ヒロイン登場です。
※ヒロインの身長は5cm伸ばしました。
試合に勝利したシュンは、賞金を受け取ってから闇闘技場を出て、子供らの為に玩具を買おうと商業区へ足を運んだ。
『
道中、拡声器を使って志願兵を募る銃器などで武装した者達が居た。それを耳にしたシュンは足を止め、初めてこの平穏な地にまで戦火が広まっていることを知る。
「侵略者? ここまで戦火が及んでんのか。なにやってんだよ、ワルキューレ」
自分の元職場の名を口にしながら、家路につこうとしたが、志願兵を募る一人の民兵がシュンに気付き、勧誘しようとしてくる。
「そこの大柄な若者よ! 我が戦線に加わり、共に侵略者を…!」
「うるせぇ! 俺は戦争はやらねーんだよ!!」
腕を掴んで勧誘してくる民兵を無理矢理引き離せば、シュンはその場から離れた。闇闘技場で手に入れた賞金で孤児院の子供らのために玩具などを買った後、商業区を出て、自分の村がある方向へ向かうトラックを探す。手近なトラックの運転席に近付き、自分の村へ向かうかどうかを問う。
「あんた、メェルモンドに向かうか?」
「いや、向かわないな。あんた、あそこの出身?」
「そんなもんだ」
「そうか。俺は逆方向のツベルスに向かうんだ。済まないな」
「あぁ、こっちこそ」
向かわないとトラックの運転手が告げた後、シュンは別のトラックを探した。
探している最中、銃器などの武器を持った大男が多いことに気付き、近くにいる男に問う。
その大男達が持っている銃は、AK47やFALと言った整備性の高い自動小銃ばかりであった。対戦車火器に関しても、手頃で手に入りそうなRPG7である。軽機関銃も安値で手に入るRPDであった。
「なぁ、あいつ等なんだ? AKやらFALを持ってんぞ」
「あっ? あの大男達がなんだって? 金の臭いを嗅ぎ付けてここにやって来た血生臭い”ノンダス人”共さ。ここまで戦火が広がってるって言うからな。戦争が連中の生業って事さ」
「そうか…ありがとな」
男の話で大男達の正体が男だけの亜人であるノンダス人であることが分かった。それが分かれば、シュンは男に礼を言った後、自分の村であるメェルモンドへ向かうトラックを探すのを再開する。数十分も粘った甲斐があってか、メェルモンドでは無いが、近くに向かうトラックをようやく見付けることが出来た。シュンが荷台へと上がったのを確認した運転手は、トラックを走らせた。これでようやく家路につくことが出来る。街を出れば、遠くで兵士達が縦隊を組んで行進しているのが見えた。空かさずあの兵士達がなんなのかを運転手に問う。
「なぁ、あそこで縦隊組んでる兵隊はなんだ?」
「縦隊組んでるって…ありゃ戦場に行くんだよ」
「戦争…あぁ、この辺にまで戦火が広がってるしな…そろそろ引っ越し時かな」
運転手から外の情勢を聞いた後、戦火を逃れるために孤児院の子供達を連れてメェルモンドから離れることを考えた。
数時間後、メェルモンドの近くに到着。荷台から降りたシュンは運転手に駄賃を渡し、メェルモンド目指して徒歩で家路につくことにした。だが、彼を立ち止まらせる女性の声が聞こえてくる。
「シュン君?」
それはシュンに聞き覚えのある女性の声であった。その声を耳に入れたシュンは立ち止まり、声がした方向へ視線を向ける。視線を向けた先には、カゴを片手にシュンを見る黒髪で白い肌を持つ長身の女性の姿があった。女性の姿を見たシュンは驚き、やや動揺する。
「あ、アンタ…」
「お久しぶりね、シュン君。子供達はどうしてるの?」
「どうって、元気にやってるよ…今日はあいつ等に都会の土産物をな…ほら、ちゃんと血で汚れてない金で買ったもんだから…アハハ…」
