そんでもって二週間かかった…これ、もう三月中には絶対に終わんねぇな。
第666中隊の面々を救出し、辛くも戦場となった基地より脱出したテオドール達であったが、アイリスディーナに次ぐ指揮官であるクリューガーは激しい拷問により意識不明の状態であり、ファムは裏切り者のリィズによって殺された。
代理のリーダーが居ない脱出した面々は追手に怯えながら、反体制派から出された合流場所を目指していた。
合流すれば少しはマシになり、更にハイム少将のクーデター軍に合流すれば万全だ。
だが、肝心のアイリスディーナは救出前にベルリンへと連行された。厳重な警備下にある政治犯収容所に送られていることだろう。そんな要塞のような場所へ囚われた彼女を救出するのは困難を極める。
そんな状況下の中、シュンを含めるテオドールらは合流場所を目指した。
「ここのようだな…」
合流場所である森へと着いたテオドールらは、車両から降りて辺りに反体制派の人間はいないか探した。
それらか物の数秒後で、木の陰から高級なコートを纏い、制帽を被った男が出て来た。
「いやー、待ちくたびれたよ。危うく凍死する所だった」
「っ!?」
「お前は!?」
聞き覚えのある声に性格、その男の正体は敵対している筈のシュタージのハインツ・アクスマンであった。
冗談を交えながら出て来た敵である男に対し、テオドールは恐怖で顔が強張り、シュンはこれが罠であると判断して肩に掛けていたM16A1突撃銃を素早く取り出し、安全装置を素早く外して銃口を向けた。
他の一同も同様に銃を取る中、周りをHK33突撃銃などの西側の装備の歩兵部隊に、この時代に場違いな青い甲冑を纏った騎士たちや、複数の青い一つ目の不気味な外見を持つバーザムと呼ばれるMSに包囲される。
一色触発となった状態に対し、アクスマンは場を仕切るように収める。
「待ちたまえ、諸君。ここで殺し合っては元も子もない。銃口は下げたまえ」
彼が言えば、西側の装備の歩兵部隊や騎士、バーザムに乗るパイロットらは下がり始める。
それと同時に、アクスマンと手を組んでいる部隊の指揮官が出て来る。
「アクスマン! なぜ奴らを生かす!? 奴らは共産主義者だぞ!! 即刻皆殺しにするべきだ!!」
「オルレアン隊長、彼らは我らと同じくシュタージ打倒を心抱く者達です。戦力は多い方が良いと思いますが」
「黙れ! 私は奴らにどれだけ部下を殺されたことか! 連中は卑怯者で野蛮だ! 信じられる物か! 貴様もな!!」
指揮官はスキンヘッドで、黄色の十字架が描かれた青いサーコートを着ており、テオドールらを指差すなりなぜ殺さないのかと叫ぶ。
そんな指揮官を宥めるようにアクスマンは言うが、オルレアンと呼ばれるフランス系と思われる騎士は、元の世界で共産ゲリラと戦い、かなりの苦汁を飲まされた経験があるのか、ヒステリックにテオドールたちこと第666中隊の面々と手を組むことを拒んでいる。
どうやらアクスマンは、ベルリンから逃れた際に脱出するオルレアンの部隊に合流したようだ。
「向こうも一枚岩じゃねぇな」
「なんであいつが反体制派と…? それに海王星作戦の連中がなぜここに?」
オルレアンがヒステリックのようにアクスマンに第666中隊の面々を配下に加えるのを拒む中、シュンはこれに飽きれ、テオドールはあのアクスマンがワルキューレの面々と共に居ることに混乱を覚え始める。
言い争いを眺める二人に、肩にMPI-K突撃銃を紐で掛け、反体制派の肥満体系の眼鏡を掛けた男が代わりに説明する。
「それは私が説明しよう。ハンス・ソームだ。リーダーはベルリンに居るが、彼女に君たちに協力するように言われた。でっ、この奇妙な連中とシュタージから追い出されたクソッタレ共は、いきなりこっちに来て協力しろと言われた。悔しいが、装備や人数の面で奴らに従うしか無かった」
自己紹介をしてから、押し掛けて来た連中に協力させられていると説明する。
「そうなのか…でっ、どんな風に来た?」
「銃を押し付けられた。言われた通りにしないなら皆殺しにすると。脅しだよ。連中はここに来るまでに幾つかの村を襲って略奪してる。中世からタイムスリップして来た野蛮な奴らだ」
「やれやれ、あのクソッタレ共と同じじゃねぇか」
説明してくれた派遣部隊の指揮官ハンスに、どのように脅されたとシュンが問えば、彼はアクスマンとオルレアンを睨み付けながら皆殺しにすると答え、更にはここに来るまでにワルキューレの敗残兵たちが自国内で略奪行為をしていることも告げた。
それを聞いたシュンは、アクスマンとオルレアンの連合部隊はネオ・ムガルと対して変わらないことを知り、悪態を付く。
そんな連中と手を組むかどうか、シュンはクリューガーの代理として指揮官となっているテオドールに問う。
「どうする、俺らも愚連隊の仲間入りを果たすか?」
「シュタージのアクスマンに略奪騎士と手を組めと…? そんなの、組むわけが…」
「おっと、それは賢明な判断とはいえんな。エーベルバッハ君。ここで逃げれば、私の親友であるオルレアン殿が君たちを一人残らず殺すだろう。女性なら生かしてもらえるが、死んだ方がマシと言える屈辱に見舞われることとなる。それに私はベルンハルト大尉が囚われている正確な場所に心当たりがあるし、我がシュタージが創設当初から集めて来た機密文書、通称シュタージファイルの保管庫を抑えてある。答えは自ずと出るだろう? ん?」
