今回は中世チャンバラゲームよりメイソン騎士団と、キルゾーンよりISAが参戦します。
銃にまみれた世界へ 前編
元統制機関情報部で現ワルキューレ諜報機関に属する少佐であるハザマの指示に従い、戦友達を人質に取られているマスターチーフと共に、惑星ワラキアの領主であるショアラと、彼女の息子であるイオアンを殺害したシュンは敵と遭遇することなく城を出て、周囲を見渡す。
「なんだ、また連邦でも攻めて来たのか?」
城下町の人々が各地の防空壕へ向けて一斉に逃げ出しているのを見て、シュンは爆音が聞こえて来る上空を見上げた。
彼の予想通り、上空では連邦軍の傘下である惑星間戦略同盟、通称ISAの巡洋艦を主力とした艦隊と、赤と黒に鷹が描かれた紋章を付けている中世期の軍艦を宇宙戦艦にしたようなデザインの敵艦隊と交戦していた。
その敵艦隊の紋章に見覚えがあるのか、シュンはそのワルキューレに属する部隊の名を口にする。
「メイソン騎士団だな。そういやぁ、チーフはかなり警戒されていたな。あいつが居ると聞いて、武勲を上げるために馳せ参じたってわけか?」
ISAが交戦しているのがメイソン騎士団であると分かれば、シュンはスレイブの柄に手をやり、周囲から出て来る赤と黒の鎧や戦闘衣に身を包んだ騎士や兵隊たちが、シュンを包囲する形で現れる。
「貴様、鉄衛騎士団の騎士では無いな!?」
「その鎧に、その返り血、この惑星の領主ショアラ・シルヴァニア嬢を暗殺したな!? 領主殺しの罪として、貴様を我が剣で討ち取ってくれる!!」
「我らが騎士団のために!!」
「赤と黒のために!!」
「クソッ、あの狐顔…根回ししてねぇじゃねぇか」
メイソン騎士団の面々は、返り血を証拠としてシュンを領主であるショアラを暗殺した実行犯と決め付け、剣や片手斧、メイスに槍を携えた四名が襲い掛かって来た。実際、シュンが彼女を暗殺したのだが、確かな確証が無いので、実行犯であると決め付けられない。
「そんな馬鹿デカい剣が振るえる筈が…!?」
一番に片手剣を持った騎士が素早い突きでシュンを一突きにしようとしたが、自分の予想外にも程があるほどの速さで振り下ろされた大剣で真二つに斬られる。一番手の剣士が左右に両断されたのを見て、残る三名は恐れおののくが、背後に数十名の兵士等を控えさせている指揮官は、彼らに向けて活を飛ばす。
「怯むでない! 敵はたった一人! 同時攻撃で潰してしまえ!!」
「おっ、うぉぉぉ!!」
その指揮官の活で、残る三名等は各々の武器でシュンに向けて同時攻撃を行う。
槍は中央から突き、片手斧とメイス持ちは左右からシュンを攻めるが、横の振り払いで一気に左右から攻めた二人が上半身と下半身を両断され、槍も先の辺りが無くなる。
「っ!?」
「しゃぁっ!」
自分の得物を破壊され、なおかつ二人の仲間が両断されて血飛沫を上げながら息絶えたのを見て、残る槍兵は直ぐに腰の護身用の片手剣を抜いてシュンが振り降ろした大剣を防ごうとしたが、凄まじい速さで振り下ろされる巨大な刃を防げる筈も無く、上半身の辺りまで刃を食い込まされ、ホースのように血を撒き散らしながら死んだ。
ただの肉塊となった騎士から大剣の刃を引き抜いたシュンは、一分ほどで最初の四人を斬り殺した自分を見て恐れおののくメイソン騎士団の兵士等を見て、挑発を仕掛ける。
「頭カチ割られたい奴から前に出てこい」
「おのれぇ、舐めた真似を! 弓兵隊、奴を射抜いてしまえ!!」
この挑発に乗った指揮官は、直ぐに控えている五名の弓兵隊にボウガンでシュンを射抜くように命じた。弓兵等が陣形を組んでボウガンを放とうとする中、シュンは最初から弓兵を投入しなかった指揮官を馬鹿にしつつ、城を出る際に死体から回収したAIMS-74突撃銃を片手で取り、安全装置を素早く外して弓兵隊に向け、引き金を引く。
「最初から弓でやってりゃあ、いいもんを…」
「ら、ライフルだ!!」
「直ぐに盾を!!」
指揮官は弓兵等を守るため、銃弾を防ぐ大盾を持った兵士らに防御を命じたが、それよりもシュンが撃った方が早く、五人中、三名が顔面に5.45mm弾を浴びて絶命する。残る二名は、腕のガントレットで防御したので助かる。
