IS The harlequinade/leading role 作:サヴァヴァヴァ
はあ…
前回:まあシャルロットだと思ってたよ
side二階堂勇気
あの後髪の毛の染め直しとカラコンを入れ直すのを忘れて部屋に戻るという手間が発生してしまった。
まあ誰にもあの姿を見られていないからいいか。
下手に謎の金髪のIS学園の制服を着た男子が廊下を我が物顔で歩いていましたなんて話が出たら怪談不可避だからなあ。
そしていろいろ戻した後俺とシャルロットは今度こそ食堂に向かって夕食を取った。
夕食を食べているときにシャルロットに周りに集まり俺に失せろオーラを出す女子どもと申し訳なさそうな表情をするシャルロットが印象に残る夕食だった。
部屋に戻った後は俺はすぐ寝てその日は終わった。
そして現在土曜日の朝六時、俺はシャルロットを起こさないようにジャージに着替えて部屋を出た。
日課のランニングやら何やらをするためだ。
最近では音を出さずに着替えるのにも慣れたもんでパパパッと着替えを終わらせられる様になってきた。
そしてグラウンドに着くと俺はさっそく走り始めた。
今日は土曜日だが結構走っている生徒もいた。
すると俺と並走してくる人物がいた。
案の定ラウラ・ボーデヴィッヒだった。
「まったくお前も変わりもんだな。俺なんかに何回も会いに来るなんて」
俺は織斑なんかと違ってこいつに因縁吹っ掛けられる覚えは一切ないと思うが。
「少し貴様と話したいことがある。ここで止まれ」
無視してもいいが俺は止まってやった。
「で、話したいことは?」
「なに、簡単なことだ」
奴は俺の目を真っ直ぐに見据え、口を開いた。
「これは警告だ、二階堂勇気。教官に二度と近づくな」
「は?」
こいつ何言ってんだ?
「そいつは無理だろ。あいつは俺の先生。で、俺はあいつの生徒。二度と近づかないなんてできんに決まっているだろ」
仮にやるとしても…いや、わからん。
二年になって整備課になっても奴と顔合わせする機会はある可能性が大だ。
「そもそもなんでその警告とやらを俺にするんだ?織斑辺りにでもすればいいだろ」
「あの男に関しては何とかしてみせよう。だが…貴様は別だ」
「そこまで警戒されることなんて何もしてないけどなー」
「貴様は本当に二階堂勇気か?」
「………質問の意味が分からん」
何やらすさまじく面倒な予感がしてきやがったぞ…
「貴様の戸籍は貴様が発見される二日前に作られていた」
「…ちょっと待てそれどういうことだ」
「そんなことはこっちが聞きたい。そしてその得体の知れない男が教官に対して敵意を抱いている」
「………貴様を叩きのめす理由はそれだけで十分だ」
瞬間、ボーデヴィッヒはこちらへと走り始めた。
大体3m弱あった距離が一瞬にして詰められる。
俺は反応が遅れ、気が付いた時には奴の手が俺の顔面の前まで迫っていた。
ここで俺は何とか顔を逸らすのと同時に左腕で奴の腕を払おうとした。
俺の狙いは半分成功、半分失敗した。
成功したことは奴の攻撃から俺の顔面を守ることに成功したことだ。
ほんの少しだけ見えたが奴の手は世に言う掌底のような構えをしていたような気がした。
そして失敗したことは…この左腕を奴に捕まれたことだ。
「ふっ!」
奴の蹴りが俺の腹に突き刺さる。
「ぐぅっ!」
腹筋が悲しいぐらい付いていない俺にはその蹴りのダメージがもろに来た。
「はぁっ!」
掴まれたままの左腕が強制的に伸ばされる。
そして小柄なボーデヴィッヒに俺は見事な背負い投げを決められた。
俺は受け身をとることができず、地面に叩きつけられた。
どこかの骨が折れているか確認する間もなくボーデヴィッヒは俺を立ったまままたぎ、俺の頭がある場所にナイフを突き立てようとした。
俺はそれを腕をクロスしてガードした。
奴のナイフは俺の左目を刺さんと徐々に力を込め始めている。
「離れろ!」
俺は両足で奴の腹に蹴りを入れた。
ボーデヴィッヒは俺から離れたがあまり手応え…いや、足応えはなかった。
おそらく奴は俺の蹴りに合わせて体を動かしダメージを最小限に抑えたのだろう。
まずいな…こいつ普通に強い…
とにかくなんとか時間稼ぎしてこいつをどうするか考えなければいかんな…
「はあ…はあ…」
このわずかなやり取りだけで俺は息が上がり始めている。
「ふん…この程度か」
対するボーデヴィッヒは一切息を切らすこともなく俺から目を一切放さない。
「戸籍の件に関しちゃ…」
「なんだ?」
食いついたか…。
「戸籍の件に関しちゃ俺は何にも知らん…虹咲の奴にでも聞け…俺のことに関しちゃ全決定権があいつに委ねられているはずだ」
「虹咲
ボーデヴィッヒは何かを考え始めている。
俺はこの瞬間足元にあった砂を掴み奴に投げつけた。
「ちぃっ!」
おそらくボーデヴィッヒは目を瞑り砂から目を守っているだろう。
攻撃したところでかわされるのがオチだ。
だからこそここで全速力で逃げる!
