ジェミニ。
本来存在しないエクストラクラスと呼ばれる特異なクラス。
そのクラス名は、ほぼ当人たちの真名を言っているようなものだ。
ジェミニとは双子座の事であり、双子座になった英雄の2人組など
「カストルとポルクス―――ッ!」
「正解だ、セイバーのマスターよ。今宵は2人仲良く現界出来たというわけだ」
「まあ、2人での召喚など無理しかない。能力は制限されるし、魔力消費は跳ね上がるしで、いい事ばかりではないけどね」
「それでも2人で召喚されたのは、好ましいことだ」
槍の男―――カストルと剣と鉄の拳の男―――ポルクスが交互に喋る。
カストルとポルクス。
豪気な雰囲気の放つカストルは戦車乗り。兄に比べると破棄は薄いが斬れるような気配を纏うポルクスは剣士で、格闘家。
カリュドンの猪狩りの参加者でアルゴナウタイでもあり、最後は2人揃って星座になったという。
日本では特別有名ではないものの、十二分に強大な英雄だ。
それだけの英雄を能力が落ちているとはいえ、2人共呼び出すというのはずるくないだろうか?
そんな事を考えながら、ジェミニのマスターをチラッと見る。
ジェミニのマスターは俺の視線に気づいてこちらを向き、端正な顔に爽やかに微笑みを浮かべた。
一筋縄ではいかなそうなやつだな・・・。
俺がそんな事を考えているうちに、セイバーは立ち上がり、剣をジェミニに向かって構えていた。
そしてここが戦場とは思えないほどの満面の笑みを浮かべる。
「嬉しい!!!マスターを襲ったことは許せんが、名のある英雄殿2人と戦えるなんて、俺は嬉しいぞ!!!」
俺の憂いなど、こいつにとってはどうでもいいことらしい。
頭が痛くなってきた。能天気すぎる。
俺が頭を抱えていると、ジェミニ達も顔に笑みを浮かべた。
「ほう、面白い奴だな。これは全力で相手しなければなるまいよ。いくぞポルクス!!!」
「応、兄上!!!」
ジェミニの2人はそれぞれの武器を握りしめ、凄ましい速度でセイバーに突っ込んでいく。
セイバーもまた同じように、彼らに突っ込む。
第2ラウンドの始まりだ。
2人の敵に対して、セイバーは剣を思いっきり振り絞り、全力で薙ぐ。
それだけで周りに恐ろしい程の風圧が発生するが、ジェミニの2人は左右に分かれることでそれを軽々と避けた。
先ほどまでとは動きのキレが違う。
「――――ふんッ!」
避けたそばから、セイバーの顔面に向けてカストルが槍の刺突を放つ。
「く、うお!!」
「甘い―――!!」
「なっ!」
セイバーはギリギリのタイミングで反応し、躱した後カウンターとばかりに剣を放とうとするが、そこでポルクスの剣が後ろから一閃し、回避行動をとらざるを得なくなった。
そこをジェミニの2人が狙い、連続で刺突と剣による斬撃で的確に追い詰めていく。
カストルが連続の刺突で回避行動を限定し、ポルクスがその回避先や反撃の瞬間に剣を振るう。これをほぼお互いが見えていないような状態で、それも超高速で行っていた。
恐ろしい程の連携能力。
その連携力にセイバーは少しずつ追い込まれていく、剣が追い付いていかなくなってきているのだ。
「それで終わりか!?」
「ぐ、舐めるなよォ!!!」
だがそれで終わるほどセイバーも甘くはない。
今までとはリズムを少しだけだが変えていく。剣の振るう速度を一瞬ずらす、避けるタイミングを変える、などして何とか戦線を維持する。
そして隙あらば聖剣を相手に向けて振るい、相手を叩き斬りにかかった。
そんな攻防を連続して行い、セイバーとジェミニは何とか均衡していた。
しかしそれもセイバーが無理矢理戦線を維持しているに過ぎない。そろそろ崩れる。
「動きがよく見えるようになってきたな」
「くっ、動きが見切られてきたかッ!!」
セイバーの剣をカストルが軽々と避け、ポルクスが剣を振り切ったセイバーに剣を振るう。
セイバーはそれをギリギリのところで避けるが、次々に槍と剣が殺到するために攻撃に転じられない。
ジェミニがセイバーの動きを完全に捉え始めている。
元より1対2の勝負。
そして何より、技量の差が出始めていた。
セイバーも決して技量が低いわけではないが、ジェミニの2人に比べれば少し劣る。
これが1対1の勝負であれば、その程度の技量差は力技でも埋められただろう。
だがこれは1対2の勝負だ。2人ともに少しずつ技量で劣っているのは、非常にきつい。
「ぐッ!!!」
そしてついにセイバーの剣が完全にぶれた。
そこにジェミニ2人の剣と槍が迫る。
「「終わりだ―――!!」」
2人の声がはもり、セイバーの腹部に武器が叩き付けられた。
凄まじい金属音が鳴り響き、セイバーが吹っ飛ばされる。
俺はそれに対して、声を発せない。
まさかこれほどまでとは―――ッ!!