「ぬぅ、小癪な! 囲んで八つ裂きにしろ!!」
『おぉぉぉ!!』
弓でシュンを倒すことは困難と見てか、数を頼りに配下の兵等を突っ込ませた。
大勢の兵士たちが雄叫びを上げながら向かってくる中、シュンは動ずることなく突撃銃を乱射し、数名の足を止めようとする。だが、5.45mm弾ではメイソン騎士団が身に着ける鎧や戦闘衣を貫通できず、じわじわと近付かれる。
「死ねぇ!」
大盾と槍を持った兵士が自慢の得物で一突きにしようとしたが、それを大剣で受け切り、衝撃を後ろへ受け流せば、力を込めて一気に横へ巨大な刃を振り、対象を鎧後と切り伏せる。
衝撃で下半身から引き千切れた敵兵の上半身が宙を舞う中、続けて向かって来る敵兵等を次々と斬り殺していく。その肉と血が飛び散る光景を近くで見ていた指揮官と残りの兵士らは、恐怖を覚える。
「な、なんて奴だ…! たった一人であの人数を…お、応援だ! 応援を呼べ!!」
「は、はっ!」
たった一人で完全装備の十数名の兵士を次々と斬り殺すシュンの強さに、自分等の所に来るのではないかと思い、応援を呼ぶよう部下に伝令を命じる。伝令が応援を呼びに走った後、数十名の包囲網を突破した返り血塗れのシュンが飛び出て来る。
「で、出て来たぞ!」
「む、迎え撃つのだ! 弓兵! 奴を射殺してしまえ!!」
血だらけのシュンに向け、指揮官は残りの弓兵等に矢で射抜くように命じたが、照準を定める要も早く彼は手近な兵士に近付き、巨大な刃で肉塊にする。続けて近くに居る兵士等を纏めて殺害して行く中、弓兵等はシュンが自分等の方へ来る前に弓を放とうとしたが、ハルバートを持った騎士を殺した際に、彼は予め安全ピンを抜いておいた左手に握る破片手榴弾を、自分等にボウガンを向ける弓兵等に向けて投げた。
「手榴だ…!?」
目前に来て気付いた時は遅く、時間差を掛けて投げ込まれた手榴弾は爆発し、弓兵等に向けて多数の破片を撒き散らして殺害する。弓兵等を手榴弾で全滅させた後、側面から襲い掛かる兵士の兜に向けて右拳を打ち込んで怯ませた後、素早く引き抜いたナイフを鎧の隙間に突き刺し、その兵士を無力化する。
「ひっ、ひぃぃぃ!!」
「悪魔だ、悪魔だぁぁぁ!!」
「か、勝てるわけがねぇ!!」
数分足らずで、数十名の完全装備で辛い訓練を受けた騎士や兵士らを殺害したシュンの強さを見て、彼らは敵わないと恐怖し、蜘蛛の子散らすように逃げ始める。それを指揮官は止めようとするが、自分も殺される恐怖を覚えてしまったのか、部下に続いて自分を敵前逃亡した。
「き、貴様ら! それでも赤と黒に忠誠を誓った騎士か!? ま、待ってくれぇ!!」
「これがメイソン騎士団か? 俺が居た頃は、もうちっと野蛮で大義名分掲げて正義を気取るクソ見てぇな連中だったんだが、最近はこの様か…」
逃亡するメイソン騎士団の兵士達を見て、ワルキューレに属していた時の自分が知るメイソン騎士団は、自分等が行う正義のためならどんな行為でも許され、野蛮染みた者達であったが、今の騎士団の姿を見て、改めて時間の流れを実感する。
「対抗馬のアガサ騎士団の連中は、あいつ等みたいに腑抜けになっていそうだな」
メイソン騎士団のライバルとも言うべきアガサ騎士団も、目前で蜘蛛の子散らすように逃げている彼らを見て、アガサ騎士団もメイソン騎士団と同様に変わっているのでないかと疑問に思う。
「さて、仲間を集めて戻ってくる前に、早く去るか」
敵が増援を引き連れて戻ってくるかもしれないため、シュンは回収できる物を出来るだけ回収してから、その場を去って、城下町を出ようと、一番近い出入り口まで向かうおうとする。
城下町の中を走る中、上空に居るISAの艦隊から幾つかの上陸部隊が居るのか、現地軍と一切の銃火器を持たないメイソン騎士団が交戦している様子が通り際に見えた。そこからか、耳に付けている連邦製、それもUNSC製の小型無線機からハザマの声が聞こえて来る。
『もしもし? 生きてますぅ?』
いつもの感じなのか、ハザマが陽気に話しかけて来たため、シュンは苛つきながらも、保証されている筈の自分に向けて、メイソン騎士団が襲い掛かって来たのかを問う。
