思惑通り、同盟宇宙軍に投降したシュンは護衛艦の拘留室の中にぶち込まれ、スターキラー要塞へと護送された。
襲撃が失敗に終わり、シュンとガイドルフだけで孤軍奮闘する中、戦闘は同盟軍の勝利で終わり、大損害を受けた連邦艦隊は退却を始めていた。
援軍や補充部隊を積み込み、シュンや捕まえたゲリラたちを護送している補給艦隊は、そのままスターキラー要塞の軍港へと入港し、輸送している物資や補充部隊、捕まえた者達を降ろす。
「おい、そいつ等はなんだ!? 捕虜か!?」
「あぁ、捕虜だ! 連邦の手先に襲われたが、返り討ちにしてやったぜ!」
シュン等を初めとする捕虜の事を警備兵に問われた補給艦隊の保安隊員は、自分等が捕らえたと自慢げに語った。
そんな会話を済ませた後、保安隊員はシュンや捕虜達を別の警備兵らに渡す。
「捕虜は受け取った。お前たちは長旅で疲れているだろう。向こうで休憩してくれ」
艦隊の保安隊員等に労いの言葉を掛けた警備兵の将校は、捕虜達を捕虜収容所まで護送した。
要塞内を行き交う列車に乗せられた捕虜達は、物の数分程で収容所まで送られ、各自一人ずつそれぞれの独房へとぶち込まれた。
シュンも例外なく、持っていた装備を全て没収され、二人の衛兵に背中を蹴られて独房へ叩き込まれる。正規兵であれば、真面な扱いを受けたはずだが、シュンは正規兵でも無いゲリラと同じであるため、国際法は適用されない。
「クソッ、ゲリラだからってよ!」
これにシュンは悪態を付いたが、要塞への潜入には成功した。それから硬い地面に腰を下ろし、独房からの脱出方法を考える。
装備は待機状態のデバイスや収納状態のスレイブも含め、全てが没収された。
今、自分に残っているのは、訓練や幾度かの戦場で得た知識と体験、常人を上回る己の肉体のみだ。
それだけで何かできる物は無いかと、牢屋を見渡して探す。
「ん、こいつは…?」
何か無いかと見渡す中、崩れた壁より見えるパイプが見えた。
それを目にしたシュンは即座に手に取り、力任せに引っ張って無理やり引き剥がす。
当然ながら、僅かばかりの音が鳴り響き、見回りの歩哨が駆け付けて来る。
『おい! 何やってんだ!?』
シュンには分からない言語で注意してきた異星人の歩哨は、何の警戒もせず、無用心に独房のドアを開けて中に入って来た。入って来た瞬間に、シュンは抜き取った鉄パイプを歩哨の股間に向けて叩き付けた。
「グァァァ!!?」
股間に強力な打撃を受けた異星人の歩哨は、余りの激痛に床に両膝を突き、恐ろしい痛みでうめき声を上げ始める。
そんな歩哨に対し、シュンは鉄パイプの付け根を思いっ切り引っ張って二つに分ければ、鋭利な部分で喉を突き刺して歩哨を殺害した。
人間とは違う紫色の血が流れ出る中、シュンは死体を隠すために自分の独房へと死体を入れた。それから腰に吊るしてある鍵、それもカードキーと手にしているプラズマ弾を発射する自動小銃を取って独房から出る。
先の独房で死んだ歩哨とは違って用心しながら独房から出て、連行される間に見た通路を、逆戻りするように進む。
何十人もの捕虜が居るが、ここで解放すると、大きな騒ぎとなるので、監視カメラを避けつつ、別の区画がある場所へと辺りを警戒し、息を殺しながら向かう。
歩哨が何名か決められた箇所を巡回しているが、始末すると面倒になりそうなので、物陰を利用して隠れながら進んだ。
「よし、ばれていないな」
脱獄と発見されていないことを確認すれば、シュンは壁に貼ってある見取り図を見て、まずは尋問室を目指す。
