IS The harlequinade/leading role 作:サヴァヴァヴァ
「んで、作戦は決まってんのかい?」
「ああ、決まっている」
どうせろくな作戦じゃねえだろうなあ…
俺は今Aピットでボーデヴィッヒと話をしている。
更衣室から出た後Aピットに行くとすでにボーデヴィッヒがそこにいた。
目を瞑りながら壁にもたれかかるその姿は一種の瞑想でもしているのかとも思わせる。
「遅かったな」
「お前がどうかは知らんがきちんとお役目を果たしてきたんでな」
「ふん…」
俺の返答を聞くと興味がないと言わんばかりにふんと言うと壁から離れ、アリーナの方を見る。
そして冒頭へと戻るわけだ。
「貴様は何もするな。あんな雑魚どもは私一人で片付ける」
はい案の定来ましたー!
やっぱり予想通りだよこいつ!俺の予想をまるで裏切らねえな!
一緒に練習しないとわかった時点で「あっ、こいつ一人で戦う気だな」ってすぐわかったよ!
「はいはい、わかったよ」
それじゃあ俺は試合が始まったらどこかで適当に時間を潰すか…
ポップコーンとオレンジジュースでも持ってきた方がよかったかな?
でも食べ物って量子化できるのか…?
仮にできても出した食べ物食べても体に何の悪影響もないよな?
下手に食べてRad値が上がったり腹から手でも生えたら…そんなのないか…
「そろそろ時間だな、行くぞ」
ボーデヴィッヒがそう言ってアリーナへと向かう。
「アラホラサッサー」
ボーデヴィッヒが戦わなくてもいいというのでぜひとも観客席に向かいたいが、仕方なく俺もアリーナへと向かう。
まあ戦わなくてもいいというなら楽できるか…
………できるよな?
アリーナに入るとそこはまさにTHE大会といった雰囲気に包まれていた。
席を埋め尽くす女子生徒、歓声、そして時折聞こえるブーイングと罵声…ブーイングと罵声?
空耳か…?
なんとか耳を澄ましたが歓声のうるささで歓声以外何も聞こえない。
まあ気のせいということにしておこう。
どうせ本当にブーイングや罵声があったとしても俺かボーデヴィッヒのどちらかにむけたものだろう。
アリーナの中央に着くと相手の女子達も来た。
ふーむ…これから始まる試合に関係ないことだが、なかなかの容姿だな。
一人はモデル体型でクールっぽさがあって、もう一人がちびっ子でなかなかにロリロリしい。
そして二人とも仲良く打鉄で来ている。
……今更だがここにいる女子達はなんでどいつもこいつも容姿が優れてんの?
しかもここって普通に日本でもトップクラスの高校に入学した奴でも、入学試験に落ちるかもしれないとか言われてんだぜ?
つまりここにいる奴らは全国でも選りすぐりのエリートでそれに加えて美女やらかわいこちゃんが集まってるとかヤバすぎだろ。
天は二物を与えずとか聞くけどここにいる奴らを見ると「それはどう考えても嘘だろwww」と笑いたくなる。
草は生やさんがな。
『それではこれより第一試合!二階堂・ボーデヴィッヒペア対御堂・高崎ペアの試合が始まります!』
こいつらのどっちかが御堂でどっちかが高崎ねえ。
どうでもいいや。
そんなことを考えてたらブザーが鳴った。
試合開始だ。
そんじゃ俺は座って試合でも観戦するとしますか…
「「はぁ!?」」
俺が座ると相手の女子達は唖然としていた。
「ん?どうかしたか?」
「いやいやいや!何でお前は座っているんだ!たった今試合が始まったばかりだろうが!」
クール女子が俺を指差しながらそう叫ぶ。
おいおい、もうクールの仮面が剥がれかけてるぞ。
「えーっと、二階堂君?ちゃんと戦おう?ね?」
ロリガールがまるで幼稚園の先生のような口調で俺に語り掛けてくる。
「いやいやいや、これは逆にチャンスだろ。二対一でこいつと何の心配もなく戦えるんだぞ?」
そう、つまりこれはどう考えてもハンデ以外の何物でもないという訳さ。
またの名を舐めプとも言う。
「確かにそうだが…」
そう言ってクール女子は黙った。
「それじゃあ邪魔にならないように壁の方に行ってるさ」
億劫だが壁の方に行くとするか…
俺はしょうがなく立ち上がり、振り返って壁の方へと歩きだした。
「チェストー!」
しかしそんな俺の背中に誰かが飛び蹴りを仕掛けてきた。
「ぶー!」
俺は勢いよく顔面でスライディング、最近の俺こんなのばっかじゃない?