「拒否権なしかよ」
当然ながら断ろうとしたテオドールだが、そこにアクスマンが割って入り、断れば確実な死が待っていると告げ、更にはアイリスディーナが囚われている場所の見当がついているや自分の諜報組織の機密文書の保管場所を抑えてあるなどを口にし、合流と言う選択を強要する。
これでは拒否権もあった物では無い。
またもシュンが悪態を付く中、テオドールはアイリスディーナの救出も踏まえ、更にシュタージの悪行を晒す証拠品であるシュタージファイルを手に入れるために彼らと合流する他ないと判断して首を縦に振った。
「分かった、お前たちと合流する。その代り、お前たちにも俺たちの革命に協力してもらうぞ」
「良いだろう。喜んで君たちの革命、ドイツ東西統一に協力しようじゃないか。それで良いですな、オルレアン殿?」
「ふん、お前たちシュヴァルツェ・マルケンの活躍は聞いている。革命などに協力するつもりは無いが、あの忌々しい連中を皆殺しに出来るならそれで良い」
「だっ、そうだ。さぁ、共にドイツの統一を」
自分等と共に戦うと決めたテオドールに向け、アクスマンは彼の右手を握ってからオルレアンと共に指揮車の方へと向かった。
アクスマンは頭の切れる男だ。おそらくオルレアンを利用して何かをする気だ。シュンは利用している男と話し合いながら向かっていくアクスマンの背中を見ながらそう睨む。
「革命後のあいつはどうする?」
「もちろん、殺すさ」
そんなアクスマンをどうするかをテオドールに問えば、彼はこれまでの事を思い出して殺すと断言した。
こうして、信じられないアクスマンらと強力な陸戦部隊を入れたドイツ革命軍は、どうシュタージとネオ・ムガルを倒し、アイリスディーナを救出して東西統一をするかを相談するべく、近場にある市街に向かった。
「なにぃ、ラーテノー市にアクスマンと赤毛の青年が? 中尉、直ぐに少佐殿に報告しろ。少尉、これから我が中隊は鼠狩りに向かう。ジェルンスキー連隊から派遣された歩兵中隊に知らせろ。ヘリを回せ!」
「ヤー! 直ちに!」
「ヤヴォール!」
一方でリィズが抜けたシュタージの戦術機中隊は、テオドールらが会談場所に選んだ街に放った密告者からのタレコミを受け、出撃体勢に入っていた。
指揮車の無線機よりそれを知った指揮官は、隣に立っている部下に自分の上司であるベアトリックスに報告するように告げ、近場で待機している少尉階級の士官に歩兵中隊に随伴するように指示を出す。
自分はヘリから戦術機部隊の指揮を取るためにMi-2ヘリに乗ろうと身支度を初めた瞬間に、我が物顔で分厚いコートを羽織った男が指揮車に入って来た。
入って来た男は太々しく、身支度をしている指揮官に指揮官である稼働を聞いてくる。
「この中隊の指揮官は貴様か?」
「あぁ、そうだが。後にしてくれ。気付かれたら逃げられてしまう」
「黙れぃ。貴様の中隊はこのカン・ユー上級大佐の指揮下に入るのだ。復唱をせんか、復唱を」
「はぁ?」
入って来た紫色の髪で髭を生やし、自分の方が階級は上だと言わんばかりに命令するカン・ユーなる男に、指揮官は茫然となる。
「さっさっと復唱をせんか! 馬鹿者!!」
そんな指揮官には相応しくなさそうな男を無視して白い戦闘服を着ようとした指揮官であるが、無視されたことに腹を立てたのか、カン・ユーは指揮官を殴った。
「な、なにをする!? あんたはネオ・ムガルとか言う連中の兵隊だろ!? 俺たちを指揮下にいれる権限は長官から与えられていないはずだ!」
「喧しい! 現場の判断が優先だ! 文句は言わせんぞ!」
殴られた指揮官はネオ・ムガルにシュタージの部隊の指揮下にいれる権限は無い筈だと言うが、カン・ユーは自分の命令こそが絶対であると返し、勝手に指揮を執り始める。
「お前らのスパイが敵軍や寝返った奴の居場所が分かったと言うタレコミがあっただろ? 俺の機甲旅団を全て増員して街を包囲する! ネズミ一匹逃げられんほどにな! そこでお前たちが潜伏場所へ突入だ! 分かったら荷物を纏めてヘリに乗り込め!」
「滅茶苦茶だ…」
カン・ユーに命令された指揮官は殴られた頬を抑えつつ、今度は殺されるかと思って命令に従い、渋々と身支度を整えて指揮官用のヘリに乗った。
「よーし、全機出撃準備完了だな! これより鼠狩りに向かうぞ!! 抵抗するなら射殺して構わん! 総員出撃せよ!!」
出撃準備が早く終われば、カン・ユーは自分の愛機である水陸両用のATであるダイビングビートルに乗り込み、マイクで出撃命令を出せば、メインカメラ用のゴーグルを着けてからコックピットのハッチを閉めた。
それから命令を受けたトレーラーの運転手は、荷台にカン・ユーとその部下たちが乗るATを載せてテオドールらが居る街へと他のトレーラー群やスノーモービル、戦術機やヘリ部隊と共に向かった。
「来たか…」
それから数十分、自分等が居る市街地に迫るネオ・ムガルの先遣隊を双眼鏡で発見したシュンは、背負っている長距離無線機を雪原の上に降ろし、受話器を取ってこの時に備えて予め用意した待ち伏せをするかどうかを問う。
