本編では正しいドイツ語であるシュヴァルツェ・マルケンと呼ばれます。
それから幾つか原作から色々と帰るのでご注意を。
そんでもってヒロアカ第三期決定!
やっぱりオールマイトが倒れるまでやらないとね!
黒の宣告者、シュヴァルツェスマーケン
「ここは…?」
スターキラー要塞の内部にて、マリとの戦いに敗れたシュンは何処か謎の世界で目を覚ました。
「…虚無の世界? 黒目野郎が連れて来られたのか!?」
辺りを見渡せば、この前に見た光景であった為、シュンは直ぐにここが虚無の世界であることに気付いた。
窮地をまたアウトサイダーに助けられたと思い、彼を呼ぼうとシュンは大声を上げる。
「アウトサイダー! 居るか!? おーい!!」
その大声は虚無の世界に響き渡ったのか、直ぐに神と悪魔の融合した存在であるアウトサイダーはシュンの前に姿を現す。
「来たかシュンよ。ここへ連れて来られた意味は分かっているな?」
「あぁ、助かったぜ。あのままだと怒れるアンデッド共に食い殺される所だ。で、意味ってなんだ?」
アウトサイダーの問いに、シュンは礼を言ってから意味が何なのかを問う。
これにアウトサイダーは顎に手を添え、それから包み隠さずに答える。
「いや、前の者達と同様にお前の意識だけをこの虚無の世界へ呼び出したのだ。お前の肉体は、まだあの怒れる亡者たちで溢れた星の要塞の中だ」
「おい、冗談を言うんじゃねぇ! それじゃあ俺はどうなって…!?」
「焦るな。好ましくはないが、ガイドルフ・マッカサーが瀕死のお前を抱え上げて要塞を脱出している。まだお前についていくつもりだろう。ガイドルフの願いをお前が満たした時、用済みとなって始末されることを警戒しておけ」
意識だけを呼び出したと答えるアウトサイダーに対し、シュンは怒りを覚え、直ぐに目覚めようとしたが、焦らせないようにするために、肉体はガイドルフが回収したと、何処か不満げな表情を浮かべながら告げた。
「そうか。で、連れてきた意味は、こいつの事か?」
自分を回収したガイドルフを警戒しろと釘を刺すアウトサイダーに対し、シュンは本題に入ってベルトを指差しながら問う。
「左様、本題はそのデバイスの強化の物だ。ここに来る前、お前はマリ・ヴァセレートと剣を交え、敗れただろう。その時にバリアジャケットは紙のように槍で貫かれた」
「あぁ、あの女は滅茶苦茶過ぎる。そんで防御力を上げる物だってか?」
「然り、防御力の向上だ。この先の戦いでマリ以上に強力な攻撃を持つ強者たちと会い見える事だろう。その為に、魔法の甲冑の強化が必要だ。それは先の星の要塞と同様に、危険な場所にある」
本題がデバイスの事であると頷けば、アウトサイダーはマリとの戦いで防御力が高くないこと知ったかをシュンに告げる。
これにシュンは同調すれば、防御力を上げる水晶があるのかを問えば、スターキラー要塞以上に危険な世界にあると答えた。
「それで、何所にある? 異世界のどっかか?」
「お前の求める物は、宇宙からやって来た炭素で出来た化け物たち、現世の者達が
何所にあるのかを詳しく問えば、アウトサイダーはワルキューレが戦術歩行戦闘機、通称「戦術機」を手に入れた世界にあり、年代も答えた。
「なるほど、俺の古巣が手に入れた世界か。どうせ、ベータとか言う化け物共の支配地域にあるんだろ?」
「然り、水晶はドイツと呼ばれる国とポーランドと呼ばれる国の国境付近にある城の秘密の地下室に保管されている。既に前の戦争で破壊され、城跡と言うべきか。その後もBETAの侵攻を受けて跡形も無いが、地下は幸いなことにまだ奴らには見付かってはいない。そこへ行くには、奪還を試みようとする軍の部隊に入るのが得策だろう。時にシュンよ、お前は戦術機なる兵器の操縦したことはあるか?」
「あるぜ。単に動かしたり、馬鹿デカい鉄砲をぶっ放したことしかねぇが」
