復讐異世界旅行記   作:ダス・ライヒ

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新章、オリジナル編に突入です。

ここでヒロインが登場しまする。


マリエ救出編
世話になった女


 スターリングラードより脱出して近くの廃屋でウォッカを嗜むシュンの元へ、この物語の語り部を自称するナハターが両手を腰に着けながらやって来た。

 

「お前か。なんだ、的になりにきたのか?」

 

「おいおい、そいつは勘弁だ。的になりに来たのでは無く、あの敗残兵たちをこの地獄のような都市から脱出させ、更に味方の戦線へ続く地図を渡した理由が知りたいからさ。それともう一つある。それは後で話そう」

 

「あれか。銃口を突き付けられてたからな、こんな所で死ぬわけには行かねぇから、従ったまでだ」

 

 シュンはウォッカを飲みつつ冗談を交合わせて問えば、ナハターは先ほどの行動を取った理由を知りたいから聞きに来たと答える。

 あれは脅されての行動だが、シュンはいつでも彼らを皆殺しにして一人だけ脱出することが出来た。しかし、飢えで苦しんで死ぬか、収容所で強制労働に耐えられずに死んでいく彼らを哀れんでの行動だ。

 

「ははは、そう照れるな。お前なら直ぐに皆殺しに出来ただろうが、彼らを哀れむ気持ちで救ったんだろ? 俺なら敵に通報していただろう。ただし、女子供を含んでいれば、手を差し伸べてやるがね」

 

 外見に似つかわしくない慈悲深いシュンの一面を見抜いたナハターは、それが哀れみによる行動だと当てた。

 

「まっ、飢えで死ぬ奴は散々見て来たからな。せめて戦って死なせてやるか、故郷で死なせたいと思った」

 

「ほぅ、粗暴な性格にしては、大した慈悲深さだ。それとも、軍人としての敬意かな?」

 

「それもある。あいつ等ドイツ人は軍人で、死ぬなら名誉の戦死を求めてるはずだ。俺はそうさせてやったまでだ」

 

「酔ってるのか? 本当に見た目とは思えん行動だ」

 

 ナハターの言う通り、シュンは彼らを哀れんだ気持ちで助けたのだ。

 自分を煽てるナハターに、シュンは助けた二つ目の理由を、ウォッカを渡しながら軍人として敬意を表しての物だと答える。

 そんな中、ナハターはウォッカを口にしつつ、もう一つの理由を伝える。

 

「少し水を差すような事だが、俺の知り合いからの情報で、お前のセフレか? いや、お前に惚れ込んでいる女だったかな? 名前はえっと…」

 

「マリエか? まさか生きているのか?」

 

「あぁ、悪名高き資産家、プライスラー一族の三女、いや、妃の子のマリエ・プライスラーだ。男女と異種族を合わせて千人と言う経験人数を持つギネス級の女性で、イブ人の血を継いで心身ともに大変美しい女性だ。たしか、お前のセフレだったな。彼女は本気らしいが」

 

 ナハターはウォッカの瓶を口から離した後、シュンのセックスフレンドか、または惚れ込んでいる女の名を思い出そうとする。

 少し腹が立ったシュンだが、身に覚えがある彼は、その女性の名を口にした。

 彼女の名前はマリエ・プライスラー。上流階級の名家出身者で、シュンの理解者でセフレである女性だ。

 元の世界でネオ・ムガルの襲撃で死んだと思っていたが、生きていることを知り、彼女を侮辱しているとしか思えないナハターの顔面を殴り、何所に居るのかを問う。

 

「で、何所に居るんだ? 教えろ」

 

「うぅ、さっきの慈悲深さは撤回だ! お前は見た目通りの酷い奴だ!」

 

 殴られたナハターは、シュンの慈悲深さを撤回させ、見た目通りの酷い奴だと罵り始める。

 そんなナハターに対し、シュンは胸倉を掴んで暴力で屈服させてマリエの居場所を問い詰める。

 

「もういっぺん、殴られたいか?」

 

「お前に殴られたら、顔の形が変わりそうだ。答えてやるさ、彼女はワルキューレ陸軍に属していた。士官学校を出たから将校だった。その時に一度は彼女とセックスしていた筈だ。まぁ、お前は散々やりまくって、誰と寝たのか全く覚えてないだろうがな。二年あたりでワルキューレを除隊して、家に戻った」

 

 問い詰められたナハターは、マリエがシュンと同じく元ワルキューレの所属で、将校だった過去を明かした。

 従軍していた頃、数々の女性と関係を持って居たシュンは何も言い返せなかったが、直ぐに本題に入ってもう一度マリエの居場所を問う。

 

「そいつは言い返せないな。それに元将校だったとは…それで、あの後どうなった? おかしな話をすれば、叩き込むぞ」

 

「あぁ、そいつは勘弁してくれ。あの後、遺産相続を巡って争っていた身内は全員、ネオ・ムガルの攻撃で死亡した。マリエだけが生き残り、遺産は彼女も物だが、慈悲深い彼女は遺産を、全て戦災孤児を保護している孤児院に出資し、それから陸軍に復員した。今は大尉になって、中隊長をやっている。派遣先は時空管理局が支配下に置いている第44管理世界だ」

 

「良く知らせてくれたな。こいつを飲めば、痛みは和らぐ」

 

 マリエの居場所が分かったシュンは、そのお礼として新しいウォッカの瓶を渡した。

 それを手に取って飲んだナハターは、殴られて血が流れ出ている鼻を抑えつつ、鼻血を袖で拭う。

 完全に拭ったのを手鏡で確認してから、水晶が無い世界に居るマリエを助けに行くのかをシュンに問う。

 

「まぁ、俺にも非があった。だが、良いのか? その世界にはお前の求める水晶は無いが?」

 