「案の定来たぞ。それも凄い数だ、包囲するつもりで来てる。シュタージの突入部隊まで来てるぞ。どうする、市民を逃がすか?」
『いや、確実に損害を与えるために避難はさせない。戦闘が始まれば地下に避難して貰うが。それまでは我慢してもらう』
受話器でこの待ち伏せを考えたテオドールに市民を避難させるかどうかを問えば、彼は奇襲成功を優先させるために避難させないと答えた。
「あぁ、確かに確実な手だ。だが、反感を買うぞ?」
『そんなこと、端から承知してる…早く戻れ』
民間人の安全よりも敵の殲滅を優先という冷酷な選択をしたテオドールに対し、シュンは交信が切れた後、彼の将来はおそらく世間を恐れさせるものになると判断する。
「こいつ、将来はテロリストになりそうだな」
相手が聞こえないのを良い事に、シュンは好き放題な事を言ってから無線機を背負い、指定の待ち伏せ場所まで向かった。
この待ち伏せは、約一個大隊規模の機動兵器と歩兵二個中隊による物で行われている。
会談に使った市街地の一番大きいホテルだけは従業員や宿泊客も含め全員が退避しており、突入してくるシュタージの制圧部隊に備えて爆薬が仕掛けてある。
市街地周囲にはMS三個中隊を雪の下に潜伏させ、テオドールが指揮を代行する共に逃げて来た東ドイツ軍混成の戦術機一個中隊は近場で待機し、待ち伏せを受けた敵が混乱したのを確認してから出撃する。
カティアのVF-1は、特別な重装備をして市街地南方の雪の下に潜んでいる。
反体制派の構成員も含む歩兵部隊は市街地に潜み、街に入って来た歩兵や敵機動兵器を相手に対物火器などでゲリラ戦を仕掛ける。
全戦力を持ってすれば勝てるはずだが、後の決戦に備えて戦力を温存し、大隊規模での戦力で敵を撤退させる作戦に出る。
「来たぞ。テーブルが満席になるまで品を出すなよ」
「了解。こちらボーイ、お客様が来客。キッチン、おもてなしの品の用意を」
市街地へと戻り、背負っている無線機を近場の女兵士に渡して指示を出せば、シュンはFN MAG機関銃や使い捨てのロケット砲であるM72 LAWを二本ほど持ち出し、自分の配置へと向かった。
それから数分間そこで配置の家の住人と睨めっこして待っていれば、戦術機の跳躍ユニットの作動音やヘリのローターの音が喧しく聞こえて来た。シュタージの部隊が市街地へと突入して来たのだ。
直ぐに住人に無言で地下へ避難するようにジェスチャーで伝えれば、窓から外の様子を窺う。
歩兵はMi-8大型輸送ヘリにしか乗っていないようだが、街の外に居る大多数のバギーやスノーモービルが入って来そうなので、外の無法者達が押し寄せて来るまで待つ。
数秒足らずでシュンの予想通りに空のヘリはホテルの上でホバリングを行い、歩兵をラペリングで降ろし始める。随伴している戦術機は周囲警戒を行っている。
地上からはバギーやスノーモービルに乗った無法者らが街の出入り口に殺到し、略奪命令があるまで街に目ぼしい物が無いか乗用車を走らせながら調べる。
ヘリがホテルの上空を飛んでいることを確認した隊員は、ロープで降下して来るシュタージの兵士がホテルの窓まで来たのを見計らって、仕掛けてある爆弾を起動させた。
ホテルに仕掛けられた爆弾は正常に爆発し、ホテルに降下しようとした突入部隊は吹き飛ばされ、その爆風でヘリは制御を失い、回転しながら墜落して行った。
「な、なんだ!?」
「へ、ヘリが!?」
ホテルが爆発して地上の無法者らが混乱する中、街に潜んでいた待ち伏せ部隊は火炎瓶を投げ付け、機関銃を撃つなりして交戦を始める。
シュンもまた爆発に気を取られている火炎放射器を背負ったモヒカン頭に向けて窓から機関銃を撃ち込み、数人の爆発に巻き込んでから通りに居る無法者の集団に向けて機関銃を撃ち込んだ。
二脚を立てての機銃掃射だ。数十名が対応できずにバタバタと倒れて行き、通りは死体で溢れかえる。
十分な人数を始末すれば、機関銃を脇に置き、使い捨てのロケット弾の安全装置を解除して、右往左往している敵戦術機であるMiG-23の足元に向けてロケットを撃ち込む。
対戦車用のロケット弾であるため、敵戦術機はバランスを崩して道路の上に倒れ込んだ。
この隙にもう一本でトドメの二発目を頭部に向けて撃ち込み、敵機を無力化した。
戦闘不能となった機のコックピットよりシュタージの衛士が出て来たが、SVD狙撃銃を持つ反体制派の構成員に直ぐに撃ち殺される。
「居たぞ! あいつを仕留めれば昇進確定…」
ロケットを捨てたシュンの背後より、またも銃を持った無法者らが大挙して押し寄せて来たが、声で気付かれて機関銃の掃射で一掃される。
「あいつ等、俺に賞金でも掛けてんのか」
先ほどの声が銃声や爆音が鳴り響く戦場となった市街地で聞こえていたのか、シュンはそれを昇進か賞金が掛かっていると聞き取り、自分がかなりの標的となったと判断する。
空を見上げれば、敵が混乱したのを見計らって出撃したテオドールが指揮する混成戦術機中隊が敵戦術機部隊に突撃砲の弾幕を浴びせていた。
「さて、俺もゴキブリ退治に専念するか」
視線を戻し、機関銃の残弾を確認したシュンは、こちらへと向かって来る無法者らの迎撃に備えるため、屋内へと退避した。
「待ち伏せだ! 街に入った連中が待ち伏せを!!」