妙齢の女性に子供のことを問われたシュンは、少し落ち着いてから、背中の”得物”を誤魔化しながら、無理に笑みを浮かべて答える。どうやらシュンは、危険な闇闘技場で稼いでいる事をその女性に知られたくないようだ。だが、変に誤魔化し過ぎて、顔に出てしまっている為、彼女に見抜かれてしまう。
「また闇闘技場に行ってたのね…全く、戦争は二度としないって言ってたのに…どうして貴方は…!」
「うっせぇな! まともに働いたって、ガキ共を十分に食わせられねぇんだよ! それにオモチャだって買ってやれねぇ! アンタはそう言う環境じゃねぇから、そんな綺麗事が吐けるんだろうが!!」
顔見知りの女性に見抜かれたシュンは怒りに任せ、まともに働いて孤児院の子供達を養えないことを凄い剣幕で訴えた。
今置かれた環境をどうすることも出来ないシュンの訴えを聞いた女性は、殺気を感じてしまったのか、殺されると思って少し後退ってしまう。それを見たシュンは、冷静さを取り戻し、彼女に謝罪する。
「す、済まねぇ…感情的になりすぎた…」
「い、いえ…こっちが悪いのよ…綺麗事並べちゃって…」
「いや、俺の方が悪いんだ…こんな血に汚れた金であいつ等を養おうなんて。今日限りで終わるよ」
女性も謝った所で、シュンは自分がしていることが大変危険な行為であることを認識し、闇闘技場で一攫千金を狙うのは、今日限りで終わらせることにした。
「それが良いわ。そんなお金で育ったことを知れば、ショックだと思うから。お金が無いなら、私を頼ってくれれば良いのよ?」
この決断を女性は歓迎し、シュンに援助を行おうと申し出るが、ありがた迷惑と取られてしまったのか、断られてしまう。
「いや、アンタに迷惑は掛けられねぇよ。それにこれは俺の問題だ。アンタにも問題があるだろ? 俺を助けたいなら、問題を片付けてからにしろよ」
そう自分も問題を抱えている理由で、シュンに援助を断られた彼女は、自分の腕時計に目をやって、予定の時刻が迫っていることに気付く。
「要らないの…? そうよね、私も問題を色々と抱えてるから…あっ、もうこんな時間! それじゃあ、もう時間だから帰るわね。子供達はちゃんと食べさせて早く寝させるのよ」
「分かってるよ! それじゃあ、アンタも頑張れよ!」
「えぇ! シュン君! 解決したら、お金送るからね!」
女性が去り際に子供達の世話をするよう告げた後、シュンはそれに受け答え、彼女に励ましの言葉を送れば、互いの家路へと着いた。
背中を見せる女性の姿を見たシュンは、彼女の名を口にする。
「早く解決しろよ、マリエ」
女性の名を口にしてから、シュンは家路へと着いた。彼女の名はマリエ・プライスラー。若い外見であるが、年齢は外見にそぐわない30歳である。身長は181㎝と高く、魅惑な体付きをしている。
上流階級の出身であり、シュンとは違って裕福な家庭であった為、何不自由なく育つ。だが、彼女が30歳の誕生日を迎えたときに、父が病で他界してしまった為、他の兄妹達とで遺産相続を巡って争っている。そんな彼女の安泰を祈ったシュンは、子供達の土産と夕食の準備のため、家路を急いだ。
自分の孤児院に帰ったシュンは、夕食と土産を子供達に分け与えた後、残りの食料の在庫を確認するため、家計簿をつけていた。
「これで、四ヶ月くらいは持つな…」
食料の在庫が四ヶ月以上持つことを確認すれば、それを家計簿のノートに書き記す。次に残金の確認を行い、まだまだ余裕があることが分かれば、残金の数を家計簿に書いていく。全ての残量を家計簿に書き記せばノートを閉じ、元あった戸棚へ戻した。
「さて、ガキ共を寝かしに行くか」
そろそろ子供らが寝る時間であり、寝かしつけようと子供らの部屋へ向かおうとしたが、外から爆音や悲鳴が前触れもなく聞こえてきた為、シュンは外の状況を確認に向かう。