ジェミニの2人とマスターは攻撃を直撃させたのにも関わらず、3人とも不可解な顔をしている。
何故ならば。
「てめえ!!!!何故――――――――無傷なんだッ!!!」
カストルが目の前の不可解な光景に対して、思い切り叫んだ。
セイバーは腹部に武器を叩き付けられ、鎧は完全に破壊されている。
が、壊れた鎧から見える内部、つまり生身の部分には傷の1つも付いていなかった。
カストルの叫びを聞いて、セイバーは残念そうな顔をする。
「これはな、無敵の肉体という奴だ。ただし、特別な力をもっているわけではない。ただただ純粋に俺は硬いんだよ。聖剣でも傷つかぬこの肉体、名だたる英雄であれば傷をつけられると思ったが・・・、残念だ」
その落胆を含んだ呟きを聞き、ジェミニの2人は顔を揃って顔を地面に向け、肩を震わせる。
自分たちの全力の刺突と全力の斬撃をくらいケッロっとしている相手の落胆の声を聞いて、腹が立っているのかもしれない。
真名を聞いていたから、俺もセイバーの肉体が金剛石の如き肉体をもつのは知っていた。だがあんなものに実践でであったら、俺も自分の無力さに腹が立つ。
だからあの2人もそうなのだと判断したのだが・・・。
「―――――――――――ふ、く、くく、はははははははは!!無敵の力と強力な武具!最高の英雄が持つ特徴だ!!そんなものに相対できるとは、聖杯戦争とは素晴らしいなァ!ポルクスゥ!」
「ああ、そうだね。僕も燃えてきたよ、兄上!」
この2人の場合はただの武者震いであったらしい。
顔を上げ武器を再び構えた2人は、すさまじいまでの闘気を纏っている。
それを見たセイバーは心底嬉しそうに口を緩める
「攻撃が効かないくらいでは、折れてはくれない様だな!嬉しいぞ、ジェミニ!!」
「ふん、我らを―――舐めるな!!」
3騎のサーヴァントはもう1度武器を振り上げ、敵の懐へと踏み込んでいく。
ジェミニのマスターはそれを苦笑交じりに眺めていた。どうやら傍観に徹するらしい。
まあ、俺もそうしてくれる方が助かる。
おそらく現在他のマスター達が俺たちの戦いを隠しみているだろう。幾らサーヴァント同士の戦いが主になるとは言っても、マスターである俺の手の内を易々と晒すことはできない。
・・・サーヴァントの真名を簡単に晒してあたり、相手方は手の内を隠蔽する気が殆どないようだが。
剣と剣が火花を散らしながら、正面から激突する。
セイバーとポルクスが鍔迫り合いの形となり、一瞬だけ拮抗するが、セイバーが直ぐに押し始めた。
「シ――――ッ!」
「――――」
そこで横合いから入ってきたカストルの槍が裂ぱくの気合と共に連続で瞬き、雨の様にセイバーの肉体に叩き付けられる。
しかしセイバーはその槍をすべて無視して、ポルクスに全力で圧をかけて叩き潰しにかかった。
槍が幾たび叩き付けられようともセイバーは揺らがない。
そしてついに拮抗が破られ、ポルクスの持つ剣が真っ二つに切り裂かれた。
「―――ッ!何て切れ味!?」
ポルクスは剣が切り裂かれる寸前に後ろに跳ぶことで直撃は避けたが、発生した風圧で吹き飛ばされる。
カストルも弟が吹き飛ばされるのを見て、槍で突くことをやめポルクスの元へと行こうとしたが、セイバーの剣の一撃がそれを阻む。
何とか剣を槍で受け流すが、セイバーが槍での攻撃を全て無視して懐に入り込もうとするために、カストルはその場を下手に動けない。
凄まじいまでの攻撃特化だ。
初めから防御を捨てているこの攻撃方法こそがセイバーの神髄。
故に、2人と戦い始めた時に彼らに技量で劣っていた様に見えたのだ。
元より
「チッ、無敵ってのはずるいもんだなぁ!」
「2人のサーヴァントで現界するのも十分ずるいと思うぞ!」
「違いない!」