ホテルが爆破されたのと同時刻。
市街地の外で包囲していた者達が先に突入したシュタージの部隊と無法者らの略奪部隊が待ち伏せを受けたのを知って、包囲を狭めて一気に雪崩れ込もうとしたが、彼らもまた奇襲攻撃を受けた。
「て、敵だぁ! 雪の下に居るぞ!!」
街の東側では、雪の下から腰や両肩にミサイルを搭載したMSのジムⅢが数機ほど現れ、辺り一面に見える無数の無法者やATなどに向けてナパーム弾を搭載したミサイルを一斉に放つ。
一瞬にして銀世界は地獄絵図と化し、声にならない叫び声で溢れかえる。
ATは耐火性が無く、引火性の高い燃料を動力源としているため、高熱に耐えられずに次々と爆散する。
「モビルスーツだ! ワルキューレの奴らだ! 逃げろぉ!!」
西側ではビームスプレーガンを両手に持ったジム・コマンドや別のMSのガトリング砲を持った陸戦型ジムなどのジム部隊が雪原の下から現れ、周囲に居る無数のネオ・ムガルの無法者やATに向けて撃ち始める。
街中やナパーム弾で焼かれた地獄から蘇った亡者たちと同様に突然の敵の出撃に対処も出来ず、一方的に撃ち込まれて倒れる。
北側の方でも、アガサ騎士団のバーザム部隊による同様の奇襲攻撃が行われた。ここの方ではネオ・ジオン系のMSが集中しており、性能の差で対応できるくらいのMSであるバーザムを持っているアガサ騎士団が担当する事となった。
この奇襲攻撃は騎士たちに取って不本意であったが、手際が良く、次々と混乱する敵機を撃破していく。
『貴様ら! なにをしているか!! さっさっと迎え撃たんか!!』
攻撃部隊の長であるカン・ユーが必死で拡声器を使って奇襲攻撃を受けて動揺した自分の本隊を立て直そうとしているが、街を包囲した部隊や本隊を含め、全く軍事訓練を受けていない盗賊や無法者らで編成されており、余りの恐怖で脱走しようとする者まで居る。
『おのれぇ! 敵前逃亡者は即座に銃殺刑だ! 戻らんと射殺するぞ!!』
他のネオ・ムガルの指揮官と同様に、自機のライフルで逃げる無法者らを殺して恐怖で立て直そうと試みるも、上空よりテオドールらの戦術機部隊が現れ、白燐弾が入った箱をばら撒き、それを突撃砲で撃って拡散させる。
物の見事にナパーム弾以上とはいかない物の、地獄絵図と化し、恐ろしい叫び声が響き渡る。
更には合流したワルキューレの部隊から調達したのか、全身にミサイルポッドを搭載した重装甲のアーマーを付けたカティアが駆るVF-1Jが雪の下より現れ、その無数のミサイルを白燐弾攻撃で混乱する敵本隊に向けて容赦なく放った。
結果は予想の通り、辺り一面が無法者らの死体や車両に機動兵器の残骸で埋め尽くされる。
テオドールらの戦術機部隊は、上空へと逃げようとする敵戦術機部隊の掃討を始める。
『な、なんてこった! たかが一個大隊を相手に俺の一万人の旅団が!?』
だが、何故かカン・ユーのダイビングビートルは無事であり、上空の戦術機を一機落してから他に生き残っている僚機を纏めてカティアのアーマードバルキリーに襲い掛かる。
『ただでは許さんぞ! このミサイル野郎め!!』
『わっ!?』
怒り心頭でローラーダッシュを行いながら接近して来るカン・ユーのダイビングビートルと複数の同機種に対し、カティアはガンポッドで迎撃を試みるが、カン・ユー機のみの動きが速く、あっと言う間に懐まで近付かれる。
『踏み込みが甘いわ!』
カティアは接近してきた敵機を自機の手足で振り払おうとするが、その敵機に乗るカン・ユーはまるで機体を手足のように動かしてそれを避けてATの近接兵装であるアームパンチを打ち込む。
幾ら重装備の装甲とは言え、アームパンチの威力は凄まじく、バランスを崩して倒れる。
『くたばれぃ!』
倒れたアーマードバルキリーに向け、とどめの一撃を食らわせようとしたカン・ユーだが、カティアはアーマードをパージする。
これで敵を倒せるはずだが、あろうことか、カン・ユーはそれを紙一重で躱す。彼に随伴している機や歩兵は巻き込まれているが。
『ぬぉ!?』
飛んできた強力な徹甲弾のようなアーマーを躱し、再び攻撃を加えようとするカン・ユーだが、カティアは空かさずに機体を立ち上がらせ、頭部両側面にあるレーザー機銃を浴びせるも、指揮官としては無能であるが、ATの操作技術が高い男はそれすらも躱しきる。
『カティア!!』
二機目を撃破し、カティアがカン・ユーのダイビングビートルに追い詰められているのを見たテオドールは、直ぐに彼女の救出へと向かう。
戦術機の方が大きく、性能も機動力もATより高いが、カン・ユーのAT乗りとしての反応速度と腕の前では単なる大きな的である。
『っ!? 来たか!!』
連発された突撃砲弾をローラーダッシュで避け、カン・ユーは即座に上空から迫るテオドール機に対して対空射撃を行う。
ATは防御力が弱いとはいえ、火力は折り紙付きであり、戦術機とは言え、ATのライフル弾一発でも致命傷だ。テオドールは光線級のレーザーのように飛んでくるエネルギー弾を避け、カン・ユー機と交戦に入る。
『図体が違うんだよ! 図体が!!』
雪原に足を着け、突撃砲を自機に向けて乱射して来るテオドール機に対し、カン・ユーはそれを避けながら反撃に転じる。
『テオドールさん!』