「なんだ…? もうここまで敵が来たのか?」
街で聞いた侵略軍のことを思い出したシュンは、窓の側に立ち寄り、外の状況を確認しようとする。彼と同じく、孤児院の子供らも外で何が起きているのか気になったのか、窓から外の状況を眺めていた。シュンの存在に気付いた少年の一人が、彼に何が起こっているのかを問う。
「ねぇ、シュン兄ちゃん。外からドッカーンって音が鳴ったけど?」
「馬鹿、爆音が聞こえたら地下のシェルターに行けって教えただろ! みんなをシェルターに集めてそこに隠れてろ!」
「でも兄ちゃんが…」
「俺は良いからさっさと行け!」
「はーい! みんな、兄ちゃんの言われたとおりシェルターへ行こう」
子供ら全員にシェルターへ隠れているように告げれば、自分の得物の一つである軍刀と、強盗用に備えた水平二連装式散弾銃を何発かの予備弾薬、投げるためのナイフを数本ほど共に持ち出して外へ出た。
「何やってんだ、ここの軍隊は。もうこんな所まで侵攻されてるぞ!」
シュンが見た光景とは、メェルモンドが敵軍と思しき軍隊に焼かれる光景であった。直ぐに孤児院に戻り、地下の秘密の抜け道から子供らを逃がそうとしたが、班クラスの四名の敵歩兵が直ぐそこまで迫っていた。
「民兵だ! 撃ち殺せ!!」
「うぉ!? もう来てんのかよ!!」
敵兵が持つ突撃銃の銃撃を避けた後、散弾銃で空かさず反撃を行い、一名の片腕を引き千切る。
「散弾銃だ! 散会しろ!!」
班長である敵兵が散会するよう命じれば、残り二人の兵士等が命令通りの行動を行い、手に持った突撃銃の銃撃を浴びせてくる。その動きは高度であるが、歴戦錬磨のシュンに比べれば、下の下であった。二人目の敵兵は散弾銃を撃ち込まれ、無惨な死体へと変わった。シュンが持っている二連装式散弾銃の散弾は、熊などの大型の獣を仕留めるための猟用の大粒な散弾であり、人に向けて撃てば、四方が砕け、頭が木っ端微塵に吹き飛ぶのは確実である。
「く、クソ!」
戦友を無惨な死体へと変えられて怒りを隠せない三人目の敵兵は、再装填中のシュンに襲い掛かり、自分の得物で仇を取ろうとするが、投げられたナイフが頭に刺さり、あの世へ送られてしまう。
「良くも!」
最後の一人となった班長の兵士が、背後に回り込んで銃弾を浴びせるも、巨体に似合わず身軽な動きをするシュンにかわされ、一気に懐まで近付かれてしまう。
「接近戦が苦手だと思ったか!」
鞘から抜いた刀で斬り掛かってくるシュンに対し、班長は右腕に付けているアームガードから刃物を手動で出し、振り下ろされた刀身を防ぎ、左手で抜いたサバイバルナイフで胸を突き刺そうとした。が、それが読まれていたのか、地面を蹴って避けられてしまう。
「馬鹿め!」
直ぐにライフルの距離まで敵が下がったので、班長は利き腕に持っている突撃銃を撃とうとしたが、引き金を引く前に接近され、胸を深く斬られて絶命する。
「ぐあぁぁ…」
「うし、次が来る前に装備を整えるか」
刀身の血を振り払ってから、次が来る前に装備を調えるため、孤児院へ戻って自分の装備を回収した。闘技場で使った得物である大剣。ワルキューレを除隊してからも使用しているHK MK23ソーコムピストル自動拳銃。弓矢と矢を数本ほど回収すれば、地下に入って子供らの居る場所へ向かう。返り血を浴びたシュンの姿を見た少女は、外で何があったのかを問う。
「兄ちゃん、どうしたの?」
「今答えてる暇はねぇ。抜け道を通ってさっさと逃げろ! 言った通りの場所に行くんだぞ?」
外の状況を問い掛けてくる少女に対し、シュンはその問いに答えることなく、真剣な表情で抜け道から逃げるように告げた。ただ事でないことが分かった年長者の少年は、園長であるシュンの指示に従い、他の子供らを連れて地下の抜け道を開ける。