そこにも何名かの将兵は居たが、誰もこの要塞に潜入した者がいないと思っているのか、人目を避けて物陰を移動するシュンに気付くことは無かった。
難なく尋問室がある区画へと入れば、聞き慣れた英語である標準語が、近くの尋問室へより聞こえて来る。英語を標準語にしている連邦軍の将校の尋問を行っているのだろうか、近くの兵士を鉄パイプで片付け、マジックミラーに映る尋問室を見てみる。
『大佐、いい加減に話したらどうです? そうすれば待遇は良くなりますよ』
『誰がお前たち侵略者共に話すか! 解放などと謳い、侵略行為を正当化する化け物共め!!』
『化け物? おやおや、随分と人間主情主義的な発言だ。これは佐官とは言え、手を抜かんわけにはいけませんな』
尋問室から聞こえて来るのは、尋問を受ける連邦軍の将校だ。
囚われの身である将校は情報を言うまいと、異星人の尋問官に差別的な発言を吐き捨てたが、尋問官は怒りを露わにせず、捕虜条約に違反している拷問を始める。
それは電気椅子による拷問だ。高圧電気を身体に流し込まれ、凄まじい激痛に耐えかねての将校の悲鳴は、シュンが居る部屋にも聞こえて来た。
「おい、あの豚の叫び声を」
「さっきの威勢はどこ行ったんだ?」
出入り口を固める警備兵らは、その敵軍の将校の悲鳴に興味でも湧いたのか、笑みを浮かべながら将校を嘲笑っている。
そんな警備を忘れて将校の上げる悲鳴を面白がる二人の警備兵に対しシュンは、鉄パイプで一人目を素早く殺し、もう一人の顎に尖端を突き刺して静かに殺して、尋問室のドアを開ける。
「おい、誰も入って来いとは言って…ッ!? お前! なんでここに居る!?」
入って来たシュンに気付いた尋問官は驚き、近くの机に置いてある拳銃を手に取ろうとしたが、利き手である右手を鉄パイプで突き刺され、その挙句に顔面を殴られる。
「ま、待て! 何が知りたいんだ!? 止めてくれ!」
「丁度いい。俺の装備は何所だ?」
二発目を入れようとした時に、尋問官は殺される恐怖を感じてか、シュンの知りたいことを当てて止めてくれるように頼んだ。
これにシュンは丁度良いと思い、自分の装備は何所にあるのかを問い詰める。
「隣にある俺の押収品室だ! い、命だけは!」
「ありがとよ」
命欲しさに正直に答えた尋問官に対し、シュンは引き抜いた鉄パイプで頭を突き刺し、息の根を止めた。
「…おい、私を置いて行くな…! 私は連邦宇宙軍の大佐だぞ…!」
装備のある場所が分かった所で、シュンはそこへ向かおうとしたが、電気椅子で拷問を受けていた連邦軍の将校に呼び止められた。
そんな瀕死状態な将校に対し、シュンは助けることも無く、電気椅子の装置を適当に動かし、スイッチを押して作動させた。
「グアァァァ!! 止めろぉ!! 死んでしまう!!」
将校の悲痛な叫び声が聞こえて来るが、シュンは無視して尋問室を出て、隣の押収品室のドアを無理やり鉄パイプで開き、中へと侵入した。
「おい、誰だお前…!?」
中へと入れば、番兵が侵入者であるシュンに銃を向けて警告しようとしたが、首に投げた鉄パイプが突き刺さり、血を吹き出しながら息絶える。
息絶えた番兵から鉄パイプを引き抜き、それから自分の装備がある場所を手当たり次第に探し回る。
「おっ、あったぞ」
探し回って数分の事で、ようやく自分の装備を見付けることが出来た。それは箱に入っており、全ての物が安い素材で出来た箱の中に納まっていた。
自分のデバイスであるベルトを取り出してそれを腰に着け、コインを入れて起動させ、漆黒の戦士のようなバリアジャケットを全身に着ければ、待機状態の大剣を取り、元の大きさに戻して背中のラックへ着けた。