『うぉ!? こいつめ!!』
テオドールを援護しようと、カティアはまだ残弾が残っているガンポッドでカン・ユー機に向けて放った。
完璧な不意打ちであった筈だが、カン・ユーは視界が限られているはずのATに乗っているにも関わらず、放たれた弾丸を避けてVF-1Jの胴体に数発の弾を浴びせて無力化した。
『やられました! 脱出します!』
数発の弾を受け、爆発寸前の機体から直ぐにカティアは脱出する。
脱出したカティアがカン・ユーに狙われないように、テオドールは圧倒的な強さを持つAT乗りが乗るダイビングビートルに牽制射撃を行う。
「餓鬼を捕まえろ! ぶべっ!?」
カン・ユーのみならず、生き残っている無法者らがカティアを捕まえようと迫って来るが、待ち伏せ攻撃に加わっていたワルキューレの歩兵中隊の銃撃を受けて次々と撃ち殺されていく。
最後の一人が恐怖し、戦意を損失して逃げようとしたが、ワルキューレの兵士は容赦なく突撃銃や軽機関銃の銃撃を浴びせ、彼を無残な肉塊へと変えた。
『残ったのは、俺だけか!?』
市街地や周囲からの銃声や爆破音は絶え、銃声が聞こえて来るのはカン・ユーが率いる本隊が居る南方のみとなった。
そのカン・ユーの本隊も、包囲しに展開した部隊と同様に彼以外は全滅しており、自分一人だけとなったカン・ユーは、辺りを見渡し、誰か残ってないか探し始める。
上空にはシュタージの戦術機部隊がいるが、人望の無い無能な指揮官である彼を見捨てて残った機体は撤退した。
『だ、誰か! 誰か居ないか!? 助けてくれ!』
無線機に自分の部下たちに助けを請うが、その部下たちは逃げ出すか撃ち殺されているので、もはやカン・ユーに勝ち目はない。
それぞれの担当地域の敵を殲滅して来た反共十字軍のような革命軍に包囲され、カン・ユーは息を呑む。
『…こ、降参…』
ここでカン・ユーは降参しようとしたが、空を飛んでいたMig-21が飛んできたビームで撃ち落とされた。
「見付けた! お兄ちゃん!!」
コックピット内の全天周モニターの中で、革命軍の一機の戦術機を撃墜して喜ぶのは、あのリィズであった。
あの謎の美女より渡されたサイコガンダムMk-Ⅱに乗り、反射で狙った標的にビームを当てられるリフレクタービットを操縦桿で動かすだけで自在に操っている。
この操作にはかなりの訓練を必要とするはずだが、リィズはその操作を容易とすることができる特殊なヘルメットで動かしているのだ。
いわば戦術機と同じであるが、かなりの精神負荷が掛かるようで、リィズの言動が幼くなっている上、口元から唾液が垂れている。これ以上の操作を続ければ、彼女はいずれ死ぬだろう。
そんなことも気にせず、リィズはひたすら愛する義兄であるテオドールを求め、自分を攻撃する物を無作為に攻撃し始める。
『なんだこのモビルアーマーは!? こんなのを投入するなど聞いていないぞ!!』
『そこのMA! 所属は何所だ!? 答えぬ場合は貴様も敵とみなして撃墜する!!』
戦闘の最中、無線機よりカン・ユーの増援としてやって来たネオ・ムガルの空戦ポッドにブレイバーやソロムコなどの空戦部隊のパイロット達の無線機が聞こえ来たが、今のリィズには興味は無い。
地上にも地上戦艦を含める陸戦部隊も居るが、サイコガンダムMk-Ⅱには適わないだろう。
「煩いな…! お前らは邪魔だ…!」
『なに!? おのれ、侮辱するか! 撃墜しろ!!』
聞こえて来る連絡の主に邪魔だと返せば、彼らは逆上してサイコガンダムMk-Ⅱに襲い掛かって来た。
レーザーやミサイル、地上からは対空砲火を浴びせられるが、この巨大な飛行形態に変形している巨大なガンダムには全く通じない。
『レーザーを受け付けません!』
『主砲で吹き飛ばせ!』
それらの攻撃が通じないのであれば、地上戦艦は主砲を飛んでいる巨大な飛行物体へ向けるも、撃つ前にリフレクタービットによるビーム攻撃で主砲が空中を飛んでいる友軍機も含めて破壊される。
「全く、お兄ちゃんが目の前に居るのに…なんで邪魔するのかな…!」
敵部隊に動揺が広がる中、リィズは機体を巨大で凶悪な面構えをしているガンダムへと変形させた。
これにより、機動力と移動力は格段に落ちるが、使える武装は増えるので、代わりとして戦闘力が上がる。
その巨体が雪原の上に降り立てば、重量の影響で大地は揺れ、この辺一帯に居る者は自信と勘違いする。
サイコガンダムMk-Ⅱが立っている場所だけ雪が無くなり、地面がむき出しになっているが、高い場所から降りた為に恐竜のような巨大な足跡が残る。
『何を怯んでいる!? 撃て! 奴を破壊するのだ!!』
地上戦艦に乗る指揮官は、直ぐに巨大なガンダムに怯んでいる部下たちに攻撃を再開するように叫んだ。
これに応じ、集中砲火をサイコガンダムMk-Ⅱに浴びせるも、全く効果は無く、逆にリフレクタービットによるオールレンジ攻撃や、両手の指から発射されるビームで蹴散らされるばかりだ。
近付いた三機のブレイバー部隊は、近接戦闘用の武器であるナックルで頭部を殴ろうとするが、手首が90度回転して現れた射出口からビームソードが生え、それで真二つに切り裂かれる。
友軍機が切り裂かれて恐れをなした二機は逃げようとしたが、サイコガンダムMk-Ⅱの腕は有線式で伸ばすことが可能であり、捕まった一機はそのまま握り潰されて爆発する。
