復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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マジで更新続かないな。定期更新で無くて良かったわい。

ちなみに、ちー様じゃないよ。


現代の鬼

 ある荒野の大地の戦場にて、無数の屍が転がる大地の上に、二人の男は立っていた。

 一人は背丈190㎝の大男で、身の丈を超える程の大剣を持ち、もう一人は背丈170㎝の男で片刃の太刀の分類に当たる日本刀を持ち、大剣を持つ男に向けて剣道の試合の選手の如く、一切乱れることなく刀身を向けている。

 二人の共通点はと言えば、殺して来た将兵の返り血を浴びた戦闘服を着て、銃が主力のこの戦場で刀剣類を持っていると言うこと。

 違いは武器の大きさと背丈。大剣を持つ大男の方が体格的にも腕力でも買ってしまいそうだが、大剣と言う武器は扱い難い物であり、日本人の体格でも扱いやすい太刀と戦えば、確実に後者の方が勝ってしまう。

 そんな分の悪い大剣を愛刀にする大男は、太刀を向ける侍のような男に向けて大剣を軽々と上まで持ち上げて斬り掛かった。

 

「オラァ!」

 

 雄叫びを上げて大剣を振るう大男の動きは容易に予想ができ、避けるのは簡単だった。

 相手の動きを見ていた刀を握る男は、振るわれた巨大な刀身を避け、大男の脇腹に向けて刃を叩き込もうとする。

 だが、結果は刀の男とは予想を上回る結果となる。

 

「っ!?」

 

 大男は地面を蹴って振るわれた太刀の刃を避けたのだ。

 斬り払いを避けた大男は、空かさず刀の男に向けて大剣を振り下ろすが、一撃目と同様に動きが遅いので、また躱されてしまう。

 

「その大剣でどうしてこれだけ動ける?」

 

 大剣の刃を躱した男は、その巨大な剣を握る大男に、重い武器でどうして早く動けるのかを問う。

 戦場で敵に問われても答える義務はないが、大剣の大男は問いに素直に答えた。

 

「日々、鍛えてってからな。今じゃ両手剣ぐらいに振るえるよ」

 

「日々の鍛錬に体格か…母親に感謝するんだな」

 

 日々鍛えているおかげで難なく扱えるようになったと答えれば、刀の男はそれに納得して自分を生んだ母に感謝するよう義理堅く答えた大男に告げた。

 だが、大男は刀の男が思った言葉とは違う返答を口にする。

 

「いや、俺の母ちゃんは俺が生まれたことは望んじゃいねぇよ」

 

「どういう意味だ? まさか…」

 

 自分は母親に望まれて生まれた子では無い。

 そう答えた大男の返答に、刀を持つ男は愛人か強姦、民族浄化によって生まれた物と思ったが、大男は彼が答えを言い出すよりも前に、それを言いながら大剣の刃を振り下ろして来た。

 

「そう、望まれずに生まれた、醜いアヒルの子って奴だよ!」

 

 返答の斬撃が来たのを確認すれば、刀の男はそれを受け切ることなく避ける。

 あの巨大な刃で西洋剣ほど太くない日本刀で受け止めれば、良くて折れずに行かなくとも、刃毀れすることは間違いなしだ。

 どうやって刃毀れさせず、良質な状態を保つには、敵の攻撃は防御することなく、避けると言うのが最善的だ。これに刀の男は反撃の振り払いを加えるが、相手は自分が使わない大剣での防御を行ってくる。これでは刀身の耐久度が減ってしまい、いずれか折れてしまう。

 そこで、刀の男は相手が防御手段に出れば、刀身を離すと言う手段に出て耐久度を保とうとする。

 それが数分以上繰り返される中、大剣の大男は打開策を見出すためか、相手の足元へ向けて振り払いを行う。

 

「っ!?」

 

 自分の足元への攻撃が来たのを見逃さなかった刀の男は、それを飛んで避けるが、これが大男の狙いであったのか、自分の顔面に向けて頭突きを食らわせに来た。

 これを防ごうとするも、大男の頭突きが早過ぎて避け切れず、鼻に強烈な打撃を受けて倒れた。

 

「がっ、がぁぁ…!」

 

 その頭突きの威力は鼻が潰れる寸前の物であり、刀の男は凄まじい痛覚を感じながら悶え苦しむ。

 そんな相手に対し、大男は額の皮膚でも切れたのか、血を流しながらも相手が目を瞑った瞬間を逃さず、とどめの一撃を相手の腹へ打ち込んだ。

 