シュンが思う通りの場所にあると答えれば、アウトサイダーは然りであると答え、そこへ行くには攻勢に出る最前線の部隊に行くのが得策だと告げる。
それと、その世界の戦場の花形である戦術機に乗った経験があるかどうかを問えば、シュンは古巣の陸軍での特殊部隊の訓練で受けた戦術機の操縦や火器訓練を思い出し、あると答えた。
「ふむ、それだけあれば十分か。流石にお前の肌では現地の白人にはなれず、体格では移民のベトナム人では無理がある」
操縦経験があると知れば、アウトサイダーはどうやって軍、ドイツ民主共和国の
シュンは東アジアの黄色人種であり、それも日本人であったが、体格は小柄なアジア人とは違って大柄の白人人種並だ。スポーツ選手と言い張ればなんとかなりそうだが、この体格の男では目立つだろう。
それでやや悩み始めるアウトサイダーに対し、シュンはある提案を出す。
「良い手があるぜ。迷子兵だ。俺はモンゴル人になりきれって言われているから、多分、迷子兵として前線部隊に入れるだろうさ。つっても、戦死率が高い部隊の配属になるだろうがな」
出した提案は、迷子兵として最前線の部隊に入る手だ。
最前線、それもBETAと呼ばれる恐ろしい化け物たちが大挙して押し寄せて来る激しい消耗戦であり、後方からの補充が間に合いそうも無いので、敗残兵や迷子兵を加えて再編を図っているだろう。
それに付け込んで、シュンは最前線の部隊に入ろうと言うのだ。
学はほぼ無いが、軍事知識はあるシュンの提案を聞いたアウトサイダーは、その案を呑んだ。
「ほぅ、その手があるか。では、その手を使って部隊に潜り込め。幾多もの死線を潜り抜けて来たお前なら、必ずや生き残ることは出来るだろう。それでは、お前の意識を肉体へ戻すぞ」
提案を呑んだアウトサイダーは、シュンの意識を身体に戻そうとした。
「おっと。このことはガイドルフには言うなよ。彼の男に私の事は知られたくはない」
「あぁ、そうしておく。で、なんでそうまでガイドルフを嫌うんだ?」
だが、ガイドルフに自分の存在を知られたくはないのか、目覚めたら自分の事は言うなと釘を刺す。
ガイドルフを嫌うアウトサイダーに、何故、彼をそこまで拒絶するのかをシュンは問う。
「何故、ガイドルフを私が嫌うかだと? 理由はお前が目的、復讐を達成すれば分かる事だ。では、お前の意識を戻すぞ」
理由は復讐が果たせれば分かると答え、アウトサイダーはシュンの意識を元の身体へ戻した。
その瞬間、シュンの意識は虚無の世界より消え去り、現世の世界にある身体へと戻って行く。永遠にも思えるような時間を、一瞬にして。
「ん、ここは…?」
「起きたか、シュン」
意識が自分の身体に戻ったのを確認すれば、シュンは状態を起こして辺りを見渡し、スターキラー要塞の宇宙港では無い事を確認した。
「お前が助けたようだな」
「あぁ、苦労したぜ。馬鹿デカい大剣に馬鹿デカい男を化け物だらけの要塞から出すには、ザクを使うほどだ」
「服は?」
「治療するために脱がした。気に入ってたか? だが、血塗れでデカい穴が開いてもう駄目だぞ」
近くにガイドルフが居て、彼が意識を失った自分を助けてくれたことを確認すれば、半裸な理由を問う。
これにガイドルフはマリに刺された個所の治療で脱がしたと答え、服はもう着られない状態であることも答える。
「ありがとよ。で、全治何週間だ?」
「俺は医者じゃないが、この世界の医学の力を借りるなら、二日程度で完治するだろう。何をそんなに急いでる?」
次に傷の完治にどれくらい掛かるのかを問えば、ガイドルフは最新の医療があれば、二日ほどで直ると答える。
この問いにガイドルフが、シュンが急いでいると見抜き、何を急いでいるのかを問うた。
