復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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今回はリョナ回…つっても最初は中世ヨーロッパ並みの虐殺なんじゃ…
二万字越えとはすげぇな…書いた俺でも超驚き。

それと蔑称に注意。
ワルキューレの騎士の大半はさほど白人で我ら黄色人種を見たことないから…こうなっちゃうかな?


聖ヴァンデミオン騎士団

 シュンが銃にまみれていない筈の国である日本がある世界に来る遡ること二十四時間前、その女性を中心とした騎士団である聖ヴァンデミオン騎士団はこの世界へ来ていた。

 彼がこの世界に来て早々に偶然にも転移先に居た若者の過激派集団と事を起こす前、既に潰えている筈の、否、現代に蘇った共産主義者を中心とした過激派である日本赤軍と一線を交えていた。

 彼女らが来る前の現場の様子を見てみよう。

 

「ど、同志! 公共暴力団の連中が下がって行きます!!」

 

「はっはっはっ! どうだ資本主義者の犬どもめ! ざまぁ見ろ!!」

 

 ビルに立て籠もり、その過激かつ危険な思想を掲げて闘争、もとい、テロ行為を行う過激派集団の構成員がリーダーらしき人物に、銃を持つ自分等を相手に、負傷者を出して退却した警察の機動隊の事を報告すれば、リーダーは大いに喜ぶ。

 無論、銃器を一切持たない機動隊が密造された軍用銃や鉄砲店より奪った猟銃、火炎瓶を持った日本赤軍に、いや、新日本赤軍に勝てるはずもないが、自分等より装備が劣る警察に勝てたことが彼らに取って大変喜ばしい勝利であったのか、空に向かって銃を撃ちながら勝利の美酒に酔っていた。

 新日本赤軍の構成員らは、シュンが戦った馬鹿な若者を中心とした過激派とは違って軍事知識のある者によって訓練を受けており、紛争地帯における民兵等とは言い難い物の、少々治安組織に取っては手強い相手であることは間違いないだろう。

 

「我らは資本主義には屈しないぞ!」

 

「偉大な国家を創るために我らは闘争しているのだ! その邪魔をする者は、何者であろうと容赦しない!!」

 

 逃げる機動隊に向けて構成員達はそう言いながら、勝利に酔いしれながら自分等の行動は正当な物であろうと訴えた。

 だが、彼らはこの後二やって来る女騎士団に皆殺しにされようとは、思ってもみなかった。

 視点は現代日本に現れたイングランドの甲冑を身に着けた中世の騎士団、いや、ファンタジー世界よりやって来た女騎士団である聖ヴァンデミオン騎士団の本陣に移る。

 

「危険思想者共め、銃を持って調子に乗っておるな。たかだか警官共を追い払ったくらいで。こんな物で喜ぶとは、連中は素人と見えるな」

 

 馬に乗って鎖帷子の上からサーコートを着た肥満体系の身長が160㎝ほどの茶髪の白人女性が、携帯式の望遠鏡で勝利に酔いしれる新日本赤軍の様子を見て、彼らを素人の集団と見抜き、望遠鏡を馬の近くに居る部下に返す。

 年齢も四十代近くに見え、顔に少しばかり傷が目立つことから、歴戦の騎士で、この聖ヴァンデミオン騎士団の参謀の様子だ。

 

「まぁ、あの者達の指揮官の実戦経験が無いか、ただの間抜けでしょうな」

 

 今度は熊のようなデザインの甲冑を身に着けた筋肉質で身長が199㎝と長身の男のような外見を持つ女性騎士がそれに答えるが如く、あのビルに立て籠もっている新日本赤軍のリーダーが実戦経験も無く、軍事知識が掛けている人物と見て、肥満体系の参謀に告げる。

 彼女もまた歴戦の戦士であるのか、肥満体系の参謀と同じく、浅黒い肌に幾つかの傷が見える。それに右足は義足であるが、本人は本物の足のように慣れきっているようだ。

 

「ドミニク殿、こちらも同様に我ら四天王以外、兵は実戦経験皆無なお嬢様ばかりだ。あの民兵に毛の生えた素人集団が我が騎士団の初陣としての物であると適格だが、油断は出来ん」

 

「元アガサ騎士団の雌獅子と呼ばれたヘンマ殿がそうおっしゃるのであれば、油断はできませんな」

 

 紛争地帯の民兵に毛の生えた程度でも油断が出来ないと言った肥満体系の参謀であるヘンマが言えば、筋肉質の女騎士であるドミニクはそれに納得し、後にシュンと対峙した少女の事を「予言の乙女」と呼んだ当聖ヴァンデミオン騎士団の団長である女性騎士の方へ視線を向け、出撃は何時なのかを問う。

 

「ミルドレッド団長殿、出撃は何時でありますか!? 兵はいつでも出撃は、貴方の出撃合図一つで可能です! 初の実戦を皆、心待ちにしております!」

 

「えっ? あぁ、そなたの言う通りだな。では、全軍に告ぐ、危険思想者が立て籠もるあの建造物に突入する。総員、出撃せよ!!」

 

 ミルドレッドと呼ばれた騎士団長は、初の実戦で緊張しているのか、少し落ち着いてから自信と同じく実戦経験の無い女騎士たちに出撃を命じた。

 

「一番隊、出撃!」

 

「二番隊、出撃!」

 

「三番隊、行くわよ!」

 

 それに応じ、各部隊長が復唱を行って騎士団長の指示を伝達する。

 携帯式の無線機があるはずなのだが、この聖ヴァンデミオン騎士団には配備されていたいのか、口頭での指示が主な伝達手段のようだ。

 各部隊長の指示を聞けば、育ちの良い女騎士たちは、中世期にイングランドで着用された兜を被り、フェイスガードのある兜を被る者はしっかりと顔面を守るように下ろし、完全防備な状態で各々の得物を持って先陣を切る騎馬に乗った軽騎兵の後へ続く。

 向かう先は、新日本赤軍が占拠して立て籠もるビルだ。彼女らはそこに立て籠もる構成員らを殺害、もしくは捕縛するのが目的だ。これは警察の要請なのか、武装探偵と呼ばれる組織の要請なのかは不明だが、この世界にワルキューレの部隊が駐屯していることは間違いなく、聖ヴァンデミオン騎士団がその組織に属する部隊であることは確実だ。

 

「ノエミ殿とエルミーヌ殿は久々の戦場に参加しないのか?」

 

 コイフを被った後に、強面の熊の表情を浮かべたフェイスガードが付いた兜を被りながら、ドミニクはミルドレッドの近くに居る残り二人の中性的な外見を持つ軽装な甲冑を身に着けた銀髪の女性や、防御面がまるで無い異常なまでに露出度の高い甲冑を身に纏った桃色の長髪を持つ女性に問い掛ける。その問いに対し、桃色髪の女騎士であるエルミーヌが答えた。

 

「私は出ませんわ。あんなツマラナイ殿方との戦闘だなんて…ごめんですわ」

 

「私はミルドレッド殿の護衛があるので、向かえません」

 

「余り身体を鈍らせない方が良いですぞ。常日頃から鍛えなければ、いざという時に対処できませんぞ!」

 

 それに続いてノエミと呼ばれた銀髪の女騎士が団長の護衛のために離れられないと答えれば、ドミニクは日頃から身体は鍛えると両者に告げ、得物である大柄のハンマーを持って敵陣へと続く列に加わった。尚、ヘンマは参謀であるためか、前線には出ない。

 聖ヴァンデミオン騎士団はそのまま敵陣へと隊列を組みながらその外装で似合いそうも無い道路の上を前進し、新日本赤軍の索敵範囲内に入る。

 

