復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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これでスターキラー要塞編は終わりです。


惑星(ほし)の怒り

「…クソッ、一体何が起きてる?」

 

 マリの恐ろしい速さの攻撃を避けきれずに受けて気絶したシュンは、物の数分後に起き上がり、拳銃を抜きながら辺りを見渡して驚きの声を上げた。

 周囲は先の戦いで自分とマリの戦いで死んだ将兵らの死体が辺りに転がっているが、それは特に驚くことでは無い。

 重要なことは当たりの灯りが落ちていることだ。先ほどまではまだ明るかったが、照明がマリの魔法の反動で全て割れたのか、燃え上がる残骸しか見えない。そればかりか周囲には銃声が響き渡り、断末魔も聞こえて来る。

 

『総員に通達! 要塞内に敵が発生した! 迎撃部隊は直ちに出動せよ! 直ちに…うわっ!? や、止めろ! グワァァァ!!』

 

 要塞内のアナウンスは、内部に敵が発生したと告げて迎撃部隊の出動を要請した後、うめき声を上げる集団に襲われたのか、悲痛な断末魔を上げながら息絶えた。

 

「兎に角やべぇってことは分かるな。早くズらかるとするか」

 

 悲痛な断末魔が消えた後に聞こえる肉を食い千切る音が流れ出るのを聞いたシュンは、スターキラー要塞は危険な場所へと変わったと判断して、脱出を決断した。

 大剣ではかなりの音が鳴ると思われるので、あの鉄パイプを取り出し、それを左手に持ち、右手に銃を持ちつつ宇宙港がある方へと警戒しながら向かう。

 

「っ!」

 

 銃声が聞こえ、数名の同盟軍の兵士が出て来た場所へ向けて銃を撃ちながら現れたので、彼らに見付からぬように近くの身を隠せる場所へと隠れた。

 素早く隠れたおかげか、彼らはシュンには気付かず、何かに向けて銃を撃ち続けるだけだ。

 何を撃っているのか確認するため、シュンは物陰から顔だけを出し、兵士らが銃を撃っている場所を確認した。

 

「アンデッドだと…!? なんでこんなところに居るんだ!?」

 

 兵士達が撃っていた物は、歩く死体だった。その名前を知っているシュンは、思わず口にし、どうしてこの魔法など一切ない世界にアンデッドが居るのかを疑問に思い始める。

 だが、銃を撃つ兵士らに群がるアンデッドたちは、普段は上げている筈のうめき声は上げず、何か恨みのような言葉を爛れた声帯で発していた。

 

『嘘吐き野郎!』

 

『俺たちの故郷を返せ!』

 

『俺の家族を殺しやがって!』

 

 同盟軍の兵士達に対して怒りの言葉をぶつける辺り、アンデッドの正体は惑星同盟軍によって母星を要塞へと改造され、追われるか虐殺された人々であるようだ。

 おそらくマリの魔法によって、住人たちの怨念が死した肉体に宿って蘇ったのだろう。

 その証拠に、いきなり解放などと謳って一方的に自分等の土地を侵略し、虐殺までした同盟軍の将兵らに群衆となって襲い掛かっている。

 銃弾すら効かない肉体となっている住人たちは、怒りの矛先を恐怖で銃を乱射している同盟軍の将兵らに向け、一斉に襲い掛かって掴み掛り、四方を引き千切ってズタズタにする。

 

「あの女、ここに眠る怨念を呼び起こしたってことか」

 

 怒り狂い、同盟軍の将兵らを惨殺する元の住人らを見て、シュンは彼らに見付からぬように宇宙港まで目指そうとしたが、運悪く落ちている空き缶を蹴ってしまい、死んでも敵兵に攻撃を続けている住人らに気付かれてしまう。

 

『っ!? 殺してやる!』

 

「くそっ!」

 

 気付かれたシュンは、前の世界から盗んだもう一丁の散弾銃、それも自動式の散弾銃であるベネリM3をコアより取り出し、進路方向に邪魔な住人らだけを撃ち、目的地まで全速力で走る。

 

『逃がさないよ! クソ野郎め!』

 

 数名の仲間を撃ち殺しながら逃げるシュンに対し、中年女性の住人は手にしている散弾銃で撃ち返してくる。

 