「いや、俺の感だが。ベータとか言う宇宙のバケモンの侵略を受けている世界で、このベルトの防御力を上げる水晶見てぇなのがある。そこへ行かないとなと思ってな」
これにシュンは、アウトサイダーのことはまたしても言わず、次の目標の者はBETAの侵略を受けている地球にあると答えた。
それに反応してか、ガイドルフは何年であるかどうかを問うてくる。
「ベータ? BETAのことか。何年だ? ヨーロッパにあるなら、1983年の東ドイツ戦線が良いぞ」
「あぁ、83年の東ドイツ戦線だ。そいつはドイツとポーランドの国境線にありそうだって、ベルトが言っている」
勧められた年代に、うっかりと正確な場所を話しそうになったが、ベルトがそこら辺にあると言って誤魔化した。
「なら、急げば回れだな。お前はモンゴル人で、軍の迷子兵として最前線の部隊に入れるだろう。運が悪ければ、懲罰大隊行きだが…お前なら生き残れそうだ。身分証は俺が手配しよう」
ガイドルフは誤魔化したことには気付かず、シュンの話に乗って身分証の手配を始める。
こうして、シュンの復讐のための準備の旅が再開された。
次に向かう世界は、同じ地球であるが、通常とは違う歴史を歩んだ地球だ。それに人類に敵対的な地球外起源種の頭文字を取ってBETAと呼称された化け物たちにより、半数以上が侵略され、今もなお絶望的な戦いに明け暮れている世界だ。
スターキラー要塞と同じく危険な世界であることに間違いないが、それでもシュンは復讐を完遂するために向かう。
例え、何が待ち受けようとも。
1983年、ドイツ民主共和国、通称東ドイツのオーデル・ナイセ線付近。
時期は冬季。極寒の地となった東ドイツのポーランド国境付近にて、シュンの姿はこれから前線へとトラックで向かう将兵達の中にあった。人種は東欧系の白人ばかりで、唯一黄色人種はモンゴル人となっているシュンだけだ。
シュンを含め、彼ら全員はBETAとの戦闘によって所属部隊が壊滅した敗残兵や、撤退の際に原隊と逸れてしまった迷子兵たちだ。
車内は既に煙草を吹かす大勢の将兵達のおかげか、煙が恐ろしく充満しており、煙草よりも酒を好むシュンに取っては、我慢ならない物であった。
ソビエト軍の東ドイツ駐屯軍よりくすねたウォッカを入れたスキットルを手にしているシュンは、何とかならないのかと飲みながら隣の煙草を吹かしている男に、共産圏の共通用語とも言えるロシア語で問う。
「おい、煙草を吸うのは止めてくれないか?」
「それをくれたら止めてやる。第一、吸わなきゃ凍死しちまうんだ。吸って欲しくなかったそいつを寄越せ、イワン」
「誰がやるか、ルーマニア人め」
隣の男に煙草を吸うのを止めてもらうように告げたシュンだが、彼は酒をくれるなら止めてやると答えたので、シュンは苛ついてウォッカを飲んで断る。
ドイツ北東部の寒さは北欧やロシア、北極ほどでは無いが、それでも凍死者が出る程の寒さであり、常に温かくしなくては寒くて堪らないのだ。シュンはウォッカをソビエト軍よりこっそりと盗んだが、そんな度胸は無い他の共産圏の兵士たちは支給された煙草で身体を温めている。
「あの、それをくれませんか? 衛士殿」
濃度の高い酒を細やかに飲んで身体を温めているシュンに、ポーランド軍の所属の女性兵士が、彼の手にしているウォッカを分けてくれとつたないロシア語で凍えながら頼んで来る。
出された両手は震えており、その手袋の中はおそらく赤くしもやけていることだろう。
そんな女性兵士に対し、シュンは煙草があるのではと飲みながら問う。
女性兵士がシュンの事を衛士と呼んだのは、戦術機の操縦者を現すバッチを冬服の胸元に上に飾っているからだろう。何故なら、ガイドルフはシュンを前線へと送ろうと、彼を衛士として身分証を偽造したからだ。
「姉ちゃんよ、煙草があるんじゃないのか?」
「その、落としてしまって…」
「他の奴らは…?」