「逃げるんだよぉぉぉぉー!」
俺は走った。
それこそ究極生命体から逃げるかのように逃げた。
「逃がすか!」
しかし僅か数秒でボーデヴィッヒは俺を追いかけはじめぐんぐん距離を詰め始めた。
逃げられんなこれ…
逃げられないなら…
奴を倒す!
俺は走りながら反転し、奴の方へと走り始めた。
俺はすぐ後ろにいたボーデヴィッヒに右手で殴り掛かった。
「馬鹿が!」
ボーデヴィッヒは俺の右腕に向けてナイフを突きだそうとした。
このままなら憐れにも俺の拳に奴のナイフが深々と突き刺さってしまうだろう。
普通ならな…
俺の右腕は義手だ。
表面は普通に見えてもその中にあるのは鉄と電子回路と筋肉の代わりのものしかない。
例え突き刺さってもノーダメージだ。
加えて奴は俺の義手のことなんて知らんだろう。
突き刺さると思ったナイフが弾かれるか、それとも突き刺さっても一切動じない俺に奴はたじろぐだろう。
そしてナイフを捌いた後に左腕で奴の顔面を全力でぶん殴る。
奴の勢い×俺の勢い=それなりのダメージ
これだな…
そしてぶん殴った後は足払いなりなんなりして奴を地面に引きずり倒しフルボッコにする。
うん!表面上は問題なさげに見えるな!
「二人ともやめろ」
しかしそれは予想外の人物の手によって失敗した。
「田中先生…」
田中先生こと田中京子だ。
田中先生は俺の右腕とラウラの腕を掴んでいる。
右腕は動かそうにもピクリとも動かせない。
「貴様は…」
「ボーデヴィッヒ、お前は何をしようとしていたのかわかっているのか?」
「ふん…」
田中先生は俺の腕を放すとラウラが持っていたナイフをひったくった。
「刃は潰されているか…」
田中先生はラウラの持っていたナイフをじろじろと見ている。
「ボーデヴィッヒ、次同じことをしたら職員会議でお前をドイツに送り返すよう学園長に提案するからな」
「ふん…」
このふんふんbotはもう少しまともな返事をできないのか?
「二階堂勇気、覚えておけ。もし私が言ったことを実行しないなら…今度こそ叩きのめす」
そう言い捨てて奴はどこかへと去って行った。
「大丈夫か二階堂。怪我とかはしてないか?」
「えぇ…大丈夫ですよ」
どこか腕や足が痛いなんてこともなく痛みも治まった。
「しかしボーデヴィッヒは何を考えてあんなことをしたのだろうか…」
田中先生はボーデヴィッヒの去った方向を見ながら言う。
「ナイフの刃は潰されていたからお前を殺そうとしてはいなかったとは思いたいが…」
「いや、それは違うと思います」
「違う…まさかボーデヴィッヒは本気でお前を殺そうとしたというのか?」
「半分痛めつけていうことを聞かせようとして、もう半分はうまく殺せりゃラッキー的な感じかな?」
おそらくあいつはあいつが考える「織斑千冬にとって邪魔な存在」をどんな手段を使ってでも排除するつもりだろう。
それが織斑でも、俺でも、たとえ自分自身になったとしても「それが教官のためなら」と喜んで消えるのが簡単に想像できる。
「ありゃ軍人というよりか信者って方があってる気がすんなー…」
そう、この世界にごまんといる織斑千冬の信者の一人。
「とにかく、次ボーデヴィッヒが何かやってきたら言え。わかったな?」
「まあ会うことがあったら言いますよ」
「あのなあ…そんな考えじゃあいつをどうこうできるとは私は到底思えないが…」
「俺がやらなくても織斑か海堂のどっちか、あるいはその両方がなんとかすると思いますよ」
「何故そうだと言える?あの二人だってボーデヴィッヒへの対応を織斑先生にまかせるかもしれないぞ?」
「海堂はわからんが織斑に関しては絶っ対!首を突っ込むのが予想できる。あいつは結構…いや、かなりのお人よしだってことがわかってるからなー…」