「下も含めて散々世話になった女だ。俺は恩を仇で返すのは、吐き気を催す邪悪くらいと決めてるんでな」

 

 軍を辞め、孤児院の経営を始めて以降、マリエに色々と世話になって来たので、ナハターとに対して復讐の事を一旦忘れて助けに行くと答えた。

 助けると言っても、一体どんな危険に晒されているか知らないので、ナハターにその真意を問う。

 

「で、お前の顔からして、マリエはどんな危険な任務に就いているんだ?」

 

「あぁ、言うのを忘れていた。彼女は反政府勢力の掃討を命じられた。しかし、その反政府勢力の背後に居るのは、お前の復讐対象である…」

 

「ネオ・ムガルか」

 

 ナハターが言わずとも、復讐の対象を知っているシュンは、直ぐにネオ・ムガルであると分かった。マリエの派遣先の掃討対象である反政府勢力の背後に、ネオ・ムガルが居ると分かれば、シュンは即座に行動に出ようとする。

 

「ご名答。連中が居るとすれば、後は分かるな?」

 

「これ以上、俺の知り合いを殺されてたまるか。どうやって行ける?」

 

「俺が送ろう。幸い、まだ掃討作戦は行われていない。直ぐに行けるぞ」

 

「あぁ、行ってくれ。ガイドを頼んだぞ」

 

「既にガイドは頼んである。信用できないなら、殺して地図を奪え。行くぞ」

 

 そんなシュンに、ナハターは手助けし、彼を直ぐにマリエの派遣先である世界に次元転移で送り届けた。

 

 

 

 一方、マリエの派遣先である第44管理世界に、彼女が属している連隊が軍用列車で拠点に到着した。

 到着早々、彼らでは無く、彼女らは一斉に軍用列車から降り始める。大型貨車からは五十人編成の小隊単位の人数が一斉に地上へ降り、装備を整える。大型客車からは中隊長や大隊長を初めとした将校が降りて来る。

 連隊長も含め、ワルキューレの無数にある歩兵連隊と同じく全員が女性で編成されているのだ。

 彼女らの装備は、支給に混乱が見られているのか、依然として、リー・エンフィールドN04ライフルを初めとしたWWⅡのイギリス陸軍歩兵のままであった。

 それでも、ワルキューレからすれば良い方の装備である。

 男所帯の下級兵士はそれらより酷く、鹵獲品や最新式の兵器で揃えられた連邦や同盟から見れば石器時代と同様の兵器で戦わされている。

 故に、彼女らは少し恵まれているのだ。

 だが、約二千六百人余りの歩兵連隊を待っていた時空管理局が戦闘用に編成した「軍」の将校は、自分たちから見れば明らかに旧式すぎる装備で応援にやって来た彼女らに不満な様子だ。

 

「なんだこの装備は!? 演習じゃないんだぞ! 俺は、自動小銃を装備した歩兵一個連隊を要請したんだぞ! なのに化石同然の装備の連隊を送って来たのか!!」

 

 WWⅡ装備を化石以下と表する将校は激怒した。彼はせめて旧式の自動小銃を歩兵全員が装備している連隊を要請したが、やって来たのがこのずさんな装備の部隊だったので、現場の事を上層部は何も理解していない事に怒りを積もらせていた。

 そんな機嫌が悪過ぎる現場指揮官に向け、赤いベレー帽を被った連隊長は敬礼してから自分たちは前線に出て、実戦を経験している一級戦の部隊であると告げる。

 

「失礼ながら准将、我々は対連邦軍戦線にて所属師団の傘下として実戦に参加しております。作戦は成功し、私の連隊も含め、師団全体の損害は軽微な物です」

 

「黙れ! 俺はお前たちのようなピクニック気分で来た女共では無く、我が軍のような装備の部隊を要請したのだ! それに連邦軍だと? 報告書を見れば、マヌケ共が居る後方のサジタリウスを荒らしただけでは無いか! 誇張するのも大概にしろ! あの数ばかりの烏合の衆よりも民兵の方がよっぽど手強い!」

 

 マリエが属している歩兵師団は、連邦軍の支配下にある惑星サジタリウスにおける回収作戦に参加しており、他の師団と共に圧倒的な物量を誇る連邦軍を壊滅状態に追い込む戦果を挙げた。

 この報告書を読んでいた管理局の軍の現地部隊の指揮官は、自分は物量だけで押し寄せて来る連邦軍の部隊としか戦っていないのか、その戦果を誇張だと言って認めない。

 統合連邦にはワルキューレが敬意を表す機動歩兵や植民地海兵隊、UNSC、ISAなどがいるが、彼はそれらの部隊との交戦経験は無いようだ。

 

「ともかく、砲兵連隊はありがたい。民兵共は武装商人と瓦礫同然と化した街で交戦状態だからな。そこに砲弾を撃ち込めば、奴らは大混乱を起こすはずだ。そこへ突撃を仕掛け、一気に制圧する。詳しい段取りは、作戦本部で行おう。伝令、砲兵連隊の連隊長を!」

 

 別の軍用列車で砲兵連隊も来ていると分かれば、現地部隊の指揮官はこの戦闘は自分等の勝利で終わると確信する。

 その砲兵連隊も、野砲のQF25ポンド砲を始めとした物であり、これまたWWⅡのイギリス軍並の物であるが、砲兵の支援の心強さは演習で身に染みているのか、指揮官は頼りにしていた。それにロケット弾を装備した中隊も随伴していた。かなり宛てにしているようだ。

 彼は詳しい段取りは作戦本部でするとして、伝令に砲兵連隊の連隊長と幹部を集めるように指示を出し、女性の連隊長と共に作戦本部へと足を運ぶ。

 

「中隊整列! ここでいつでも出撃できるように待機!」

 