「ぐぅっ!?」

 

 視界を一瞬、目前の大男から離した隙に、自分の腹に大剣の刃を突き刺された男は、何が起きたのか理解出来なかったが、物の数秒ほどで自分が目前の大男に敗北したと察し、柄を握る手を緩めて得物を離した。

 相手がもう戦えない状態であると分かれば、大男は大剣を引き抜き、背中のラックへと巨大な剣を戻す。

 

「ま、負けたのか…この俺が…」

 

「あぁ、負けたよ。その痛みからして、夢じゃないって思うだろ?」

 

「そうだな、腹から痛みが来るから夢じゃないって言う事は分かる…」

 

 自分の得物である太刀を手放した後、男は目前の大男に対して自分は負けたのかと問えば、彼はそれに答え、男は腹から来る痛みで夢では無い事を納得して自分の死期を待つ。

 大男はそんな男に近付き、腰から刀の鞘を引き抜き、近くに落ちている刀を拾い上げ、その鞘に納める。それに気付いた瀕死の男は、大男に最期の頼みをする。

 

「な、なぁ…俺の胸ポケット…にある…煙草の箱を…取ってくれないか…?」

 

 その頼みを受けた大男は少し理解出来なかったが、男が着ている血塗れの戦闘服の胸ポケットを弄れば、血塗れの煙草の箱があった。

 

「あぁ、湿ってなければ良いが…一本取って俺の口に…」

 

 血塗れの箱を見て中に納まっている煙草が無事であることを祈れば、大男に一本取り出すように頼み。

 無言で応じて大男は箱からまだ血が付いてない一本を取り出し、それを瀕死の男の口に咥えさせ、火を点けるためのライターが無いかどうか調べる。

 ライターを探す大男を見て、瀕死の男は煙草を普段吸わないのかを問い掛けて来る。

 

「お前、タバコは吸わないのか…?」

 

「あぁ、苦手なんでな。あった」

 

「そう、苦手か…それは良い事だな…」

 

 煙草が苦手と答えた大男に、瀕死の男は自分を倒した男が喫煙者で無い事を喜ぶ。

 

「ありがとう…最期の一服だ…これで悔いなく逝くことが出来る…」

 

 ライターを見付け、ご丁寧に先に火を点けてくれた男に感謝の言葉を述べた。

 そのお礼なのか、自分の得物を相手に与えると告げる。

 

「そうだ、そいつはくれてやる…最期の一服をくれた礼だ…」

 

「元からそのつもりだ」

 

 そう告げられた大男は、相手の得物を手にしながら答えてその場を去ろうとした。

 だが、まだ自分を倒した男の名を聞いていない男は、去ろうとする大男に名を問い始める。

 

「なぁ、お前…なんて名前だ…? 最期に聞いておきたい…」

 

 名を問われた大男は振り返り、誤魔化すことなく正直に答えた。

 

「瀬戸、瀬戸シュン…」

 

「せ、瀬戸シュン…日本人か…日本は、今、どうなってんだろうな…この異世界じゃ分からねぇや…死んだ後で見よう…か…」

 

 自分を倒した相手の名が、自分と同じ日本人であると分かれば、男は自分の名を語らぬまま、故郷がどうなっているのか気にしつつ息を引き取った。

 相手が完全に死んだのを確認すれば、大男は殺した相手の得物を握りながら戦場へと戻った。

 

 

 

「問答無用か…!」

 

 いきなり斬り掛かって来た金髪の赤眼の青年の一撃を防いだ後、シュンは相手が完全に自分を殺す気で来ていると判断し、巨大な刀身を押し込んで相手を怯ませようとする。

 

「愚かな!」

 

「っ!?」

 

 だが、相手はその一般人男性とは変わらぬ腕とは思えぬ力でシュンの怪力を押し切り、逆に大男を怯ませた。

 

「(どうなってやがる!? こいつ、まさか…!?)」

 

 相手が自分を怯ませるほどの力の持ち主と判断すれば、シュンは目前の青年が超能力者の類ではないかと疑った。

 だが、シュンが答えを見出すことも待たず、相手は追撃の一手を繰り出してくる。

 一撃がまるで魔物か自分より上の怪力を持つ大男の威力であり、シュンはただひたすら崩されないように必死で耐えるしかない状況だ。それに反撃を行う隙も見当たらず、青年は見下すような目付きでシュンを睨み付けながら斬撃を行う。