「う、うん…分かった! みんな、この抜け道に! 手順通り、例の場所へ!」
「後で迎えに来る! 三十分して俺が来なかったら、隣町に行け! 良いな?!」
「あぁ、分かってる! 兄ちゃんも三十分に来てよ!!」
年長者に自分が三十分以内に来なければ、マリエが居る隣の町まで行くように告げた後、少しでも足止めをするために孤児院の外へ出た。
「十分間も足止めすれば逃げ切れるか! それまで弾が持つかどうか!」
散弾銃の空薬莢を排出して新しい弾を詰め込んだ後、遮蔽物となる倒木に巨体を隠し、ここに来る敵の増援を待った。その間に先程始末した敵兵の装備を見て、最新式でハイテクな物であると察する。何処の勢力であるかはシュンには分からないが。
「こいつ等、何者だ? 歩兵がこんなハイテクな装備して…」
敵兵の装備を見定めていれば、敵の二個分隊ほどの増援が到着する。
「第3分隊のB班が消息を絶ったのはこのエリアだ! 徹底的に探し出せ!」
『了解!』
隊長と思しき下士官が言えば、他の兵士達は既にこの世に居ない四人の戦友を探し始める。散弾銃では自分の居場所を知らせてしまうため、弓矢に切り替え、前に出ているポイントマンに狙いを定め、矢を放つ。
「うわぁ!?」
「前衛がやられた! 各員、臨戦態勢!!」
まだ自分の居場所は見付かっていないようだが、敵歩兵は互いの死角をカバーし始める。
次に矢を放てば、見付かる可能性が高くなる。
そう悟ったシュンは、敵に見付からないよう姿勢を低くし、自分が身を隠せるくらいの大きさである岩から分隊長へ向けて矢を放った。
「分隊長が!?」
敵が浮き足だったのを見逃さず、空かさず矢を放ち、下士官以上の敵兵の全てに矢を放った。
「あそこに居るぞ!」
少し欲張りすぎたのか、敵兵に見付かってしまい、銃撃を受ける。
「優秀だな!」
下士官を全員殺されても、混乱しない兵士等を褒めれば、銃撃を避けるために遮蔽物へ身を隠す。何千何発もの銃弾が岩に当たり、徐々に砕けていく。敵が同じ場所へ撃っているので、別の場所へ移動し、側面から拳銃を撃つ。
「側面からギャッ!」
一人が撃たれて気付いた時には、残り四名の敵兵は頭部を撃たれ、物言わぬ屍へと変わり果てた。
『向こうに居るぞ!!』
『増援を呼べ!!』
「来たな…」
遠くの方で銃声を聞いた敵兵の声が聞こえてきた為、シュンは物言わぬ敵兵から回収し、試しに構えてみた。その銃はブルパップ式の突撃銃であり、銃身下部にはグレネードランチャーで、照準器はフォログラフィックサイトが取り付けられている。形状は人間工学に基づいてか、構えやすくて銃を握るクリップもどんな手でも握りやすい物であったが、シュンは気に入らなかったようだった。
「随分とゴチャゴチャしてるな…」
構えて銃に様々な物が取り付けられており、ずっと何も付けないままのライフルで戦ってきたシュンには少し扱いにくい物であった。だが贅沢は言えない。
その銃の予備弾倉を数本ほど元の持ち主から拝借すれば、向かってくる敵の増援に向けて数発ほど撃ち込んだ。命中率は高く、銃弾も真っ直ぐに飛び、標的にした敵兵を倒すことが出来た。しかし、余りにも真っ直ぐに飛びすぎるためか、動いている敵に殆ど当たらないので、使い慣れている散弾銃に切り替えた。
「やっぱ、こっちが良いな」
使い慣れてきた散弾銃を一発撃った後に感想を言えば、二発目を撃ち、敵の四方を吹き飛ばす。二発目を撃ち終わったところで、遮蔽物へ隠れ、巧みに蝶番を開いて空薬莢を排出し、手早く新しい弾を二つほど薬室に入れ込み、再装填を行う。直ぐには撃たず、まだ弾が残っている自動拳銃で銃撃を続ける敵を黙らせ、遮蔽物から飛び出して燃え盛る村へと向かう。