 連隊長を初めとした連隊の幹部と、傘下の大隊長らが作戦本部へと向かう中、大隊傘下の中隊長らは大隊本部として使われている敷地の野営地に各自で集まり、大隊長が帰ってくるまでいつでも出撃できるように待機していた。

 サジタリウスの戦いで功績を買われて中尉から大尉に昇進し、穴埋めの中隊長となったマリエは、敷地に集合している他の中隊と一緒に待機を命じる。

 無論、性交渉の経験人数が四桁と言う噂は、所属大隊どころか連隊規模にまで広がっており、マリエを見ている女兵士たちは口々に他の中隊長や部下の小隊長等と雑談を交わす彼女に対する噂を始める。

 

「ねぇ知っている? マリエ・プライスラーって中隊長、千人くらいとヤってるって」

 

「うぇ、病気じゃん、それ。まぁ、男が好きそうな身体つきで美人だし…」

 

「いや、セックスできれば女でも良いんだって。エルフとドワーフともしてるって」

 

「動物ともしてるって聞いたよ。やっぱ令嬢って変わってるよね」

 

「あの人の中隊の人、みんな中隊長とやっちゃってるのかな? 女性でもOKみたいだし」

 

「流石に四桁はドン引きだわ。幾ら女性でもアウトっしょ」

 

 マリエに対する噂話で花を咲かせる若い新兵らに、一人の中隊長が聞いていたのか、彼女たちが所属している中隊の長に文句を付ける。

 

「ちょっと、あんたのとこの新兵連中、マリエちゃんの文句とか言ってるんだけど。あれ止めてくれない? 後数時間かそこらで戦闘開始なんだけど」

 

「そんなの、私が止められるわけないでしょ。私の中隊はあの戦いで二個小隊も入れ替わるくらいの人数が死傷したんだから」

 

「てか、こいつ穴埋めでしょ? アリーが帰って来れば、身長差で擲弾兵中隊にでも行くんじゃないの? 180㎝もあるし。おっぱいデカ過ぎだけど」

 

 どうやら大隊全体は、昇進して大尉になって中隊長にまでなったマリエの事が気に食わない様子だ。

 他の中隊や大隊からも淫売の上官と性交渉したと噂されている部下たちからも、マリエの事は不評であり、小隊時代からの部下たちまでもが、性癖の事で上官である彼女の事を慕ってもいない。

 それに大隊の中でマリエの身長と胸も大きく、他の大隊の将兵からも色眼鏡で見られている。

 だが、マリエが属している歩兵連隊自体、練度は余り高くないので、サジタリウスにおける戦いは、一級戦装備の部隊や機動兵器部隊、空軍のバルキリー隊のおかげと言って良いほどである。

 噂話で注目の的となっているマリエは嫌悪の視線を感じつつ、副官の中尉と共に紅茶を飲んでいた。

 

「各中隊長は大隊長の元へ集合!」

 

 そんな彼女らの元へ、大隊長が帰って来たのか、副官が中隊長全員に集合するように指示を出す。

 指示通りに大隊長の元へ各中隊長は副官らと共に集合し、命令書を読み上げる大隊長の声を聴く。

 

「みんな集まったわね? 砲撃開始は一時間後の1400(いちよんまるまる)。十分間の砲撃が終わった後、私たち第325歩兵連隊は時空管理局軍事部門の第634歩兵中隊と共に街に前進。そこで残敵の掃討を行う。一個砲兵連隊の砲撃だから、街は滅茶苦茶になって瓦礫塗れになると思うわ。周囲に目を配り、お互いの死角を補助して前進するように。分かったわね?」

 

『イエッサー!』

 

「重火器中隊はいつも通りに支援射撃。それが分かれば、直ぐに装備の点検に! 以上、解散!」

 

 命令書に書かれていることを大隊長は告げて全員に命令書のコピーを渡せば、解散命令を出して自分の大隊本部まで戻った。

 中隊長らは自分達が聞いていた命令を部下たちに出し、前進の準備をさせる。

 マリエの中隊はライフル中隊と呼ばれる一般的な部隊であり、三つはライフル小隊で、支援火器小隊はヴィッカーズ水冷式重機関銃が四門に、迫撃砲三門と言う編成だ。

 命令書の事を体育座りするか、珈琲か紅茶を飲みながら聞いている部下たちに伝えれば、中隊本部の天幕に戻って自分の装備の点検を始める。

 彼女の武器は、ステン短機関銃の最終生産モデルであるMkⅤだ。ステンMkⅡのような生産性優先の物では無いので、ある程度は信用でき、命中率も気休め程度に高い。

 このモデルを持っているのは分隊長から中隊長までであり、対戦車兵の護身用はステンMkⅡとなっている。他にもイギリス連邦軍の装備が紛れ込んでいるが、ここは割愛する。

 

「中隊、出撃準備完了です!」

 

「えぇ。それじゃあ、所定の配置に移動させて」

 

「了解!」

 

 副官が天幕に入って来れば、装備の点検を終えて、全ての弾倉に弾丸を装填し終えたマリエは立ち上がり、言われた通りの配置に着くように指示を出し、短機関銃に弾倉を装填してから天幕に出た。

 その一時間後、マリエが属する歩兵連隊と管理局の軍の中隊が配置に着けば、砲兵連隊による砲撃が行われる。十数門の榴弾砲による砲撃だ。民兵側と武装商人側で戦場となっている街に向けて放たれ、両者の頭上に砲弾の雨を降らせる。

 砲兵連隊の傘下に加わっているロケット弾中隊も砲撃に加わり、街を瓦礫と屍の山にする。

 

「航空支援が無いのが残念だな」

 

 軍の将校は航空支援がない事を残念がっていたが、砲撃で十分に仲間割れをしている敵に大損害を与えていた。

 これに重砲や爆撃が加われば、さぞかし地上の部隊は暇で仕方なかったのだろうが、その手の類は全て対連邦戦線や対同盟戦線に回されている。

 人口の地震が起こる中、十分にも渡る砲撃が終わったのか、砲声と着弾音が途絶えた。

 