「あぁ、生きてる。それよりなんだテメェ、根回しも何も出来てねぇじゃねか! メイソン騎士団の野郎共が折れに何の証拠もなしにいちゃもん付けて襲い掛かって来たぞ!」
『それは済みません。一応、彼らに伝えましたが、悪魔のマスターチーフが居ると聞けば、武勲や今まで彼に殺された戦友達の仇と言って聴かなくて、この有様になりました』
「ふざけんじゃねぇぞ! テメェ、一体何してやがったんだ!? それとお前が呼び出した連邦の連中にはちゃんと俺を撃たないように伝えてるんだろうな!?」
『うーん、それは…』
努力はしたが、メイソン騎士団は聴かなかったと謝罪したハザマに対し、シュンは怒鳴り散らす。それとハザマが呼び出したとされるISAの艦隊から降下した部隊は、自分を撃たないかどうかを問えば、彼は少々言葉を濁し、返答を迷い始める。
「おい、どうなんだ?」
『彼らは私が呼び出した物ではありません。見付かれば撃ってくるかもしれないので、ご健闘をお祈りしております。撃たれたら必死に…』
「ふざけんなこの狐野郎が!! 何が呼び出した物じゃねぇんだ! クソッタレが!!」
ISAの艦隊はハザマが呼び出した物でないと分かれば、シュンは苛つく余り、彼が言い終える前に小型無線機を地面に叩き付けて破壊した。
それから大剣の柄を右手に握りつつ、戦闘が行われている城下町の中を駆け回る。
「貴様、報告にあった‟漆黒の剣士‟だな!?」
「心臓をえぐり出してや…」
出入り口へ向けて城下町を駆け回る中、先ほどの戦闘で既に報告が行き渡っているのか、数名のISAの将兵を斬り殺したメイソン騎士団の兵士等が自分を見るなり襲い掛かって来たが、最後の一人が言い終える前に、シュンの大剣によって一刀両断にされる。
「漆黒の騎士だぁ? 勝手に名付けてんじゃねぇ!!」
「ひっ!? ぐぇ!」
勝手に自分の仇名を付けたメイソン騎士団の兵士等に怒ったのか、それもと苛立ちを発散するためか、シュンは自分の目前に居る騎士を数秒ほどで皆殺しにした。
全員の四方が千切れるか、身体が分断されているのを確認すれば、シュンは大剣の刃に付いた血を振り払い、水筒の水を一口飲んでから先を急ぐ。
「こっちは馬鹿デカいトカゲと交戦して疲れてんだぞ、畜生が」
一角竜となったショアラとの激闘で、少々疲れがあったのか、シュンは悪態を付きつつ、交戦する敵兵を斬り倒すか、突撃銃で撃ち殺しながら進む。先を急ぐ中、遠くの方で未来の贅沢な装備で身を包み、ブルパップ式の最新鋭のアサルトライフルであるM82を持ったISAの兵士等が見えた。
『おい、騎士共を殺してる奴が居るぞ』
『剣を持っている! あいつも敵だ! 撃ち殺せ!!』
彼らもシュンの姿が見えたのか、大剣を持っていることを理由に敵と判断して、贅沢な銃火器の銃口を向けて撃ってきた。どうやら、彼らから見れば、剣などの刀剣類を持っている者は全て敵であるようだ。
「剣を持ってるなら誰でも敵って事かよ!」
自分に向けて一斉射撃を行うISAの将兵らに対し、シュンは手近な遮蔽物に滑り込んで身を隠してから大剣を置き、持っているAK系統の突撃銃を手に取り、咄嗟に出て目に付いた敵兵に向けて撃つ。
『フラグを投げろ!!』
一人が撃たれて倒れれば、直ぐにISAの将兵らは近くの遮蔽物へ身を隠す。連邦軍の一般歩兵とは違い、彼らは高度の訓練を受けており、すぐさま手榴弾を投げて来た。
「投げるのが早いのが欠点だぜ!」
手榴弾を一定の時間を待たずに投げた為、そこが欠点だと指摘しつつ、シュンは一つ以外を蹴り飛ばし、一つ手に取って敵が居る方向へと投げ返した。流石に上手くはいかず、軽機関銃を持つ敵兵が自分の隠れている場所へ向け、制圧射撃を仕掛けて来る。
自分が全てを失う前に、ネオ・ムガルの歩兵部隊が行って来た戦法だ。鏡を見れば、隊長らしき人物が、ハンドサインで数名に指示を出している。おそらく何名かを回り込ませているのだろう。
「同じ手は二度も通じねぇよ!」
そうネオ・ムガルと同じ戦法を取るISAの将兵らに向けて言いつつ、シュンは回り込んで来るとされる場所へ向け、再装填を終えた突撃銃を向ける。