「な、なんだぁ? 中世の騎士が隊列組みながら突っ込んで来るぞ?」

 

「なんだと同志? 見せて見ろ!」

 

 見張りが大盾部隊を前にしながら前進する聖ヴァンデミオン騎士団を発見すれば、直ぐに隣に居る構成員に報告、それを聞いた構成員は見張りから双眼鏡を奪い取り、向かってくる彼女らを確認した。

 

「こいつら、頭がおかしいと違うのか? おい、同志! 文明の違いを教えてやれ!」

 

了解(ダー)!」

 

 馬鹿げた集団を目にした一人は、レミントンM700狙撃銃を持つ構成員に一人を狙撃するように命じた。

 その命に応じ、狙撃銃を女騎士の兜に向けて撃ち込んだが、猟銃用の弾丸を弾いてしまう。これには流石に狙撃を行った狙撃手も驚きを隠せなかった。

狙撃に怯えてか、先導していた軽騎兵は馬を走らせて直ぐに本陣へ引き返す。

 

「は、弾かれた!?」

 

「嘘だろ!? 中世の甲冑なんかで銃弾を防げるわけが無いだろ! もう一発撃ち込め!!」

 

 再び狙撃を命じる構成員であったが、何所を撃とうが弾かれるばかりであった。

 

「ば、馬鹿な…!? 熊をぶっ殺すための猟銃の弾丸だぞ…!?」

 

 狙撃銃で使用されている弾丸は、猟銃用に広く民間で普及している銃弾であり、容易く防弾チョッキを貫くほどの威力を持っているが、彼女らが身に着ける甲冑には弾かれるばかりだ。引き続き56式自動歩槍などの軍用銃などで撃つが、全くの効果は無い。

 物の数分後に、銃弾を物ともしない甲冑を身に着けた女騎士たちは、新日本赤軍が立て籠もるビルの正門の目と鼻の先まで迫ってくる。

 

「か、火炎瓶だ! 火炎瓶を投げろ! ダイナマイトもだ!!」

 

「は、はい!」

 

 銃弾の効かない集団を見て慌てた指揮官が、火炎瓶やダイナマイトを投げるように指示した。それに応じ、火炎瓶や導火線に火の点いたダイナマイトが女騎士たちに向けて投げ込まれる。火炎瓶や爆弾が投げ込まれたのを確認した大盾持ちは、怯え始める。

 

「ば、爆弾に火炎瓶!?」

 

 それを盾の隙間から見た大盾持ち達は前進を止め、後退ろうとするが、指揮官であるドミニクの一声で止まる。

 

「落ち着け! 我らの鎧は頑丈ぞ!! 下がるな! 前に進め!!」

 

 その声を聴き、自分達が来ている鎧はそんじゃそこらの爆弾や火炎瓶は効かないと分かり、勇気を出して再び前進を始めた。

 

「せ、正門が破られた!!」

 

「撃て! 撃ちまくれ!! 絶対に通すな!!」

 

 やがて正門は大盾持ちや大柄な戦槌を持った騎士たちによって突破され、槍や片手斧、剣やメイスと言った武器を持った騎士たちが雪崩れ込んで来る。新日本赤軍の構成員らが破れかぶれで銃を雪崩れ込んで来る騎士たちに向けて撃ち込むが、どんな距離から撃とうが貫通できず、弾かれるばかりだ。

 

「やぁぁぁ!!」

 

「う、うわぁぁぁ!? ぎゃぁぁぁ!? う、腕が! 俺の腕が!!」

 

 正門の近くに居た構成員の一人が進入してきた女騎士が振り下ろした剣によって右腕を斬りおとせば、一瞬で今の時代とは思えない虐殺劇が開幕した。

 

「この野郎! ぎゃっ!?」

 

 建物を壊すためのハンマーを持った一人がそれで殴り掛かろうとしたが、盾で防御されたのちに振り下ろされたメイスで左側頭部を潰され、強く殴られた衝撃で眼球が飛び出し、砕けた脳ミソを地面にぶちまけたまま絶命する。

 

「や、やめ、がぁぁぁ!?」

 

 それに恐怖して一人が銃を捨てて降伏しようとしたが、初陣で興奮状態の新兵な女騎士たちには届かず、三本の槍で腹を串刺しにされ、血を吐き出しながら息絶える。

 

「死ねぇ! この化け物が! 死ね死ね!!」

 

 56式自動歩槍を持つ男がそれをドミニクに向けて乱射するも、彼女の鎧に弾かれるばかりであり、いずれかは弾切れを起こす。

 

「お、お前たちは、何なんだ!? なんで甲冑なんか身に纏って来たんだ! 出て行け、俺たちの時代から出て行けぇ!!」

 

「何を言ってるか分からないが、意味は分かる。我らのような圧倒的な力を持つ者達に蹂躙されるのが悔しいのであろう。だが、ここは戦場! 言葉の違いなど不要! いざ、尋常に勝負!」

 

 弾切れとなったのが分かった男は、何故、自分達の時代に聖ヴァンデミオン騎士団のような連中が来たのかを自暴自棄になりながらも問うた後、最初から銃身の下に付いてある銃剣を展開し、銃剣突撃をドミニクに向けて行う。

 日本語が分からないドミニクであるが、目前の男が自分達の出現によって滅茶苦茶にされたのが悔しさを理解し、蛮勇にも突っ込んで来る男との勝負を受けた。

 

「ぐえぁ!?」

 

 無論、勝負はドミニクであり、突っ込んで来る間に顔面に大きなハンマーを叩き込まれ、頭を木っ端微塵に吹き飛ばされる。辺りに脳髄を撒き散らしながら、頭が吹き飛んだ死体は糸が切れた人形のようにその場で倒れ込む。

 倒れた死体を暫し眺めた後、返り血の付いたハンマーを布で振り払ってから、ドミニクは新兵たちの援護に回る。

 

「止めろ! 止めてくれぇ!! ああぁぁ!!」

 

 それからはただの虐殺劇であった。

 新日本赤軍の構成員達は聖ヴァンデミオン騎士団の女騎士たちによって一方的に虐殺され、彼女らより勝る武器を持つ新日本赤軍の構成員らは、次々と惨殺される仲間たちを見て、戦意を損失してそれを使うのを止め、我先へと逃げ始める。

 そんな戦意を損失した敵に対しても、初陣で興奮状態、俗にいうコンバットハイ状態であり、さらに日本語も分からないので、目に付いた平服の者達を殺し回っていた。

 ある者は剣で腸を抉られ、ある者は頭を叩き潰され、ある者は首を刎ねられ、ある者は槍で串刺しにされ、ある者は四方を斬りおとされる…。

 彼女らが住宅街にでも迷い込めば、凄まじい虐殺劇が繰り広げられたことだろう。

 

「ま、待ってくれ! 降参する! 降参するから殺さないでくれ!!」

 

「降参する! 大人しくお縄に付くから命だけは!!」

 

 通路で殺戮ショーが繰り広げられる中、二名の構成員が数名の仲間を惨殺して返り血を浴びた二人の女騎士に投降してきた。必死に降参すると訴えるが、彼女らは日本語など分からない。

 

「何言ってるの?」

 

「言ってる意味が分かんないって!!」

 

 それを聞いた女騎士が相方に問えば、彼女は手にしている剣で胸を斬って殺害した。

 

「ひっ! ひぃぃぃ!?」

 

 仲間が殺されたのを見て、逃げ出そうとする男であったが、襟元を掴まれ、背中を突き刺される。突き刺した本人はサディストな性癖の持ち主なのか、抉るように刃を動かし、一気に引き抜いた後、それからは頭部の半分を切断して惨殺する。