こんな俺みたいな面倒な奴に諦めずに話しかけたりする時点でお察しだ。
だからこそあいつはボーデヴィッヒの問題を解決するまで首を突っ込み続けるだろう。
海堂は…わからん。
あいつは得体が知れん。
「とりあえず今日は戻って身支度をしてきます」
「わかった。授業に遅れるなよ。織斑先生は時間に厳しいからな」
俺はジャージと髪の毛に付いていた砂を払って歩きだした。
「いちち…足ぐねったかな…」
部屋に戻った後ジャージは洗面台にある洗濯機の中に突っ込んだ。
背中やらなにやらに砂が付いて目立ってしまう。
その後ちゃちゃっとシャワーを浴びて制服に着替えた。
シャルロットも起こし準備は完了。
シャルロットは洗面台でコルセットを付けてくるから遅れるとのことで、俺は一足先に食堂へと向かい朝食をとることにした。
食堂には当たり前だがボーデヴィッヒもいたが今回は俺がいる席とは別の席に座っていてこっちに一切視線を向けてくることはなかった。
「今後もこんな感じならいいんだがね…」
俺はぼそりとそう呟いた。
多分俺がなんとかしようとしてもあっちから来るんだろうなー…
そして授業、土曜の授業は早めに終わっていいもんだ。
しかしまた面倒なことが起こってもいる。
一時間目が終わった後ダッシュでトイレに行き、そして戻って次の授業のノートと教科書を出して開けばそこにはあら不思議、誰かが書いた嫌がらせの文字が!
「デュノア君の部屋から出て行け」「男なんてゴミ屑は早く絶滅しろ」その他多種多様な悪意に富んだ言葉が所狭しと書かれている。
というか後ろを見たら俺の名前が書いてないな。
これ別のやつを俺の教科書とすり替えたという訳か。
詰めが甘いな、まったく。
俺はスマートフォンを取りだした。
最近ではアプリを自分で作れる環境なんて珍しいものでもない。
だから中学生の時俺はいろいろ勉強してあるアプリを作った。
名前は付けてないが出来ることはただ一つ、発信機を付けたものの後を追うことができるのだ。
これではただのGPSと変わらないと思われるかもしれんがこれはAR、つまり拡張現実を使った追跡が可能なのだ。
発信機を付けたものの移動ルートを表示させて追跡することが可能だ。
という訳でさっそく追跡、歩きスマホはマナーが悪いけどこれ見ながら歩かないと駄目なのよね。
そしてたどり着いたのは男子禁制、中がどうなってるなんてインターネットかなんかで調べるか覗くことでしかわからない領域、女子トイレだ。
「さてどうしたもんか」
俺が悩んでいると突然ドアが開いた。
しかし誰も出てこない。
「風で開いたのか……?」
俺がそう考えていると足を何かが触った。
「……リス?」
俺の足を触っていたのはリスだった。
リスの種類なんてわからないが多分こいつはリスだと思う。
「お前どっから入ってきた?」
というかここに野生動物なんているのか?
リスは女子トイレの中にまた入っていった。
「あいつメスならいいけどオスならとんだスケベなリスだな」
俺がそう言っているとリスは何かを噛みながらこっちにずりずりと運んできた。
「あっ!それは!」
リスが運んできたのは俺の教科書とノートだった。
そしてリスは俺の横を通ってどこかへ行こうとした。
「ちょっと待った!」
しかし俺はリスの前へと行きこいつを止めようとした。
「そいつは俺のものだ。わかるか?俺のものなんだ!」
しかしリスは俺の言葉を聞かずにそのまま俺の横を通り過ぎようとした。
「やっぱリスは信用できん!糸のみならず俺のノートと教科書まで盗むきか!」
こうなりゃ実力行使!
そもそも引きずっている時点でこいつから簡単に奪い返せる!