鉄パイプに対しては、スレイブでは室内戦では取り回しが悪いので、そのまま持っていくことにする。
「さて、これで準備満タンだ」
ベルトのコアより消音器付きの自動拳銃、ソーコムを手にすれば、そこから出て要塞の中枢部へと進む。
当然ながら警備兵はそこら中に居るので、見付かれば凄まじい数の敵兵と戦うことになる。流石のシュンでも大量の敵兵と戦いたくないので、ここは静かに行くことにする。
それに鉄パイプは敵を静かに始末するにも使え、尚且つ様々な用途に使える便利な物だ。
そんな心強い武器を手にして、シュンは邪魔になるような敵を排除しつつ中枢へと向かう。
「よし、後はこいつに乗ってだな」
要塞を行き交う列車の停車駅まで辿り着いたシュンは、中枢部行きの列車へ向かおうとしたが、監視カメラに見られていたのか、二個分隊程の敵兵が何所からともなく現れ、銃撃を加えて来る。
「クソッ! なんでばれたんだ!?」
いきなり現れて銃撃を加えて来る敵兵達に対し、シュンは悪態を付きながら近くの遮蔽物へ隠れ、ベルトのコアからAK-74突撃銃を取り出して反撃する。
向かって来る数名を撃ち殺せば、別の遮蔽物へと移動して背後に回り込んで撃とうとする敵兵三名を殺す。
「奴を列車に乗せるな!!」
増援が呼ばれるかもしれないので、シュンは銃弾を避けながら急いで列車へと向かう。
もう少しの所に来たところで銃撃が激しくなり、やもえず遮蔽物へと身を隠すしか無くなる。
「そう言えば、こいつは銃弾を防いでくれるんだったな。プラズマ弾でも大丈夫か?」
ここでシュンは、バリアジャケットが銃弾を防いでくれることを思い出した。
だが、同盟軍の小火器はプラズマ弾であり、防いでくれるかどうか分からない。以前にコブナント軍のプラズマ弾を受けたことがあるが、あれは旧式の物であり、現用の物とは威力が大違いであろう。
試しにシュンは左手のガントレットをワザと翳し、敵兵に撃たせた。
「うぉ!? どうやら防いでくれるみたいだな」
現用のプラズマ弾でも防いでくれると分かれば、身を曝け出して自分に向かって撃ってくる敵兵等に向けて銃を撃つ。
遮蔽物から何度もシュンに向けて撃っているが、バリアジャケットに防がれて全く効かない。それから物の数秒足らずで、阻止に向かった二個分隊は、一人の男に皆殺しにされた。
「よし、行くか」
敵兵等を殲滅し、派手に目立つバリアジャケットを解除したシュンは列車に乗り込み、乗っていた死体より衣服を剥ぎ取ってそれに着替えてから列車を動かす装置のレバーを引き、中枢部へと向かった。
シュンが連絡用列車で中枢部へと向かっている頃、スターキラー要塞にもう一人の侵入者が現れたが、誰もその存在に気付かなかった。
侵入者である人物は金髪碧眼の長身の美女であり、同盟軍の将兵が行き交う通路を堂々と歩いている。魔法の類を使って、自分を見えないようにしている。
美女の名はマリ・ヴァセレート。どうやら、彼女もスターキラー要塞の中枢部を目指しているようだ。
そんな彼女は敵中にも関わらず、ポケットよりスマートフォンを取り出し、誰かと連絡を取る。相手はやや付き合いが長くなっているミカルだ。
「で、どっち行けば良い?」
『中枢部へ続く連絡列車は北東だ。そこへ行ってくれ』
電話より聞こえて来るミカルの声に従い、マリは北東へと向かう。
彼女の姿は魔法のおかげで誰にも見えていないので、難なく連絡列車の駅へと辿り着く。
「着いたわよ」