 投降してきた二名を惨殺した後、相方に女騎士は死んだ二人が何と言っていたのかを問う。

 

「なんて言ってたの?」

 

「さぁ、ママ、おててを綺麗に洗ったよっかな?」

 

 残忍な笑みを浮かべながら冗談交じりで答えた後、まだ悲鳴が聞こえる方へ向かった。

 聖ヴァンデミオン騎士団が突入してから僅か数分程で、ビルに立て籠もっていた新日本正規軍の構成員達の殆どは刀剣類や打撃武器で虐殺され、無残な骸へと姿を変えていた。

 抵抗は限りなくどころか、全く無く、ただ構成員らの悲鳴と断末魔が響くばかりだ。

 追い込まれた残り数少ない構成員らは、保険のために捉えている人質の女性六名を盾にするという強行に出る。

 

「動くな! じゃなきゃこの女共を殺すぞ!!」

 

「道開けろ! 俺たちは本気だぞ!!」

 

 残る女性を含める九名の構成員らが、怯える六人の女性に猟銃や密造銃を突き付けながら叫べば、無抵抗な女性を盾にしていることを知り、女騎士たちは手を出せないでいた。

 しかし、何名かは違い、人質にお構いなしに殺してしまおうとする考えを持つ女騎士は幾人かいるようだ。

 

「なにビビッてるの? アジア人(グーク)の雌なんかに無視して一緒に殺しちゃおうよ」

 

「だ、駄目だよ! あのグークは兎も角、アジアの女性は人間ってママが…」

 

「たくっ、臆病なんだから。どうせグークの雌じゃないの」

 

 先の投降した二名を惨殺した女騎士は、ベトナム戦争時のアメリカの白人や黒人がベトナム人に対して使った蔑称を目前に居る新日本赤軍の構成員や人質にされている女性達に向けて言い放ち、一緒に殺そうと周囲の者達に持ちかけたが、誰も無慮な騎士の教育に対しての影響なのか、無辜の民に手を掛けることに抵抗を抱き、それには応じなかった。

 自分の提案を無視した周囲の者達に向けてその女騎士は苛ついたが、自分等の隊長とも言える人物であるドミニクが駆け付け、人質にしている構成員らを見て、相手を卑怯者と罵り始める。

 

「駆け付けてみれば、連中が婦女子を盾に取っているではないか! やはり共産主義など蛮族の思想! 人質を直ぐに離さねば、貴様らただでは済まさんぞ!!」

 

「うるせぇ! 突然やって来て仲間を次々と惨たらしく殺しやがって!! 日本語が分からねぇくせに説教なんてしてんじゃねぇ!!」

 

 彼らの怒りは尤もであるが、ドミニクからすれば人質を取って逃げようとする彼ら新日本赤軍は許せない卑怯者であり、その思想を持つ者達は蛮族であって、か弱き者達を共産主義より守るため、絶対に排除しなければならない。

 そんな正義感が彼女の頭の中を支配していた。

 新日本赤軍の生き残った者達が人質を取って逃げようとする中、本陣は抵抗すらないこのビルに移っており、騎士団長であるミルドレッドは、人質を取る彼らを目撃して驚きの声を上げ、卑怯な手段に出る彼らを罵り始める。

 

「ぬっ!? 人質を取るとは、やはり蛮族! 貴様ら共産主義には、恥と言う物が無いのか!?」

 

「お前も黙れ!! お前らの時代はとっくの昔に終わってんだよ! ファンタジーの世界へ帰れ!!」

 

「ひっ!? じゅ、銃を撃ったな!? 総員、直ちにこの者達を…!」

 

 罵られた構成員はかなり自棄を起こしていたのか、ミルドレッドに向けて持っている猟銃を片手で撃ち、彼女の頬にかすり傷を負わせる。頬から来る痛みで恐怖を覚えたミルドレッドは、恐怖と怒りでこの場に居る部下たちに、人質ごと殺すように命じるが、ノエミが彼女の前に出て、怒りを抑える。

 

「落ち着いてください、ミルドレッド様。この無辜の民を人質に取る輩共は私一人が対処いたします」

 

「の、ノエミ…! だが…」

 

 自分の顔に傷を付けた目前の無法者が許せないミルドレッドは、前に出るノエミに異を唱えるが、彼女は腰の鞘に納めてある細身の剣を出した後、尤もな意見を出して上司を納得させる。

 

「人質ごと危険思想者共を殺せば、我が聖ヴァンデミオン騎士団の名に傷が生じります。この私目が、人質に傷一つ付けずに彼奴等を倒して見せます」

 

「あっ、そ、そうだな…幾らアジア人(グーク)共の雌とはいえ、無辜の民であることは限りない。頼んだぞ、ノエミ!」

 

「御意に」

 

 慌てながらも納得したミルドレッドは、人質に傷を一切付けずに敵を倒すと宣告したノエミに後を任せ、周囲の部下たちを下がらせた。

 周りの女騎士たちが去り、ノエミ一人だけとなれば、人質を取る構成員らは自信が付いたのか、銃口を向けながら一人立ちはだかる目前の中性的な外見を持つ女騎士に下がるように怒鳴り付ける。

 

「下がれぇ! 下がらなきゃテメェの頭も吹っ飛ばすぞ!!」

 

 凄まじい剣幕で銃口を向けながら叫ぶ男であるが、ノエミは一切の動揺を見せず、剣を構えぬまま、人質を取る彼らに分かる言葉で投降を呼びかける。

 

「今、人質を離し、我らかこの世界の治安機関に投降すれば、死なずに済むぞ」

 

「突然、日本語を喋ったかと思いきや、降伏勧告かよ! 誰がテメェ等見てぇな殺人集団なんかに投降するかボケぇ!!」

 

 降伏勧告を蹴った後、その男はノエミに向けて威嚇射撃を行う。

 

「そうか…その決断に後悔はないと言うのだな…」

 

 銃弾は外れたが、ノエミの決心はついたらしく、彼女は地面を蹴った。その瞬間、彼女の姿は最初から居なかったかのように消えた。これに驚いた人質を取る者達は、何が起こったのかを理解できなくなる。

 

「き、消えた!?」

 

「ど、何所…」

 

 一人目が最初に声を発し、二人目が言い終える前に、人質に取っている者達が血を吹き出しながら突然倒れた。

 

「ひっ、ひぃぃぃ!?」

 

 一瞬の内に、六人の構成員が死んだのを見て恐怖した残る三名は、錯乱状態となって周囲に銃を乱射しようとしたが、彼らが銃を撃つ前に三名は心臓を一突きにされて死亡する。

 九人の武装した者達を瞬時に殺したノエミは姿を現し、細身の刀身に付いた血を払ってから、六人の女性を拘束している縄や手錠を斬り、解放してから刃を鞘に納める。

 拘束を解かれた女性たちは、頬を赤らめながら中性的な外見を持つノエミに感謝の言葉を述べる。近くに死体が転がっているが、今の視線はノエミに集中している様子だ。

 

「あ、ありがとうございます…!」

 

「当然のことをしたまでです。では、これにて失礼」

 

 感謝の言葉を述べる女性達に、礼節な態度で接した後、ミルドレッドとドミニクの元へ戻る。

 初陣が終わったのか、女騎士たちはようやく終わったと安堵し、兜を脱いでそこらに座り込み、辺りを見渡す。何名かは初めて人を殺したことにショックを受けていたのか、頭を抱えている。

 自分等は誰一人として死なずに済み、負傷者すら居なかったが、心の傷だけはどうにも出来なかった様子だ。

 ノエミが自分等の元へ戻った後、人質にされていた女性たちの様子を見たドミニクは、少しからかってやろうと思い、彼女に向けて気軽に話しかける。

 