「騙されないで!こんなのどう考えても罠だよ!」
俺を蹴り飛ばした犯人はロリガールだった。
「おいおい…人の善意を疑うとは酷い奴だな」
「君の今までの行動とか聞いてたらその『善意』のルビ振りは『あくい』以外何もないでしょ!」
「勘ぐりしぎだろ…」
だがその警戒を否定はしないがね。
「ところでいいのかロリガール?」
「なにが!?」
俺にロリガールと言われたことにロリガールは顔をゆでだこのように真っ赤にしながら返事をする。
「俺ばっかり構ってて、さ?」
俺の言葉ではっとしたロリガールは後ろを振り返ろうとした、が…
「ふっ!」
ボーデヴィッヒは既にロリガールの背後に移動、そこから全力の蹴りをロリガールの頭部に叩きこんだ。
「ぎゅえっ!」
ロリガールはあまり人間が出さないような声を出しながら転がった。
体に頭が引っ張られるんじゃなくて頭に体が引っ張られるような吹っ飛び方だあ…
というか何でこうあいつの戦い方はえげつない感じのが多いの?
織斑千冬はあいつに何を教えたの?
そんなことを考えていたらボーデヴィッヒはレールガンの照準をロリガールに合わせる。
「高崎っ!」
クール女子がボーデヴィッヒの攻撃を阻止するためにアサルトライフルを撃つ。
「何で俺なんだよぉ!?」
しかしクール女子の狙いは外れボーデヴィッヒではなく俺へと弾丸が押し寄せる。
「おいこらぁ!下手な鉄砲も数撃ちゃ当たると昔から言うがしっかりあいつを狙って撃ちやがれ!」
俺はボーデヴィッヒを指差しながら逃げるがそれでも俺は撃たれ続けている。
「うるさい!銃を撃つのが下手だっていいだろうがっ!」
「うっわ逆ギレしやがった!おいボーデヴィッヒ!早いとこそいつか転がってる奴を片付けろ!」
「貴様に言われなくてもそうする!」
なんでこいつらそんなに怒ってるの?
わけがわからないよ()
もっと俺みたいに心の余裕を持ってホラ。
しかし俺の仏のような思いやりと優しさの心はクール女子には届かず、銃を乱射し続けている。
そんなクール女子は放置してボーデヴィッヒは立ち上がろうとしているロリガールをゆっくりとどめをさそうとしていやがる。
「早く
「………ハッ」
鼻で笑うんじゃねえええええええええええ!
「ああもう!こいつじゃなくてこっちで行けばいいんだろう!」
クール女子はついに観念して銃をしまい、近接ブレードを取りだした。
そのままボーデヴィッヒへと切りかかる。
「お前が私の代わりに切られろ」
だがボーデヴィッヒはロリガールをワイヤーで縛りあげるとロリガールを盾にした。
「高崎!お前ぇっ!」
ボーデヴィッヒの非道な行いにクール女子は怒りを露わにする。
が…
「これで終わりだ」
それがどうしたと言わんばかりにボーデヴィッヒはロリガールを何度も何度も何度も何度もクール女子に武器代わりに叩きつける。
「がっ…ぐっ…」
「うぁ…」
叩きつけられる度に二人は苦しげな声を漏らすが、抵抗はしなかった。
というよりかできないんだろうなあ…
多分ボーデヴィッヒクール女子にAIC使ってるだろうし。
しかし傍目から見ればボーデヴィッヒの戦い方は残虐超人の戦い方だ。
いつかあいつボーデヴィッヒスマイルとかするんじゃないか?