『よし、中枢部行きの列車を探してくれ。黄色い作業服を着た整備兵が乗っている方だ』
駅へと着けば、ミカルの案内に従い、黄色の作業服を着た整備兵等が乗る列車へ乗り込み、発進するのを待つ。
暫く作業員が乗って来るのを眺めていると、全員が乗ったのか、列車は目的地へ向かって走り始めた。
こうして、難なくマリはスターキラー要塞の中枢へと潜入することに成功した。
「畜生、こんなもんまで飛んでくるのか!」
一方、シュンはと言えば、走行中に下部に機銃を備えた複数の空飛ぶ
「列車まで来るか!」
進む度に数は増え、更には他の列車に乗った迎撃部隊やガンシップも現れる。
どうやら敵は、初めて現れた侵入者であるシュンを本気で殺しに来ているようだ。
「良いぜ。相手してやる」
そんな同盟軍に対し、シュンは全力を持って応え、バリアジャケットを纏って襲い掛かる全ての敵をスレイブで薙ぎ倒し始めた。
空を飛ぶ全てのドローンを切り落しつつ、列車に乗っている敵兵等に対しては、左腕のガントレットに付けたボウガン式プラズマ弾を浴びせ、列車ごと破壊する。
「やり過ぎたか」
一両、二両と破壊すれば、ムキになったのか、AT部隊まで動員してきた。
ガンシップを大剣で叩き落とした後、空中を浮遊しながらAT部隊へと突っ込む。
五機編成のAT分隊はシュンにランチャーによる弾幕を浴びせるが、彼はそれを避けながら全速力で近付き、一機目を大剣で叩き斬り、手近に居る敵機も斬り捨てる。
他の三機は恐れおののき、距離を置こうとしたが、遅れた三機目は斬られて破壊され、残る二機はプラズマ弾を発射するボウガンでハチの巣にされる。
「こいつ等の装甲なら貫通できるか」
プラズマ弾の威力を知れば、引き続き出て来る敵を掃討し続けた。
敵の警備部隊は対処できる限りの戦力を、侵入者一人に振り向けて来たが、やがていたずらに損害が拡大するだけだと分かったのか、最後のファッティーを含める小隊を片付ければ、連絡路で生きている者はシュン一人だけとなった。
彼の周囲には、無残に惨殺された同盟軍の将兵の遺体や、バラバラにされて燃え盛るガンシップやファッティーなどの同盟軍の兵器の残骸が転がっている。
ここまでやれば、今度は機動兵器を導入してくるだろう。早くここを離れるのが賢明だ。
「やれやれ、一個中隊相手は流石にキツイな」
中隊規模の敵を全滅させたシュンは大剣を収納状態へと戻し、消音器付きの拳銃へと持ち替えた。
『警報、警報! 囚人一人が脱走した! 各班は警戒態勢に移行せよ! 待機中の地上軍並び警備部隊は捜索隊として囚人を見付け次第、その場で射殺せよ! 繰り返す!』
「列車には…乗らない方が良さそうだな」
要塞内のアナウンスから自分の存在が明るみになれば、列車に乗らない方が良いと判断し、目立つバリアジャケットを解除して元の状態へと戻り、警報が鳴り響く連絡路の中、シュンは徒歩で中枢まで向かった。
暫く徒歩で進む中、ようやく中枢部まで辿り着いた。
銃声が響き渡り、他にも侵入者が居るのでは無いかと思い、近くの身を隠せる場所へ隠れて銃声がする方を覗いていたが、単に自分が乗っていた列車を、赤い眼光が光るガスマスクの兵士の集団が撃っているだけであった。
『撃ち方止め! 撃ち方止め!!』
完全に列車がハチの巣となり、身を隠せる場所も無くなったと分かれば、兵士たちは指揮官の指示に応じて銃を撃つのを止めた。
それから指揮官のハンドサインで、散弾銃を持つ兵士たちが列車の確認を行う。
相手が死んでいるかどうかの確認だろう。だが、シュンは列車には居ないので、もぬけの殻と分かれば、兵士たちは警戒体制へと移行した。