「ノエミ殿、あの婦女子たちは貴殿に惚れたようですぞ」

 

 兜を脱ぎ、コイフを脱いでから救出されて甲冑を着ていない聖ヴァンデミオン騎士団の騎士見習いの介護を受ける女性達を見ながらノエミに茶化せば、彼女はそれを無視し、自分等がこの世界に派遣された理由を明かし始める。

 

「ドミニク殿、それはどうでも良い事。そもそも我々がこの古の伝説が残る世界に来たのは、‟予言の乙女‟なる少女が居ると言う目撃情報を現地に駐屯している部隊より報告を受け、来た所存。だが、これ程の凶悪犯が立て籠もる事件に対して、件の少女が身を寄せている武偵なる者達は誰一人姿を現さない」

 

 聖ヴァンデミオン騎士団がこの世界にやって来た理由は、予言の乙女と呼ばれる少女を捕縛し、所属するワルキューレの軍門に下らせるためだ。

 しかし、これ程の凶悪犯が引き起こした立てこもり事件にも関わらず、武偵は誰一人として出てこなかった。理由は最近出て来た武装探偵こと武偵の者達が気に入らず、警察が独断で機動隊の身で凶悪犯の制圧を行おうとした者であるが、人質が居ると言う情報を掴んでおらず、尚且つ死傷者を出した辺り、強行であった物であろう。

 改めて自分等の目的を思い出したドミニクはそれに納得しながらも、警察が武偵に伝えずに制圧を強行した理由を述べ始める

 

「うむ、確かにそうだ。だが、武装探偵なる者達は少年少女の集まりと聞く。大人である警察が、子供にしゃしゃり出て来られては面目が無いのでは?」

 

「ドミニク殿の意見は尤もだな。何故、殺害が御法度な治安機関の、それも十代後半の子供たちに、あのような軍用装備を採用しているのかが分からん。この世界のアフリカと言う地域の少年兵と同じように、破壊衝動に囚われる可能性が高いぞ」

 

 ドミニクが言い終えた後、それに納得する形でヘンマが割って入って来た。

 確かに彼女の言う通り、まだ十代後半の少年少女らに、軍用銃などを持たせる武装探偵と呼ばれる治安組織はおかしい。だが、それを否定すれば、少年少女らに武器を持たせ、治安を担わせているこの世界を否定することになる。

 それを今語っても、キリが無いと分かっているヘンマは、予言の乙女が武偵として出動しそうな反社会的な組織の潜伏地が書かれた地図を鞄から取り出し、場所を洗い出そうとする。

 

「まぁ、その理由を今は何の意味もなさない。ミルドレッド殿、連中が出動しそうな場所を探しましょう」

 

「あぁ、そうだな。これ以上は時間と金を無駄にするわけにはいかない」

 

 ヘンマに声を掛けられたミルドレッドは、その地図を受け取り、予言の乙女と呼ばれる少女が武偵として出動しそうな反社会的な組織が潜むアジトを探す。

 どうやって政府や公安から身を隠している反社会的兼反政府的な組織の潜伏地を掴んだのかは、この世界に駐屯しているワルキューレの情報網が凄いと言う証拠であろう。

 スパイ、ハニートラップ、盗聴、ハッキングなので集めたのだろう。その現地の諜報員の努力の結晶である地図に目を通しつつ、何所へ行けば捕らえられるのだろうと、持ってきた机に集まって議論している内に、予言の乙女が所属している武偵のチームが出動すると言う情報が、馬に乗って駆け付けて来た伝令兵からもたらされた。

 

「伝令です! 予言の乙女とされる少女が出動すると言う情報が!」

 

「なに、それは本当か!? して、何処に!? 時間は!!」

 

 その知らせを聞いたヘンマは、馬から降りて水を飲む伝令兵に時間と場所を問う。

 

「明日の十三時に、東京都渋谷区の自然公園の倉庫の模様です!」

 

「よし、明日の十三時だな! 総員、駐屯地へ帰投するぞ!!」

 

 正確な時間と場所を伝令から聞けば、明日の捕縛作戦に備えてミルドレッドが撤収命令を出した。

 それが終わったと思ってか、現場を指揮している警察庁の者が辺りで纏めて積み上げられている新日本赤軍の構成員らの死体の処理を頼みこもうとしたが、自分等の目的を果たさんとするミルドレッドらはそれには応じなかった。

 

「あ、あの…この始末は…」

 

「後は貴様らに任せる! 我々には目的があるのだ!」

 

「ふざけるな! 勝手に介入して勝手に殺し回って後は始末しろなんて!! 勝手過ぎるだろうが!!」

 

 そう冷たくあしらわれた警察庁の男は怒り心頭に怒鳴ったが、撤収する彼女らには聞こえず、ただ喚き散らしているようにしか見えなかった。

 そして時は、明日の十三時へと戻る…。

 

 

 

「わ、私は予言の乙女じゃありません! ルリ、じゃなくて東京武偵高校の一年生、冴島瑠璃(さえじま・るり)です!!」

 

 いきなり現れて自分を包囲し、更に自分の事を予言の乙女と呼んで捕らえようとするミルドレッドに対し、少女は自分の名を口にしながらその人物で無い事を訴えた。

 

「その桃色が混じった金色の髪に清らかな空色の瞳、雪のように白い肌に麗しき花のような愛らしさを持つ乙女! そして何より貴様が予言の乙女として証明しているのは、その宝剣のような剣を持っていること! 貴様以外、誰が予言の乙女と言うのだ!? 答えて見せよ!!」

 

「そ、それは…そっ、そっくり…じゃなくて、私は捕まるわけにはいかないのです!」

 

 しかしその愛らしい容姿と持っている剣で直ぐに見透かされ、逃れられないと判断した少女は、捕まるつもりは毛等も無い事を告げ、シュンに向けている剣をミルドレッドの方へ向け変えて臨戦態勢を取る。

 

「あれ剣なの…?」

 

 周囲に居る女騎士たちの中の一人が、シュンの大剣を見て呟けば、大剣の柄を握り、いつでも引き抜けるようにしている彼をルリの仲間と思っているミルドレッドは、彼にも予言の乙女の仲間なのかを問い掛ける。

 

「して、その方は予言の乙女に使えし従僕か? お前のような者は一切情報が無いが、従僕ならば共に捕縛する!」

 

「俺がこのちんけな嬢ちゃんの従僕だと…? ふざけんじゃねぇよ、俺はこの嬢ちゃんとは無関係だ。何所をどう見て俺が嬢ちゃんの仲間に見えんだ、このアマ」

 

 上から見下すような態度で問うミルドレッドに対し、シュンは煽るような言動で答えた。

 それに怒りを覚えたのか、ミルドレッドはルリの仲間では無いシュンを殺そうとする命令を出そうとしたが、急用で駆け付けて来た伝令兵に宥められ、耳打ちで彼の正体を知って命令を改める。

 

「その挑発的な態度、貴様はワラキアの領主であるショアラ・シルヴァニアを暗殺したあの領主殺しこと漆黒の剣士だな! 陸軍総司令部より、死刑を問う裁判を執り行うため、元陸軍大尉である貴様を生かして捕らえよとの指令がたったいま届いた。よって貴様も予言の乙女と同様に捕縛する! 全軍、その少女と同様に生かして捕縛せよ!!」

 

「もう行き届いてんのかよ…! つうか、そのダセェあだ名もか…! こりゃあ、マジでやるしかねぇよな…!!」

 