カストルがセイバーに吼え、それをセイバーが正論で返す。
文句を言っているようにも聞こえるが恐らく違う。
本人は心底楽嬉しそうだ。多分、それ程の強者と戦えるのが楽しいのだろう。
実際俺も少しその気持ちがわかる。容易に倒せる敵よりも、勝てないくらいの相手と戦う方が楽しいからだ。
何となく親近感が湧いてくるが、相手は敵。あまり共感しすぎて、倒しづらくなったりしたら本末転倒だ。
俺がカストルに共感している中、ポルクスが起き上がり素手でセイバーとカストルの戦いの中に割り込む。
だがセイバーはそれを無視して剣を振り下ろす。
直撃すれば致命傷を負うのは免れない。
そしてポルクスに剣が直撃―――――
「舐めないで欲しいね、剣士くん」
「―――――ッ!?」
しなかった、どころではない。
剣が直撃る瞬間に、ポルクスの姿が霞み、次の瞬間にはセイバーが砲弾の様に吹き飛ばされていた。
その時に一瞬だが、セイバーの腹部から血が舞うのが見えたのだ。
つまりセイバーの肉体の硬度を上回る攻撃を受けたということになる。
「なっ、どうやって!?」
その事実に俺は驚愕を隠せず、声を出して反応してしまう。
セイバーの肉体は凄まじく硬い。それこそ無敵と言っていいほどに。
並のサーヴァントでは、必殺技である宝具を使っても突破するのは難しいだろう。
だが、ジェミニの2人が宝具を出したような形跡はない。
――――いや。
「鉄の拳・・・」
「またまた正解だよ、セイバーのマスターくん。僕の拳はあの程度の硬さの肉体であれば、容易に砕く」
「流石だぜ、ポルクス!俺の弟の事だけはあるな」
「兄さんこそ1発に比重を置けば、あの肉体を突破することくらいわけないだろう?」
「まあな。つっても―――――」
ジェミニの2人が吹き飛ばされたセイバーを横目に、馬鹿にしたように談笑する。
挑発の意味もあるだろうが、事実でもあるはずだ。
ポルクスは鉄程度ならば容易に砕くであろう拳で、さっき突破したから言わずもがな。カストルは恐らく足止めと速度という面に特化していたのを取り去れば、肉体に傷をつけることくらいならば出来るとは思う。
しかしだ。
吹き飛ばされ、土煙に立ち込めながら、セイバーは立ち上がる。
顔はよく見えない。
鎧はズタズタで、随所随所が下に着ている簡素な服を露出させている。腹部に至ってはその服すら破れており、抜き手で抉られたであろう傷から血が溢れだしていた。
その気になれば魔力で編まれた鎧の回復など容易であろうに、それを一切行っていない。
本来セイバーは見栄っ張りだ。その見栄っ張りが原因で死んだほどに。
故に、鎧が壊れていたならば、全力で治そうとするだろう。
―――――普段ならば。
「ははは、やはりな。てめぇ生前はまともに傷ついたことなかったんだろう?出なけりゃよお―――」
セイバーは顔を上げる。
俺はその顔を見て、よかったなと心の中で呟く。
何故ならば、その顔こそが彼の願いそのものだったのだから。
「そんな楽しそうに笑わねえぜ?」
「そうか?双子座の英雄殿」
「ああ、いい笑顔だ」
セイバーの口は大きくゆがめられており、喜色に彩られていた。
生前傷を負ったのは最後の戦いの際に自爆した時だけだ。
つまりまともに傷を負ったことなど、今が初めてということになる。
そんなもの―――――
「楽しいにきまってるわな」
「そうだな。本当に楽しいよ。やはり英傑同士の戦いとは心が躍るものだ」
「くく、それはよかったよ。フランク王国の聖騎士さん」
「ばれてたのか・・・」
セイバーの正体は如何やらジェミニ側にはばれていたらしい。
まあ、不死身の肉体に、業物であろう剣を切り裂く剣と怪力、騎士然とした姿、あと微妙に頭が緩いところ。
ここまであの英雄の要素があったら、ばれるのも当然と言えば当然かもしれない。