案の定、その方向に二名の兵士が現れた。制圧射撃で抑え込まれている相手が頭を伏せて、自分等に気付いていないと思っていたのか、自分等に向けられた銃口を見て驚いた様子を見せていたが、直ぐにライフルの引き金を引こうとする。だが、それよりも早くシュンは突撃銃の引き金を引き、やって来た二名を撃ち殺す。
二名を撃ち殺せば、身を隠している遮蔽物から飛び出し、二人が来た方向へ向け、自分に制圧射撃をしてくる敵兵等に突撃銃を乱射しつつ、走りながらそこへ向かう。
「よし、撃たれてねぇ」
身体の何所も被弾していないことを確認すれば、銃の再装填を行い、敵が追ってこないかどうかを確認した後、近い出キリ口へ向けて走り始める。
途中、銃撃戦が終わった後だったのか、息絶えているISAの将兵らと、イギリスのブルパップ式突撃銃であるL85A2を持ち、現行歩兵装備で身を包んだワルキューレの将兵の死体が目に付いた。
「L85…こいつ等も派遣されてんのか…」
現行歩兵装備のワルキューレの将兵の死体を確認すれば、シュンはその死体を最前線クラスの装備を身に着けた部隊もワラキアに派遣されていると判断する。
『おい、聞こえるか? 俺だ。聞こえていたら、その無線機を取ってくれ』
使える物が無いか、敵に追い付かれる前に探そうとする中、ISAの兵士の無線機が突然鳴り出す。敵の通信だと思って無視していたが、あの声が聞こえて来たので、直ぐにヘルメットに付けられた無線機を取る。
「あんたか、今まで何所で油を売っていた?」
『油を売っていた? 失敬な、俺はお前を探すのに苦労してたんだぜ? それを自分のケツを守って貰っている恩人に言う台詞か?』
その声の人物は、あのガイドルフだ。ここまでシュンに無線で語り掛けて来なかったのは、探すのに手間取っていた様子だろう。
自分を見付けなかったことに腹を立てるシュンに対して、ガイドルフは無線機で彼に悪態を付きながらも、背後から迫って来たISAの兵士二名の頭部を二発の銃弾だけで撃ち抜いた。
撃ち殺された二名を、ガイドルフが何所から狙撃をしているのか探るべく、ISAの士官の死体から拝借した高性能な双眼鏡を手に取り、光って居る辺りを探る。
死体の銃創の方向を頼りに探っていれば、ドイツのワルサーWA2000狙撃銃を持ち、全身をギリースーツと呼ばれる森林帯に行けば、高いカモフラージュを誇る狙撃手やハンター専用の迷彩服を着たガイドルフの姿があった。狙撃銃の銃身辺りには、二脚が付けられ、非常に安定した狙撃が行えるようになっている。
これを見たシュンは双眼鏡から目を離し、感謝の意を表して親指を上げるジェスチャーを取ってから、無線で礼を言う。
「済まねぇ、見事な援護射撃だった」
『どうも。それより、L85A2を持って城下町の近くの出入り口を出て東の200mの地点に移動しろ。そこに次元の歪が現れる。激戦区だが、お前なら必ず突破できるだろう。その間にこの俺が見つからない限り、出来るだけ援護しよう』
「おぅ、頼むぜ。おっさん」
『おっさんは無いだろう』
この世界より脱出できる術が、城下町を出て東の200mの地点にあるとガイドルフから知らされたシュンは、彼に礼を言いつつ、言われた通りに光学照準器が付いていないL85A2を予備弾倉とも取り、AK系統の突撃銃を予備弾倉諸共捨て、そこを目指して再び城下町の中を走り始めた。
街中にワルキューレとISAの将兵が溢れており、シュンを見るなり手に持っている銃を撃ってくる。刀剣類や弓矢やボウガンを持っているメイソン騎士団の騎士たちは、相手にしているISAの兵士を手早く片付け、シュンに向けて襲い掛かってくる。
「居たぞ、漆黒の剣士だ!!」
「殺して名を上げろ!!」
「どんだけ広がってんだ、その仇名」
自分の事を漆黒の剣士と呼ぶメイソン騎士団の騎士たちに対し、シュンは勝手に付けられた仇名にうんざりしつつ、向かってくる騎士たちを自分の得物である大剣で斬り殺しつつ、近い出入り口を目指す。
「マント付けて剣を持ってるぞ! あいつも敵だ!!」
「ぶっ殺せ!」
「てめぇらは見分け方を覚えろ!」