 予言の乙女と同様に生かして捕縛する。

 そう投降勧告を出して周囲を包囲している女騎士たちに捕縛するように命じたミルドレッドに対し、今ここで捕まるわけにはいかないシュンは、背中の大剣(スレイブ)を引き抜き、徐々に距離を詰めて来る女騎士たちを警戒した。

 

「やぁぁぁ!!」

 

「ちょっ、待ちなさいって!」

 

 一人が我慢できず、叫びながら自分に背を向けているシュンに向けて両手剣を振り下ろそうとする。無論、叫びながら来ているので、あっさりと気付かれ、振り下ろした剣は弾かれ、その衝撃で彼女は地面に転がる。

 

「きゃっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

 しかし、彼女の攻撃が功をこうしたのか、シュンの右腕から血が噴き出て来た。それと同時に左脇腹の傷口が開き、白い包帯が赤く染まり始める。

 

「やっぱ振るえないじゃない」

 

「それに血が出てるわ、一気に行けば…!」

 

「子供はあんた等がやりなさい。男の方は私たちが!」

 

 捕らえる相手が小柄な少女と手負いの大男と知った女騎士たちは、一斉に二人を捕らえんと、武器を振り下ろす。ルリに対しては素手で捕まえに行き、シュンに対しては四人ほどが向かい、武器で傷を負わせてから捕らえようとする。

 だが、女騎士たちは二人を全く捕らえることは出来なかった。

 

「いたっ!?」

 

 ルリを捕らえようとした防御面が意味を成していない甲冑を身に着けた女騎士が、避けられて腹に刀身を叩き付けられて吹き飛ばされた。

 

「は、早い!?」

 

 手負いのはずのシュンが一人目の攻撃を素早く避けたのに驚いたのか、見ているだけの者が口を開けば、メイスを持って殺す気で殴り掛かろうとする二人目を別の者が注意する。

 

「馬鹿、殺す気!?」

 

 その言葉の後にシュンは二人目の攻撃を避け、続けて三人目の攻撃を避ける。

 

「止めろ! 殺してしまうぞ!!」

 

 最後の四人目が長剣で殺すつもりで剣を振って控えている者に注意を受ければ、シュンは注意を受けたその四人目に、容赦なくまだ無事な左手で下顎を殴り、吹き飛ばした。

 

「ひっ!?」

 

 四人目を殴り倒したのに驚いて剣を構えたまま固まっている五人目に、シュンは容赦なく殴り付けて吹き飛ばした後、続けて六人目を殴り飛ばす。

 途中で手に入れたメリケンサックのおかげで左拳は無事ではあるが、甲冑を身に着けた者を何人も殴っていれば、いずれメリケンサックは壊れてしまうだろう。

 だが、それを気にしていては、この包囲網を突破できない。

 今はこの包囲網を突破することに集中しているシュンは、我武者羅に向かってくる女騎士たちを左手で殴り飛ばし続けた。

 

「メリケンサックに注意して!」

 

「落ち着いて! 熱くなったら…!!」

 

「取り囲んで動きを止めろ!!」

 

 昨日の戦闘と言うべきか、人を殺す戦闘を経験した聖ヴァンデミオン騎士団に属する女騎士たちであるが、あれは相手がただのテロリストなだけであり、目前の大男は疲労困憊な状態でも昨日の敵を遥かに凌ぐほどの強敵だ。たかだか一回の演習のような戦闘で勝った戦士に務まる相手では無い。

 ましてや実戦経験皆無などう見ても戦闘訓練をしていない女騎士まで居り、彼女らが実戦的な甲冑を身に着けている聖ヴァンデミオン騎士団の騎士たちの足を引っ張っている。

通りで手負いのプロ相手に苦戦するわけだ。

 

「きゃっ!?」

 

 その女騎士たちは射線上に味方が居るにも関わらず、ボウガンをシュンに向けて放った。幸いにして誤射は起こらなかったが、より一層、彼女らを浮足立たせ、混乱させる要因に繋がる。

 

「ど、同士討ちになるぞ…!」

 

 一人が発した後に、数名が殺す気でシュンに向かって行った。

 

「馬鹿者! 殺してはならん!!」

 

『うぉぉぉ!!』

 

 本陣よりミルドレッドが注意するが、雄叫びを上げながら突っ込む四名には届かず、そのまま大剣の刃を前にしてスライディングを行ったシュンに跳ね飛ばされる。

 その鎧の御かげもあってか、彼女らは吹き飛ばされて気絶した程度に住んだが、シュンが万全の状態で殺す気なら、この場に居る全員が肉塊と化していたであろう。

 

「きゃぁっ!? み、見ないで!!」

 

 一方でルリを捕らえるために向かった女騎士たちにも、シュンと同じような混乱が起こっていた。

 小柄な少女に防御面が意味を成していない甲冑を斬られ、自分の豊満な乳房が露わとなった別の女騎士は、顔を赤らめ、それを両手で隠しながら尻餅をついて誰も見ないように訴えかける。

 

「この小娘が!!」

 

 ちょこまかと動き、自分等に恥をかかせるルリに苛ついてか、甲冑を身に着けた女騎士が気絶させるために木の棒を頭に叩き付けようとするが、軽快な動きで回避され、顔面を小さな足で蹴られて地面に倒れ込む。

 それから少女相手に大の大人の女性が次々と大勢で掛かるが、誰もルリを捕らえることが出来ず、シュンと同様に蹴散らされていくだけだ。

 この醜態を見ていたドミニクは苛立ち始め、自分の思った言葉をつい口に出してしまう。

 

「えぇい、情けない! たかが少女一人と手負いの者一人相手に何を浮足立っておるか!?」

 

 それに応えるように、エルミーヌが口を開き始める。

 

「それは仕方ないですわ。我が聖ヴァンデミオン騎士団は、貴族や豪族、その他諸々の上流階級の家庭が世継ぎを生むための子女を戦争に取られたくない一心でこの騎士団に入団させた所謂お嬢様騎士団。そして助っ人に来たあの騎士たちはパフォーマンス用の姫騎士兵団、別名アイドル騎士団。昨日の戦闘で実戦を経験したとはいえ、あれは演習みたいな物。戦争や紛争の内には入りませんわ。そして、実戦何て経験が無い姫騎士を数名加えれば、この通り。これでは勝てる戦も勝てませんわ」

 

 シュンが斬り掛かってくる女騎士たちを吹き飛ばし、ルリが殺さないように戦っている様子を見ながらエルミーヌが説明すれば、ドミニクは苛立ちながらもお礼の言葉を述べる。

 

「ご高説ありがとう。だが、何故に貴殿は戦わないのだ?」

 

 そう戦わない理由をドミニクに問われたエルミーヌは、お世辞笑いを浮かべながら答えた。

 

「だってぇ、あの殿方が万全な状態じゃないんですもの。そんな状態の殿方と剣を交えても、直ぐに倒れてしまって満足できませんわ。あぁ、万全な状態で早く戦って絶頂したいですわ…」

 

 エルミーヌはシュンが万全の状態で戦っていることを考え、そんな彼と自分が戦う光景を妄想で思い浮かべ、自分の股に左手を添えながらはしたない表情を浮かべた。

 これを見たドミニクは騎士とは思えない彼女の言動とはしたなさに驚愕し、目前でシュンやルリに部下たちが投げ飛ばされているにも関わらず、エルミーヌを叱り始める。

 

「な、なんと下品な! 貴殿はそれでも騎士か!?」

 

「あらぁ、私は立派な騎士ですのよ? 大貴族のバルバストル家の長女にして、六度の激戦でワルキューレに六度の勝利をもたらした…」

 

「全く貴殿らと言えば…」

 

 この状況にも関わらず、口論を始めるドミニクとエルミーヌに呆れつつ、ヘンマはミルドレッドに提案を出す。

 

