない答えを出す。
「その件に関しては、ワラキアの独立を阻止するためです。この惑星は六度に渡り、敵の大攻勢を退けました。それだけなら良いですが、どうにも我々以外の勢力、かつて百合帝国の手によって滅ぼされた古の帝国の名を語ると領主であるショアラ・シルヴァニア嬢が接触しているらしく、その勢力から何らかの魔導具か、身体強化の薬を入手しているそうです。潜り込ませている我々の諜報員からの情報であり、これは我々に対する反逆行為となります」
「古の帝国…」
ハザマが発した古の帝国と言う単語を聞き、シュンは自分の全てを奪った復讐の対象であるネオ・ムガルと思い浮かべ、その古の帝国が件の勢力で無いかと問いただす。
「おい、あんた! まさかその古の帝国を名乗る連中って、ネオ・ムガルのことか!?」
「おぉ、なんと鋭い! そうです、ネオ・ムガルです! ショアラ様が件の勢力の力を借り、独立国家を建国するか、傘下に入り、ここを我が植民地世界の侵攻の橋頭保と提供するかです」
古の帝国の名を語る勢力がネオ・ムガルであることをシュンが問えば、ハザマは知ら居ないであろう相手が告げた為、見た目に合わない鋭さに大いに喜び、件の勢力の目的と領主の目的を語る。
それを聞いてまたネオ・ムガルと戦うことになり、握り拳をするシュンを見ながら、イオアンが暗殺の標的の一人になっている理由を述べ始める。
「連邦軍の敗残兵と都市同盟との戦闘を見てみましたが、一個中隊規模の機甲部隊しか殲滅できないはずのAクラスのイオアン様が、三個師団以上の機甲部隊をお一人で圧倒しています。AクラスがSSクラスの戦闘力になるのは、長期に渡る訓練とそれなりの身体強化が必須。ですが、この惑星にはその設備が無い。イオアン様は他の戦線に赴かれておりますが、クラスアップの強化訓練に身体強化を受けるほど滞在されておられません。異常なほどの戦力が上がったと言う事は、あれを見る限り、件の勢力から提供された身体強化剤を投与されているとしか考えられません」
「で、お前らの尻拭いをするために、この惑星の女領主とその息子を殺せって事なのか?」
目前の一行が警戒しながら聞く中、イオアンが暗殺の標的となっている理由を語れば、中尉が割って入って来た。
「えぇ、そうですとも。我々にでも出来ますが、ここで貴方たちに離してしまったため、我々が身内殺しなどすれば、貴方たちのプロパガンダに…」
「ふざけるな! 身内殺しが出来ないからって、お前らの後始末を俺たちにやらせるのか!? それになんだプロパガンダってのは!? ろくに止めも出来なかったお前らの責任だろうが!!」
割って入って来た中尉に対し、ハザマは連邦軍のプロパガンダに利用させないため、それに属する者達にやって貰いたいと説くが、逆に彼の神経を逆なでしてしまったのか、怒りを露わにし、いつ撃ってもおかしくない状態になる。それを見たハザマは、まるで自分は死なないと分かっているのか、更に逆撫でするように、怖がるふりをする。
「おー、怖い、怖い。そんな物騒な物向けないでください」
「コン畜生が! 脳天吹っ飛ばしてやる!!」
それが功を成したのか、バトルライフルを持つ気が短い隊員が、ハザマに向けて銃を撃とうとしていた。だが、銃口をシュンに握られて撃たせないようにされる。
「な、何しやがる!?」
「よしな、ここで死にたくないならな。あの狐みてぇな野郎は、お前らじゃ絶対に適わねぇ相手だ。この俺…いや、スパルタンとか言うのが四人いねぇと勝てねぇくらいのレベルだ…それに俺らは包囲されてる。チーフとかスパルタンとかは、もうとっくに気付いてるらしいぜ。ここら辺の死人を蘇らせて襲わせる魔導具を潰したのも、多分そいつだ」
「ありがとうございます。これで交渉をスムーズに進められますね」
初めてハザマと会った時、シュンと四人のスパルタンは隠されている彼の圧倒的な強さを見て、やや恐怖を覚えた。この森で蘇って襲ってくる死人を操る装置は、おそらくハザマが破壊した物であると判断する。それに彼の部下たちなのか、ハザマが姿を現した時に、黒ずくめの集団が自分等を包囲していることにも気付いていた。
