「マ……ママ?」
「にひっ」
呆然とオウム返しに口を開くワイン・ブルームに照れくさそうにコクリと頷いた魔女の娘グレイ・シグナルは踵を返すと、残されたヒールを力一杯地面に蹴りつけ……へし折る。
「えーっ。折っちゃうの? そりゃ、そのままだとバランス悪いだろうけどさ……」
「かっ! ヤマザキよぉ、なーに言ってんだ? 世の中、半端な幸せほど不幸なことはねぇ。そいつを枷に半端な不幸も背負ってるのに気付けないんだからな……!」
呆れるようなヤマブキ・シンパシーの言葉を一笑に付すコランダム・マンティスだったが、その背中にどこか哀愁が漂うのに気付いたのは彼女の親友にして親であるインディゴ・アウルただ1人だけであった。
「思い切りが良いというのは損な性格です。ちょっと我慢すれば手には入る物を簡単に逃してしまう……。ですが、死中に活を見出すのもまたそういう特性を持つ者なのも然り」
「ああ、粋な奴だ。俺はあのチビが気に入ったぜ?」
銀髪の剣士の言葉を勝手に好意的に受け止めて満足気に頷くコランダムを見てシンパシーは心の中で「だと思った」、と小さく呟く。
「リチャージ!」
観戦者達のどよめく声の原因が己が体の変化だなどと気付かぬシグナルは何事もなかったようにオニキスに向き直り、補充コマンドを発する。そしてその仮面に灯る青い光が点滅しだしていることをワイン・ブルームは見逃さなかった。
コマンドと共に黒い蛮族にいたぶられた時に手放した2丁の銃が消えてヘラ型の装具……オプションが腰に、背中の1対のバインダー復活する。
「さてと……♪」
仮面の点滅をより加速させながらガラス細工の戦士は必殺技コマンドを刻む。
「ブルーモード!」
紡がれし呪文に呼応して魔女の娘グレイ・シグナルはブルーモードの名の通りに灰色の信号灯から青色の信号灯へと転身する。
素体の灰色に変化は無いがそれを包むビキニアーマー、そして手足と武器の基部を彩るライトグレーが爽やかなライトブルーに。ダークグレイの髪と2基バインダーはダークブルーに染め上げられ、各部のダークグレイの溝には青い煌めきが灯されては消え、また灯っては消え入る。
「「おおおおおおおおっ?!」」
「へ、変色式?! 変色式複合系統なのかっ!?
藍のレギオンの友人達や観戦者達が驚きに沸き上がる中、ワイン・ブルームは我が子に見惚れていた。
透明なガラスパーツに宿る瞬きは白昼色から淡いライトブルーに変わり、点滅を終えた仮面には黄色の光が灯されている。
(これが、これがきっとシグナルの本当の姿!! 恐らくダメージの蓄積や時間経過によってマイナスアビリティから解放されるようになっていたんだわ! 心配なんかする必要なんて何もなかった! やっぱり私のシグナルこそ加速世界の頂点に立つべき存在なのよ!)