しばらく残虐ファイトを眺めているとブザーが鳴った。
試合終了の合図だ。
試合時間はわずか二分ちょっと。
コンパクトに収まりましたな。
『……試合終了。二階堂・ボーデヴィッヒペアの勝利となります』
オイコラアナウンス係、露骨にテンションを下げるな。
いくらこいつの戦いが酷くても試合時間がくっそ短くてもその言い方はないだろ。
「戻るぞ」
ボーデヴィッヒは悠々とピットへと戻る。
対戦相手の二人はその場に放置だ。
まあかけるべき言葉も特にねえし…戻るか…
俺はボーデヴィッヒの後を追いかけ始めた。
瞬間!
ブーーー!ブーーー!ブーーー!
「うるせ…」
会場中が大ブーイング、会場が揺れだした。
どうやらボーデヴィッヒの戦い方は観客の皆さんはお気に召さなかったようだ。
それにブーイングに交じって俺を名指しで非難する声も聞こえる。
真面目に戦えだのなんだのとうるさくて仕方がない。
こんな時は三十六計逃げるに如かずだ!
ピットに戻った後俺は一人整備室の中で時間を潰していた。
正直織斑達の試合を見るべきだと思ったが、今観客席行ったら針の筵どころの騒ぎじゃなくなりかねないからいけないしー…
かといって下手に部屋に戻ると一応の試合開始時間が変わってもしかしたら遅刻するかもしれないしー…
だからといって廊下をぶらついてもすぐ飽きるだろうしー…
だから整備室で時間潰しをしているというわけなのだ!
ここならそんなに人も来ないしな、それにちょうどよく人目につかず居眠りできるポイントもあるし。
何よりボーデヴィッヒと二人きりとかいう事態は避けられるしな!
「おや、こんなとこにいるなんて」
「んあ?」
誰かが俺に声をかけてきたのでそいつを見たらいつものリーダー格の女子だった。
「いやーさっきの試合見たよ。酷かったね」
「だけど勝ったからには文句は言わせない」
「あはは…」
リーダー格の女子は苦笑いを浮かべている。
「まあ私が言った通りあのライフル使わなかったら何でもいいんだけどね…」
「俺はそれなりには約束は守る男ですよ」
俺はこのライフルを返してもらった時のことを思い出していた。
『はあ!?ISコアにハッキング仕掛けてエネルギーをぶんどってるだって!?』
『しー!そんなに大声出さないで!』
連絡を受けて整備室に行ってみればそんな驚きの事実を聞かされた。
『部品のチェックをしてもどこも悪いとこがないから使いながらチェックをしてたらおかしな反応があってね。それで調べてみたらわかったってわけよ…』
リーダー格の女子は頭を押さえながらため息を吐いた。
『そもそも競技用のリミッターをかけてあるのにどうやって一撃必殺できるだけのエネルギーを工面してるのかと思ったら…そりゃ倉庫の奥で埃を被ってたわけだわ。表沙汰になってたらどんな事態を引き起こしていたのやら…』
確かに零落白夜みたいな反則でも破城槌みたいな代物ではないからどうやってるんだろうとはたまに疑問に思ってたが…いや?
もしかして…
『まさかムラの原因は…』
『そ、毎回足がつかないようにハッキングの手法やアプローチの仕方を変えてたから。なーんて回りくどい手段なのかしら。まあばれたら退学ぐらいで済めばいいって問題じゃなくなるだろうし…』
『失敗したらエネルギー足りなくて威力減で、成功したらエネルギーが大量だから威力が上がると…』
『……ばれたらやばいからとりあえずもう一台似たようなのを急ピッチで作ってるからできるまで預かっておくってのは…』
『悪いけど待てませんな』
『じゃあ可能な限り使わないって条件でなら返すよ』
『のった!』
「一応ある程度は完成したけどまあ威力は物凄い普通になると思うよ」
しょうがないといえばしょうがないか…
威力が高いまま安定性を手に入れるなんてのはそうそうできませんなあ。
「それじゃあ私は整備があるから行くね」
そう言ってリーダー格の女子はどこかへと歩きだした。
「……俺も寝て時間を潰すか…」
俺は整備室にあるタイマーを拝借して俺の次の試合が始まる時間の三十分前にセットし、近くに置いておいた。
「それじゃあお休みなさーい」
俺はたいして動かしていない体を休めるために目を閉じた。
――――――――……ピピピピピピピピピ!