メイソン騎士団の少数の騎士を撃破して次に進めば、分隊規模のISAの兵士等と遭遇した。彼らから見れば、マントを身に着けて剣を持った者は全て敵であるようだ。撃ってくる相手に対しシュンは、遮蔽物に身を隠しつつ、見分け方を覚えるように叫んでL85で撃ち返す。
敵は戦争のプロのように訓練された兵士たちであり、ベテランのシュンから見れば動きは読め、更にガイドルフの狙撃による支援もあって、容易に分隊に大損害を与えることが出来た。
「て、撤退しろ! 分隊長がやられた!!」
「ありがとな」
『多数の敵を相手取るには、まずは指揮官からやるのが先決だ』
敵の分隊長を狙撃してくれたガイドルフに礼を言いつつ、シュンは先を急いだ。
『上空にイントルーダーだ、見付からないようにしておけ。見付かれば厄介だぞ』
城下町の出入り口の門までもう直ぐとなった所で、ガイドルフからの警告の連絡が入った。上空を見上げてみれば、負傷したUNSCの海兵隊員らを乗せたISAの降下艇である「イントルーダー」が飛来している。ガイドルフの警告通り、分隊支援火器を持っている兵士が確認できたため、シュンは近くの物陰に隠れてやり過ごす。
通り過ぎたのを確認すれば、出入り口まで全力疾走し、遂にブラン城の城下町を出ることに成功した。
「さて、東に200mか」
コンパスを取り出して東の位置を確認した後、東の方角を向いて、そこへ向けて走り出した。
『移動する。暫く狙撃は出来ないぞ』
「あぁ、気にすんな」
途中、ガイドルフからの無線が入り、暫くの間、狙撃は出来ないとの連絡があった。これにシュンは大丈夫であると告げ、ワルキューレの改修によって少し軽くなったブルパップライフルを抱えながら、目的地へ向けて走り続ける。
「マジで激戦区だな」
目標まで後168mのなった地点で、機動兵器も含めるワルキューレとISAの機甲部隊同士の激闘が行われている激戦区に到着した。
凄まじい銃撃戦が行われており、双方の将兵と兵器が秒単位で倒れている。メイソン騎士団の騎兵隊も居たが、ISAの機関砲で次々と薙ぎ倒されている。何故、重装備の部隊に騎兵突撃を敢行した理由は分からないが、目的地まで向かうのは至難の業だろう。
『位置に着いたぞ』
「あぁ、そんじゃあ突っ込むぜ。援護を頼む」
『ケツは任せておけ』
ガイドルフが位置に着いた連絡を入れれば、シュンは援護射撃を頼めば、彼はそれに応じて進行方向に居る三名のISAの兵士を狙撃して無力化した。道が開けば、シュンは全力疾走で戦場を駆け抜けようとする。
「おい、なんだこいつは!?」
シュンに気付いたISAの兵士等が目前の敵に銃口を向けるのを止め、背後より現れた外敵に向けたが、数名が撃ち殺される。
「おら退け、こっちは急いでんだ!」
自分に向けて銃を撃ってくる敵を撃ち殺しつつ、シュンは聞こえてないであろう敵に言いながら、敵陣の中を突っ切る。進行方向に突撃を仕掛けて来るメイソン騎士団の騎兵隊を迎撃しているISAの装甲車(APC)が見えた。こちらに側面を向けており、T-34中戦車を斬った経験のあるスレイブに自信のあるシュンは、銃からその大剣に切り替え、斬り込む勢いで構わず突っ走る。
「なんだ、後ろからも馬鹿が…?」
上で銃座に着いている兵士が向かってくるシュンに向けて機銃を撃ち込もうとしたが、標的が右手に持っている自動拳銃を数発ほど撃ち込まれ、車内に落ちる。
「おらぁ!」
肉薄する歩兵に対処する機銃手が死んだため、直ぐに交代要員を出そうとする装甲車の乗員たちであったが、シュンは機銃手が付くよりも先に大剣を装甲車の側面に思いっきり突き刺す。大剣で突き刺された装甲車の装甲は、易々と木の板のように貫通され、中に居る乗員の一人が串刺しにされた。
「くぅぅ…!」
そのまま力を込めて巨大な刃を上げ、豪快に引き抜いた。巨大な刃を抉り出された装甲車は機能を停止し、生き残っている乗員たちは、悲鳴を上げながら車内より飛び出し始める。
「ひっ、ひぃぃぃ! 化け物だ!!」
逃げる乗員に対し、シュンは何の関心も無くそのまま逃がし、再び目的地へ向けて走り始める。