魔女はそう考えて心を躍らせる。
この光がシグナル自身が発言させた第3のアビリティの輝きであることも知らず。再び期待を散らされる結果になることも知らず……。
そして。仮面の灯火が次なるフェイズへ移るべく、再び点滅を開始する。
「ソード! ブースト!」
仮面の点滅が臨界を迎える中、ガラス細工の戦士は剣を黒い蛮族に向けて真っ直ぐ突き付けるように構え……。
「あれれ?」
ここで魔女の娘はようやっと青に煌めく己の体と光の灯る剣を見て自身に起きた変化に気付くが、すぐに興味なそうに「ふーん」と呟くと黒い蛮族に視線を戻す。
インストを開いてこの状態の原因を探ることは後でもできる。だが。今、自分のやりたいこと。いや、やるべきことは他に……目の前にあるのだ。
そして。仮面に深紅の輝きを篝火のような紅に灯しながら左手の中指を天に突き付けたシグナルは加速破壊者に死を宣告する。
「I don't give a fuck!(あたしの邪魔すんなダボ櫨がっ!) あんたは黙ってfuckされてろ!」
刹那。
グレイ・シグナルは青い稲妻の如き勢いで加速破壊者に……母の仇敵オニキス・ビトレイヤーに向けて駆け出す。
2基のバインダーから吐き出される幾重もの過細い光輪の後押しを受けながら迫り来るガラス細工の戦士を前に、黒い蛮族は回避か防御か逡巡する。
しかしシグナルの変化に魔女同様の予測を感じたオニキスは敢えてその攻撃を受け止め、カウンターで一気に叩き伏せることにする。認めたくないが技術力はシグナルの方が上手、壊滅的な攻撃力と防御力が故に有利に立っていたがそれが覆るかもしれないならばここが勝負の分かれ目となると読んだのだ。
(いいこと、オニキス。相手が初めて見せる技を危険と感じたなら……攻めなさい! 出し惜しむような隠し技なら逆に相手も予期せぬ展開に不慣れなものよ。チャンスとピンチは常に寄り添う光と影。戦況を覆す可能性は必ず破滅に陥る可能性も孕んでいるわ。死中に渇を見いだす勇気、今の貴男に足りないモノはそれよ)
不意に自らの手で陥れた師の言葉が黒い蛮族の胸に浮かび上がる。
(ふ、ふふふ。滑稽なものだな、ワイン・ブルーム。あれほど渇望した土壇場の勇気を、よもやお前の子を相手にして掴み取るとは……)
ガラス細工の戦士に己の手を悟らせぬ為に浅く、どんな攻撃にも対応できる守りの構えを見せてオニキス・ビトレイヤーは小さく笑う。永らく忘れていた強者に挑む高揚感、攻防を駆け引きする緊張感、たぎるような熱い戦士の誇り。
黒瑪瑙の戦士は今、バーストリンカーの初心へと還り、対戦を楽しむ心を思い出していたのだ。
しかし、しかしそれに至るには少し遅かった。
剣を正眼に構えたまま後5m程の距離に達したガラス細工の戦士の手首から刹那に閃きと共に放たれたガラス針……否、光の針にフェイスガードを貫かれてオニキスは守りを崩してたじろぐ。
(今! これをやるか?!)
黒瑪瑙の戦士は思わず心の中で恨み言を吐くが魔女の娘がそんな心中を察する筈もない。
グレイ・シグナルは……高柳灯衛は即断即決、徹底的を旨とする者。許さないと言ったら報復に手段を選ばないし、Fuckすると言ったら泣いて謝ろうと尚も泣かせる絶対暴君なのだ。
「ハンマー♪」
上手く事が運び気を良くしたガラス細工の戦士は歌でも奏でるようにコマンドを口ずさみながら右に大きく剣を振り被り、小さく跳ぶ。
指令を受けた剣は柄を60cm程に伸ばし、刃の部分をバレーボール位に丸く膨らませたトゲ突きの重厚なガラス球に変える。
そして空中で1回転したシグナルはオニキスの顔を覆う掌と腕に強引にこじ開けるように白昼色に灯るガラス球を叩きつけ……射出する。
そう、射出だ。この武器はガラス球部分を撃ち出すことができるのだ。
「てぇえりゃああああああああああああっ!」
「ぬあああああああああああああああっ?!」