 

「(畜生、この怪力に剣筋(けんさばき)。こんな奴は俺がずっと前に倒した日本刀の奴とは大違いだ!)」

 

 ただ相手の攻撃を防御するしかないシュンは、過去に戦った目前の青年とは違う太刀を持つ日本人の男を思い出した。

 かの男は普通の人間で腕力は普通の将兵ほどで、剣筋も高かったが、目の前でひたすら自分を嬲殺しにしようとする青年は、その男を遥かに上回る強敵であった。

 

「貴様、ただ防ぐだけか? それでも剣士か?」

 

 自分の攻撃を防御するばかりで反撃もしてこないシュンに面白みを感じないのか、剣士として恥ずかしくないのかと問うてくる。

 この問いにシュンは答える義理も無く、地面を蹴って一旦青年から距離を置き、地面の砂を蹴って視界を塞ごうと思ったが、地下や屋内に居た大日本帝国の構成員らが一斉に出て来た。

 

『あいつ等を殺せ!!』

 

『ワァァァ!!』

 

 拡声器で代理の指揮官が告げれば、構成員らは雄叫びを上げながら剣戟を交わしているシュンと青年に向けて突っ込んで来る。

 外では混乱によって味方同士の殺し合いが起こっていたが、代理の指揮官の声で混乱が収まった様子であり、全員が二人の方へ来ている。

 

「ちっ、ゴミ共が」

 

 飛んでくる銃弾を躱しつつ、青年はシュンに刀を撃ち込むのを止め、銃を撃ちながら向かって来る極右テロリストらの排除を始めた。

 

「お構いなしか…!」

 

 青年に向けて攻撃が集中していると思いきや、シュンの方にも銃弾が飛んでくるので、彼も反撃を行うべく、大剣を地面に突き刺してからHK416突撃銃に切り替え、姿勢を低くして向かって来る構成員らを撃つ。

 

「この数では、アレを使うしかないな…」

 

 シュンが数名ほど撃ち殺し、青年が二名ほどを斬り殺して切が無いと判断すれば、青年は自分の奥の手を使う。

 

「っ? マジであの手の類らしいな…」

 

 向かって来る構成員らを的確に仕留める中、シュンは青年が奥の手を使った場所を見て、確実に超能力者の類であると判断した。

 それは彼が白髪金眼となり、額に二本の角を生やしたからだ。

 突如姿を変えた青年に、彼を殺そうとしていた構成員らも驚きの声を上げ、銃を撃つのを止める。これには流石にシュンも撃つのを止め、一同と同じく鬼となった青年を見た。

 

「…どうせハッタリだ!」

 

 一人がハッタリだと思ってM14自動小銃で青年の頭に向けて撃ち込んだが、銃弾は当たることなく、青年の背後に居る二人が何かに撃たれたように倒れた。

 

「銃弾を斬った!? やべぇ剣士じゃねぇか!」

 

 この場に居る全員が驚く中、銃弾を斬る剣士を知るシュンは、青年の背後に居る二人が何かに撃たれて倒れたのは、彼が銃弾を斬ったのだと即座に理解した。

 

「ひっ…!?」

 

「まずはゴミ掃除だ…!」

 

 アメリカの古い軍用ライフルを撃ったテロリストが怯えた声を出せば、青年は周囲に居るテロリストたちの排除を先決し、目に追えない程の速さでそのテロリストに接近して斬った。

 

「(さっきより威力が増している…!? 強化魔法の類って所か)」

 

 斬られたテロリストは、胴体の右半分を切断されて肉塊となって死んだ。

 プロならかなり力を入れ、見極めてから瞬時に振らねばならないが、あの青年はそれをすることなく、難なく振って斬り殺している。

 

「う、うわぁぁぁ!!」

 

「お、お前ら! 逃げるな! 相手は一人、二人だぞ!!」

 

 周りの味方を秒単位で一人ずつ肉塊にしていく鬼となった青年を見て、恐怖を覚えて逃げ出し始める。

 代理指揮官が逃げないように空に向けて拳銃を撃って止めようとするが、恐怖を覚えたテロリストたちは誰も聞かず、我先へと逃げ出し始めている。

 そんなテロリストたちを鬼は誰一人逃がすことなく、背中を向けて逃げ出す彼らを次々と虫けらのように斬り殺していく。

 