落としてないと告げる女兵士に対し、シュンは周りを見て煙草を分けてくれる親切な兵士を探したが、誰も暖房の無い荷台の中で唯一体を温めることが出来る物である煙草を一本でも確保しようと渡そうともしない。
舌打ちをしながらシュンは、スキットルを女性兵士に渡した。
「全部飲むなよ」
「
仕方なく渡されたスキットルを手に取った女性兵士は、慣れないロシア語でお礼を言えば、一口飲んで返した。
「おい、お前ら! 新しい
受け取った直後、助手席に座る将校が荷台の方へ振り向き、前線にもうじき着くことを知らせる。
それが分かれば、一同は手荷物を握り締め、トラックが止まるのを待つ。
「総員、下車! 直ちに広場に並べ!!」
トラックが止まれば、荷台の戸が開き、そこから将校が降りるように告げる。
これに応じ、荷台に居た敗残兵やシュンを含める迷子兵たちはトラックより下車して、指示された広場へと駆け足で集合した。
「多いな。一体どれだけ集めて来たんだ?」
辺りを見渡し、広場に集まった敗残兵や迷子兵などの多さに、シュンは驚愕して脱走兵を見張る銃を持った東ドイツ兵たちに見えないようにスキットルをコートの懐へ隠して、立ち台に上がり、拡声器を片手に自分等に向けて訓示を行う将校を見た。
『共産主義陣営の戦士たる同志諸君! 私は国家人民地上軍のオットー・ルーデンドルフ大佐だ! まずは同志たちの前線復帰希望に感謝する!』
「何が前線復帰だ…」
東ドイツ軍の将校は広場に集まった共産主義陣営の将兵達は、前線復帰などさほどの者達が望んでなど居なかったのか、シュンの隣に立つ男が悪態を付いた。
幸い、聞こえていなかったが、暴動の類の行動を起こせば、東ドイツ軍の将校の背後にある司令塔の屋上に居る狙撃兵に、撃ち殺されるだろう。
強制的に前線へと送られる将兵達は、近くにある死の恐怖に怯えながら将校の指示に耳を傾ける。
『諸君らの希望により、手短に済ませよう! 同志諸君は右手にある受付へと向かってもらいたい。歩兵と砲兵、戦車兵を初めとする者は右手へ! 衛士は左手だ! 分かれば早く向かえ! その場で立ち尽くして震える臆病者は、敵前逃亡者として裁判無しの銃殺刑に処する! 分かれば早く転属先へと向かい、BETAからの侵略に備えよ!! 前線は常に君らの復讐心と勇気、そして力を欲している! 急ぐのだ!!』
銃、東ドイツのAK-74突撃銃モデルであるMPi-AK-74の安全装置を外す音が鳴ったので、立ち止まれば射殺されると怯え、それぞれ自分が属する兵科の受付へと向かう。
シュンの兵科は戦術機を操縦する操縦者の名前である衛士であるため、その列へと並び、転属先が決まるのを待つ。
彼ら敗残兵や迷子兵等には後方へと向かう転属先は無い。前線のみしか無いのだ。
「999戦術機中隊は勘弁願いたいぜ…666もだ…」
「999戦術機中隊? 666って、懲罰部隊か?」
前に並ぶ男が気になる事を呟いたので、シュンは並びながら彼にそのことを問う。
「いや、666戦術機中隊は懲罰部隊じゃないが、999はもう懲罰部隊みたいなもんだ。あの部隊はレーザーヤークトを何度もやって全滅してる。666は常に八機しか残らない」
「666か…」
「通称、シュヴァルツェ・マルケンだ。意味は黒の宣告者らしい。美人の姉ちゃんが中隊長をやってる、からって入ろうなんて思うなよ。そっちもレーザーヤークトをやる。あんちゃん死ぬぜ」
666戦術機中隊、それを聞いてシュンは目的地へ向かうのに利用できると思ったが、前の男は、中隊長が美人だと知って入ろうと思っているのか、無駄な希望を抱くなと忠告する。
「お前の出番だ!」
「俺の番だ」
話し込んでいる間に、前の男の出番が来たようだ。
彼は軍隊手帳を出し、それを見た士官より転属先の部隊を聞けば、シュンの方を振り返って入りたくない部隊を入れなくて良かったと告げる。