打撃で浮き上がっていた所に豪球のダメ押しでオニキスの体は高く舞い上がると縦に約810度……2つと4分の1の回転をし、空を仰ぎ見るように地面に落下する。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ…………」
ソフトビニール製の玩具のように吹き飛ぶ加速破壊者に観戦者達は笑い声混じりに歓声を上げるがその声は次第に消え入る。
当然だろう。彼等もブルーム同様にシグナルのダメージ補正が解禁されて大逆転という展開を期待していたのに蓋を開けてみれば何も変わっていないのだから。
しかし。当のシグナルにはそんな声も、呪いのアビリティが突き付ける現実も関係はない。
VRMMORPGのボス戦は始祖と呼ぶべき、かのソードアートオンラインの時代から……いや、その遙か昔の貧弱なADSL回線で繋ぐ黎明期の時代から長大なライフゲージをチクチクと削る作業だと相場が決まっていた。
そして唯一プレイしたティルナノグ・オンラインにおいて……たった一昨日まで存在した常若の国においてそれが常識だと刷り込まれたシグナルにとってはこれに疑問を挟む余地などないのだ。
「フォワード!」
オニキスが頭を振るいながら身を起こすのを見定めてからコマンドを唱えたシグナルは、指令に従って伸び送られるガラスの鎖にスナップを効かせて輪を作り哀れな黒瑪瑙の戦士の首に掛ける。
そして……。
「リワインド!」
次なるコマンドと共に一気に巻き戻る鎖がオニキスの首を締め付けて彼を強引に起き上がらせるがこの時、加速破壊者は失策を行う。
本来、一重に巻き付いただけのガラスの鎖はオニキス・ビトレイヤーを強引に起こした後は多少のダメージを置き土産にその首から抜ける筈だったのだが、首を締め付けられて咄嗟に鎖を押さえた為にソレを自分自身を捕らえる拘束具と成してしまったのだ。
「チャーンス!」
漆黒の面に口の端を吊り上げた残酷な笑みを映したシグナルは全身の力で黒瑪瑙の戦士を引っ張り込み、その巨体を全力で振り回す。
チャンスとピンチは常に寄り添う光と影。
ガラス細工の戦士はオニキスを起き上がらせてハンマーのフルスイングをお見舞いするつもりでしかなかった。
もし。黒瑪瑙の戦士が鎖の流れに逆らわずにその身をよじらせていたならば、両のヒールを失って踏ん張りの効かない魔女の娘は鎖を解き放たれた反動で尻餅を付きオニキスの反撃になす術なくやられていたかもしれない。
だが、彼は自らの手で影を呼び寄せてしまった。
これが運命を決めた。
オニキス・ビトレイヤーが黒瑪瑙の戦士へと還る道は断たれ、黒い蛮族として果てる末路のみが残されたのだ。
「ぬおおおおおおおおおおおっ?!」
荒廃しきった世紀末十条駅前に黒い塊の絶叫が木霊する。
壁に地面にと叩き付けられ、あまつさえ燃えさかる交番に放り込まれて黒い蛮族の意識は既に朦朧となっていた。
鎖を握る手を離す術はもうない。叩き付けられた衝撃に悶える間に2重3重にガラス細工の鎖を巻き付けられてしまっていたのだ。もはや完全に手遅れである。
「そーりゃああああああああああああ!」
シグナルの掛け声と共にプロテクター所々失われてボロ雑巾のように成り果てたオニキスの体が地面からわずかに浮く。
「また、これかあああああああああっ?!」
ガラス細工の戦士を中心にグルリグルリと振り回され、加速破壊者は嘆きの声を轟かせる。
「これは酷いわね。同情しないけど」
「モー、すごいね」
既にドン引きした様子の観戦者達が固唾を飲んで見守る中、不意にオニキス・ビトレイヤーは螺旋の戒めから解き放たれ宙に舞う。
「てぇええええいっ!」
気の抜けた掛け声と共に射出されたオニキスは火花を放ちながら天井が崩れ、灰色の空が覗くアーケード商店街を滑走していく。
(や、やった! 脱出のチャンス!)