「うっせうっせうっせ!」
自分でセットしたがなんてうるさいタイマーなんだ!
最近のタイマーはこんなにうるさいもんなのか!?
「それ作業中でも聞こえるように音がとびきりでかいやつを買ったって聞いたよー」
作業中の整備課生徒がそんなことを俺に話す。
「……スマホにしときゃよかったな」
それじゃあ行くか…
俺は立ち上がってゆっくりと歩きだした。
ピットに向かう最中の廊下にはだーれもいない。
当たり前といっちゃ当たり前だがほとんどの生徒はアリーナで熱狂してるのだろう。
そしてたまに通りかかる女子生徒は俺に冷ややかな視線を向ける。
俺は文字通り何にもしてないんだけどなー。
ただあいつらの相手がボーデヴィッヒという最悪だっただけで。
…そういえばあいつらが使ってたISって割とダメージ受けてたような…
「……まさか先輩方のお仕事増やしちゃった?」
そう言えばどこかのタイミングで何とか時間の合間を見つけて修理の仕事をしなくちゃいけないとか聞いたような…
……後で栄養ドリンク差し入れするか…
さてやってまいりましたBピット。
いるのは当たり前だが仏頂面の眼帯ロリの頼れぬ相棒。
ボーデヴィッヒは目を閉じたまま壁にもたれかかっている。
俺は軽く伸びをした後ストレッチをする。
そんなことをしていると時間が来た。
さて、次の相手はどんな奴らかねえ…
『それではこれより第三十一試合!二階堂・ボーデヴィッヒペア対御剣・四谷ペアの試合が始まります!』
そして響く歓声、しかしその歓声が向けられてるのは俺達じゃない。
「やれー御剣!ぶっ潰せ!」
「四谷!負けるなー!」
はー…マジで俺達悪役だなあ…
お客様は悪行の限りを尽くす二人組が正義の二人組にけちょんけちょんにやられるところが見たいようだ。
まあボーデヴィッヒを倒さん限り不可能だがな。
そんなことを考えているとブザーが鳴った。
今度こそ休もうそうしよう。
そう思って振りむいた瞬間背中に何かが当たる。
何か嫌な予感が…
恐る恐る後ろを振りむいたが何もない。
足元か?
そう思ってみるとそこには手榴弾が落ちていた。
手榴弾!?
「うおおおおおお!?」
俺は瞬時加速で離脱、そして目を瞑り耳を抑える。
そして全身をそれなりの衝撃が襲う。
今のはなんでもない今のはなんでもない今のはなんでもない…
あー駄目…吐き気がしゅるー…
「あの手榴弾を投げたのは誰だぁ!?」
俺は犯人探しをしようとした瞬間、俺の目線の下を誰かが滑るように飛んで来る。
その誰かを見た俺は反射的に近接ブレードを呼び出し防御した。
そいつは近接ブレードを横薙ぎに払い、俺は運よく防御することに成功し、その防御の反動を活かして俺は後ろに下がる。
「逃がすか!」
しかしそれは見切っていたと言わんばかりにそいつは接近し俺に近接ブレードを振るう。
その剣技は力任せとしか言えないものだが如何せん振るった後にすぐ次の攻撃が来るため俺は防御に徹するしかない。
一瞬ボーデヴィッヒを見たが奴は俺に攻撃を仕掛けてきてない方の奴と戦っている。
当たり前か…俺が倒されてもあいつには関係ないからな。
「いい加減離れろ!」
俺は俺に切りかかってきた奴に近接ブレードを振るう。
そしてそいつはさっきの俺と同じように防御し、鍔迫り合いの状態になる。
そこで俺はようやくそいつのことを見た。
そいつはメガネをかけた委員長タイプな感じの女子だった。
そんな委員長がその目に憤怒をたたえながら俺に切りかかってくるのだ。
「ようやく会えたな…二階堂勇気!」
「お前誰だよ?」
俺はお前と会った覚えはないぞ。
「私はお前と会ったことはないよ…でもなあ!」
そいつはかがむとまるでクラウチングスタートのように動き、俺に突きを繰り出す。
俺はそれを転がって回避し、すぐに委員長を見て防御できるように構える。
「私の友達がお前に傷つけられたんだよ!」
友達?