「第11装甲師団だ。お前の幸運を祈るよ」
「次はお前だ、アジア人!」
そう得意げな顔をしながら去って行った後、シュンの出番が来た。
呼ばれれば直ぐに前に出て、ガイドルフが用意した身分証明書である軍隊手帳を出し、度の部隊の転属になるかを待つ。
この世界のシュンの偽名は、前々の世界と同じ名前のバートルで、苗字はモンゴル人の習慣を取って父方の名前であるバーウガェ。バーウガェはモンゴル語で熊と言う意味を表す言葉だ。
シュンがモンゴル人と言う事で、モンゴル語の軍隊手帳なために、ロシア語や共産圏の欧州国家の言葉しか分からない士官は、アジア圏のモンゴル語など全く読めなかったのか、アジア圏の翻訳を担当する士官を呼び出し、何とか読み取ることに成功した。
それにかなり苛立ったのか、戦死率が高い部隊にシュンを配属させる。
「お前の新しい家は臨時戦術機大隊の第666戦術機中隊だ」
配属先は第666戦術機中隊。通称、
不吉な数字を部隊番号に持つ中隊に配属されると聞いて、喜ばない者しか居ないが、この最前線部隊の事を知らないシュンは、目標達成のためなら願っても無いことと思い、士官に向けてドイツ語で礼を言った。
「ダンケ」
「?」
この欧州戦線で危険な任務であるレーザーヤークトを専門とする戦術機中隊の配属と聞いて、立ち去って行くアジア人の大男は美人が多い部隊の配属となって喜んでいるか、自殺志願者であるかと悩んだが、次が待っているので、士官は仕事へ戻り、最前列の者を呼び出した。
「いやー、よく来てくれた。私は君たちの新しい転属の臨時戦術機大隊の指揮官のホルツァー・ハンニバル少佐だ。よろしく頼むぞ」
それから数時間後、決められた転属先へと来たシュンを初めとする迷子兵や敗残兵たちは、転属先の部隊指揮官からの歓迎を受ける。
「温かい食事と飲み物で歓迎してやりたいが、事態は急を要する。済まないが、上層部が決めた転属場所へと向かってくれ。マライ、彼らを」
「
だが、歓迎の宴は無く、そのまま転属先の部隊へと案内される。
「こっちだ、新入り共」
案内を担当する無愛想な赤毛の青年は、自分の隊へと不幸にも転属となった者達を、部隊本部へと案内する。
他に転属となったのは、バートルであるシュンを含め、ルーマニア人、ユーゴスラビア人、アルバニア人と白人ばかりで、シュン一人がアジア人であった。
寒い廊下を歩く中、中隊の機体が駐機されている整備場へと辿り着く。
「着いたぞ。ここがお前らの新しい家だ、手荷物は向こう側の兵舎へと置いて行け。受付に聞けば、部屋は分かる」
青年はシュンたち補充兵らに、これから乗る戦術機、元の時代では戦闘機であった筈のMIG-21バラライカを見せてここが新しい家だと言った後、兵舎を指差しながらそこへ行けと言った後に、この場を去ろうとした。
「少尉、それは無いんじゃないか」
「なんですか、大尉殿。俺はこいつ等をここへ案内しろと言う命を受けてやっただけですよ」
この無愛想な赤毛の青年に、上官らしき女性が声を掛けて呼び止めた。
それに反応した青年は睨み返したが、三名の外国軍の補充兵は彼女の容姿を見て驚きの声を上げる。
「これがシュヴァルツェ・マルケンの中隊長か…!」
「まるで白皙の氷細工のようだぜ…!」
ルーマニア人に続き、ユーゴスラビア人が彼女の容姿を美しい氷細工のように例えたように、噂の死神中隊の隊長は金髪碧眼の美女であった。
長い髪にすらりとした体系、長い手足に長身とかなりの美貌を備えており、軍人ではなく、何処かの王族か貴族かの令嬢に見えるが、前の世界で彼女と似た容姿を持つ金髪碧眼の美女であるマリ・ヴァセレートに殺され掛けた経験のあるシュンは、思わず彼女が自分を殺そうとする瞬間がフラッシュバックで蘇り、思わず腰に差し込んであるマカロフPM自動拳銃に手を伸ばしてしまう。