「あの姿は…!? 報告にあった漆黒の剣士か!? 皆の衆、奴を討ち取って名を挙げるのだ!!」
「またメイソンの連中か。良くも懲りずにやって来るもんだぜ」
戦場を駆け回る中、今度はメイソン騎士団の騎兵隊と遭遇。既に領主殺しの報告が行き渡っており、馬に騎乗している六人の騎士たちは、シュンを見るなりランスや剣、長斧を持って襲い掛かってくる。そんな彼らを見たシュンは、地面に向けて唾を吐き掛け、向かってくる剣を持った一番手に構える。
「死ねぇ!」
一番手が剣を振るえる距離に入り次第、両手剣をシュンに向けて振り下ろそうとしたが、カウンターを狙っていた相手の手中にはまり、弾かれて胴体を斬りおとされ、馬から落ちる。
乗り手を殺された馬は急停止し、そのまま戦場の野原の上を歩き回り始める。
「おのれ!」
「良くも!!」
残る五騎が馬を強く走りさせながら、仲間の敵討ちをするべく全力で向かってくる。
向かってくる騎兵に構えるシュンであるが、主を失って彷徨っている馬を見て、便利な足が出来たと思い、馬が居る方向へ向けて走り出す。
「走るよりいいな」
乗馬経験のあるシュンは直ぐに彷徨っている馬に駆け上がり、言う事を聞かせて自分に斬り掛かってくる騎兵らに向けて突っ込む。馬を早く走らせているためか、二番手の距離まで一気に縮まり、直ぐに相手が持っている長槍(ランス)が突き刺されようとする。
「この槍で貴様を!!」
敵討ちに燃える騎兵は、得物を仇に向けて放とうとしたが、あっさりと敵の得物である大剣に弾かれ、馬の首ごと胴体を斬りおとされる。
それから三名の騎兵が連続攻撃を仕掛けようとしたが、次々とシュンに斬り殺され、数秒ほどで全滅する。六人の騎兵を全滅させたところで、ガイドルフからの連絡が入った。
『シュン、急げ! 次元の亀裂が出たぞ!』
「遊んでいる暇はねぇな。急ぐか」
目的地に次元の亀裂が現れたとの報告を受けたシュンは、すぐさま馬を走らせ、目的地まで一気に向かう。
道中、ISAやワルキューレの将兵と出くわしたが、構わずにひたすら馬を走らせ、銃弾が飛び交う戦場を目的地に向けて駆け回る。途中、自分に向けて放たれる銃撃が幾つもあるが、反撃せず、ただ馬を目的地向けて走らせるだけだ。
その際に今の自分に取って最大限の威力であるL85A2ライフルを破壊されたが、そんなことはシュンに取ってどうでも良く、破壊されたライフルの銃紐をナイフで切り落し、使えないライフルを地面に落として荷を軽くする。
「グッ…!?」
突風のような風を浴びる中、シュンは脇腹に一発の銃弾を受けた。痛みがする左脇腹に触れ、傷の具合を確かめる。左手の掌に付いた血を見て、シュンは大した傷では無い事を確証する。
「鎧を突き抜ける程の速さを持つ高速小口径弾か。弾は体内に残らず、貫通してるか。大した傷じゃねぇ、このまま一気に走り抜けて大丈夫だろう。応急処置は出た先にやりゃあ済む」
応急処置を行うのは、この戦場と化した世界から脱出した後にすると決めれば、シュンは馬に鞭を打って更に速度を上げた。
進行方向に双方の将兵が何名か出て来るが、お構いなしに蹴り潰して進む。助けを呼ぶ声が聞こえても、1941年十二月のモスクワで救出したドイツ軍の戦車兵のようには助けず、無視して目的地までひたすら馬を走らせる。自分に対して狙撃を行う敵兵に関しては、ガイドルフが始末してくれるので、安心して走れる。
『シュン、次元の亀裂が出現したぞ! そこに飛び込むことだけを考えるんだ!』
「元からそのつもりだぁ!」
ガイドルフから次元の亀裂が出現した連絡を受ければ、シュンは背中の大剣を抜き、力を込めて、脅威となる連邦軍で広く運用されているダガーLと呼ばれる連合軍のMSの左足を斬りおとしながら答えた。
巨体を支える太い脚を斬りおとされたダガーLはバランスを崩し、味方側に向けて倒れ込む。倒れて来る機械の巨人を見たISAの将兵らは、銃撃戦を止めて退避を始める。
『倒れるぞー!!』
「これで脅威は…!」
MSの足を大剣で切断したシュンは、倒れるダガーLを見て脅威を排除したかと思ったが、別の機動兵器が放った砲撃を間近で受け、馬と共に吹き飛ばされた。