普段見る人々の賑わう見慣れた風景とは一変、ゲームがゲームならゾンビでも現れそうな程に荒廃しきった光景の中で黒い蛮族は一縷の希望を見出す。
しかし、しかし甘い。
自分の進む先に普段は華やかなディスプレイをされた商品に代って無造作に転がされたドラム缶の群があることに気付き黒い蛮族は絶望に身を焦がす。
「悪魔! 悪魔めぇええええええええええええええっ!」
魂の底から張り叫ぶ加速破壊者だったが爆る閃光と爆音にその声も、姿も飲み込まれてしまう。
大爆発である。
巣穴から放たれた巨大な光の竜の灼熱のブレスと漆黒の吐息の如き爆炎はロータリー内にいたグレイ・シグナルにまで及び、その小さな体をあろうことか燃え盛る交番の中に吹き飛ばす。
「きゃああああああああああああああっ!? しぐなるぅうううううううううっ?!」
「アホかああああああああああああっ!? 面白すぎだろ! あのチビぃいいいいいいいいい?!」
「うん。もしかしたらとは思ってたよ、僕は」
友人達が魔女の娘の凶行と業に戦慄する中、「すげー!」と言ってアクティブMobに突貫して以来1ヶ月間も彼とギルドメンバー達を驚愕させ続けた理解不能なレベルでヘイト値の高い無鉄砲娘の不運を知るオーラムことヤマブキ・シンパシーは極めて冷静に呟く。
「あー、死ぬかと思った」
ガラス細工の手足の艶がすっかり鈍くなった程度の被害で炎のモンスターハウスから脱出した魔女の娘に母魔女達は安堵の声を漏らす。
しかし、シグナルのライフは既に1割弱まで減ってしまっている。いや、まだ残っている……と、言うべきだろうか?
先刻迄のマイナスアビリティ《貧弱》の暗躍ぶりを考えるならば、今の爆発でガラス細工の戦士は【GAME OVER】となっても不思議ではないのだ。
……が。その答えは簡単である。
単純にこの呪いは対人戦にのみ発揮されるモノなのだ。さもなければこの哀れなガラス細工の戦士は真なる加速世界において存在するMMORPGのボスモンスターの如き魔獣の前に立つことさえ許されないし、太古の家庭用ゲーム機の主人公のようにちょっとした段差から降りただけで大ダメージを受けて昇天……等という末路を迎えてしまうのだから。
そして予想外に軽傷だったシグナルに比べ、オニキスの被害は甚大だった。誘爆するドラム缶の爆心地にいた為、実に4割弱ものライフを失ってしまったのだ。
「ど、どうやら直接攻撃以外のダメージは普通に通るみたいね」
先刻までマイナスアビリティからの解放が成されないと言う事実に対戦中であれば間違いなく零化現象に陥るであろうほどの勢いでぬか喜びから絶望に叩き落とされていたブルームが一縷の望みを見出して声を和らげる。
尚、余談ではあるがシグナル自身と全く接触のない状態での自由落下によるダメージもまた呪いの効果の及ぶところではない。
「ところで。オニキスに動く気配がないのですがどういうことでしょう?」
不意に呟かれた銀髪の剣士の言葉に全観戦者の視線が燃え盛るアーケードに向く。
「折れたんじゃね? あっちでもハイレベルに会った加速破壊者が恐怖と絶望で零化するなんて話ざらだしよ?」
「そ、それはたまに聞くけど流石に嘘だよね? レベル4にまでなって、それは笑えないよー?」
吐き捨てるように言うコランダムにシンパシーが返すがブルーム、アウル、コランダム、ミルキー、そして銀髪の剣士が一斉に彼の方に振り向く。
「「と・こ・ろ・が・!」」
「ひっ! な、なにっ?!」
「あるのよ、ヤマザキ君」
「あるのだよ、ヤマザキ君」
「あるんだわ、ヤマザキ。これが……!」
「あるのですわ、ヤマザキ君」
「あるんですよ、ヤマブキ君」
「そ、そうなんだ。ぼ、僕、レベル4はもうちょっと遠慮しおきたくなっちゃったなー。ははは」
5人同時に異音同義の返事を戴きヤマブキ・シンパシーは1つ矛盾した考えを思う。
(そりゃ、あっちでこの面子に会ったら誰だってチビるよ!)