「すまんが俺に心当たりはないな」
「心当たりはないだとぉ!?貴様ぁ!」
俺の言葉で更に激昂し、委員長は俺にまた切りかかる。
「いいぞー御剣!」
「そこだ!いけ!御剣!」
委員長の名前は御剣か。
やっぱりこいつと同じクラスになった覚えとかないぞ。
「知らないなんて言わせてたまるか!お前のせいで瑠香はどれだけ追いつめられて!傷つけられて!苦しんだかを!」
瑠香?
…瑠香…
「瑠香ってなに瑠香?名字は?」
「柊木瑠香だ!これで思い出したか!」
柊木瑠香…聞き覚えのある名前だな…
柊木瑠香…柊木瑠香…まさか!
「あの四股未遂の柊木瑠香か!?」
まさかここで奴の名を聞くことになるとは…
「それはお前の貼ったレッテルだろうが!」
その言葉と共に更に切りかかってくる、が…
正直あまりにも激昂しすぎて攻撃が単調化してきている。
こんな俺ですら普通に防御できるレベルにまで落ちてきてるぞ…
『おい。さっさとけりをつけろ。やる気がなければ私が代わりにそいつを倒す』
あいつもう倒したのかよ…
それに御剣は俺を倒すことに躍起になっていて相方を倒されたことにまるで気が付いていない。
「いや。俺が倒す。けどこいつからちょびっと聞きたい話があるからそれまで待て」
『なら早くしろ』
相方からの許可も出たし話をしながら戦う、いや、防御し続けるか。
「で、お前あの学校にいたの?それともあの事件が終わった後に転校でもしてきたの?」
「はあ…はあ…私は瑠香やお前がいた学校にはいない…瑠香が私のいた学校に転校してきたんだ」
あまりに激しく攻撃し続けたせいで御剣の息は上がっている。
「そして瑠香から聞いたんだ!お前から誹謗中傷を受けたとな!」
「誹謗中傷ねえ…くくく…ぶふぅ!あはははは!」
その言葉を聞いた俺はおかしくて笑いだしてしまった。
「マジかよお前!あんな奴の口八丁に乗せられて義憤にかられたってわけ!?昨今そんなのは流行らんぜ!プークスクス!」
「笑うな!そしてよくわかった!お前の性格は瑠香から聞いていたものよりさらに最悪だということがなあ!」
息が上がっているはずなのに無理やり近接ブレードを振るう。
それを俺はひらりとかわしてみせた。
「お前それ騙されてるよ!お前があいつから何を聞いたか知らないが聞いたことは何もかもぜーんぶ真っ赤な嘘!」
「何でそうだと言い切れる!お前が嘘をついてる可能性もあるだろうが!」
「お前がそうだと考えているならそうなのかもな」
お前の中ではな。
「どっちなんだ!」
「どっちでもいいよ。お前から聞きたいことはもうないし」
こいつはもう用済みだ。
「ボーデヴィッヒ。こいつの動き止めてくれ。そうしたら後は俺がやるから」
俺の許可とともに今まで攻撃し続けていた憐れな御剣はぴたりと動きを止める。
「動け!何で動かないんだ!」
「それじゃああんまり時間をかけるのもあれだしー…」
俺は近接ブレードをしまい、破城槌を出した。
「おい…ちょっと待て!お前まさか動けなくした敵にそんなものを使う気か!?」
「そうだよ?」
俺は肩を回しながら近づく。
おいおいそんなに怯えた表情するなよ。
お前の体にダメージがそんなに行くわけじゃないしさ。
それじゃあ…いっせーのーで!
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」
俺のラッシュ!こ う か は ば つ ぐ ん だ!
「あああああああああああ!」
悲痛な叫び声とともに御剣はその場に崩れ落ちる。
「いやあ良い汗かいた!」
実際はラッシュじゃなくて攻撃して準備ができたらまた攻撃するって感じだったけどね!
『し、試合終了。二階堂・ボーデヴィッヒペアの勝利となります』
今回は世間の狭さを実感する一戦でしたね!