「砲撃、止みました」

 

「連隊前進!」

 

 砲撃が止めば、直ぐに連隊は手順通りに残敵の掃討を行うために街へと前進する。

 連隊長が通信機で前進命令を出せば、それは傘下の各大隊に伝わり、更に傘下の中隊長たちは笛を吹いて前進を開始する。

 

「前進!」

 

「総員、前進!!」

 

 連隊長と大隊長の命令に従い、各中隊は街へと歩いて前進した。

 マリエも無線機を背負っている兵士から前進命令が出たと知らされれば、笛を吹いて部下たちと共に瓦礫と化した街へと向かった。

 

 

 

「うわぁ…エグ…」

 

「みんな死んでんじゃないの?」

 

 十分以上に渡る総砲撃で瓦礫の山と化した街へと前進した連隊各将兵は、砲撃とロケット弾を受けて肉片と化した民兵や武装商人の手下たちを見て、茫然としていた。

 民間人は民兵と武装商人らの戦闘に巻き込まれた際にみんな街から逃げ出したのか、死体は無かった。

 

「し、死にたく…死にたく…ない…」

 

 まだ息のある民兵か武装商人の手下が居たが、直ぐに銃剣を背中に突き刺され息絶えた。

 どうやらワルキューレと管理局は、敵を捕虜にするつもりも、保護するつもりも無いようだ。

 それを証拠に、生きている敵兵を誰一人逃さないように殺すように指示を出す将校が居る。

 

「敵が生きていたら即座に殺しなさい! まだ抵抗を続けるかもしれないわ!」

 

 漂う悪臭に鼻を抑えながら女士官が指示を出せば、傘下の兵士たちは銃剣か銃弾でまだ息のある敵兵を殺害する。

 マリエも生きている彼らに少しばかりの慈悲があったが、ここに来るまでに民兵や武装商人の蛮行を知っていた事や、自分や部下の身を案じて、ホルスターより抜いたブローニング・ハイパワー自動拳銃を撃ち込んでとどめを刺す。

 管理局の軍の兵士らは、ワルキューレの歩兵とは違う最新式のライフルを使わず、ただまだ生き残りが居るとされる建物へと突入し、残敵の排除を行う。

 交戦とは違う一方的な自分等の発砲が聞こえる中、別の銃声が聞こえた。

 

『敵襲!』

 

「危ない!」

 

「っ!?」

 

 その銃声が聞こえた後、敵襲を知らせる声が響けば、マリエの元にも残って居る民兵等が銃を撃ちながら襲い掛かって来る。

 部下に押し倒されて飛んでくる銃弾を躱した後、マリエは直ぐにステン短機関銃の安全装置を外して襲って来る民兵等に向けて連発で発射する。

 

「退いて! 中隊は直ちに迎撃!!」

 

 数名が倒れたのを確認すれば、自分の胸に顔を埋めている部下を起こし、防空壕から有象無象に出て来る民兵等の迎撃を始めた。

 予想もつかぬ攻撃であった為か、数十名が撃ち殺されるか射殺された。他も同様で、街のあちこちから銃声が聞こえて来る。

 

「カバー!」

 

 短機関銃の弾が切れた後、直ぐに再装填を行うために傘下の兵士達に援護を要請した。

 それに応じ、軽機関銃のブレン・ガンを持つ機関銃兵が再装填の援護を行う。

 敵の民兵の装備は上のAK47突撃銃の中国製である56式自動歩槍やそれに類似する突撃銃であるが、しっかりと構えずに撃っている所為か、ボルトアクション式小銃を持つ女兵士らに一方的に撃ち殺されている。

 RPD軽機関銃を持っている者もいたが、狙撃スコープが付いたエンフィールドNo4小銃を持つ兵士らに撃ち殺される。

 流石に連邦兵との交戦経験があるだけの事はある。新兵らもそれなりの訓練と演習を受けており、真面な訓練を受けていない民兵等は単なる的同然であった。

 

「う、うわぁ!? 止めてくれ!!」

 

 余りにも仲間が死に過ぎたのか、残った民兵等が投降したが、まだ抵抗していると勘違いされて撃たれた。

 

「撃ち方止め! 撃ち方止め! なにやってんの!? 衛生兵!!」

 

 直ぐに発砲中止命令をマリエは出し、まだ息のある者を掴んで衛生兵を呼ぶ。

 頭に赤十字のマークを付けた衛生兵が指示に応じて瀕死の民兵の元へ来たが、何処かに潜む敵の狙撃兵に首を撃たれて倒れた。

 

「スナイパー!」

 

「直ぐに衛生兵を!!」

 

 倒れた衛生兵を下士官が抱える中、狙撃スポットとなる全ての場所へ向けてライフルや軽機関銃を撃ち込む。その間に二名が死亡し、衛生兵は自分の血で窒息した。

 

「衛生兵を撃つなんて…」

 

「なんて酷い奴!」

 

「熱くならないで! 無線兵、直ぐに迫撃砲の要請を!」

 

 赤十字マークを付けた衛生兵を攻撃することは、国際条約や陸戦条約に違反する行為だ。だが、民兵や武装商人らはそんなことは知りもしないだろう。

 仲間を撃たれて激昂する彼女らをマリエはなだめ、無線兵を自分の元へ呼び寄せ、受話器を取って迫撃砲に狙撃兵が居るとされる地点への火力支援を要請した。

 その間にも絶好の狙撃スポットに潜む狙撃兵らは、SVDドグラノフに類似した狙撃銃で右往左往するワルキューレの兵士たちを狙撃する。

 これにマリエは地図を見ながら座標を指示すれば、迫撃砲による火力支援が行われ、狙撃スポットに潜む狙撃兵は吹き飛ぶ。

 ほぼ全ての中隊が要請しているのか、各地で狙撃兵が潜む場所へ砲弾が撃ち込まれ、ある狙撃兵は肉片となって地面に落下して来る。

 火力支援を受けられない中隊は、PIAT(ピアット)対戦車擲弾発射器に対人用榴弾を装填し、それを狙撃兵が潜む場所へと手当たり次第に撃ち込んだ。

 