『死ね!』

 

『お前も殺してやる!』

 

 銃を持っているのは中年女性だけでなく、警官だった者や防衛軍の兵士達も手にしている銃を全速力で逃げるシュンに向けて撃ってくる。

 マリが蘇らせた住人たちは、生きていた頃と同じような知性と身体能力を持ち合わせ、更に怨念の力で常人の倍以上の筋力を有しているようだ。

 それに撃ち殺した筈の住人たちは蘇り、更には数で押してくる。数で押してくる同盟軍や連邦軍の歩兵よりも厄介な存在だ。

 

「一々相手してられっか!」

 

 そんな住人たちに命を狙われたシュンは、マリよりも厄介な相手と判断して、銃を撃つのを止めて空を飛び、全速力で目標地点の宇宙港を目指す。

 住人たちはロケット弾まで撃って来たが、全速力で飛んでいるために命中せず、なんとか殺気立った彼らより逃げることは出来た。

 暗い連絡路の中を飛び続ける間、マリの魔法で甦らされた怒れる群衆たちによって無残に殺されていく同盟軍の将兵らの姿が見えた。

 ここに居る将兵らは、単に上層部からの命令をやってのことだが、虐殺の当事者であることには変わりないので、言い訳など聞かず、群衆は容赦なしに自分らの母星を破壊し尽し、要塞へと改造した敵軍の将兵達を手にしている凶器や腕力で惨殺する。

 

「あいつ等の相手だけはしたくないな」

 

 下に見える恐ろしい光景に、シュンは生き返った住人との戦闘は避けるべきだと判断し、彼らの視線になるべく入らないように飛んだ。

 

 

 

「ロボットのみならず、宇宙船までぶっ壊すのかよ…」

 

 危険な住人たちを避けつつ、なんとか宇宙港まで辿り着いたシュンであったが、目前にはとんでもない光景が広がっていた。

 怒れる群衆たちの力は強く、機動兵器まで持ち込んだ同盟軍すら相手にならず、人型は両足に大量に纏わり付かれて倒され、そのままコックピットのハッチを抉じ開けられてパイロットは引き摺り出されてリンチされて殺される。

 宇宙船の戦闘艦艇にも群衆は殺到し、甲板を引き裂いて船内に雪崩れ込んで、乗員たちを殺し尽し、その挙句に徹底的に破壊している。

 このまま見過ごしていては、脱出手段を破壊されてしまうだろう。

 

「行くしかねぇな」

 

 背中の大剣を取り、シュンは床に降り立って艦艇を攻撃する群衆に一人で立ち向かった。

 

 

 

『お前も殺してやる!!』

 

 宇宙港へと降り立ったシュンを見るや否や、怒れる死者の群衆たちは一斉に襲い掛かって来た。

 そんな群衆たちに対し、シュンは先ほど散弾銃で撃ったように、哀れみの心も無しに巨大な刀身を向かって来た者達へ向けて容赦なく振り下ろす。

 死者の肉体では巨大な刀身には耐えられないのか、生きた人間と同様に肉体はバラバラとなり、辺り一面に血を撒き散らす。

 

「(よし、どうやらこいつなら殺せるらしいな)」

 

 向かって来た第一波を全て斬り倒し、飛び散った肉片や倒れている死体が再生しないことを確認すれば、そのまま大剣(スレイブ)のみで向かって来る集団を排除する。

 

「(魔法とか呪いとかの類を解くような能力を持っているようだな、こいつは)」

 

 怒れる死者の群衆を殺していくうちに、自分の大剣が魔法や呪いを解く能力を持っていることが分かれば、シュンは次々と襲い掛かる彼らを殺し続けた。

 

『よくも!』

 

 仲間を殺され、怒りの矛先をシュンへと向けた群衆たちは、四方八方より襲い掛かり、仲間を次々と惨殺する大男を殺そうとしたが、逆に返り討ちにされ、黄泉の国へと返される。