「なに!?」
吹き飛ばされて宙を舞うシュンは、何が起こったのか分からず、自分を撃ったとされる機動兵器が居る方向を見ながら驚きの表情を浮かべた。
「(そうか。あのデッカイ犬っころの仕業か)」
自分を撃った機動兵器が、ダガーLと同じく連邦軍で広く運用されている背中の主兵装を多連装ロケット砲に変えた砲撃型のコマンドウルフであると分かれば、地面に落ちるのに備えて受け身を取る。
凄まじい勢いで地面に叩き付けられれば、続けて来る砲撃に備えるべく、直ぐに立ち上がってもう手が届きそうな距離にある次元の亀裂に向かって走り始める。砲撃を受けた際に、シュンは大剣とナイフ、無線機になけなしの医療パック以外を失っていたが、この場でも戦場が広がっており、銃撃戦の中を回収していては、流れ弾に当たって死んでしまう事がある。
失った装備の回収を諦めたシュンは、ただ次元の亀裂に向かって走り続けるだけだ。
『シュン、大丈夫か!?』
「大丈夫だ、あんたも早いとこずらかった方が良い。背中にデカいロケット弾をしょった犬っころがうろついてやがる」
『あぁ、確認した。コマンドウルフの強化型だ、それにゴルドスも投入されているようだ。お前さんの言う通りに早くこの場を…』
無線機からガイドルフが言い終える前に、爆音が聞こえて一時通信が不能になった。
何が行ったのかを確認すべく、シュンはもう一度ガイドルフに連絡を取って安否を確認する。
「おい、大丈夫かおっさん!?」
『あぁ、大丈夫だ…俺の気付いてないところで砲撃を受けた様だ。金玉も四方も無事なようだ。援護射撃は出来ん、後は自力でこの世界から脱出してくれ、寄り道はすんなよ』
ガイドルフから生存の連絡が取れれば、それにシュンは答える。
「寄り道なんてしてる暇はねぇさ」
『その様子だと、モスクワでのことはしないようだな。では、また会おう』
寄り道はしないと答えたシュンに、ガイドルフはモスクワでの寄り道はしないと確証し、無線を切った。相手からの無線が切れたのを確認したシュンは、急ぎ次元の亀裂へ向けて全力疾走で向かう。銃創から血が噴き出ようがお構いなしだ。彼は目的へ向けてただ走り続ける。
飛び込む距離まで近付いた所で、シュンは地面を蹴って次元の亀裂へと飛び込んだ。普通には居れば良いが、この方が早いと本人が決めた様だ。
シュンが飛び込んだ次元の亀裂は、彼が入ったのと同時に跡形も無く消え、元の美しい緑のワラキアの光景へと戻る。
彼が別の世界へ行って居なくなっても戦闘は続いていたが、マスターチーフや海兵隊の救出を終えて目的を達成したISAは、これ以上留まるのは不十分だと認識してか、徐々に撤退を始めていた。
戦闘が終わるのは近いだろう。もっとも、我々が戦闘の終わりまで見る事が無いが…。
「いてぇ! 今度は固い場所に落ちちまったな…」
ワラキアの戦闘が終わる前に、次元の亀裂へ入った別の世界へ転移したシュンは、コンクリートで出来た床の上に倒れ込み、打った頭を摩りながら周囲を見渡す。
「薄暗い空間に…三脚で立てられているカメラ、周りに照明台。そんで変に生臭い布…ここで胸糞悪ぃことが行われていたのは確かだな。クソッ、俺が行くところは毎回そうだ」
撮影機材にシーツから伝わってくる鼻に伝わってくる生臭さで、シュンはここで‟胸糞の悪い‟事が行われていたことを認知し、ズタズタになって役に立たない鎧を脱ぎ払い、左脇腹の銃創に対する応急処置を行う。後一回分しか治療できない医療キットから止血剤と包帯を取り出し、それで手早く応急処置を終わらせれば、ナイフを右手で握り、確認してきたであろう敵から情報を得るため、物陰に身を潜める。
「待つのは嫌だしな、なんか物音でも立てっか」
物陰に隠れてただ待つより、相手を誘い出すことにしたシュンは、三脚のカメラと照明台をワザと倒し、大きな音を立てて相手を誘い出した。
『なんだ!?』
『おい、お前! 確認して来い!』
『お前が確認に行けよ!』
『うっせぇ! 殺すぞ!!』
「ド素人だな、こいつ等。そんで
照明が割れる音やカメラが壊れる音が派手に鳴ったため、上から怒号が聞こえた。