「我らの兵と増援の騎士の戦に不慣れなのはこれを見れば一目瞭然! ミルドレッド殿、予言の乙女は相当な手練れの剣士より剣技を受けている様子だが、動きからして戦に不慣れなのは確実。増援の女騎士共を予言の乙女の方に当ててはどうか?」

 

「あっ、あぁ、そうだな。では、姫騎士兵団の騎士たちよ! 貴殿らは予言の乙女に集中せよ! 手負いの男は我が聖ヴァンデミオン騎士団が引き受ける!!」

 

 ミルドレッドが指示を出せば、姫騎士兵団に属する女騎士たち全員は、ルリの方へと向かった。代わりにシュンの方には聖ヴァンデミオン騎士団の女騎士たちが集中し、数に物を言わせてさらに疲弊させようとする。

 

「ぐっ…!」

 

「やった! 当たった!!」

 

 叩いても出て来る女騎士たちに対処しきれず、それに疲労で注意が散漫になっているシュンは、飛んできた矢を左脚に受けてしまい、更に出血が増して動きが鈍くなる。

 それを見たミルドレッドは好機と捉えてか、何名かに一気に抑え込むように指示を出した。

 

「よし、そのまま一気に取り押さえろ!」

 

 ようやく一人目を捕らえられると思っているミルドレッドであったが、隣に立っているノエミは追い込まれた者がどのような行動を取るのかを分かっていたのか、それを上司に聞こえるように呟いた。

 

「これは不味い…!」

 

「っ!?」

 

 その人声に気付いたミルドレッドは、取り押さえに行った四人を呼び止めようとしたが、既に遅く、四人は振るわれた巨大な刃で肉塊にされた後であった。

 血が噴き出る音が鳴り響き、肉塊となった四人の死体は地面に落ち、それを見た女騎士たちは恐怖して悲鳴を上げ始める。

 

「きゃぁぁぁ!?」

 

「ひっ、ひぃぃぃ!?」

 

「い、いや…!!」

 

 自分もああなりたくない!

 そう思う女騎士たちはシュンに立ち向かうのを止め、その場で固まり始める。

 

「ひ、人が…!?」

 

「何あいつ…!? 化け物じゃない…!」

 

 ルリもその光景を見ていたのか、剣を交えていた姫騎士たちと戦闘を止め、シュンの居る方向を共に見ていた。

 

「この状況、戦に不慣れな兵を数に任せて突っ込ませていては、こちらの被害が増すばかり…ミルドレッド殿、この四天王の一人、ドミニクめに出陣の許可を!」

 

「ドミニクの言う通りです! こちらは新兵が多数! 数名を殺されただけで戦線が崩壊する機器があります! この騎士団の中で一番実戦経験のあるドミニクが掛かれば!」

 

 四人が殺されたのを見て動揺し、後数名程を殺されれば戦線が崩壊することを危惧したドミニクが自分の出陣の許可を請えば、ヘンマもそれに賛同してミルドレッドに請い始める。二人の実戦経験豊かな女騎士に言い寄られたミルドレッドは、それを直ぐに承諾した。

 

「わ、分かった! 頼んだぞドミニク!!」

 

「御意に、騎士団長殿!」

 

 騎士団長より許可が取れれば、兜のフェイスガードを降ろした後、ドミニクはシュンの居る方向へと向かった。

 

「向こうも少女相手に情けない…!」

 

「予言の乙女には私一人が相手をする。お前たちは来なくて良い」

 

 一方でルリと姫騎士たちによる戦闘が再開されたが、姫騎士たちは更なる醜態を晒すばかりであったがため、指揮官であるミルドレッドが直接立ち向かうことにする。

 

「しかし少女一人に騎士団長自らが出陣なさるなど…!」

 

「意見など不要! 少女と手負いの者相手に苦戦したなどの経歴があれば、我が聖ヴァンデミオン騎士団の名に傷がつく!」

 

 それにヘンマは異を唱えるが、ミルドレッドはそれを無視して兜も被らず、ルリの方へと向かった。

 

 

 

「下がれ、下がれ! 下がりよろう!!」

 

 ドミニクが周囲の騎士たちに下がるように叫びながら参戦すれば、シュンはこの状態で厄介な敵と戦わなければならないと思い、刀身を下に下げて警戒する。

 しかし、ワルキューレ所属時代にドミニクを見たことがあるのか、本人かどうか確認するために問い掛ける。

 

「その熊の甲冑にガチムチな女騎士…思い出したぜ。あんた、あの‟鉄壁のドミニク‟だな?」

 

「ほぅ、懐かしい名を! 以下にも、かつて私は鉄壁のドミニクと呼ばれ、今は父ベアラードと同じく大熊のドミニクの渾名を持つドミニク・ヨールゼン!」

 

 ドミニクを見たシュンがその姿を見て彼女の過去の渾名を思い出せば、本であることが確定し、それに応える形で今の渾名とフルネームを告げる。

 これには本陣で控えている三名と、シュンは呆れ果てたが、今のドミニクしか知らない聖ヴァンデミオン騎士団の女騎士たちは、戦意を取り戻し始める。

 

「ドミニク様が来たわ!」

 

「これであんな大男なんか!!」

 

「(ちっ、こいつが出て来てからこのアマ共が勢いを取り戻し始めた。厄介なことになっちまったな…)」

 

 ドミニクが参戦したことで周囲に居る騎士たちが戦意を取り戻して、再び自分を捕らえようと向かってくる可能性も高いので、手早く一撃で片付けようとする。

 だが、背後より高速で迫り来る者の気配を感じ、その者が突き刺したナイフを左手で掴み取って動きを止めれば、背後を向いて自分にナイフを突き刺した者を見る。

 正体は如何にも日本人の十代後半の青少年と言う外見であり、ナイフを握るシュンを見て驚いて、必死に引き抜こうとしていたが、凄まじい握力と尚且つ手の分厚い皮膚で全く左手を傷つけないでいるので、恐怖を覚えていた。

 

「っ!?」

 

「なんだこのクソガキぃ…? 今はお前と…!」

 

 シュンがその少年を武偵の者であると分かれば、相手が動かないように強くナイフを握る相手の右手を左手で握り潰す勢いで掴みながら、少年の額に頭突きを食らわせた。

 

「遊んでる暇はねぇ!!」

 

 強烈な頭突きを食らった少年は一瞬の内に気を失い、地面の上に白目を剥いたまま倒れる。

 それを見ていたドミニクは、少年でも容赦なく叩き潰すシュンを軽蔑し始める。

 

「貴公、いくら背後より奇襲を仕掛けたとはいえ、それはやり過ぎではないか?」

 

「うっせぇ、黙ってろ筋肉ババア。大体、後ろから襲ってくる餓鬼の方が悪い」

 

 少し年齢を気にしている自分の事を婆呼ばわりしたことに怒りを覚えたドミニクは、得物である大振りの戦槌の先を向け、やや怒りつつも属する聖ヴァンデミオン騎士団に課せられた任務を遂行することを優先し、シュンにその大きな槌を振り下ろそうとする。

 

「おのれ、この上にババアとは…! 許せまし!! 我が威信に掛け、全力で貴様を捕縛する!!」

 

「来い、熊鍋にしてやる」

 

「意気込みは良し! 骨の一、二本は覚悟して貰おう! いざ参る!!」

 

 挑発してくるシュンに勇敢に立ち向かったドミニクは、彼の大剣と同様に素早くハンマーを振ってくる。

 負傷の身であり、反撃の隙が見当たらず、ただ感覚を失いつつ左脚を動かして回避するのが精いっぱいであった。

 