「向こうの建物まで前進!」

 

 狙撃兵をある程度排除すれば、マリエは市街地の奥地へと前進して、街から逃げようとする民兵等を見付ければ、直ぐに背中に銃弾を浴びせて始末する。

 彼らは敵に掴まればテロリストと認定されて直ぐに処刑されるので、それで逃げている。

 無論、ワルキューレの将兵らは彼らに何の同情も抱かず、ただ言われた通りに銃を撃ち込んで射殺する。

 マリエも容赦なく武器を捨ててまで逃げる民兵等の背中に銃弾を浴びせ、他の将兵らと同じく殺していく。

 遭遇した敵を全て射殺すれば、さらに前進して残敵を探す。

 直ぐに別の残敵は見付かった。民兵等に武器を売り渡し、それで始末されようとしていた武装商人らの手下たちだ。

 

「ワイルドキャットだ! ぶっ殺せ!!」

 

 手下たちは脱走した連邦兵や同盟兵、その他の野盗等で編成されており、武器商人と大差ない。

 その装備は民兵よりも優れており、連邦軍や同盟軍の正式ライフルを持つ者や、異世界の銃を持つ者、あるいはAK系統を持った者と幅広い。中には金で雇われた傭兵まで居る。

 戦闘力は民兵とは比べ物にならないくらいに高く、一瞬にして数名が倒れた。

 幾ら非正規軍とは言え、装備は天と地の差であり、ワルキューレの歩兵部隊が真正面でこの武装商人の手下と傭兵たちと撃ち合えば、当然の如く負けるのは装備が古すぎるワルキューレの方であり、顔を出した途端に何人も倒れて行く。

 遮蔽物に隠れて撃ち返すも、敵はボルトアクションのライフルではなく、連発式の銃なので、次々と死傷者は増えるばかりだ。そればかりか、機関砲とロケット弾を搭載した歩兵戦闘車と、最悪なことにロシアの輸出用兵器であるT-72戦車まで現れた。

 

「連隊本部! こちら第4ライフル中隊! 被害甚大! 撤退の許可を!!」

 

『撤退の許可は出来ません。増援を送ります。それまでに持ち堪えてください』

 

「敵に戦車や歩兵戦闘車が居るのよ!? この装備でどう戦えと言うの!?」

 

 WWⅡ装備の歩兵部隊に取って、戦後の主力戦車相手は最も危険だ。それに歩兵戦闘車と複数の歩兵も居るので、叶わないと判断したマリエは遮蔽物に隠れて撤退の許可を請うが、連隊本部は撤退の許可を出さず、増援を送るので持ち堪えろと返答した。

 これにマリエは激怒したが、各地で武装商人らが戦車のみならず、ATや自分たちしか所有してないはずのASを投入し始めた為、各地で味方が撤退を始めているのと声が、連隊本部から聞こえて来た。

 

『こちら第2大隊! 被害甚大! 撤退する!!』

 

『こちら連隊本部、全部隊に通達! 直ちに撤退を始めてください! 敵民兵部隊は殲滅しましたが、武装商人が戦闘車両や機動兵器の投入を確認! 防御砲撃を始めます! 逃げて!!』

 

「今更そんなことを…!」

 

「撤退の許可が出たわ! 演習通りに撤退行動に移って!」

 

 連隊本部の戦闘オペレーターより撤退の指示が出されれば、マリエは直ぐに撤退行動を取った。

 部隊の指揮系統を守るために、将校が先に逃げるようになっているが、マリエは自分だけ先に逃げるのを嫌がってか、自分が殿となって部下たちを先に撤退させた。

 その間にも勢いを取り戻した敵部隊が情け容赦なく攻撃を行い、逃げるワルキューレの将兵を次々と殺していく。

 

「走って! 捕まれば確実にレイプされるわ! 急いで!!」

 

 マリエは転んだ部下を立ち上がらせ、片手で短機関銃を撃ちながら後退する。

 前進しようとした手下を数名がばら撒かれた数十発の銃弾に当たり、道路の上に倒れる。

 

「あぁぁ! あぁぁぁぁ!!」

 

「誰か手を貸して!」

 

 殻の弾倉を外して近場に捨てた後、放たれた戦車砲で左足を引き裂かれて悶絶する女兵士を抱え、他の兵士に託してから再装填し、再び後退を支援する。

 こうして殿となって追って来る敵部隊に対して奮闘していたマリエだが、予定より早く防御砲撃が始まったのか、目の前の敵歩兵と敵戦闘車両が吹き飛んだ。

 幸い、逃げた中隊の頭上からは降ってこなかったが、マリエは自分が殿となっていたので、砲撃から逃げることは出来なかった。近くに砲弾が着弾し、その衝撃で彼女は脳震盪を起こし、足元がふらつき始める。

 

「中隊長! 早く!」

 

ギリギリ砲撃から避けられる範囲に居る部下が必死に叫んでいたが、鼓膜をやられたのか、マリエには聞こえず、そのまま近くにまたも砲弾が着弾して吹き飛ばされた。

 

「中隊長!」

 

「もう駄目よ! 中隊長はもう間に合わない!」

 

 砲弾が着弾した影響で土煙が上がり、マリエが見えなくなったために、中隊の面々は彼女が戦死したと判断し、その場から撤退した。

 誰も居なくなった後、吹き飛ばされたマリエは運良く廃屋に落ち、そこで気を失って横たわっていた。

 そのおかげで、マリエは敵地で生き延びることが出来た。

 