「村へ逃げたぞ!」
「馬鹿な奴だ!!」
わざわざ自分達の支配地域に逃げたシュンを馬鹿にする敵兵等であったが、彼には考えがあった。
「上手く誘いに乗ってくれた…少しでもガキ共から遠ざけねぇとな」
追ってくる敵兵に感謝した後、燃え盛る村へと入り、少しでも子供らから敵を遠ざけるために派手に暴れる。まずは自分の存在に気付いて持っているライフルを撃ってきた敵兵三名を、背中に掛けてある大剣で抜き、地面を蹴って一気に近付き、三人諸共その巨大な剣で斬殺した。それからもっと敵兵を集めようと、大声で叫び始める。
「オラァ! クソッタレなヘタレ野郎共!! ハイテクな装備なんかしやがって! んな装備捨てて素手で掛かってこいやァ!!」
大声で敵を挑発すれば、それに乗った敵兵等がシュンを嘲笑いながら出て来る。
「こいつ、馬鹿じゃねぇか? 頭でもおかしくなったか?」
「そんなガラクタの寄せ集めで俺達とやろうってのか? 全く、とんだ中毒者だ。薬の代わりに銃弾でもくれてやる」
「ハイテク装備を馬鹿にするとは、原始人め。文明人の力を見せてやる」
自分を囲って貶してくる敵兵等が集まったところで、シュンは大剣を肩に担ぎ、空いている手で「かかってこい」のジェスチャーを送った。
「ハッハッハッ!」
これを見た敵兵達は余りのおかしさに笑い初め、直ぐにでもシュンを殺そうと銃を向けたが、彼の目の前にいた兵士等は既に斬殺された後であった。直ぐに迎撃態勢を取り、戦友を次々と斬り殺していくシュンに向けて銃撃を行う兵士等であったが、巨体に似合わぬスピードで的が絞れず、撃つ前に真っ二つにされるか、首を飛ばされる。
「な、なんだこいつは!?」
「大剣が銃に勝てるわけがねぇ! 数を撃てばが!?」
下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。
そんなことわざがあるが、シュンには通用しないようだった。何発かは当たった物の、掠った程度の物であり、この程度で速度が落ちる訳もなく次々と四方が引き千切られた死体か、上半身と下半身を切り落とされた死体へと変わってしまう。
俺達は悪夢でも見ているのか!?
先程の威勢は何処へやら。そう獣のように次々と戦友を切り裂いていくシュンと対峙した将兵等は思った。集まってきた二十人ほどの敵兵を無惨な斬殺死体へと変えたところで、残った敵兵等の戦意が低下し始める。
「ば、化け物だ…!」
「か、勝てるわけがない…!」
顔が覆い隠されるほどのフェイスマスクをした兵士達は、次々と戦友を狩る
これ以上の損害は出せないと判断した小隊長も、部下である兵士等と同様に怯えつつ、賢明な判断である撤退命令を出した。
「て、撤退だ! 各分隊撤退せよ!!」
この指示を待っていたのか、兵士等は逃げるように撤退した。
「ふぅ…撤退してくれて助かったぜ…」
三十人以上を得物である大剣で斬り殺したシュンは少し体力を消耗したのか、大剣を杖代わりにして撤退する敵兵等を見て感謝する。それから敵から奪った自分には扱いづらいブルパップライフルを捨て、仕えそうな武器を探す。
「M1ガーランド買ったって自慢してる奴の家は何処だったかな?」
燃え盛る前の村で、アメリカの半自動小銃であるM1ガーランドを買ったと行って自慢していた男の事を思い出し、その男が住む家を探した。周囲は攻め込んだ敵軍が焼き払っているせいか、どの家屋も燃えており、あちらこちらには射殺された死体や焼死体が転がっている。
「酷ぇことしやがる…! 単なる憂さ晴らしか?」
敵軍に蹂躙され、殺し尽くされた村人達の屍を見て、シュンは少し怒りながらも、異常な敵と戦っていることを認識する。
何故、これ程まで弱者な村人達を殺すのか?