気が付いたらボーデヴィッヒは先に戻っていた。
俺も戻らなきゃいけないな。
そして戻ろうとしたときにあることに気づいた。
……観客達えらい静かだな。
そう思って観客席を見た。
全員ドン引きしていた。
えっ?なんで?
俺今回そんなに引くような戦い方してた?
今回はかなり真面目にコンビネーションを発揮して御剣を倒したぞ?
まあどうでもいいか。
俺は観客達を無視してピットへと戻った。
ピットからどこに行くか悩んだ俺は観客席の方へと来た。
たまにはゆっくりと観客席で誰かの試合も見たいしね。
しかし空いてる席は一つもない。
しょうがないから俺は観客席の入り口辺りで立ちながら試合を見ることにした。
「見つけた」
「うん?シャルロットか。何か用か?」
どこからかシャルロットが俺に駆け寄ってきた。
というか試合の時間は大丈夫なのだろうか。
「聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「いいよ」
「それじゃあ…さっきの試合でいろいろ話してたけど…柊木瑠香って人と何かあったの?」
「あー…まあいろいろあったといえばあったんだが…」
話すとなると結構長くなりそうだが…
「まあ事の発端は俺が中学二年の頃になるんだが…」
国家承認保護プログラムである程度の期間で転校することが決まっている俺はいつも通り転校し、その学校である女と出会った。
その女こそ柊木瑠香だ。
柊木瑠香は見た目はゆるふわ系で外っ面だけは美少女だったが中身はとんでもない屑としかいいようがなかった。
俺が転校した時点で三股をかけ、いじめの計画をして女子の仲間にその計画を実行させたりするなどまあ叩けば埃が出るどころか頭のてっぺんからつま先まで埃で出来てるんじゃねえのと思うレベルだった。
そんな女と俺どんな関係だったかと聞かれたら、そいつから自分と付き合えと命令されたのだ。
すぐ断ったけどな。
だから四股未遂の柊木瑠香ってわけだ。
まあなぜあいつが付きあうように言ってきたかというと、自分で言うと恐ろしくナルシストっぽいが俺はそれなりに整った顔立ちだ。
なんでも奴曰く「顔の火傷の分を引いても十分合格点」なんだとか。
そのことに関しては父さんと母さんに感謝なんだが今回に限ってはめんどくさい事態に発展してしまった。
それで断ったら今度は嫌がらせのオンパレード!
最初の頃はやめろとか言ったり学校の先生にチクったりしたが、あいつはまあ人心掌握やら世渡りがうまいことうまいこと、誰かに言ってもほぼ「あの柊木がそんなことをするはずがない」でお終いだ。
そしてある日、平和主義者の頂点たる俺はついに最終手段に打って出たのだ。
その日から俺は証拠を集め始めたのだ。
使ったのドリアンズ、あいつらとの付き合いはそれなりに長くなってきたなあ。
俺はドリアンズを使って撮影、監視、その他もろもろの映像データを編集、そして出来上がった映像を夏休み前の全校集会で上映会をしてやったというわけだ。
共犯は放送部の生徒、缶ジュース一本で買収できたわ。
まあその放送部の生徒も柊木瑠香の悪行に腹を据えていたという理由もあったんだがな。
全校生徒の前で自分の悪行を晒された柊木瑠香はその日は早退という形で逃亡、そして俺は夏休み突入と同時に転校、その後は知らなかったわけだが…
俺はドリアンズや国家承認保護プログラムなど聞かれたらめんどくさい辺りのことをうまいこと省きながらシャルロットに説明した。
「まあ御剣の話を聞く限りあいつも夏休み突入と同時に転校して別の学校で俺への鬱憤を晴らしてたってことなんだろうなあ」
ボートを用意されるどころか自分で用意して逃げたのさ。
御剣の口ぶりから恐らく自分のしでかしたことを隠して俺のことをあることないこと話してその結果純粋だった御剣はコロッと騙されたということなんだろうな。
「それから俺は髪を染めたりカラコン入れるなどして同じことが起きないように気をつけてるってわけさ」
どこで同じタイプの女とエンカウントするかわからない世の中になっちまったからなあ…
「大変だったんだねえ…」
シャルロットも俺の苦労を察してくれたようだ。
「それじゃあ僕は次の試合の時間が近いからそろそろ行ってくるね」
「おう。頑張ってこいよー」
「あはは…それもしかしたら対戦相手になるかもしれない僕に言うかなあ…」
「それもそうか。それじゃあほどほどに頑張って負けてこい」
勝って!超勝って!お願い!