最後の一機はリフレクタービットの反射したビームでハチの巣にされ、黒煙を上げながら雪原の上に墜落した。
『下に潜り込め…』
サイコガンダムMk-Ⅱの装甲が薄い股下にドトールとスタンディングトータスが背後から迫って潜り込もうとしたが、リィズに気付かれてATは踏み潰され、地上戦用のSPTは蹴飛ばされてバラバラになる。
このサイコガンダムMk-Ⅱの圧倒的な強さを見て、地上戦艦や随伴部隊は援軍が来たのと同時に逃げ出したカン・ユーと同様に撤退し始めたが、リィズがそれを許すはずが無かった。
「逃げるの? アハハ、逃がす訳ないでしょ? お前らみたいなクズ共は…!」
損傷した機体から脱出したパイロット達を見捨てて逃げるネオ・ムガルの部隊に対し、リィズは容赦なくサイコガンダムMk-Ⅱの全てのビーム砲を浴びせた。
敵に背中を見せる敵部隊は避ける間もなく次々と撃破され、空でも同様に殺虫剤を掛けられた蠅のように次々と地上へ落ちて行く。
あっと言う間に目前の銀世界がスクラップ場へと早変わりする。
その光景を見て、リィズは子供のようにはしゃぎ始めた。頭に被っているサイコマシーンの影響で幼児退行が進んでいるようだ。
「あぁ、楽しい! お兄ちゃんは何所かな? おーい、お兄ちゃん!」
年齢と合わない言動をし、完全に暴走状態となったリィズは、自分の義兄であるテオドールを探すのに便利な全天周モニターを操作しながら探した。
「なんて馬鹿デカくて凶悪な面なガンダムだ。あんなのがこっちに来たら俺たち全滅だ。それどころか世界を滅ぼしかねないな」
双眼鏡でリィズが駆る暴走状態のサイコガンダムMk-Ⅱを見たシュンは、ここで叩かねばならない標的と判断し、追い詰められた状況を考慮して使う予定であった自分専用のMSであるグフ・カスタムを取りに、それが埋めてある場所まで走った。
早く移動できるようにスキー板をブーツの底に着け、ストックを両手に持って全力でグフを埋めてある場所まで向かう。
その途中、アガサ騎士団のバーザム部隊やテオドールの戦術機部隊がサイコガンダムMk-Ⅱに向かってシュンの頭上を通過するのが見えた。
どうやらシュンと同じくあの凶悪な巨大ガンダムを、シュタージやネオ・ムガルより危険な敵と判断したようだ。
「あいつ等も考えることは同じか」
立ち向かった部隊も自分と同じ考えであると分かれば、自分も急いでグフを埋めた場所まで向かう。
だが、あの巨大なMSは強大だ。向かうまでに数機の友軍機が無数のビーム攻撃で撃墜され、周囲の黒焦げとなったスクラップの仲間入りを果たす。
テオドールらは必死で避けているようだが、サイコガンダムMk-Ⅱのビームは光線級のレーザーよりも早く、凄まじい弾幕が来て次々と脱落機が増えていく。
他にジム部隊が居たはずだが、歩兵中隊と共にサイコガンダムMk-Ⅱには適わないと判断してか、後方に控えている。
「俺が掘り起こすまで全滅すんなよ!」
グフが埋めてある場所まで辿り着き、腰のベルトにストラップで吊るしてあったスコップで雪を掘りつつ、シュンは自分がグフに乗って起動するまで全滅しないように告げた。
『アハハハ、見ぃつけた…!』
「まさか、その化け物に乗ってるのはリィズなのか…!?」
シュンが埋めたグフのコックピット部分を掘り起こしている頃、ビームの対空砲火を躱しつつサイコガンダムMk-Ⅱに辿り着いたテオドールは、その巨大なガンダムからの無線連絡で自分の義妹の声を耳にして動揺していた。
テオドール以外の他のアネットやシルヴィア、アガサ騎士団のMS部隊などの随伴機が攻撃を加えているが、分厚い装甲で防がれ、ビームによる迎撃で返り討ちにされて落とされていく。
『駄目! 要塞級よりも硬すぎる!』
『おのれ、この程度で我等の戦意を挫けるとでも!』
サイコガンダムMk-Ⅱの圧倒的な弾幕と分厚い装甲の前に、アネットや他の衛士等は戦意を損失するが、騎士たちが乗るバーザム部隊はビームの弾幕に怯まずに勇敢と言うより無謀にも、バズーカを撃ちつつホバー移動で突撃する。
近付く前に大部分が撃破されて行くも、損害に構わずに突撃を続ける。
「アネット少尉、シルヴィア少尉、他を連れて下がれ。こいつは俺がやる。いや、俺がやらなきゃ駄目なんだ」
『な、何を言ってるのテオドール!? こいつは要塞級と同じ…』
『同感だね。要塞級よりも強いけど…』
次々と撃破されていくアガサ騎士団のMS部隊を見て、テオドールはあの巨大なガンダムに乗るリィズを自分で倒さねばならないと判断し、アネットやシルヴィアに残って居る戦術機部隊を連れて退避するように告げたが、彼女らはそれに応じるはずが無かった。
しかし、シルヴィアは何か考えがあるようで、その考えをテオドールに告げる。
『下がらせるのはアネットと他で良い。私もあの子に用があるんでね、それを晴らさせて貰うよ』
『そ、そんな!』
「…おい、まさかクリューガー中尉を拷問したのはリィズなのか…? やめとけ、あのレーザー弾幕じゃ犬死にするだけだぞ!」
『それでも許せないのさ…! 私が隙を作る。お前はその隙に一気にカタを付けな!』
「ま、待て! たくっ、どいつもこいつも!」