その答えは後程分かる。燃え盛る村の家屋の中で一挺のライフルを探す中、ようやくお目当てのライフルを見付けることが出来た。持ち主の死体が覆い被さる形で守られていたため、奇跡的に銃本体と弾薬は無事であった。死体を退けて、早速M1ガーランドを手に取る。
「あった! 奇跡的に弾薬も無事だぜ! やっぱハイテクより、アナログ的の方が良いな」
プラスチックや軽い金属で出来た銃よりも、シュンは木と鉄で出来た銃が好みであった。
試しに構えて自分用に調整した後、専用クリップに弾丸を込める。全てのグリップに弾を込め終えれば、一つを銃本体に装填し、残りはポケットに入れ込む。アタッチメントである銃剣を銃身に付けた後に、安全装置を外して外へと出た。
「居たぞ!」
偶然にも試し撃ちになる的が居るため、シュンは早速小さい照準器に敵兵を収め、引き金を引いた。反動が来た後に、狙われた敵兵は倒れた。アーマーの御陰でまだ息があったが、シュンは容赦せずに二発目を頭に撃ち込み、敵を無力化した。
「これなら首か頭、アーマーの隙間を狙うだけでやれるな」
命中精度の高さに感服しつつ、シュンは銃声を聞いて駆け付けてくる敵兵を次から次へと射殺していく。六人目を射殺したところで、弾が切れてクリップが自動的に排出したので、直ぐに新しいクリップを装填し、初弾を薬室へと送り込む。
このクリップの排出音は派手に鳴り響くので、敵に再装填中であることを知らせてしまうが、熟練の兵士はこの排出音を罠として使っている。残っている敵の二個分隊ほど排除しつつ、中隊本部があるとされる場所へと向かった。しかしシュンが思っていた中隊本部ではなく、四倍ほどの兵員を保有する大隊本部であった。
「おい、なんで大隊本部が…! こんなとこに戦略的価値がねぇぞ。クソッ、中隊でもきついぞ…」
一人でのゲリラ戦闘では中隊くらいの足止めが限界であり、大隊クラスの戦力相手は、シュンが狙撃手でなければ厳しい。警備も先程暴れた所為であって厳重であり、本部を襲って敵を混乱させる案は放棄し、敵に見付からないようその場を離れた。
「こんな所に何があるってんだ? くそ、一個大隊なんて寄こしやがって」
文句を垂れつつ、敵を避けながら村の外を出ようとする。
「やべっ…!」
「あそこに居たぞ!」
もう少しで出られると思ったが、転がっていたカップを踏んでしまったのか、割れる音を耳にした敵に気付かれてしまった。最悪な事に敵はツーマンセルで行動しており、一人の兵士がシュンに向けてライフルを撃ち、もう一人の兵士が無線で増援を要請する。
「敵を発見した! 増援を要請する!!」
『了解した! 直ちに増援を送る!!』
この無線の後に、シュンの背後から一個分隊ほどの兵力が増援としてやって来る。手に持っている半自動小銃で数名ほど倒すも、直ぐに分隊支援火器の倍返しを食らう。連射速度はMG42の百発分ほど低いが、それでもシュンにとっては脅威であった。身を隠した遮蔽物はあっと言う間に蜂の巣になり、いつ壊れるか分からなくなる。
早くここを出なければ!
そう思って遮蔽物から飛び出そうとするが、出入り口前に居た二人の銃撃で出るに出られないようになる。更に近くから駆け付けてきた敵兵等もそこに集まり、二人と一緒にシュンに向けてライフルを撃ってくる。最悪なことに手榴弾まで投げてきた。
「嘘だろ!?」
手榴弾が近くに落ちてきたのを見たシュンは即座に投げ返す。思った通りには飛んで行かなかったが、前だけの銃撃は止ませることは出来た。直ぐに壊れ掛けの遮蔽物から飛び出し、スタミナのある自動拳銃で強引に前方の包囲網を突破しようとする。
だが、映画のようには早々と上手くは行かない。弾が切れた拳銃からM1ガーランドへ切り替えた途端、左肩に一発のライフル弾を受けてしまう。
「グッ…!」
弾は貫通せずに残り、左肩から激痛が走ってくるが、シュンはこの程度の痛みは慣れきっており、痛む左手でライフルの銃身を持ち、邪魔な敵兵に向けて撃つ。四発ほど撃ったところでクリップが大きな音を立てて排出されたが、シュンはお構いなしに、銃剣で目の前の敵を刺し殺し、恐れ戦く敵へ左手で抜いた刀で斬り殺す。敵も負けじと反撃に出るも、呆気なく返り討ちにされてしまう。
「う、うわぁ…!?」
残った敵兵は怖じ気づいたのか、銃口を向けながらもその場で固まり、引き金を引こうともしなかった。
撃たれる前に殺されると思ったのだろうか?
死の恐怖を前にした人間としては仕方のない事だが、敵の目の前にして固まるなど、兵士としては失格であろう。
「運が良かったな!」
これを好機と見たシュンは、相手が勇気を出して撃つ前にさっさと村から逃げることを選択し、目の前の敵兵を見逃した。数秒後、先程見逃した兵士がようやく引き金を引いたが、照準器の中にはシュンは居らず、後の祭りであった。無事に村から脱出したシュンは追跡を撒く為に森林へ逃げ込み、逃がした子供達との合流地点を目指す。
「(無事でいてくれよ…!)」
子供達の無事を祈りつつ、シュンは森の中を疾走した。
なに、ヒロインが三十代だぁ…?気にするな!!
取り敢えず、切りが良いところまで上げました。