「まぁ良い、帰って好都合だ」

 

 士気が瓦解したテロリストらを更に混乱させるため、シュンは持ち直させようとしている代理指揮官を撃ち殺し、更なる混乱を高めようとした。だが、既に指揮官が居ても、彼は戦意全くなく、もう逃げ回るだけだ。

 

「意味ねぇか、なら…」

 

 指揮官を殺してもなんら変わらないため、シュンは自分に背中を見せている鬼に向けて銃弾を撃ち込んだ。

 放たれた小口径弾は当たるはずだが、当たる直前で背後から来る銃弾に気付いた鬼は、それを刀身で跳弾させて近くの逃げる男に命中させた。

 

「嘘だろ…」

 

 奇跡など起きない限り出来ない芸当を、目前の鬼が難なくやり遂げた為、シュンは驚愕したが、同時に銃では勝てない相手だと判断し、大剣の柄に手を伸ばした。

 大剣の柄を握ってから、ライフルを邪魔にならない位置である背中へ寄せれば、そのまま地面から引き抜いて戦意を失ったテロリストたちを殺し回る鬼に斬り掛かる。

 

「わぁぁぁ!?」

 

 目の前に、鬼から逃げるテロリストが居たが、シュンは避けることなく大剣の刃を死の恐怖に怯えて逃げる彼に向け、遠慮なく横に振って自分に取って邪魔な障壁を肉塊へと変える。

 鬼に斬られた者達とは違い、断面図はグチャグチャで綺麗に斬れることは無いが、シュンに取ってはそんな物はどうでも良いのだ。

 ただ斬って死ねば良し。

 シュンに取ってはそれだけで十分なのだから。

 

「来るか…!」

 

 テロリストたちの殆ど殺し尽した鬼は、大剣の刀身を地面に擦らせながら素早く向かって来るシュンに対し、突きの構えを見せる。

 重い剣を横に振ろうとする前に、大男の心臓と突いて息の根を止める魂胆だろう。

 だが、大剣を持つシュンは、鬼の予想を遥かに上回る行動を見せる。

 

「(今…っ!)」

 

 太刀の突きの範囲に近付いた瞬間に、鬼は突きを放とうとしたが、向かって来るシュンは突きを放つ前に大剣を振った。

 

「なに…っ!?」

 

 横に振るわれた大剣の刃に、咄嗟に気付いて地面を蹴って躱すことは出来た物の、顎の辺りに掠り傷を負う。

 自分の予期せぬ振りの速さに後ろへ下がった鬼に、シュンは間髪入れずに先ほどのお返しと言わんばかりに追撃を掛ける。

 二撃に三撃、四撃と五撃と数秒ほどで畳み掛けるも、素早く動く相手には掠りもしなかった。

 

「むざむざと…やられるか!」

 

 六撃目を仕掛けようとした時、鬼もただ黙って避けてはいられなかったのか、シュンの顔面に向けて振り払いを行う。

 その速度は先のテロリストらを斬り殺していた時も早く、危うく顔面の上半分を両断されそうになったが、数々の相手と戦って来たシュンはそれを寸前のところで避け、鼻に切り傷を負わされる程度で済む。

 このシュンの悪運の強さに鬼はややイラついたが、彼は鼻の切り口から出血しながらも大剣の斬撃を仕掛けて来る。

 回避が間に合わない間合いのため、鬼は大剣の斬撃を敢えて受けた。

 

「っ!?」

 

 だが、シュンの力は鬼の予想の範疇を超える物であり、思わぬ一撃を受けて防御が弾かれてしまう。

 

「(攻めには転じさせねぇよ。やられっぱなしは趣味じゃねぇんだからな)」

 

 よろけた相手に追撃を掛けるシュンは、ここで守りに転じれば、最初の打ち合いと同じくまた防御に徹して反撃の隙を窺うしかないと思ってか、長期戦を避けるために相手に反撃させずに攻め立てる。

 

「(こいつ、あの大剣で!? 一体何所にそんな力が!?)」

 

 巨大な鉄塊のような大剣を、まるで片手剣の如く素早く振るうシュンの怪力を見て、鬼は振るわれる刀身を避けながら驚愕していた。

 通常でも、シュンの身長を超える大男でもあの巨大な鉄塊を振り回せる人間など、鬼の知る限りこの世には存在しない。

 おそらく妖か超現象のような力を手に入れた物だろう。

 鬼はそう仮定し、振るわれる刀身を避けながら隙を探した。

 高速で来る鉄塊を回避しつつ、それを振るう大男の弱点を探す中、足元の辺りに若干の隙が見えた。

 