 女であろうが子供であろうが老人であろうがシュンは容赦なく血塗れの大剣で殺し、元の世界へと送り返していく。

 大多数を相手に無傷とはいかなかったが、バリアジャケットの防御力の高さもあり、なんとか宇宙港に居る群衆を全滅させることに成功した。

 この場で生きている者は、全身返り血塗れで傷だらけの大剣を携えたシュン一人のみだ。

 同盟軍の将兵らは、乗員を含めて全て怒れる群衆に皆殺しにされ、その憎き敵軍の兵士たちを皆殺した住人たちは、シュンの大剣で黄泉の国へと戻された。

 

「さて、どうやって飛ばすか。宇宙船の飛ばし方なんて知らねぇぞ」

 

「教えよっか?」

 

「っ!?」

 

 黒煙を上げる宇宙艦艇を見て、シュンはどうやって宇宙船を飛ばすかを悩み始めた。

 そんな時に、マリの声が背後から聞こえ、それに反応したシュンは声がした方向へ向けて大剣を構える。

 だが、そこには彼女の姿形も無い。

 周囲を警戒し、何所に居るのかを気配を感じ取ろうとしたが、その瞬間に背後より今まで見たことが無い攻撃を受けて吹き飛ばされる。

 直ぐに体勢を立て直し、攻撃が来た方へ振り返れば、漆黒の衣装を身に纏った金髪の女の姿があった。地面に足を着かせずに浮遊しており、大剣を構えて睨み付けているシュンを見下している。

 

「今回ばかりはでたらめ過ぎるぜ…!」

 

 常識を覆す攻撃ばかりするマリに対し、シュンは振るえる手を抑え付け、刀身を上に挙げていつでも攻撃できるように構える。

 

「まだやる気なの…?」

 

 これ程の力を見せても挑んで来るシュンに対して、マリは半ば呆れつつ、今度こそ完全に叩き潰そうと、右手に握る槍の尖端を向ける。

 先の白い神聖的な衣装と同じ槍であるが、デザインは黒の衣装と同じく禍々しさを感じる物だ。

 そんな槍をシュンは見た目以上の単なる置物と捉えているが、マリが持っているので何かの能力を秘めていると睨んで警戒する。

 目前の浮遊するマリに対して警戒する中、その女は自ら向かわず、背後の空間より多数の武器を召喚して、それをシュンに差し向けた。

 

「またこれか!」

 

 自分に向かって飛んでくる無数の武器に対し、シュンは最初に飛んできた武器を大剣で弾いてから、飛来する武器を躱しつつ、自分も空を飛んでマリの元へ向かう。

 自分の元まで飛んで向かおうとして来る大男にマリは、同じ攻撃で弾幕を張り、近付けないようにするが、シュンは弾きながら向かって来る。

 もう少しで刃が届こうとした時に、マリは召喚した武器を飛ばすのを止め、槍の突きによる攻撃に出る。

 

「っ! 冗談だろ!?」

 

 シュンには一突きに見えたが、ただの一突きなのに無数の突きが放たれたので、避ける間もなく数発を身体に受けてしまう。

 その一突きの数々の威力は、バリアジャケットを容易く貫くほどの威力であり、それをまともに浴びたシュンは吐血し、更には衝撃で吹き飛ばされて硬い床へと叩き付けられる。

 

「一体、何が起きてんだ…!?」

 

 一体何が起こったのか?

 ただ相手は一突きを放っただけでその場を一切動かず、自分の攻撃は当たらず、相手の攻撃を受けるだけで何も出来ない。

 そんな思考がシュンの頭の中を支配する中、床に落ちた剣士を見下しているマリは、次なる攻撃を一息つかせずに放つ。

 攻撃は左手に込めた黒い魔弾だ。ただ相手に向けて投げ付けるだけで無数の追尾機能を持つ黒い矢となり、何とか立ち上がるシュンを当たるまで追い掛ける。

 

「曲がっただと!? ぐぁ!」

 

 逃げながらも真正面から向かって来た矢を纏めて大剣で振り払ったが、続けて飛んでくる矢は軌道を変えて背後に回り込み、驚いているシュンは避けきれず、当たって血塗れの床に手を着く。

 今のシュンは槍の突きでかなりのダメージを負っており、更には背後より数発の魔法の矢を受けたので、もう既に限界であった。そればかりか、外見に似合わぬ圧倒的な強さを持つ華奢な女を前にして、大剣を握る手と巨体を支える丸太のような脚が震え始めている。

 