どうやらシルヴィアはあのサイコガンダムMk-Ⅱに特攻するようだ。
その証拠に右手に握られていた突撃砲は捨てており、代わりに即席爆弾として持って来た航空機用の爆弾を抱えている。
テオドールやアネットが言い止める前に、シルヴィアは味方のバーザム部隊に気を取られているリィズが乗る巨大なガンダムに跳躍ユニットをフル稼働させて突撃した。
『お前もかぁ!』
だが、即座に気付かれてしまい、リフレクタービットによるビーム攻撃で脚を撃たれてバランスを崩して倒れてしまう。
これで特攻は台無しになり、シルヴィアは無駄死にになると判断して脚をやられた機体から脱出せざる終えなくなる。
「くそっ! なんて化け物だ! 」
頭を打った衝撃で血を流しつつも、シルヴィアはビーム攻撃を避けながら凍てつく寒さの外へ飛び出し、雪の中を這いずりながらビームの射線上から出ようとする。
そんなシルヴィアの墜落したMig-21の元へ、ようやくグフを掘り起こし、搭乗することに成功したシュンが機体の姿勢を低くしながら近付く。
そのグフの背中には、戦術機にシュンが乗っていた時と同じ大き過ぎる鉄塊のような大剣が無理に装着されていた。どうやら大剣でサイコガンダムMk-Ⅱと戦うようだ。
「ゴリラか…!」
巨大な大剣を背負ったグフを見たテオドールは、即座にそれに乗っているのがシュンだと分かった。
墜落したシルヴィア機に近付いたグフは、右手に抱えていた爆弾を拾い上げ、バーザム部隊を圧倒しているサイコガンダムMk-Ⅱの方へと投げ付けた。
投げた爆弾は巨体を支える二本の内の右脚に命中し、撃破とはいかなくともサイコガンダムMk-Ⅱはバランス句を崩して尻餅を付く。
『おい、聞こえるか坊主? お前の妹を懲らしめに行くぞ』
爆弾でサイコガンダムMk-Ⅱのバランスを崩して倒れ込み、起き上がろうとしている間に、そのグフに乗るシュンから無線連絡が入った。
ようやく自分のMSであるグフ・カスタムに乗り込むことに成功したシュンは、爆弾を投げ付けてサイコガンダムMk-Ⅱを転ばせた後、テオドールに無線連絡を行ってから機体の背中の大剣を引き抜き、起き上がろうとする巨大なガンダムにスラスターを吹かせて一機に接近した。
『私に近付くな!!』
立ち上がる前に接近したが、リフレクタービットは健在であり、直ぐにビームが飛んでくる。
これをレーザーヤークトで培った操縦技量で躱しつつ、地面を蹴って飛び上がってから大剣の剣先を敵巨大MSの腹部のメガ粒子砲の発射口に突き刺す。
流石に伸ばされた左手で掴まれ、剣先は動力源にまで届かなかったが、腹部のビーム砲の発射を無力化に成功した。
『こっちだ! リィズ!!』
『お兄ちゃん!』
掴まれ脱出不可能なので、このまま握り潰されるかと思ったが、テオドール機が滑走砲を左手の有線を撃ち込んでくれたおかげで脱出に成功する。
この隙にシュンは敵機より離れてから自機を掴んでいた左手を力任せて振り払い、それから落ちているバズーカを左手で拾い上げ、テオドール機と共にサイコガンダムMk-Ⅱに向けて集中砲火を浴びせる。
大分ダメージを与えたはずだが、サイコガンダムMk-Ⅱには大した損傷は与えられていないらしく、直ぐにリフレクタービットによる倍返しが始める。
『うわっ!?』
「うぉ!?」
腹部のビーム砲は無力化したはずだが、リフレクタービットは一基も落せていないので、地面以外からの砲口からビームが飛んでくる。
これをレーザーヤークトで研ぎ澄まされた反射神経で回避する二人だが、この隙を付いてリィズは巨大なガンダムを二機の至近距離まで背面のスラスターで接近し、テオドールのMiG-21を巨大な盾で吹き飛ばしてから、大剣で斬り掛かろうとするシュンのグフを、素早く起動させた右手のビームソードで大剣をパワーの差で弾き、体勢を立て直そうとするグフを右足で地面に踏み付けて動きを封じ、踏み潰そうとする。
「クソッ、やべぇ!!」
警報が鳴り響き、巨大なMSに機体を踏み潰される中、シュンは何とか脱出しようとグフの両手を動かすが、サイコガンダムMk-Ⅱの前ではムシケラ同然であり、踏み潰されるのは時間の問題だ。
更にリィズはシュンに並々ならぬ憎しみがあったのか、徐々に機体の踏み付ける力を強くする。それと同時に抑えていた両腕は潰れ、機体同士が接触している所為か、リィズの声が無線機から聞こえて来る。
『お前が居なければこんな事にはならなかったんだ…! お前の所為なんだよ? お前が来なければこんな事にはならなかったし、シュヴァルツェ・マルケンのみんながシュタージに逆らおうなんて思わなかったんだよ? これも全部お前が来て、みんなに余計なことを吹き込んだ所為なんだよ? ねぇ、分かるよね?』
「とんだ言い掛かりだな…! 俺が来なくたって、大尉はクーデターを起こしてただろうさ! お前の兄貴もなぁ!」
徐々に踏み潰されていくコックピットの中で、聞こえて来るリィズの一方的な言い掛かりに対し、シュンはそれに反論しながら奥の手であるバリアジャケットを起動させるためのメダルを取り出し、腰に現れたベルトの挿入口へと入れ込もうとする。
『黙れ…! お兄ちゃんもシュタージに捕まったから分かってるんだ…お前が居たから…! 潰れろぉぉぉ!!』
「グァァァ!!」