 

 

 マリエの危機を知り、彼女が居る世界へとナハターの協力で来たシュンは何かに呪われているのか、またしても危険な場所へと転移していた。

 ご想像通り、武装商人や武器商人らの手下や雇われた傭兵部隊の野営地にナハターのミスで転移したのだ。

 突然、何も無い場所から現れた大男に、手下と傭兵らが集まり、手にしている銃口を向ける。

 

「動くな!」

 

「あの野郎、さっきの仕返しをここでするか…!?」

 

 いきなり敵地へと送られたシュンは、ナハターがわざとミスをしたのは、殴った事を根に持っているからだと判断し、その世界で手に入れた衝撃波を使うためにデバイスを起動して使った。

 シュンの周りで強い衝撃波が起こり、周囲を包囲していた手下と傭兵たちは吹き飛んだ。

 それから両手をコアに添え、スターリングラードのドイツ軍の第6軍よりくすねたMG42機関銃を持ち、安全装置を外せば、立ち上がって銃を撃とうとする敵兵等に向けて掃射する。

 バリアジャケットを身に纏っているので、MG42の反動には片手で耐えられる。

 連合軍の兵士たちからヒトラーの電気ノコギリと恐れられた機関銃であるため、周りに居た脱走兵の手下と傭兵たちの四方は切断され、一瞬にして地獄絵図が作り上げられた。

 

「なんだこいつは!?」

 

 彼らが驚くのは無理ない。いきなり現れ、自分たちを殺し回っているからだ。

 四方か腹を銃弾で引き裂かれた者達の阿吽絶叫の叫びが周囲に木霊する中、シュンは更なる残虐のショーを盛り上げるため、弾切れになった機関銃を捨て、待機状態の大剣(スレイブ)を元の状態に戻し、それに利き手の右手に握り、目にも止まらぬ速さで銃を撃つ集団に近付き、纏めて惨殺する。

 僅か数秒で五人の男達の胴体が切り裂かれた。その者の数秒で次の数名、また数名と一分の内に二十人余りが惨殺死体へと変わっていく。

 

『クソッタレ! 一体何だってんだ!?』

 

 現れて早々に七十人以上を惨たらしく殺したシュンに対し、手下と傭兵らはASのサページを持ち出すが、アジア系の大男が扱う大剣はMSすら容易く切り裂く切れ味であり、人間と同様に安価なASであるサページも、同サイズのライフルを撃つ前にバラバラに切り裂かれる。

 残って居る一機がライフルを連発するが、シュンはそれらをバリアジャケット力で回避しつつ、懐に飛び込んで巨大な大剣の刃を叩き込み、乗っている操縦者ごと切り裂いて全滅させる。

 

「え、AS四機を一分も掛からずに…!?」

 

「奴は能力者だ! 俺たちが適うはずがねぇ! 逃げろぉ!!」

 

 一人で七十人ほどを殺して尚且つサページ四機を撃破したシュンに対し、武装商人の手下と傭兵たちは逃亡を始めたが、放たれた戦車砲の榴弾で吹き飛ばされる。

 乗っているのは武装商人のリーダーであり、キューボラから戦えと拡声器で告げる。

 ちなみに戦車の種類はリーダーであるからか、性能の高い主力戦車(MBT)であるT-90だ。先に登場したT-72は第二世代であり、リーダーのT-90は第三世代である。

 どっちも自走装填装置が備わっているが、砲塔を正面に向けないと出来ない。

 

『お前ら戦え! いくら払ってると思うんだ!?』

 

「T-90、第三世代か。厄介だな。RPG-29かパンツァーファウストⅢ、あったっけ?」

 

 武装商人のリーダーが乗るT-90が現れたので、その戦車の事を知っているシュンは、大剣を背中に戻し、第三世代主力戦車の正面以外を貫通できるロケット弾を持つRPG-29対戦車火器かパンツァーファウストⅢが無いかコアから探した。

 その間にも、T-90は砲弾を容赦なく放って来る。砲塔の機銃も撃ってくる。直ぐにシュンは砲撃で来たクレーターに逃げ、取り敢えず両方を出してから安全装置を外す。

 直ぐに構え、足を止めるために履帯に照準を向けて対戦車ロケット弾を撃ち込んだ。

 流石はRPG-7より優れ、現行ロシア軍の正式装備であるのか、第三世代の主力戦車の履帯を破壊した。

 

「よし、トップアタックだ!」

 

 敵戦車の足が止まった所で、シュンはRPG-29を捨ててパンツァーファウストⅢを持ち上げ、衝撃波を使って空中高く飛び上がり、車体上部に強力な対戦車型ロケット弾を撃ち込んだ。

 発射されたロケット弾はT-90の砲塔部に命中し、貫通して弾薬庫に火が届けば、敵戦車は内部爆発を起こして砲塔が吹き飛ぶ。

 砲塔が空高く舞い上がる中、シュンは地面に降り立ち、パンツァーファウストⅢを捨てた。

 

「さて、マリエは何所だ?」

 

 コアよりAKS-74突撃銃を取り出し、マリエは何所に居るのかを探す。

 

「死ねぇ!」

 

 そんな時に、この場から逃げようとする武器商人の男が、拳銃を護衛と共に撃ってくる。

 バリアジャケットを身に纏っているため、シュンには弾丸が効かず、逆に護衛を全滅させられた。

 一人残った武器商人は慌てて逃げ出そうとしたが、シュンに両足を撃たれて倒れ込み、そのまま銃口を後頭部に押し付けられ、マリエの居場所を問われる。

 

「おい、身長が181㎝もある女は何所に居る?」

 

「知るか! そんなデカい女! ひっ!?」

 

 無論、武器商人がワルキューレの一将校、それも無数にいる大尉の事など知るはずが無い。

 知らないと答えれば、シュンは耳の近くで発砲し、別の質問をする。

 