『HQ! こちらアルファ8-1! 敵は列車には乗っていない! 警戒体制へ移行する! オーバー!』
『了解、こちらHQ。警戒態勢は厳のまま、油断するな! アウト!』
敵がいないと分かれば、兵士たちは無線で指揮所に報告し、その場で警戒態勢を維持してくるとされる
そんな兵士たちを物陰で見ていたシュンは、警備兵らの視線に入らないように移動して、鉄パイプを片手に中枢部の出入り口まで近付こうとする。
「ん、何だ?」
上まで自力で上がり、敵の背後を取ってそのまま移動しようとしたシュンだが、鉄パイプが箱に当たったのか、その音を聞き付けて敵兵士が近付いて来た。
近付いて来た敵兵士に対しシュンは、十分に引き付けてから自分の隠れている場所へ引き摺り、赤い眼光に鉄パイプの尖った部分を突き刺し、素早く引き抜いて喉を突き刺して息の根を止める。それから目立たない場所へ死体を隠せば、中枢の入り口を目指す。
邪魔な敵を静かに排除しつつ、隠れて目的地を目指すシュンであったが、ここに来て、連絡列車が到着した。黄色い作業服を着た整備兵らの他に、重装備の兵士たちが降りて来るのが見える。どうやらここの警備を厳重にするために寄越されたようだ。
出迎えの兵士に対し、寄越された整備兵は短機関銃を片手に演習なのかどうかを問う。
「おい、また演習か?」
「いや、演習じゃない。本当に侵入者だ。それも脱走した囚人だ。数名が殺されているのが発見され、見付けた二個分隊が最初に排除しようとしたが、皆殺しにされた。次に中隊規模の戦力が排除に向かったが、返り討ちにされて皆殺しにされた。ATも居たのに」
「冗談だろ、たかが一人に」
「マジだ。プラズマ弾が効かなかったらしい。それにワイルドキャットの傘下に居る時空帝国の魔法使いのようだ。銃の安全装置は解除しておけ、いつでも撃てるようにな」
「こんな豆鉄砲でか? 効くわけがないだろう」
「それでも撃て。お前も惑星同盟軍の兵士だろ?」
出迎えの兵士の訳を聞いて、演習では無いと分かった整備兵は顔を真っ青にした。
そんな兵士たちの尻目に、シュンに取って驚くべき人物が中枢の方へと歩いて向かっていた。
「ん、あの女、何処かで…?」
その人物は、ワラキアで自分と剣を交えたマリであった。だが、シュンはワラキアで一戦交えたマリであることに気付いていない。
周りの警備兵らは彼女には全く気付いておらず、まるで見えてないように見逃している。
「畜生、俺がネズミみてぇに這いずり回ってるのによ」
これは魔法を使った物だが、シュンはそれに怒りを感じ、敵に見付からないように彼女の跡を付けた。
シュンにだけ見えているのが疑問に思うが、アウトサイダーより渡されたデバイスの影響と見て良いだろう。
そんなマリが堂々と中枢のドアを開けて内部へと入ったのを確認すれば、シュンもそこへ入ろうとしたが、警備兵が多いため、中々に進めない。
そこで、排気口を使っての潜入へ移行する。壁伝いに沿って移動し、排気口の蓋を見付ければ、鉄パイプで無理やり抉じ開け、そこからマリが入った中枢の内部へと向かう。
光が余り刺さず、鼠が行き交う暗い通路であるが、シュンはこれに慣れており、難なく進めた。
道に沿って進めば、中枢のデータルームへ辿り着くことが出来た。
辺りを見渡し、警備兵が誰一人として居ないことを確認すれば、警戒心を解き、自分が求める物を探す。
「おっ、あの女は…!」
データを弄くり回し、何かを探しているマリの後姿を偶然にも捉えたシュンは、思わず近くに身を隠して様子を覗う。