そう考え俺は奴から教科書とノートを奪い取った。
「よーしそれじゃあ教室に戻るか」
そして意気揚々と教室に戻ろうとした。
するとリスは俺の足を伝って俺の体を上ってきた。
「なんだ?これは返せんぞ?」
俺がリスをどうしようかと考えた時にこのリスは俺の左腕に噛みつきやがった。
「いって―!」
そして奴は俺の体を縦横無尽に動き回り何か所か噛みついてどこかへと逃げやがった。
「あんの糞リス!今度会ったらトイレにぶち込んで流してやる!」
俺がどこを噛まれたかチェックするととんでもないことが発覚した。
「嘘だろオイ…」
俺の右手にリスの噛んだ跡がある。
その後をよく見るとなんとある程度の深さまでリスの歯が貫通していたことが分かったのだ。
つまりあのリスは鉄を貫通するだけの物を噛む力と歯の硬さを持っていたのだ。
「……どこのB級モンスターパニックものだよ…」
とりあえず今度山田先生か更識姉にでもあのリスのことを話しておくか…
そして時間がやばいことに気づき俺はダッシュで教室に戻った。
教室に到着した時残り時間は三十秒、俺は遅刻をせずに済んだ。
だが織斑千冬に小言をもらったがな…
そして授業が終わり、昼飯の時間になった。
俺は早めに食堂に向かった。
何故早く向かったかというと、今日は更識の機体が一応完成する日なのだ。
という訳で早く食べて早く行くために早く食堂に来たのだ。
今回は早く並べて早く順番が来た。
頼むのはラーメン、ちゃちゃっと食べられる。
そしてラーメンが来て俺は適当な席に座った。
俺が座った途端周りの女子生徒が離れるのはもうデフォだ。
「いただきます」
俺がラーメンをすすろうとした時に目の前に誰かが座った。
俺はそいつを見てすさまじく後悔した。
もう誰か言わなくても分かるレベルだろう。
俺の眉間にしわが寄り始める。
「おいおい。昨日の今日どころか今朝の今だってのによくその面俺に見せられたな?」
俺はこいつが何を考えて俺の前に座ったかわからんからそれを確かめるためにこいつに声をかけた。
「朝言ったことは貴様の頭でも覚えているだろう?」
ボーデヴィッヒは俺を挑発するような言い方でそう言った。
「はぁ…覚えているが出来ないしやるつもりもさらさらない」
こいつは何も考えてないんじゃないか?
朝に田中先生に言われたことを忘れているだろ絶対に。
「貴様…良い度胸をしているな?」
「お前みたいな無茶を言うあほよりかは度胸はあるつもりだ」
こいつとまともに取り合っていたら疲れるだけだ。
「たとえ私があほだろうと貴様のような馬鹿よりかはましな思考回路は持っているがな」
「ああそうかい軍人ロリ厨二眼帯、お前いくつ属性持てば気が済むんだよ?」
「貴様が何を言ってるいるか理解できんが馬鹿にしていることだけはわかるぞ?」
早くこいつどっか行かねーかなー。
「ちっ…何を言っても取り合うつもりはないようだな…」
おお、どうやらこういったことなら理解できるようだ。
「ようやくわかったか。じゃあさっさと飯食ってどこか別の場所に行け」
これで終わるなら楽でいいんだが…
「………朝に言ったことは覚えているだろうな」
「あ…?」
「もし私の言ったことを実行しないなら叩きのめす…とな」
しかしそうは問屋が卸さなかった。
ボーデヴィッヒは俺に対して殺気をぶち当ててきやがる。
このあほ好戦的すぎない?
もうちょっと平和に事を進めるということを知らんのかこいつ?
「……やるか?」
俺は立ち上がって一応CQCの構えを取った。
さすがにマジでやるつもりはないよな?な?
「いいだろう。叩きのめしてやる」
駄目だこいつ…早く何とかしないと…
俺は周りをちらりと見た。
あいつがこっちに跳びかかってきたら目の前にある箸を掴んで奴に刺す以外迎撃する方法マジでないぞ?
正直こいつには正攻法じゃ勝ち目ゼロだぜ?