「(そこか…!)」

 

 足元へ視線を集中すれば、自ずと突きを加えられる箇所を見付けた。

 しかし、避けた後に突きを行えば、攻撃を受ける可能性がある。だが、刀身を上に上げた瞬間に狙えば、勝機は見える。

 鬼も逃げ回る事を嫌ってか、イチかバチか、次の攻撃を避けた後、刀身を上げた瞬間を狙い、相手の足元へと突きを打ち込む。

 

「っ!?」

 

「届いた!」

 

 次の一撃を振ろうと刀身を上げた最中、左脚に刀身が突き刺さったのに気付いたシュンは、大剣を振るうのを止め、コンマ単位で刺さった左脚を見た。

 相手の脚に一太刀が届いたのを見逃さなかった鬼は、それを素早く引き抜いて距離を取り、次なる突きを行おうとする。

 

「この、モヤシ野郎がぁ!!」

 

 左脚に刃物を突き刺されて出血しているが、シュンはそんな物をお構いなしに、その刀身を渾身の突きを放とうとする鬼に向けて振り下ろそうとした。

 

「(これで決める…!)」

 

 その鬼もこの一撃で目前の大男を仕留めるため、力を込める。

 力が十分に溜まれば、鬼は即座に渾身の突きを目前の大男に向けて放ち、シュンは大剣の巨大な刀身を目前の鬼に向けて振り下ろした。

 両者の攻撃が同時に行われ、互いの剣が混じらんとした瞬間、合間に何者かが滑り込み、それを自らの身を挺して止める。

 

『っ!?』

 

 突如となく割り込んで来たその何者かに、自身の渾身の技を止められた両者は驚愕する。

 割り込んだその何者か、大柄の初老の男は、シュンの大剣の柄を右手で受け止め、鬼の放った突きを自らの左手で掴んで受け止めた。

 刃先の部分を掴んでいるために、掌から血が流れ出ているが、初老の男は痛みなど全く感じず、双方に戦いを止めるよう告げる。

 

「双方とも剣を収めよ! この国の安全を担う者同士、ここで剣を交える必要はない! ご理解無く戦闘を続ける場合は、この愛澤営二(あいざわえいじ)がお相手致す…!」

 

 そうシュンと鬼に告げれば、愛澤営二なる初老の男は双方を睨み付けた。

 愛澤に睨み付けられたシュンは、目前の初老の男ごと鬼を斬ろうと動かそうとするも、力が強過ぎて全く動かなかった。

 

「(こ、こいつ…あのモヤシ野郎と同じ化け物の類か…!? いや、このおっさんは別格だ。モヤシ野郎とは年季が違い過ぎる。ここでやり合えば、確実に殺されるな…)」

 

 目前の初老の男の目付きで人の姿に戻って太刀を鞘に戻した青年とは別格の者と分かり、ここは大人しく退くしかないと判断して、大剣を背中のラックへ戻した。

 

「そう、それで良い」

 

 シュンが剣を退いたのを確認すれば、愛澤は青年の太刀の刃を掴んだ左手をハンカチで抑えながら安心した。

 ここで退いたと思わせて拳銃に手を伸ばそうとしたが、その手を何者かに捕まれて止められる。

 

「止めておいた方が良い。その男はそこの鬼の坊ちゃんと桁違いだぞ」

 

「あ、あんたは…!?」

 

 拳銃に手を伸ばした手を掴むその男の声色に気付いたシュンは、自分の手を掴む相手を見て驚愕した。

 

「久しぶりだな、結構探したぜ。まさかこんな所に居るとはな…」

 

 あの中世ヨーロッパのルーマニアのような世界からの脱出劇から数カ月、その世界に置いて行ってしまったガイドルフ・マッカサーが生きて自分の目の前に姿を現した。

 

「あんた、あの中をどうやって…!?」

 

 ISAと呼ばれる統合連邦に属する精鋭勢力の攻撃の中で生きていたことに驚いたシュンは、どうやって生き延びたかを問い質す。

 

「あぁ、ワラキアの事か。あれは死ぬかと思ったが、なんとかこの通りピンピンしてる。良く訓練されている兵隊の相手に逃げ回るのには苦労したぜ」

 