彼らの装備はどの国家の特殊部隊なので使われている贅沢に予算を注ぎ込んだ高品質な物ばかりであり、カナダ製のM4カービンと言われるC8A1カービンの銃口には消音器が取り付けられ、様々なカスタマイズが施されている。更に安全装置が外されており、もし暗殺を断るようであれば、即刻この場に居るシュンも含む海兵隊員たちを射殺することが可能だ。
チーフらなどのスパルタンに関しては、大口径の対物ライフルであるバレットM82A1の銃口が向けられている。特殊な徹甲弾が使われているらしく、それも一人辺りに十もの銃口が向けられているため、幾らどんな攻撃でも防いでくれるシールドでも、この攻撃には耐えられないだろう。
「元から拒否権はないそうだな」
「えぇ、喋ってしまったのですから当然です。それに、これは貴方がたの上層部からの正式な命令であるのですから」
チーフが自分等を包囲している特殊部隊員らを見ながら言えば、ハザマは笑みを浮かべながら、この暗殺が連邦軍上層部の正式な命令であることを告げる。その証拠にハザマは指を鳴らして海兵隊の准将の男を呼び出す。
「な、なに!? 上層部からの正式命令だと!? それに俺たちが属する旅団の旅団長まで!? 上層部にはワイルドキャットのスパイが紛れ込んでいると聞いたが、まさかここまでとは…!」
「恐ろしいわね。スパルタンの情報もきっと漏れてるわ」
上層部からの正式命令と聞き、証拠である申し訳なさそうな表情を浮かべている海兵隊の准将を見た中尉は絶望し、マークスマンライフルを持つ女性スパルタンは自分等の情報が漏れているのではないかと心配する。
悔しがる海兵隊員たちの顔を見ながら、ハザマは懐からゆで卵を取り出し、皮を剥きながらどのようにして潜伏している諜報員が、連邦軍の上層部に出させたのか理由を言い始める。
「いやー、これには苦労したそうですよ。かありとあらゆる汚い手を使って出させたそうです」
「ひ、卑怯な…!」
「良く言えるぜ、お前らも似たようなもんだろうが」
一人の隊員が空いた手で握り拳を作りながら悔しがれば、シュンは連邦軍もそれと同等な行いをしていることを指摘する。これに新たな言い争いが行われようとした時、沈黙していた准将が前に出た。
「諸君、これは連邦総軍上層部からの正式な命令だ。拒否権は無い物と思ってほしい。それに、拒否すればどうなるか分かっているな?」
自分に注目している海兵隊員たちに問えば、それを理解している彼は大人しく従うことしか出来ないことを悔しがりながら、直立不動状態を取る。
「あなた方スパルタンも、分かっていますね?」
「分かった、お前の指示に従う」
殻を全て剥いたゆで卵を蛇のように丸呑みにしたハザマに問われたチーフらブルーチームも、戦友達や母艦を人質に取られていると判断し、大人しく指示に従う。
双方の組織に属していない流れ者のシュンも、自分に銃口を向けられていることが分かっているため、自分を従うしか無い事をハザマに問う。
「俺もやるしかねぇって事だろ?」
「察しが良くて助かります。フリーな貴方も無関係とは言えないのですから…」
「(ちっ、こいつ、終わったら俺たちに罪を擦り付けるつもりだな)」
瞳を微かに見せながら告げるハザマに、シュンは事の終わりに自分等に領主殺しと英雄殺しの罪を擦り付けると分かり、心の中で悪態を付くが、ここで死ぬわけにはいかないので、彼もまた大人しく従うことになる。
逆に言えば、ネオ・ムガルの手掛かりを掴むことが可能だ。これから殺しに行くイオアンとその母ショアラに、どのような手段でネオ・ムガルから身体か魔力強化剤を手に入れたことを問いただせばいい事だ。
「良いぜ、お前らの茶番に付き合ってやるよ。その代り、俺のやり方で行くぜ」
「えぇ、お好きにどうぞ」
命令に従うことにしたシュンは、自分のやり方でやると告げれば、ハザマも先ほど開いた瞳を閉じ、笑みを浮かべながら答える。その本性を隠す仮面のような笑みを浮かべるハザマに向け、絶対に殺されないと宣言する。
「だが、お前らには絶対に殺されねぇ。良いか、俺は連中を皆殺しにするまで死ぬつもりはねぇ! どんな奴が来ようと、この背中の大剣を頭に叩き込む。分かったか、狐野郎」
「はい、作戦の成功をご期待しております」
その宣言を聞いたハザマは、大口を叩くだけの威勢のいい男と判断して適当にあしらい、イオアンの暗殺をどのようにするか相談を始めるため、准将の元へ近付いた。