とにかくこいつを何とかする方法を考えなければ…
「二人ともどうかしたの~?」
いつの間にか俺達のすぐそばに布仏が立っていた。
「喧嘩は駄目だよ~?」
布仏はいつもの調子で俺達に話しかけてくる。
「いえ~い平和平和~♪」
辺りにほんわかオーラが漂い始める。
「「………はあ…」」
なんというか…助かったには助かったがなんだろう…このもやもや…
「興が削がれた、今回は何もしないでおいてやる」
「ああそうかい」
俺達は席に座って食事を取り始めた。
それからはあいつのことを見ないようにラーメンを食べてすぐ食堂から出て行った。
そして俺は今アリーナにいる。
目の前には出来立ての機体、打鉄弐式がある。
ここに来たのは最終チェックを行うためだ。
いつも使っているアリーナにはどうせ織斑達がいるだろうからわざわざ別のアリーナまでテストをしに来たのだ。
あいつらの傍にいたらどんな問題が起きてしまうかわからん。
だからこっちのアリーナで俺達はこそこそテストをするのさ。
「それじゃあ起動してみて」
打鉄弐式製作チームのリーダー格である女子が更識に声をかける。
更識はISスーツを着て打鉄弐式の前に立っている。
更識は胸に手を当て深呼吸をしている。
そして打鉄弐式に触れた。
更識と打鉄弐式を光が包む。
皆が固唾を飲んで見ている。
これでただ光っただけでしたじゃ全部バラしてどこが駄目だったか調べなければいかん。
頼むからうまくいってくれよ…
光が収まるとそこには打鉄弐式を纏った更識が立っていた。
「まず最初の課題はクリアね。それじゃあ次は飛んでみて」
「はい」
更識は飛びアリーナの端まで飛んだ。
「それじゃあスピードを計ってみましょう」
リーダー格の女子が別の女子に指示を出した。
指示を受けた女子はパソコンをいじり、スピードを計る準備をした。
この打鉄弐式は打鉄から防御力を少々…いや、結構なくした代わりに機動力を上げた代物だ。
更識が倉敷技研から聞いていたカタログスペックにどれだけ近づけるか…
「それじゃあ端っこまで飛んでみてね………位置に着いてー……よーい…どん!」
合図とともに更識は全速力で飛び出す。
速度は打鉄なんかより早く、ぐんぐん速度が上がる。
そしてこれからもっと速度が出せそうなときにアリーナの端にたどり着いてしまった。
「うーん…もうちょっと距離があればよかったんだけどねぇ…こればっかりはしょうがないかなあ」
「今度の臨海学校…」
俺達のところまで戻ってきた更識がぼそりと呟く。
「臨海学校…?……そうか臨海学校だ!」
「臨海学校?」
そんなイベントあったようななかったような…
「臨海学校はIS学園の外で色々データ取ったり新しい装備やらなにやらの試験をしたり…まあそれなりの広さの学園から広い海でいろいろやろうぜって感じのイベントよ」
「そこならちゃんとスピードを計れると思う…」
「それじゃあスピードテストはいったん終わり!次は装備のテストね」
リーダー格の女子はどこかへと行ってしまった。
五分ほど経った後にリーダー格の女子が戻ってきた。
「準備完了!そろそろ出てくると思うよ」
そう言うとアリーナのAピットからなにやらISのようなものが出てきた。
見た目は打鉄やらラファール・リヴァイブやらテンペスタやらの装甲をめちゃくちゃに張り付けた、まるでフランケンシュタインのような感じだ。
それがのっしのっしとアリーナの中央まで歩いている。
「ふっふっふっ…あれはダミー君1号よ!」
「ダミー君…?」
あんなものあんのかここの学園…
しかも1号ってことは他にもあんなのが控えているのか…
「あれは3年も前から使っている練習用の的よ。その時いた整備課の生徒が製作したものでね。駄目になった装甲やらパーツやらを集めて作ったのよ。まあ歩くことしかできないから当てるのは簡単だけどね」
「あれISじゃないなら攻撃したら壊れるんじゃ…」
「そこらへんも無問題!歩くことしかできない代わりにとっっっても頑丈に作られているから!」
「それじゃあ…」
更識はアリーナの中央にいるダミー君1号からそれなりの距離がある場所へと移動した。
「それじゃあまずは夢現からやってみようか!」
「わかりました…」
更識はダミー君1号のすぐ傍まで近づいた。
そして夢現を呼び出した。
夢現は見た目はメカメカしい薙刀だがその刃は何と超振動を起こしておりただのブレードでは出せない威力を叩きだせるのだ。
更識は構えを取った。
その構えは堂に入ったものであり素人の俺でも相当鍛錬を積んだのだろうということが分かる。
「……ふっ!」
そして更識は夢現でダミー君1号を切った。
「……硬い」
しかし双眼鏡で見た限り装甲にわずかに切り傷をつけただけだった。
「次は春雷ねー!」
「わかりました…」
今度はダミー君から距離を取り、春雷の狙いをダミー君1号へと定めた。
「ところで荷電粒子砲なんてどうやって準備したんです?しかも二門も」
「それはねー整備課の三年生が作って失敗した奴をいくつかちょろまかして…」
「それ色々大丈夫ですか?」
俺は何だか心配になってきた。
「大丈夫大丈夫!何人か先生に頼んで手伝ってもらったから!」
「なら…だいじょ…いや盗んできた問題がまだ解決してない!」
「その人には代わりに解体しておきますからーって言っといたから」
「なーんか納得いかないなー…」
そんなやり取りをしている間に更識は春雷を撃っていた。
「結果は?」
「ばっちりよ!」
話してる間に見逃しちまったなー…
「それじゃあ次はお待ちかね!打鉄弐式を第三世代機たらしめる武装!山嵐をやりましょう!」
「ちょっとトイレ行ってきまーす」
あんな俺の苦手なものをバカスカ撃つものを見てたら吐きかねん。
だから逃げる!