「次はワルキューレの歩兵連隊か何かだ。連隊本部は何所だ? 答えろ」

 

「ワルキューレ? そう言えば、化石みたいな装備の敵が一個連隊で来た! 流石に数が多く、全員を殺し損なったが、追い払った! 残りがここから北の街に居るからって、傭兵共が鼠狩りをしている! 俺が知っているのはその程度だ、解放してくれ!」

 

 取り敢えず、マリエが居る街の場所まで分かったシュンは、直ぐに武器商人の後頭部を撃って彼女を探しに出掛けた。

 奇襲に備え、バリアジャケットを纏ったまま北にある一気に町まで飛んで移動する。

 

「あれか…! しかし、この廃墟じゃ生きてるかどうか分からねぇな」

 

 数分足らずで街が見えたが、マリエが居る街は前の世界のスターリングラード以上に瓦礫の山と化していた。

 この中よりマリエを見付けだすのは至難の業だろう。

 必死で大戦中のイギリス軍の野戦服を着ているマリエを探す中、街で敗残兵狩りをしている傭兵や武装商人の手下たちがシュンを見付け、手にしている銃を撃ってくる。

 

『管理局の魔導士だ! ぶっ殺せ!!』

 

「ちっ、戦場漁りか!」

 

 対空機関砲まで撃ってくる廃墟の街に居る敵兵等に捕捉されたシュンは、回避行動を取りつつ、コアより四連装ロケットランチャーを取り出し、左手で敵の対空機関砲がある場所へ向けて撃ち込む。

 全弾を撃ち込んだので、うち一発が弾薬箱に命中して大爆発を起こし、隣の対空機関砲を巻き込んだ。

 

「こいつは強力過ぎる…」

 

 このまま高火力で排除できるだろうが、派手に撃ち込めばマリエを巻き込みかねないので、弾切れになったロケットランチャーを捨て、街に降下して周りに見える傭兵や連邦か同盟の脱走兵たちを撃ち殺しながら彼女を探す。

 流れ弾に当たらないようにセレクターを単発にし、確実に胸に当てて仕留める。

 AK-74に使われる5.45mm弾は殺傷性重視の小口径弾だ。心臓に当てるだけで、狙った相手に致命傷を与えられる。これにより、露軍では今でもマイナーチェンジのAK-74が現役である。

 

「何所だ? マリエ…!」

 

 周りに居る敵兵を皆殺しにしたシュンは、物の数秒で突撃銃の再装填を終えれば、自分に向かって来る敵を撃ちながら再びマリエを探した。

 だが、目印となる古い野戦服を着た女兵士たちの死体はここにはない。

 

「この辺りには古臭い軍服を着た女の死体は無い。向こうか!」

 

 死体がない事を確認すれば、直ぐにシュンはさらに北上する。

 やはりワルキューレは北上の方から攻撃を仕掛けていたのか、古臭い野戦服を着た女兵士たちの遺体がそこにあった。

 

「あった! だが、マリエじゃない!」

 

 幸いなことに、180㎝以上で大き過ぎる胸の女兵士の死体は無かった。

 それに安心しきった後、シュンは衣服を脱がせて死姦をしようとする敵兵等を射殺し、空に上昇してワルキューレの歩兵連隊が攻撃したと思われる北上一帯を探す。

 上空からリーチで手に入れたミョルニル・アーマーのヘルメットの双眼鏡機能を使い、マリエの反応を探せば、直ぐに彼女が見付かった。銃を持った傭兵らに壁際まで追い込まれている。

 

「あの胸の大きさと大柄の男ほどの身長、間違いない! マリエだ!!」

 

 マリエを見付けたシュンは、直ぐに追い込まれた彼女の元へと飛ばした。

 なりふり構わずに飛んでいたために、傭兵らに見付かり、対空砲火を浴びるが、彼女を見付けたので、大量に手に入れた収束手榴弾を爆撃機のようにばら撒いて排除する。

 そこから一気に加速し、リーダーと思われる男に向けて着地した。

 男の背中に両足を蹴り付けるように着け、衝撃のクッション代わりにすれば、男の身体は凄まじい速度で飛んできたシュンと体重の所為でバラバラに吹き飛ぶ。

 全身に返り血を浴びる中、シュンは背中の大剣を引き抜き、周りに居た傭兵らを瞬時に惨殺してマリエを見た。

 

 

 

 その三十分も前、味方の砲撃で吹き飛ばされ、気絶していたマリエは目を覚まし、直ぐに銃を取って辺りを警戒した。

 

「…良かった」

 

 周囲に敵が居ないことを確認すれば、銃口を下ろして一息つく。

 

「合流しなくちゃ」

 

 残弾を確認し、味方との合流を優先すれば、直ぐに行動に移し、周囲を警戒しながら廃墟の街の中を進む。

 辺りには砲撃で吹き飛ばされて無残な骸となった自軍と敵集団の双方の屍が転がっていたが、マリエは何度か実戦を経験して死臭には慣れていたので、急いで味方の陣地がある北へと向かう。

 

『まだ生きてる女を探せ! 戦利品だ! ただし、死にぞこないは止めとけ! 噛み付いてくるぞ!』

 

『死体でも構わねぇ! まだ綺麗なのを探せ!』

 

 その途中、まだ街に残って居る自分等のような女兵士らを探す傭兵や武装商人の手下たちの怒号が聞こえた。

 死体でも構わないらしく、砲撃を免れたワルキューレの将兵の死体を見付ければ、傭兵たちは直ぐに死体の衣服を剥いで裸にした後、ズボンを脱いで下半身を露出し、死姦を始める。

 

「っ! 本当にするの…!?」

 