「オメェさんら、知り合いだったか」

 

「おっさん、あんたここで何してんだ?」

 

 ガイドルフがISAの将兵から逃げ回ったことを思い出話のように答えれば、煙草を片手に松方が現れ、シュンに彼が知り合いなのかを問う。

 

「そりゃあおめぇ、環境省の連中に事情を説明するためだよぃ。まさか噂が本当だったとはなぁ…」

 

 シュンが質問に答えることなく質問で返して来れば、松方はそれに律儀に答え、環境省に本物の鬼が居る部署が存在していたことに驚きを隠せない事も告げる。

 思いもしなかった再会に驚く中、愛澤が青年を引き連れて謝罪してくる。

 

「失礼、その再会に水を差して済まないが、萩枝(はぎえ)殿が済まなかった。ここにお詫び申し上げる。さぁ、萩枝殿も」

 

「済まなかった。あの場所に貴様たち防衛省の者まで居たとは」

 

 萩枝と呼ばれるプライドの高そうな青年が、愛澤に言われて謝罪すれば、松方は環境省が同じ任務を就いていた情報を入手できなかった自分等が悪かったと謝罪し返す。

 

「いや、オタクら環境省が出て来るって言うことを入手できなかった俺たちが悪いんだ」

 

「とんでもない、貴方方が謝る必要はありません。悪いのは、領分を弁えずに防衛省の仕事を取ろうとしたのですから」

 

 謝罪し返す松方に、愛澤は謝る必要が無い事を告げれば、紫煙を吐いてから再び煙草を咥えた彼は、何故に環境省の実在しないはずの部署が、極右テロ組織である大日本帝国のアジトを襲ったのかを問う。

 

「そうかい。じゃあ、なんで俺たち防衛省が潰す予定の、極右のアジトを超常現象専門のオタクらが襲撃したんだ?」

 

「それにつきましては、彼らが我々の‟大事な物‟を盗みましてね、それを取り返しに来ただけですよ」

 

「大事な物…?」

 

「詮索は止した方が良いですぞ。では、我々はこれにて失礼。行きますぞ、萩枝殿」

 

 その部署がアジトを襲った理由を、環境省から盗まれた‟大事な物‟を取り返すための物と答えれば、松方はそれが気になったが、愛澤はそれについて詮索しない方が良いと警告してから萩枝を引き連れてこの場を後にする。

 シュンは鬼の二人が乗ろうとする環境省の乗用車のバックドアに、職員たちが大事そうに何かを詰め込んでいるのを目撃した。

 それを見ていたシュンに、松方はアジトにあれについての情報は無かったのかを問う。

 

「シュンよぃ、あれについての情報はあったか?」

 

「いや、あぁ言う奴の情報は無かった筈だが…」

 

 あの手の物についての情報は得られなかったとシュンが答えれば、松方は紫煙を吐きながら落胆した。

 

「はぁ、このスットコドッコイがぃ。こりゃあ、泰田の奴に二人揃ってこってりと叱られちまうぜぃ。ガイドルフよぃ、ちとあれについて調べてくんねぇか?」

 

「あぁ、出来る範囲で調べてみるよ」

 

「期待を裏切んなよ」

 

 シュンが当てにならないとなれば、松方は身元不明の情報屋であるガイドルフに頼み込んだ。

 松方の依頼を受け、ガイドルフは懐からケースを出してそこから葉巻を取り出し、上部を専用カッターで切り落して吸い口を作り、それを口に咥えて尖端にライターで火を点けてから環境省の情報を入手するため、この場を去った。

 

「さて、俺たちも帰るぞ」

 

「あぁ」

 

 ガイドルフが葉巻を吸いながら仕事へ行けば、松方が帰ると告げた。

 それに応じ、シュンは刺された左脚を引き摺りながら、防衛省の乗用車に向かった。




~今回の後書きコーナー~

回想は負けフラグ、はっきりわかんだね。つっても、白髪のおっさんが乱入してきて止まったけど。
今回のゲスト…誰呼んでいいか分かんないので締めさせてもらう。つか、思い浮かばねぇ…

次回辺りはジャンヌ戦かな?

でも、あの場にシュンを送り込んだらすぐに決着がつくので、前の復讐者と同じく変な連中と戦う予定。
有栖零児も出る予定っす。
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