「(こんな女を相手に…俺は、怖がっているのか…!? あり得ねぇぜ…!)」

 

 自分より体格が劣り、筋力も無く、魔法頼りの女に、自分の本能が恐怖を抱いていることを知ったシュンは額に汗を浸らせ、大剣を杖代わりにして何とか立ち上がり、空を飛んで自分を見下している女を見上げた。

 そんなシュンを見下しながら、マリは無表情で圧倒的な力を前にまだ戦おうとする彼に問う。

 

「ねぇ、なんでまだ戦うの? 脚とか手が震えて冷汗搔いてるけど?」

 

 自分が死の恐怖を抱いていることを見透かされたシュンは、怒りで恐怖を振り払い、左腕のボウガンをマリに向けて放ったが、放たれた無数のプラズマ弾は謎の障壁で阻まれる。

 

「冗談ってレベルじゃねぇ…!」

 

「もう積みだけど? それでもまだやる?」

 

 ありとあらゆる自分の攻撃は通じず、その圧倒的な力の前に防がれるだけであった。

 そんな女を相手にして戦意を損失しつつあったシュンは、大人しく殺されるかどうか問うてくるマリを無視して、杖代わりにしている大剣を見た。

 

「(こいつを叩き込めば…!)」

 

 スレイブを叩き込めば、勝てるかもしれない。

 その僅かな希望に縋ったシュンは、残る力を振り絞って大剣を握り、床を強く蹴ってマリに向けて斬り掛かった。

 

「諦めの悪い馬鹿…」

 

 真正面より向かって斬り掛かって来るシュンに対し、マリは半ば呆れながら、その希望を打ち砕くために敢えて反撃せず、槍を手放して背後の空間で召喚した片手剣を手に取り、大男が斬り掛かって来るのを待った。

 

「オラァ!!」

 

 相手が届く範囲まで近付き、大剣を振り下ろしたのを見た後、マリは振るい落された大剣を軽やかに、それも目にも止まらぬ速さで避け、右手に手にした片手剣をシュンの脇腹に突き刺した。

 脇腹に剣を突き刺されたシュンは、彼女の残像を斬ったらしく、いつの間に自分の懐へと来て、左脇腹に剣を突き刺したマリを見て驚愕していた。

 空かさずシュンは血だらけの左手でマリに触れようとしたが、男に触れられたくも無い彼女はその最後の悪足掻きとも言える手を無慈悲に振り払い、腹を刺されて落ちて行く大男を強く蹴り付けた。

 

「ゲームーオーバー。リアルだからコンテニューとか無いけど。まぁ、どっかでまた会うかもね。あんたみたいな雑魚の事なんて微塵も覚えてないけど」

 

 硬い床へクレーターが出来る程に落下したシュンを見下しながら、マリは今まで殺して来たただの雑魚と表し、一度下に降りてからその場を去った。

 

「…俺は、あんたに取っちゃ雑魚ってことかよ…!」

 

 その言葉を聞いていたシュンは、立ち去って行くマリに大剣より離した右手を向けながら悔しさを呟き、そのまま気を失った。

 後にスターキラー要塞の内部に残って居るのは、無数の死体に黒煙を上げる同盟軍の兵器の残骸、そしてクレーターの中で横たえるシュンだけであった。




イメージED
https://www.youtube.com/watch?v=TG_ZEovDDKk

ウルフェンシュタイン・ザ・オールドブラッドのEDです。
なんとなく悲しい曲。
この後を考えるとね、絶望を感じる…おっと止めておこう。
でも、次回作の国内発売が近いんだよな。

だが、ニューオーダーもコロッサスも含め、怒れるナチス絶対殺すマン、ブラスコヴィッチの反撃だ。
例え何があろうとも、この男はナチスを全て殺し尽すまで死ぬことは無いだろう。

復讐異世界旅行記では、スターキラー要塞編は終わり、次なる章へと突入する。
次は一年と八カ月前に終わったマブラブの外伝の一つ、シュヴァルツェスマーケンだ。
俺はアニメしか見てないが、東ドイツとドイツ語は一応ながら知っているので、東ドイツの装備や呼び方がかなり変わることだろう。

取り敢えず、ファンにはぶっ殺されんようにしなくては…(汗)

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