「それじゃあ頑張ってくるね」
シャルロットは笑顔で手を振るいながらピットへと歩いていった。
シャルロットがピットに向かってから少し経った後、ついに織斑とシャルロットの二人の試合の時間が来た。
アリーナのボルテージは最高に、どこぞで見ているお偉いさんたちは前のめりになって織斑達を見ていることだろう。
試合のペースは終始織斑達が握っていた。
試合が始まると織斑達は一対一の状況に持ちこむと、そのまま戦いを始めた。
そして織斑はいつものヒット&アウェイ戦法、シャルロットは巧みに武器を持ち変えて戦った。
試合が中盤へと近づくと織斑は零落白夜を発動して敵へと斬りかかるが、それを見た相手は全力で逃走する。
しかしそれこそがあの二人の狙いだったようだ。
相手が逃げた先には何とシャルロット、どうやら先回りしていたようだ。
遠くから見ていた俺にはわかったがシャルロットは戦いながら織斑が戦っていた相手を織斑と挟み撃ちができるように戦っていたのだ。
これは織斑が考えた作戦か?それともシャルロットが考えた作戦か?
それにおそらく零落白夜は攻撃でなく罠として使ったんだろう。
かのブリュンヒルデの代名詞にして一撃必殺になりうる攻撃、そんなもの誰だって回避するか防御しようとするが、防御できる方法を思いついて実践できる奴なんてごく一部の奴だけだ。
大抵の奴がなんとしても回避しようとするし、実際俺だって回避した。
そこで回避しようと逃げだす奴を挟み撃ちにして攻撃しようとするとはよく考えているとしか言いようがない。
そしてそのまま押し切り織斑とシャルロットの二人が勝利、アリーナから二人に惜しみない拍手と歓声が送られた。
さてさて、これで俺の計画はそれなりに進んだわけだが…
織斑はボーデヴィッヒを倒せるだろうか?
シャルロットはどう動く?
俺はシャルロットを足止めするつもりだが場合によっちゃすぐに落とされて最悪二対一の形になるわけだが…それでボーデヴィッヒを恋に落とせるか?
何とかラブラブイベントを俺が起こさなきゃ厳しいかな…
ああもう駄目だな、悪いことばかりが頭に浮かんでしまう。
ここは一つ織斑がスーパーサイヤ人よろしく覚醒してボーデヴィッヒを倒せるという流れが来るのを期待しよう。
「おいボーデヴィッヒ、これから織斑との試合なんだが…一つお前に言っとかなければいけないことがある」
Aピットに来た俺は先に来ていたボーデヴィッヒに話しかける。
「…なんだ?」
ボーデヴィッヒはまるで邪魔者を見るように俺をじろりと睨みつけてくる。
いや、実際邪魔者か…
「これだけは言っといた方がいいと思ってな…あんまり織斑一夏を舐めるなよ?」
「…なに?」
「男子三日会わざれば括目して見よ。あいつがお前と軽く戦った時のままだと思ったら痛い目見るぜ?」
「それがどうした。そんなもの私が、私のシュヴァルツェア・レーゲンと私の強さで粉砕してみせる。行くぞ」
それだけ言うとボーデヴィッヒはアリーナへと向かった。
よし…これだけ言っておけばさすがに油断しまくったあげく織斑に即落とされてなんだこれ?状態になるのは避けられるだろう。
あとは運を天に任せるしかない。
さあこれから始まるは一人の少女が一人の少年との恋に落ちる戦い。
皆さんどうかご静粛に願います。
これはただ一度きりの演目、彼と彼女の台詞を、一拳一足をどうか見逃さないように。
なんてな…
ほんっとうにお待たせしました…!
まあ何があったかと言いますとね…免許取るのって大変ですね。うん。
とりあえず今月あともう一回更新できるように頑張ります。
それと色々ここ変えた方がいいなって部分を描き直したり書き換えたりします。
まあ具体的には勇気の父親の設定とか…