魔女達がそんなやり取りをしている間にもネズミが動かないことに業を煮やしたシグナルは火の粉の舞い上がるアーケード入り口に立つと仮面の下部に手を掛ける。
「エヴォルブ! リボルバー」
そしてコマンドと共に仮面を半円から円へと展開させると2丁の拳銃を構えながら慎重に黒い蛮族の行方を探す。
この仮面はグレイ・シグナル第3のアビリティ《発光》によってシグナル自身の戦意を表す……わざわざ敵にこちらの情報を与えるというまるっきり役に立たない特性を持つが反面、優秀な視覚補助効果を持つ頼もしい一品でもあるのだ。尚、これで暗闇の索敵を有利に行えてもシグナル自身が常に光りを放つ為に敵に居場所が丸わかりだという事実も加えて述べておこう。
「あ、いたいた。なんか寝てるや」
藍のレギオンの面々の予想通り零化現象に陥り、抜け殻のデュエルアバターと化したオニキスを発見したシグナルは2丁の銃を構え狙いを定める。
「動かないでよね? 弾丸が外れるから」
近年リメイクされたアメリカのコメディドラマの主人公の台詞と共にトリガーは躊躇なく引かれ、撃ち出されたフルメタルジャケットならぬフルグラスコート弾は沈黙する黒い蛮族を打ち揺らすがもぬけの殻となった巨体は何の反応も示さない。
魔女の娘はつまらなそうに唾を吐き捨てると猫が獲物を弄ぶ様に銃を乱射しだす。
「ほらほら、起きろ起きろー」
容赦なく降り注ぐガラスの弾丸に黒い蛮族が反応することもないまま時間は過ぎ、火の海となった十條駅前には時折リロードコマンドを唱えるシグナルの声を挟みながらただただ銃声が響き渡うだけだった。
「あー、そろそろいいかな?」
やがて。
魔女の娘がそう呟いた頃には残り時間は600秒となり、屍同然のオニキスのライフ残量も残り1割程度となっていた。
尚、ここまでの主なダメージ源は黒い蛮族を包む燃え盛る炎であり、銃弾の嵐はさほどの成果も得ていない事実もここで告げておこう。
「やっぱ、最後は自分の手で決めたいよね!」
そう言って455線の方へ駆け出したガラス細工の戦士を魔女と友人達は静かに見送る。
「どこへ行ったのかしら? あのおチビちゃん」
誰に、とはなしに漏らすミルキー・レミッションに他の一同は「もう、わかった」という態度で返す。
「ど、どういうことですの?」
そして、彼女が友人達に問い掛けている間にもシグナルは再びロータリー戻ってくる。
ドラム缶を2つも肩に担いで。
「なるほど……。容赦なしですわね」
呆れたようにそう言うミルキーにインディゴ・アウルは肩をすくめて返す。
「仕方あるまい。敢えて詳しくは聞くまいが、あの魔女の娘の力では加速破壊者にとどめを刺すことは適わないのだろうからな。そうだろう、ブルーム?」
「ふふ、戦術も……フィールドを活かす技術もまた力よ? そうではなくって、王子様?」
藍色の盟主に不適な笑みで答えるブルームの言葉にシンパシーはうんうんと力強く同意する。
そうこうしてる間にも魔女の娘は炎に包まれた竜の巣に悠々と入り、倒れ伏すオニキスを壁際に蹴り飛ばすとその体の上に1つ。更に壁と挟むようにもう1つのドラム缶を設置する。
「正にモー、仕止める気だね」
「ゼロフィル相手にやりすぎよね……。でも、あの容赦の無さとクソ度胸だけは私も見習いたいわ」
そんな観戦者達の声が聞こえる中、竜の巣から飛び出てきたシグナルは素早く振り返ってガラス細工の弾丸で最後の仕上げを行う。
「Fuckin'heeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeell(死ねやボケがああああああああああああああああああああっ)!!!!」
爆る閃光のドラゴンの灼熱の咆哮と漆黒の吐息は黒い蛮族の体を再び飲み込み、その僅かな短い命の光を一瞬にして噛み砕いた。
「おおおおおおおっ!」
「ヒャッハー!」
「きゃー! シ・グ・ナ・ル・ーっ!」
小さな魔女の娘の勝利を喜ぶ声が響き、そそり立つ炎の柱をバックにグレイ・シグナルの眼に自身の勝利を告げる焔文字が浮かぶ。
【 YOU WIN! 】