「曹長、馬鹿な真似は止せ」
「…おっと、すまねぇ。つい、うっかり」
手を伸ばそうとしたところで、美しい中隊長の部下である大柄な男がその手を止めた。
これにシュンは我に返り、拳銃を収めてあるホルスターより手を離して彼に謝る。
「中尉、なにかあったようだが?」
「いえ、なんでもありません」
「そうか。名乗るのが遅れたな。私はこの第666戦術機中隊の隊長、アイリスディーナ・ベルンハルトだ。階級は大尉。親しい者はアリスと呼んでいる。これからよろしく頼むぞ、補充兵たち」
補充兵であるシュンと話し込んでいる部下の中尉に、何かあったのかを問い詰めるが、彼が何も無いと答えたので、補充兵たちに向けて自己紹介を始めた。
シュンはマリのこともあって、アイリスディーナのことを警戒したため、部隊の政治将校を務めている眼鏡の黒髪の少女に注意を引いている。
そんな彼に警戒されているアイリスディーナだが、気にせずに部下たちの紹介を始める。
「そこの男はヴァルター・クリューガー中尉。下士官からのたたき上げの衛士だ。隊員の教育係と私の補佐を務めている」
「俺は数年前までお前たちと同じ下士官だが、そうと言って容赦しない。この部隊のやり方を覚えてもらうぞ。覚悟しておけ」
自分の補佐役を務め、更に教育係を務めるクリューガーを紹介すれば、彼はシュンら補充兵らに向けて部隊のやり方を徹底的に仕込むと宣言する。
次に、他の隊員等の紹介を始める。隊の殆どは女子供ばかりで、成人男性は先の赤毛の青年とクリューガーくらいだ。増えると言っても、全員が男の補充兵だが。
「そこの茶髪の少女はアネット・ホーゼンフェルト。目の前で戦友を失い続けて戦争神経症を患っているが、根は人懐っこい性格だ」
「よ、よろしく」
紹介された少女の衛士であるアネットは、筋肉質の補充兵らに少し怯えながら挨拶する。
階級は
「アネットの隣はイングヒルト・ブロニコフスキー。祖先が
「どうも、イングヒルトです。隊長はああ言ってるけど、私の祖先が…」
「そこまでにしておけ」
次に紹介されたイングヒルトは、自分を卑下する性格なのか、やられても仕方の無い事と言おうとしたが、シュンを監視している黒縁眼鏡の黒髪のセミロングヘアの少女が割り込んで来た。
「私はグレーテル・イェッケルン中尉! ドイツ社会主義統一党本部より派遣された政治将校だ。貴様ら補充兵共が問題を起こそうと思うなら、私には処罰する権限を与えられている。お前たちを含め、中隊の全員にも処罰は適応される。覚えておけ!」
「(威勢のいい嬢ちゃんだな。少しビビらせたたらちびりそうだ)」
割り込んで勝手に自己紹介を始めたグレーテルは、政治将校の特権で既存の隊員や補充兵らも処罰できることも告げた。
それも目の前で見ていたシュンは、政治将校と聞いてか、第二次世界大戦のモスクワ戦で殺害したソ連赤軍の政治将校を思い出し、幼い政治将校であるグレーテルを心の中で小馬鹿にする。
「クリューガーの次に男の隊員は、テオドール・エーベルバッハだ。諸君らは彼に案内されて顔は覚えているようだが、挨拶はしてこなかっただろう。腕は立つのだが」
「余計なことは言わないでくださいよ、中隊長殿。どうせ、この中で生き残れる奴は居ないさ」
「なんだとこの餓鬼!」
次にアイリスディーナが紹介したクリューガーに次ぐ数少ない男性隊員であるテオドール・エーベルバッハだが、彼は補充兵らに対し、自分の隊での任務では生き残れないと告げる。 この荒んだ性格からして、過去に何かしらのことがあるようだと、シュンは睨んだ。
テオドールの態度に怒りを覚えたのか、ユーゴスラビア人の男は赤毛の青年に殴り掛かろうとしたが、シュンに肩を掴まれて止められる。
「よしな、軍曹。チャンスはある、戦場でな」