その口調でシュンは相手が素人の集団であると分かり、喋っている言葉が日本語であると分かれば、嫌な予感を抱きながら、物陰に身を潜んで相手が来るのを待つ。
数秒間待っていると、シモノフSKSと呼ばれるロシアの古い自動小銃を手にし、片手の懐中電灯で辺りを照らしているプロから見れば完全なる素人の動きをする派手な服装と金髪の若い男がこの空間に姿を現した。
「
自分からすればただのチンピラ風情が軍用自動小銃を振り回しているのが見えた為、これに驚くシュンであったが、何れあれ、通常二人以上で行動するよりも一人で行動しているため、直ぐに捕まえて情報が得られるので、何故に自動小銃を持っていてここがどんな世界でどんな場所かを聞き出せることは限りない。
「まぁ良い、あいつ等から聞き出せばなんか分かんだろ」
「あぁ? 誰だそこに居んの」
そうワザと独り言を相手に聞こえるように呟けば、相手は引っ掛かってシュンが隠れている方向へと懐中電灯を照らしながら来た。
片手でライフルを握りつつ、自分が隠れている場所に相手が回り込もうとすれば、直ぐにそこから飛び出す。
「おまっ!?」
相手が叫ぶ前に顔面に強力な拳を浴びせて怯ませれば、直ぐに相手の武器を奪い、ナイフの刃を相手の首突き付け、尋問を開始する。
「お前に二、三質問したいことがある。とぼけやがったらすぐにこいつを動かしてお前の喉を掻き切る。死にたくなけりゃあ正直に答えろ」
「ひっ、ひぃぃ、わ、分かったから殺さないでくれ!」
首に伝わって来る鋭い感覚が本物であると分かれば、鼻を潰されているチンピラは正直にシュンの尋問に応じた。
「まず第一にここは何所だ? とぼけるとどうなるか分かってんな?」
「は、はい…! ここは日本です、ジャパンです!」
「日本、日本だと? クソッ、もう少しマシな世界はねぇのかっての」
チンピラを尋問して自分が居る場所が日本であると分かれば、シュンは苛つきながらも次の問いを掛ける。
「で、なんでお前らはここを根城にして、そんなおもちゃを手にしてる? ここが日本なら、エライ法律違反だぞ、テメェら」
「こ、これは…ここに捕まえた女たちのハメ撮りや売った金で買いました…確か、安値で売ってたのをボスが言ってたような…」
「これで合点が言ったぜ…」
捕まえた女性を強姦した映像や人身売買で稼いだ金で銃を買ったと相手が答えれば、シュンは自分が潰した撮影機材を見ながらナイフを握る手を強めた。
今すぐに目の前の男を殺したい気持ちを抑えつつ、シュンは最後になる問いを掛けた。
「で、テメェラの目的とかあんのか?」
「に、日本を俺たちの手で支配する事ですはい…こ、これで…殺さないで済みますよね…?」
相手がへらへらしながら薄ら笑いでナイフを首から退けてくれるように頼み込んできたが、煮え繰り返っていた怒りを抑えきれないシュンは、嘘をつきながらナイフを振った。
「あぁ、生かしてやるよ。だが、手が滑っちまったよ」
「しょ、しょんみゃ…」
首を掻き斬られた男は、自分の血で窒息しながら息絶えた。
鬱憤を晴らしたシュンは、左手に握られているシモノフSKSを異常が無いか確認する。
「安全装置は掛けっ放し、そんであいつはトリガーに指を掛けっ放し。とんだ素人だな、そんで保存状態も悪いし、どっかで密造された不法品。あの話はマジなようだな」
安値で買った情報は確かなようで、シュンは安全装置を掛けてから銃口を覗いてみた。
ずっと撃ち続けてろくに整備もしなかったためか、ライフルリングに汚れが目立っている。
「整備しろ、ドアホ」
そう自分が使う銃をろくに整備もしなかった男の死体を八つ当たりで蹴りながら、クリーニングキットを取り出し、それを銃口に突っ込んで中に詰まってあるカスを取り出す。
「これで撃てるようにはなるな」
銃口の中を確認して、爆発の危険性を除去すれば、安全装置を外し、銃口の下にある折り畳み式の銃剣を開いた。予備の弾も忘れずに死体から回収すれば、立ち上がってそのまだ生きていたころの死体が出てきた方向を見る。
「さて、
そう冗談を口にしつつ、相手が出て来た方向に向けて歩き始めた。
次回からは…アリア出るかな? そんであの娘も…