 味方兵士の死体を死姦する傭兵や脱走兵を見たマリエは口を抑え、衝撃を受ける。

 何度か戦場に出たことがあるマリエであるが、そんなおぞましい光景は一度も見たことが無い。

 吐き気すら覚え、直ぐにマリエはその場から離れる。

 

「あんなの、人間のすることじゃ…」

 

 あの光景に、マリエは一種のトラウマを感じていたが、いつ自分も生きたまま犯されるか、それとも殺されて犯されるか分かった物では無いので、周囲を警戒しつつ味方の陣地まで向かう。

 ふと、生きている味方は何人いるだろうか考えたが、想像すれば、先の光景を思い出したので、頭から消して移動する。

 

『キャァァァ!!』

 

「はっ!? まだ生き残りが!」

 

 数十分以上も廃墟の中を北の方に進む中、女性の悲鳴が聞こえた。

 戦闘前のブリーフィングで、民間人は居らず、民兵か武装商人の手下と傭兵しか居ないと聞いていたので、即座に味方と判断して悲鳴が聞こえた方へと走った。

 そこへ着けば、味方の女兵士が周りの傭兵らに抑え付けられ、衣服を剥ぎ取られようとしている光景が見える。

 それを見たマリエの脳内に、あの死姦の光景が浮かび上がったが、今は味方を助けることを優先して手近に居る男を手にしている短機関銃で射殺し、続けて二人を殺す。

 

「生き残りが居たぞ!」

 

「殺すな! 手か足を、カァァ…!?」

 

 数秒足らずで三人の仲間を失っても、傭兵らはマリエ達を生きて捕らえることに固執し、その所為で指示を出した男は首に拳銃弾が当たって悶え苦しみ始める。

 走りながら数名の敵兵を撃ち殺せば、当然ながら短機関銃は弾切れしたが、マリエは直ぐに十三発も撃てるブローニング・ハイパワー自動拳銃を引き抜き、的確に人の弱点に撃ち込み、敵兵を排除していく。

 

「あの女は弾切れだ! (まわ)せ!!」

 

 何十人もやられても、女を犯すことしか考えてない敵兵等は遮蔽物に隠れ、銃の再装填を行おうとするマリエに向かっていたが、彼女は拳銃をホルスターに戻してから手榴弾を取り出し、ほんのわずかな時間で安全ピンを抜いて下半身を露出して襲い掛かる男達の方へ投げた。

 それから近くに落ちていたブレン・ガン軽機関銃を拾い上げ、味方の兵士を犯そうとしていた男達を射殺する。

 

「手榴弾!?」

 

 飛んできた手榴弾に対処できず、男達は飛んできた破片で悶え苦しみ始める。一部の者は手足が千切れ、恐ろしい痛みで絶叫していた。

 戦意を損失して逃げようとしていた傭兵の一人を射殺すれば、この場に敵は居なくなった。

 犯されそうになっていた味方の女兵士は、少し呆然としていたが、怒りが込み上げて来たのか、落ちているライフルを拾って悶え苦しむ傭兵たちを殺し始める。

 一人、また一人と頭に銃弾を撃ち込んで殺し、弾が切れれば、着いてある銃剣で何度も突き刺し始め、死んでもなお刺すことを止めない。

 

「だ、だいじょう…」

 

 マリエが何度も刺突している彼女の肩へ手を伸ばそうとすれば、彼女は右肘を胸に打ち込み、倒れ込んだ彼女へ向けて殺そうとしたが、味方であることが分かり、涙目を浮かべながら銃口を下げる。

 そんな彼女の安心させるためにマリエは抱きしめようとしたが、まだ息のある傭兵が立ち上がり、彼女の胸に銃弾を撃ち込んだ。

 撃たれた彼女が倒れれば、マリエは直ぐに彼女の腰のホルスターにあるエンフィールドNo2回転式拳銃を引き抜き、安全装置を外して撃った傭兵の頭に三発もの銃弾を浴びせて射殺する。

 三発もの弾丸を撃ち込まれた傭兵の側頭部は吹き飛び、糸が切れた人形のように倒れ込んだ。

 敵が居なくなったのを確認すれば、彼女の傷の具合を見て必死に生きるように呼びかける。

 

「大丈夫! この傷ならまだ…!」

 

 出血する銃創を抑えつつ、死ぬような傷では無いと言って勇気づけるマリエであるが、先の銃声を聞き付けてか、傭兵たちが集まって来た。

 

「俺たちなら治療できるぞ。治療費は、お前たちの身体だがな!」

 

 急いで銃を取ろうとしたマリエであるが、周りは既に傭兵や武装商人の手下たちに包囲されていた。

 距離を取るために負傷した味方を抱えながら後退するが、壁際に追い込まれ、袋の鼠となる。

 そんなマリエに対し、リーダーらしき男は部下たちを前に出しつつ、投降勧告を出す。

 

「貴官は大尉だな? その女兵士は部下かな? 我々の条件を呑めば、彼女を助けてやらんでもないぞぉ」

 

「へへへ、堪らねぇ! すげぇおっぱいだ! 早くムシャブリつきてぇ!」

 

 ゲスな笑みを浮かべつつ近付いてくる敵兵等に、マリエは投降して彼らの慰み者となる覚悟を決めたが、自分に取って思いも知らぬ者が助けに来てくれること予期していなかった。

 その人物は上空から現れ、自分に投降勧告を行ったリーダーらしき男を着地のクッション代わりにして原形をとどめない程の肉塊に変え、更に周りに居た敵兵等を素早く抜いた大剣でバラバラに惨殺した。

 返り血が自分のいる方にも飛び散る中、大剣を持った大男の姿を見て、身をボ絵のあるマリエは名を呟く。

 

「シュン…君…?」

 

 マリエが名前を言えば、大剣を持った男は直ぐに残りの敵兵等を惨殺するために近場の男に斬り掛かった。




何度も言うが、マリマリはヒロインじゃないからな(真顔)。
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