更に目当ての物である紫色に光る水晶も見付けたが、それはマリの近くにあり、取りに行こうとすれば撃たれることは確実だ。
だが、シュンは彼女がマリである事に気付いていないので、無謀にも彼女に声を掛けた。
「おい、女。大人しく…!?」
声を掛けたシュンは、後ろへ振り返った金髪の女性の顔を見て驚愕する。
顔立ちは彫刻のように綺麗に整い、二つの眼は清らかな青色に光っていた。身体つきはまさに男の妄想を具現化したと言って良いほどで、同性ですら引き付けられるような物だ。
そんな彼女を見たシュンは、ようやく彼女がマリであることに気付く。
「お前はワラキアの…!」
シュンが驚きの声を上げる中、マリは席を立ち上がり、彼を睨み付けた。
綺麗で少し幼さが残る顔立ちから信じられない殺気が伝わってくるが、シュンは臆することなく近くにある紫色の水晶を渡すように告げる。左手にバリアジャケットに纏うのに必要なコインを握り、相手に見えないようにして、いつでも挿入できるようにする。
「なんでここに居るか知らねぇが、取り敢えず、そこにある紫色に光っている水晶みてぇなのを外してこっちに寄越せ。あんたとやり合うつもりは更々ねぇからよ」
そうマリに告げたシュンであるが、彼女は苛立っているのか、右手を翳して魔法による攻撃を浴びせて来た。
放たれた魔弾は早く、シュンは即座にバリアジャケットを纏って防ごうとした。だが、その威力は高く、凄まじい衝撃を腹に受け、壁を突き破るくらいに吹き飛ばされる。
「このアマ!」
外まで吹き飛ばされれば、上体を起こして収納状態の大剣を元の大きさに戻す。
「いきなりかよ、相変わらず容赦のねぇ女だ」
そんなシュンに対し、外に居た同盟軍の将兵らが銃口を向ける。大剣が右手よりいきなり現れたことに驚きを隠せなかった将兵達だが、こちらには銃があると言う強みなのか、震えながらも銃口を向け続ける。
「全く、あの瞬間にこいつを纏ってなきゃお陀仏だぜ」
そんな兵士らを無視して立ち上がれば、向かって来るマリに対して警戒する。
同時にバリアジャケットのベルトからあのロシア語で喋るAIの声が響き、彼女が居た方向より無数の魔弾が飛んできて、シュンに銃口を向けていた兵士たちは雨のような魔弾を受けて全滅する。
『魔女が接近中、魔女が接近中!』
「んなもん、分ってんだよ!」
そう答えながらシュンは大剣を床に突き刺し、左腕のガントレットにプラズマ弾を発射するボウガンを付け、向かって来るマリに向けて連射し始めた。
恐ろしい弾幕を張るが、彼女はそれが見えているかのように避け、何所からともなく取り出したバスタードソードで斬り掛かって来る。
「ちっ、とんだ魔女だぜ!」
斬り掛かって来たマリに対し、シュンはボウガンを撃つのを止め、彼女の斬撃を素早く引き抜いた大剣で防いだ。
凄まじい音と火花が飛び散った瞬間に、両者とも二撃目を相手に入れ込み、斬り合いを始める。
こうして、スターキラー要塞内における復讐に燃える黒い剣士と、愛しの少女を探す魔女との戦いの火蓋が切って落とされた。
https://www.youtube.com/watch?v=js8eqbkQcM0&t=5s
ウルフェンシュタイン城風味にスニーキングし、そんで鉄パイプ片手に暴れ回る筋肉モリモリマッチョマンの変態。
そんで次回は主人公と主人公による戦いです。
イメージEDは、上に張ったアドレスの曲です。
ロブ・ゾンビって言うバンドのSuperbeastっす。スーパービーストって言うタイトルです。