一方、夜が明け、連邦軍の敗残兵と都市同盟を追撃しつつ、彼らの本拠地まで快進撃を続けたイオアンと傘下の軍勢は、わずか一夜で大規模な拠点を壊滅させた。
たかが数時間ほどで壊滅するのは、正規軍の兵力を取り込んだ抵抗勢力としてあり得ないことだが、士気は低下し、戦意も殆どなかったため、それに混乱も来しているため、士気の高く、精兵揃いの軍勢に壊滅させられるのは当然だと言えよう。
本拠地にされている場所は、都市同盟の本拠地とされている惑星ワラキアの第二の大都市であり、防衛設備もそれなりに揃っているが、バルキリーなどの航空戦力を加えた敵軍に、制空権も無い都市同盟は一方的に嬲殺しを受け、壊滅状態となっていた。
都市の人間も反攻勢力を匿った罪として無差別爆撃を受けて犠牲となり、生き延びた者達は女子供問わず、見せしめとして串刺し刑の刑に処された。
最後の砦となる都庁舎も陥落し、周りの都市同盟の民兵らが武器を捨てて手を挙げる中、都市同盟のリーダーであるこの大都市の市長が、血塗れの剣を持ち、返り血塗れなイオアンに対して命乞いを始める。
「お、お許しくださいイオアン様! わ、私は連邦に脅されてやったことであります!!」
「すべて連中の所為なんです! 我々はあなた方に反攻の意思は持っておりません! 連中が我々の家族を人質に取り、殺すぞと脅してやらされたことなんです!!」
「その台詞は聞き飽きた、貴様ら全員死ね。同盟の豚共め」
全ての責任を連邦に押し付け、命乞いを始める市長と都市同盟の幹部たちであるが、彼には聞き飽きた台詞であり、容赦なく剣を振るい、市長と幹部たちを皆殺しにした。数分で彼らは頭を飛ばされるか、四方を切り飛ばされた物言わぬ屍と化し、床を血で真っ赤に染める。
「よろしいのですか、イオアン様。彼らを殺してしまって?」
「構わん。それにこいつ等、我々に寝返るための土産として、その類の書類を焼かずに大事に残しておるわ」
彼らを殺してしまっては、連邦からの情報が聞き出せないが、寝返りの土産として用意した書類がある為、殺しても別に問題など無かったことを副官に告げる。
「う、うわぁぁぁん!」
「し、静かに!」
告げ終えれば、子供の泣き声がイオアンの耳に入り、彼の注意を引いてしまった。
直ぐイオアンは、外で待機しているワルキューレの部隊に始末させるように命じる。
「ふん、餓鬼か。外に居る女共に、この都庁舎に居る女子供を始末させろ!」
「はっ! A中隊、入って来い! 仕事だ!!」
副官はそれに応じ、外で待機しているAIMS-74を持った歩兵部隊に都庁舎に入れさせ、中に居る女性や子供などを殺させる。屋内で悲鳴と銃声が響き渡る中、イオアンは副官と共に外へ出る。外へ出れば、待機している部下に、残った敵の掃討が進んでいるかどうかを問う。
「残党狩りは進んでいるか?」
「はっ、滞りなく進んでおります。雑魚ばかりで手応えの無い連中です、他の戦線への転属命令は出ていないのですか? このところ、村の焼き払いや残党狩りでうんざりしてます!」
「この好戦的な奴め。まぁ良い、この惑星の安泰が確認されれば、その要因である連邦軍の橋頭保とされている世界を叩くつもりだ。この次は同盟の怪物どもだ。楽しみにしておけ!」
「有り難き幸せ!!」
掃討戦が滞りなく進んでいることを告げれば、その好戦的な部下が他の戦線への転属命令が無いかと問う。この問いにワラキアにおける残党狩りが完了すれば、直ぐに最前線への転属があると答え、それを聞いた部下は大いに歓喜する。残党狩りが進んでいることを確認した後、イオアンは首都に帰還することを愛馬に跨りながら告げる。
「よし、母様が待つブラン城へ帰還する! ヘリや航空機は必要ないぞ!」
「よろしいのですか!? 周辺にはまだ敵が潜んでいる可能性が!」
「ふん、掛かってくるようであれば、返り討ちにしてやるまでよ!」
残って指揮を執らなければならない副官は、ヘリや輸送機も使わずに戻ると告げるイオアンに対し、潜伏している敵に襲撃される可能性が高いことを指摘するが、彼は返り討ちにすると豪語して、幾つかの傘下の部隊と一般部隊と共にブラン城への帰還の途に向かった。
キートン山田「後半へ続く」