「(くそっ、左足と右手の感覚が無くなって来やがった…このままじゃ不味いな)」

 

 自分の置かれた状況をよく理解しているシュンは、何とか解決の打開策を考えようとするが、本陣に控える残る三名の強敵と多数の重装備な女騎士に囲まれているので、何も思い付かない。そればかりか視界まで霞み始める。

 

「どうした!? 大口を叩いていながら攻めての一つも無ければ、拍子抜けだぞ!!」

 

「(それにこの婆、ただの怪力馬鹿じゃねぇ。流石に小型の機動兵器一個中隊相手に、たったの四人で戦って足一本だけで済んだだけの事はあんな)」

 

 自分を追い詰めるドミニクの攻撃を躱しつつ、改めて彼女の武勇伝が作り話で無い事を知り、この大柄な女騎士と万全ではない状態で戦ったことを後悔する。

 

「おのれぇ、ちょこまかと! 必殺、さみだれ打ち!!」

 

 手負いの身で素早く動き回るシュンに苛ついてか、ドミニクは自分の得意技であるハンマーの高速の連続打ちを繰り出した。

 流石に回避しきれず、大剣の刀身で防御するも、一撃一撃が強力であるがために、受け切れない。最後の一発目を利用し、その衝撃でドミニクから距離を取る。

 

「その太刀筋、まごうこと無き戦の剣! 私も久々の強敵を相手に心が湧きたっているが、責務は責務。貴様を生かして捕らえねばならん。さぁ、大人しくお縄に付け!」

 

 今の状態では、確実にドミニクにやられてしまうだろう。

 そう思っているシュンであるが、彼女の背後に、ルリを腹を踏み付けているミルドレッドの姿が見えた。

 

「(包囲網を抜けるなら…連中の頭を()るしかねぇ…!!)」

 

 薄れゆく意識の中、ミルドレッドを指揮官と見たシュンは、この場の指揮官である彼女の首を取るべく、ドミニクを押し退ける勢いで彼女の元へ向かった。

 

 

 

 ドミニクがシュンと対峙したと同時刻、姫騎士兵団の一部隊の頼りなさに情けなさを感じ、ルリの前に立ったミルドレッドも、同じく名を名乗り、目前の少女に剣先を向けていた。

 

「私の名は聖ヴァンデミオン騎士団団長ミルドレッド・テューダーだ! 貴様も名を申せよ、予言の乙女よ!」

 

「さ、冴島瑠璃です…!」

 

 名を問われたルリが、この世界における自分の偽名を名乗れば、それに怒りを覚えてか、ミルドレッドは本気の名で言うように怒鳴り付ける。

 

「それは古より生ける伝説があるこの世界での名! この私を前に、真の名で名乗らるか!!」

 

 凄い剣幕で言われたルリは、少し怯えながらも本当の名を口にする。

 

「ルリ…ルリ・カポディストリアス…」

 

「我がワルキューレの魔法騎士にして元空軍中佐であるマリ・ヴァセレートの恋人と聞いていたが、その様子では記録が無いようだな。何処かで記録操作を受けたのであろう。だが、その程度如きで我らは容赦せぬ。大人しく、我が軍門に下って貰おう」

 

 ルリの返答で記憶が損失していると分かれば、ミルドレッドは剣先を向けながら自分が属する勢力の軍門に下るように告げる。だが、目前の少女はワルキューレに入るつもりは無く、はっきりとそれを断る。

 

「わ、私は…貴方たちの軍門には下りません!」

 

「そうか。先方より無傷で捕らえよと応接かっているが、擦り傷の一つ、付けても仕方あるまい!!」

 

 はっきりと断る少女の返答を聞いたミルドレッドは、力強く剣を振って、自分より体格が劣るルリに容赦なく剣戟を撃ち込む。

 

「くっ…!」

 

「おぉ! 流石は騎士団長殿!!」

 

 幼さが残る少女に容赦なく剣戟を撃ち込むミルドレッドを見て、周りに居る姫騎士たちは自分が適わなかったルリを押していることに尊敬の意を表して褒め称えたが、本陣に構える歴戦練磨の勇士であるヘンマとエルミーヌ、ノエミから見れば、大の大人が剣で一方的に子どもを虐めている様にしか見えない。

 

「まぁ、なんてつまらないのかしら。大の大人が子供を相手に」

 

 シュンとドミニクの戦いを見た後に冷めてしまったのか、エルミーヌはルリとミルドレッドの戦いの酷さに呆れ、それを口にする。

 

「そう言うな。仮にも我が聖ヴァンデミオン騎士団の団長。貴殿も騎士なら、それなりの敬意を表さぬばならんぞ」

 

「えぇ、そうでしたわね。ファイトですよぉ、ミルドレッド様ぁ!」

 

「貴殿と言う奴は…!」

 

「ヘンマ殿、ここは抑えよ。敵前の目で、内輪揉めは良くない」

 

 ヘンマから注意を受ければ、エルミーヌは冷めた表情を浮かべながら馬鹿にするような応援の仕方をした。これには流石にヘンマも腰に差してある剣を抜こうとしたが、ノエミに止められる。

 

「エルミーヌ殿! 次は無いと思え!」

 

 これに怒りを抑えたヘンマは、次こそは容赦しないと告げた後、エルミーヌはそれを逆なでするような言い方で返した。

 

「まぁ、こわーい」

 

「貴様ぁ…!」

 

 もう我慢の限界か、ヘンマは今度こそ剣を抜こうとする。それが分かっていたエルミーヌも、剣を抜こうとするが、双方の首元に剣の剣先が向けられる。

 

「双方とも、抜けば両成敗としてこの元疾風騎士団のノエミが二振りの刃で喉を突き刺す」

 

「さ、流石は元疾風騎士団のナンバー2とまで言われたノエミ殿だ…一瞬で二振りの剣を抜くとは…」

 

「まぁ、素敵。殿方でしか濡れないのに、相手が女なのに濡れちゃった。今宵はお相手になって」

 

 両手の逆手持ちで双方の喉元に剣先を向けるノエミに、彼女の過去を知るヘンマはその凄さを身で知って恐れおののき、エルミーヌは性的興奮を覚え、性交渉の誘いを掛ける。

 その性交渉の誘いを善処しておくと答え、ルリと剣を交えているミルドレッドの方へ視線を向けながら二振りの細身の剣を鞘に戻した。

 

「善処しておく。それよりあの少女の太刀筋、その気になればミルドレッド殿の首を容易く跳ねられるのに対し、人を殺めたくはないためか、攻めを全く行わない。私としては、あのまま防戦一方で良いのだが」

 

「確かにあの太刀筋は人を殺める物。だが、あれではただの棒切れを持っているだけ。何を隠しているのだ? それとも他の仲間の援軍を待っているのか?」

 

 ノエミの言う通り、ルリの剣の形はマリと同じ人を殺すための形であるが、本人は人を殺めたくは無いがためか、ただミルドレッドの剣戟を受け続けるだけだ。この自分にとっては余りにもツマラナイ戦いに、エルミーヌは不謹慎なことを言う。

 

「サッサッと()っちゃえば良いのに」

 

「き、貴様ぁ!? 何と言う事を!?」

 

「エルミーヌ殿、その発言、二度とせぬように注意を。それが聞けぬなら、今宵の相手はお一人でなさるように」

 

「あらぁ~、ごめんなさい」

 

 その不謹慎な発言を聞いたヘンマは怒りを露わにしたが、ノエミの注意でエルミーヌはまるで子供のような笑みを浮かべながら謝罪した。

 

「きゃっ!」

 

「はぁ、はぁ…貴様の抵抗は無駄だ、大人しく投降せよ…!」

 