アリーナから出た俺は人目につかんところで適当に時間をつぶしてからアリーナに戻った。
戻ったらなぜか更識が全国の夏休みに公園で小学生がやってる体操の一番をISを起動したままやっていた。
というかいつの間にか形態移行も終わってやがる…
「何やらせてんですか…」
「いやーいろんな箇所がちゃんと動かせるかのチェックだよ」
「あと何のチェックが残ってるんです?」
「これで最後だよ」
「調整しなきゃいけないところは?」
「いくつか細かいところは調整しなきゃ駄目かなー。でもそこまで大きな問題はないよ」
そんなことを話していると音楽が終わった。
「簪ちゃーん!動きづらかったりとか関節が曲がらないとかそんなことなかったー?」
「特にそういうことはないです…」
「それじゃあ待機形態にしてみて」
「はい」
更識は再び光に包まれた。
そして光が消えると打鉄二式は消え、更識だけが立っていた。
「待機形態はどんな感じ?」
「これです」
更識が右手を出した。
右手の中指に指輪がある。
クリスタルの指輪だ。
「しっかしISの待機形態って不思議よねー。どう見ても機械な感じがしないし」
「それは…まあ…あの天災だから…としか言いようがないと思うけど…」
篠ノ之束…か…
「それじゃあこれでほぼ完成!これから完成を祝う会をやるわよ!野郎ども!着いて来い!」
「野郎は一人しかいないわよ」
そして俺達は整備室でささやかなパーティーを開いた。
用意したのは菓子とジュース、やるのはどんちゃん騒ぎ。
始まってから終わるまで一時間、山田先生がどんちゃん騒ぎを聞きつけて俺達に説教をするまで。
その間凄まじいカオスがあったが割愛させてもらう。
なんだってみんなあんな酔っ払いみたいになってたんだか…
そして今俺は自分の部屋の自分のベッドの上で寝そべりながら読書の時間だ。
食事も済ませ、シャワーも済ませ、明日の準備も終わらせた。
読んでいるのは更識おすすめのライトノベル。
なかなかに面白く結構な勢いで読んでしまう。
すると突然ドアをノックする音が部屋に響いた。
「誰だろう?」
シャルロットがドアの方に行った。
そしてドアを開け来客への対応を始めた。
俺は誰が来たか気になったがそのまま本を読み続ける。
シャルロットが戻ってきた。
「一夏と優人が来て部屋の中に入れてくれないかって…」
「入れても構わんが…部屋の片づけは大丈夫か?」
「とりあえず見てみるよ」
シャルロットは部屋と洗面台の方を見て片付いているかをチェックした。
「大丈夫だから二人を部屋に入れるよ」
そしてシャルロットはあの二人を部屋の中に入れた。
「こんな時間にどうかしたのか?」
「シャルルにちょっと聞きたいことがあってな。申し訳ないが少し部屋から出てもらえないか?」
海堂が俺にそう言った。
「なんだ?なんかヤバい話でもするのか?」
「いや、なんというか…」
海堂は頭を掻いて悩んでいる。
「優人、このことは勇気にも関わる話だからいてもらった方がいいと思う」
織斑が真剣な目で海堂にそう言った。
「おい、お前ら何を…」
「シャルル、お前実は女の子じゃないか?」
「え……」
「あ゛……?」
こいつ今なんつった?
いやー見事にパスワード忘れましたよ…
しかもなろうの方まで…
とりあえず自分がやりそうなパスワード一つずつ試していってやっとあたり引きましたよ…
今度はなろうの方だあ…
次回 優人編 第十三話 黒き闇 そして…