「…そうだな。背中には気を付けろよ、餓鬼」
「返り討ちにしてやるよ、おっさん」
殴り掛かろうとしたユーゴスラビア人に対し、シュンは戦場で誤射に見せかけて殺せばいいと告げれば、男はそれを知れば、テオドールに警告する。それに挑発で返すテオドールだが、クリューガーの視線を感じた為、再び隊員の紹介をするアイリスディーナに視線と耳を傾ける。
「では、次は諸君らと同じ社会主義国の衛士、シルヴィア・クシャシンスカ少尉だ。上層部の決定で派遣された諸君らとは違い、ポーランドの撤退戦で私が拾った」
「テオドールと同じ意見だ。足を引っ張る気なら、その場で即刻殺す。覚えておくんだね」
次に紹介された銀髪の美女であったが、シルヴィアもテオドール以上に荒んだ性格からして、過去、否、母国ポーランドにある故郷がBETAに破壊された所為であろう。テオドールと同じようだと、シュンは彼女を観察する。
あのユーゴスラビア人だけでなく、ルーマニア人やアルバニア人も怒りを感じたが、テオドールと同じように始末しようと考える。
隊員と補充兵らの溝が広がる中、アイリスディーナは最後の隊員であるシュンと同じアジア系の隊員を紹介した。
「最後にファム・ティ・ラン中尉。私の副官で私が不在の時は、彼女が隊の指揮を務める。そこのデカいアジア人と同じだが、彼女はベトナムからの移民だ。チビやアジア人などと揶揄して見れば、痛い目を見るぞ」
「ふーん、補充兵のみんなは私より年上ね。そこの大きい東アジアの人もだけど。これからよろしく」
「(この女はなんかの武術とかをやっていそうだな。下手に手を出さない方が良さそうだ)」
上官より紹介されたファムは、先の二名とは違って補充兵らに向けて挨拶した。
アイリスディーナの言う通り、体格に反して何かの武術を身に着けているようなので、シュンは手を出さないようにしようと心の中で決める。
隊員等の紹介も終わった所で、アイリスディーナは補充兵らの名前を問う。
「さて、我々の紹介は終わった。今度は諸君らの番だ」
「ソロタン・チェリビダッケ軍曹であります」
「ゼリコ・ボリッチ軍曹です」
「ジョン・ベリシャ曹長です」
今度はシュンたち補充兵の番だ。まずはルーマニア人、次にユーゴスラビア人、アルバニア人と名乗る。
「バートル・バーウガェ曹長。迷子兵です」
「ファムに次ぐアジア人だな、曹長。黒人が居れば、我が中隊は多国籍部隊だ」
最後に名乗ったシュンに向け、アイリスディーナは冗談を交えながら挨拶を交わした後、補充兵らに部隊のやり方を覚えて貰うための訓練を行うと宣言する。
「自己紹介も終わった所だが、我々は
「よし、これよりシミュレーションを開始する! 各自、強化装備を身に着けろ!!」
アイリスディーナは補充兵らを直ぐに使い物にするため、宣言の後に訓練を開始した。
補佐役のクリューガーが急かせば、補充兵一同は急いで強化装備を身に着ける更衣室へと駆け込んでいく。
「衛士強化装備…あんな物を着るのか…」
「早くしろ、デカいの!」
衛士強化装備。ワルキューレに属していた頃に、その装備を知っているシュンは顔を引きつらせた。
だが、クリューガーの急かしで手荷物を持って三名と共に更衣室へと駆け込む。
シュンはモンゴル軍の迷子兵であるバートル・バーウガェとして、国家人民地上軍の最強の前線部隊である第666戦術機中隊、通称、シュヴァルツェ・マルケンに忍び込むことに成功した。
彼に与えられたコールサインは、シュヴァルツ
かくして、シュンは人類の対BETA欧州戦線へと、己の目標を達成するために身を投じる事となった。
最近のアニメ。手か、もう一年以上前にもなるアニメだけど。
シュンの搭乗機はMiG-21。長刀は次回か次の話に着ける予定。
次回は訓練を省いてアニメ第一話です。まぁ、他の補充兵は…お察しください。