 何発も撃ち続けてようやく一人の少女を地面に倒すことに成功したミルドレッドは、息を切らしながら剣先を向けながら投降するように告げる。だが、ルリは諦めず、近くに落ちてある剣を拾おうとする。

 

「おのれぇ、まだ諦めぬか!!」

 

「あぁぁぁ!?」

 

 これを見て苛ついたミルドレッドは、甲冑も身に着けてない少女の右手を折る勢いで強く蹴って、剣を遠くの方へ蹴り飛ばす。その後は右手を抑え、激痛で苦しみもがいている少女の右足で腹を踏み付け、再び剣先を向けながら再び投降勧告を行う。

 

「かはっ…!」

 

「投降せよ。投降せぬなら骨を折ってでも屈服させるぞ」

 

小さな少女を痛め付ける騎士団の女団長に対し、周囲に居る者達は流石に気を引き、一人の姫騎士が不安そうな表情を浮かべてそれ以上は良くないことを告げる。

 

「あ、あの…それ以上は止した方が良いんじゃ…」

 

 傍から見れば、大の大人が子供を痛め付けている様にしか見えないため、一人の姫騎士が止した方が良いと告げたが、ミルドレッドは凄まじい目付きで睨んで黙らせた。

 そんな自分の元へ、シュンが部下たちを跳ね除けながら向かってきているが、彼女はそれに気付かず、踏み付けているルリを見下しながら抵抗するか、服従するかの二択を問う。

 前者を選べば気絶するまで痛め続けられ、後者を選べば連れて行かれる。

 どう選んでもルリに取って自由を奪われることは間違いない。

 そう思っているルリは、前者の方を選択しようと声を出そうとするが、シュンが自分を噴付けている女の近くまで来ていることを知らせるドミニクの声で掻き消された。

 

 

 

『その男を止めろ!! ミルドレッド様が危ない!!』

 

 そのドミニクの怒号が響き渡る中、シュンは自分を止めに来る女騎士たちを跳ね除けながら強引に進み続ける。

 まるで戦車のようであり、立ち塞がる者は次々と跳ね飛ばされるだけで止めることは出来ない。

 

「おのれ!」

 

「これ以上は!!」

 

 勇敢な二人の女騎士がメイスと盾を持ってシュンを止めようとしたが、彼が振るった大剣で胴体引き裂かれ、血飛沫を上げながら地面に倒れる。

 

「ひっ、ひぃぃぃ!!」

 

「い、いや、死にたくない!!」

 

「ま、待て! 逃げるんじゃない!!」

 

 やって来る返り血塗れの男を見た姫騎士たちは恐怖し、あろうことか武器を捨てて逃げ出し始める。静止の声を上げる者も居るが、ミルドレッドを狙って突き進むシュンに挑む勇気は無く、ただその場で立ち尽くすだけである。

 

「あぁ…い、いや…! 来ないで…!」

 

 自分を殺しに来るシュンに恐怖し、ミルドレッドは恐怖の余り踏み付けている少女の上で失禁した。そればかりか泣き出し始め、身体も動かなくなる。

 殺される、あの男に殺されてしまう!

 そんな考えが脳内を支配する中、少しでも抗おうとしてか、ミルドレッドは剣を向かってくるシュンを近付けまいと、滅茶苦茶に振り回す。

 

「来るな! 私に近寄るなぁぁぁぁ!!」

 

 泣き叫びながら剣を振り回すミルドレッドであるが、既に意識が遠のき始めているシュンは依然と向かってくる。

 

「大将首、貰った!!」

 

 やがて大剣を振り下ろせる距離まで来れば、一気に刀身を上に上げ、その巨大な刃をミルドレッドに向けて躊躇いも無しに振り下ろす。

 

「っ!? 何かが左脚に…!?」

 

 もう少しの所で、負傷した左脚に何かが当たり、急に意識が遠のいていく。

 直ぐに当たって落ちた物を確認すれば、聖ヴァンデミオン騎士団の手甲冑であり、投げた人物を確認すれば、ノエミの姿があった。

 

「あのキザ野郎…!」

 

 薄れゆく意識の中、シュンはノエミを恨みながら地面に倒れ込んだ。

 もう彼には立ち上がる体力も気力も残されておらず、もう戦う事も出来ぬまま、シュンは地面の上に横たわり、意識を失った。

 

「や、やった…!?」

 

「流石は団長殿!」

 

「いや、流石!」

 

「わ、私が倒したのか?」

 

 凶暴な敵が倒れ、それを倒したのがミルドレッドと思った周囲の者達は、直ぐに彼女を褒め称える。これを受けて自分がシュンを倒したと思い、ルリの腹から足を退け、二人を拘束するように告げる。

 

「よ、よし! ただにこの者達を拘束せよ! 拘束後、野営地へ引き上げる!」

 

『了解!!』

 

 拘束が終われば野営地へ引き上げると指示を出せば、それに応じて女騎士と姫騎士たちはシュンとルリの拘束を行い始める。

 

「んー! ンンン!!」

 

「大人しくしなさい!!」

 

 ルリの拘束は直ぐに済んだ。噛み付かれないように猿轡を口に着け、両手を後ろに回させて手錠で繋ぎ、持ち上げて待機していた護送用のトラックの荷台に詰め込む。

 

「ちょっ、こいつ重い…!」

 

「この大剣、重すぎ…!!」

 

 一方でシュンの拘束に関しては、巨体と彼以外が持てば重すぎる鉄塊のような大剣のおかげで難航しており、上手く進んでいない。

 

「トラックに乗せよ! その男もだ!!」

 

 予想外にシュンの護送にてこずっている部下たちに向け、ヘンマが大剣と共にトラックに詰め込むように指示を出せば、それに応じて三人がかりで大男を荷台へ放り込み、十人掛かりで運んだ大剣も一緒に荷台へ放り込む。

 シュンに関しては起き上がって暴れられたら厄介なためか、厳重に拘束していた。

 護送車であるトラックに、二名の捕縛対象を生きた状態で乗せ終わらせれば、馬に跨っているミルドレッドにそれを報告する。

 

「護送車に双方とも載せました! あの者達は如何なさいましょう?」

 

「放っておけ、いずれは連中の援軍が回収するだろう。それより急ぎ撤収するぞ、この場に長くは居られん」

 

「はっ!」

 

 シュンに倒されている桃色の髪の少女と少年に関してのことを問われたが、ミルドレッドは後から来る武偵の増援に任せ、直ぐに撤収することを告げ、馬を自分等の野営地へ向けて走らせた。

 聖ヴァンデミオン騎士団の死体とその装備品は全て残らず回収され、彼女らが去った後に残されているのは、シュンにやられて気絶している桃色の髪の少女と、奇襲を仕掛けて返り討ちにされて逆にやられて気絶している少年に、多数の血痕だけであった。




聖ヴァンデミオン騎士団の主なメンバー

美少女虐めるの大好きな騎士団長、ミルドレッド・ヴァンデミオン(20)

脳筋ババア、ドミニク・ヨールゼン(41)

元アガサ騎士団の参謀の豚、ヘンマ(37)

淫乱ピンク、エルミーヌ・レオニー・ド・バルバストル(22)

おっぱいの付いたイケメン、ノエミ(27)

と、まぁ、個性的な面々。
淫乱ピンクのエルミーヌは、リメイク前の焼き直しだけど…従僕の二名も登場予定。
まぁ、他にも出す予定だけど、殺される役かな…?
ザシャに関しては、sakuraさんと連絡が付かないので、当分出す予定はない。

姫騎士団は、単なる雑魚要員とエロ要員だけだったよ…
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