この反論に逆上したのか、リィズは踏み付ける力を強めた。性能も圧倒的で巨大なMSに踏み付けられたグフの装甲は持たず、コックピットが潰れ始める。
シュンは迫り来るモニターに押し潰されそうになり悲鳴を上げるが、何とかメダルを入れ込むことに成功し、バリアジャケットを身に纏う事に成功する。
『止めろリィズ!!』
『邪魔しないでよお兄ちゃん! そいつを潰せない!!』
それと同時にテオドールが復帰し、リィズのサイコガンダムMk-Ⅱに滑走砲と突撃砲の連射を浴びせる。
テオドールの援護のおかげでグフを踏み付けていた足が離れたことにより、脱出ができるようになった。
直ぐに待機状態の
外へ飛び出した後、突撃砲を撃ち続けるテオドール機に向かうサイコガンダムMk-Ⅱを見て加勢したが、逆にリフレクタービットのオールレンジ攻撃で返り討ちにされ、雪原の上に叩き付けられる。
この状態での接近は不可能と判断し、シュンは起き上がってテオドールを援護できそうな物を探す。
「おっ、あいつを使うか」
シュンは戦術機用の罠として鉄塔に括りつけた
物の数分後で鉄塔まで着けば、半分を一瞬で切り落し、盾を括りつけてある部分を大剣の平たい部分で思いっ切り叩いてサイコガンダムMk-Ⅱの方へ飛ばす。
勢いよく飛んで行った盾は、MiG-21に気を取られているサイコガンダムMk-Ⅱの背中にぶつかり、その衝撃で爆発反応装甲は爆発する。背中に強力な爆発を受けたサイコガンダムMk-Ⅱは右手を付いて倒れる。
『リィズ、すまない…!』
『お兄ちゃん…?』
倒れたサイコガンダムMk-Ⅱに対し、テオドールはチャンスを逃さないために躊躇いを捨て、リィズが乗る巨大なガンダムの頭部に向けて跳躍ユニットを吹かし、爆発反応装甲の盾を向けながら突撃した。
機体を立ち上がらせたリィズが反応するよりも早く突っ込んだおかげで、爆発反応装甲の盾を頭部に打ち込むことが出来た。流石の重装甲でも長期戦の攻撃を受け、更に至近距離の爆発には耐えられず、凶悪な人相を持つ顔面は吹き飛ぶ。
テオドールのMiG-21も無茶な突撃をしたために左腕は吹き飛び、機体は地面へ叩き付けられた。
サイコガンダムMk-Ⅱの頭部はコックピットの部分であったため、そこに居るリィズは恐らく無事では済まないだろう。爆発の衝撃でサイコガンダムMk-Ⅱはその巨体を仰向けにして倒れ込む。
自分が斬りおとした鉄塔の近くに居たシュンは、頭部が潰れたサイコガンダムMk-Ⅱの近くに向かい、地に足を降ろした。
損傷を受けた機体から降りたテオドールも、自分の義妹が乗っていた巨大なガンダムの元へ向かう。
「行くのか?」
バリアジャケットを解いたシュンは、マカロフ自動拳銃を片手に頭部のコックピットまで登ろうとするテオドールに、リィズを殺すかどうかを問う。
「あぁ、リィズはもう敵だ。あいつが苦しんでいるなら…兄として俺が楽にしなきゃいけない…俺の手で…!」
「…お前の妹だもんな。好きにしな」
テオドールの決意を聞ければ、シュンは懐よりスキットルを取り出して中に入ってあるウォッカを口にした。
潰れた頭部のコックピットの部分まで辿り着いたテオドールは拳銃の安全装置を外し、開いた口の部分を覗いた。
「あ…お兄ちゃん…迎えに来てくれたんだね…」
そこには、飛び散った破片が全身に突き刺さり、目に鼻や口から血が流れ出ているリィズの姿があった。完全に致命傷であり、今から治療を行ってもリィズは助からないだろう。
そんな瀕死のリィズの姿を見たテオドールは悲壮感に襲われ、思わず涙を流し始め、拳銃を持つ右手を震わせる。
そんなテオドールに対し、リィズは吐血しつつも死に間際に義兄である彼にアイリスディーナが捕らえられている正確な場所を、まだ動く口で必死に伝える。
「アイ…リス…あの女は、ベルリンの…カウルスドベフ収容所に囚われてる…」
「アイリス…大尉はそこに囚われているのか…! 分かった…!」
アイリスディーナが囚われている場所が分かった所で、テオドールは必死にその場所を記憶した。
最期にリィズは、息を引き取る前に兄に対して自分の言いたいことを告げる。
「お兄ちゃん…今の私…思い出さないで…昔の私…あの頃の私は…お父さんと、お母さんと一緒に…死んだの…だから…もう…」
その言葉を最期に、リィズは出血多量並び、サイコガンダムMk-Ⅱの操縦に対する過度な精神負担により息を引き取った。
安全装置を掛けた拳銃をホルスターに仕舞い、息を引き取って動かなくなったリィズの骸を抱えたテオドールは、天に向かって泣き叫んだ。
それを見ていたシュンは、操縦系統やパイロットを失って機能を停止したサイコガンダムMk-Ⅱの残骸に集結するワルキューレの歩兵部隊を無言で止めつつ、両膝をついて泣き叫ぶテオドールの姿をただ眺めていた。
イオク「あぁ、赤ちゃん!! 私はこんな所でぇ!」
後、二話で柴犬編は終わりです。二年くらいにに見たアニメ版を参考にやりましたが、ラストはちょっと変えてやろうかと思ってる。
例えばアイリスディーナことアイちゃんが狂王ゆかりんことベアトリックスと一騎打ちとかね。
この時に乗せるのは、戦術機のF-15かガンダムMk-Ⅱに乗せようかと思う。バルキリーのVF-19でも良いな。