「ん?ばれてたか」
「バレバレだよ。君のレベルの怪力なんか流石にそうそういないし、何より騎士でちょっと馬・・・いや、これはいいか」
「へー、俺も有名になったもんだなー」
ポルクスは苦笑いしながら、セイバーの事を馬・・・うん、呼ばわりする。その通りだし。
セイバーはうんうん言いながら、2人が自分の正体を見破ったことに対して本気で関しているようだ。
ああやって横に首振ったりするとこが、馬鹿っぽい。
俺が呆れかえり、何だか和やかな雰囲気が流れる。一応みんな武器は構えてはいるが、戦闘中とは思えない緩さだ。
「・・・なごんでいるところ悪いんだけど」
ここにきて突然ジェミニのマスターが声を発した。
俺も含め皆が一斉に彼に視線を向ける。
皆の視線を一挙に受け少しだけ困ったように顔をしかめる。
「何だ、
「違うんだ」
「なら一体何だい?マスター」
マスターである彼の名前はひびきというらしい。
確か、俺の家と仲の悪い黒月市の管理者である
俺が名前から家を割り出そうとしている中、ジェミニとひびきというマスターは話を進める。
「じゃあ、なんだってんだよ。ひびきよお」
「簡潔に言おう。ライダーが来る」
「何!?もうかよ!」
ひびきの言葉にジェミニの両名は驚いた後忌々しい顔をしているが、俺にはさっぱりわからない。
いや、ライダーが来るというのは、驚きなのだが。どうやって知ったのか、何より何故ライダーが来るだけでそこまで嫌そうな顔をするのだろうか。
彼らからは乱戦だろうが、上等という雰囲気を感じるのだが。
俺のそんな考えを読んだのか、ジェミニが心底嫌そうな顔でこちらを見る。
「別に俺が乱戦を嫌ってるわけじゃねえさ。寧ろ上等なくらいだ。――――けどな、ライダーのやろうは違う」
「彼が来ては乱戦にはならないんだよ。残念ながらね」
「何故だ?ライダーとは敵同士ではないのか?」
「―――違うよ、セイバー。私たちは鞍月家の者で、ライダーは白城の家のサーヴァントだ。つまり―――――」
「アンタらの同盟相手か!?じゃあ、それこそアンタらの有利なんじゃあ・・・」
如何やら白城家と鞍月家は同盟を結んでいるらしい。
これは予想できたことだが、ジェミニに加えてライダーというのはきつい。
ジェミニはライダーとセイバーという特性をそれぞれもって召喚されているようだが、それに加えて純正のライダーを相手にするのは正直無謀だ。
ライダーは宝具に特化したクラスで、多くの宝具を持っている。更に言うならば、ライダーというクラスは
伝承において、乗り物に乗った英雄などいくらでもいる。大英雄クラスになれば、ほぼ確実に何かに乗った経験があるはずだ。それ故に、強力なサーヴァントを3騎士クラスに比べるとステータスが少し下がる代わりに、多くの宝具をもたせるためにライダーで召喚するという考えをする者は多い。
実際セイバーもライダーとして召喚でき、乗り物に加え剣も勿論、無敵の肉体も付いてくるだろう。まあ、セイバーの場合、能力が下がるだけごり押しがしづらくなるのだが。
とりあえずだ。白城家はそれなりの名家になる。
だから1級の触媒の準備でも、そこまで苦労はしないはずだ。
それこそアキレウスやファラオ、彼の騎士王やヘラクレスなどを呼んでいる可能性もある。
そうなれば苦戦は必定。そこにジェミニが加わるなど、いくらセイバーでも無理だ。
などと、色々と考える俺をカストルは凄い形相で睨む。恐い恐い。
「アイツらと手ェくむだぁ?笑わせんな。あそこのライダーとそのマスターも嫌がってたが、魔術師ってのはあそこまで腐ってんだな。あの女王様はまだ良心があったぜ」
「兄上の言うとおりだ。我らは形式上奴らの同盟というだけに過ぎないし、彼らと手を組んでいると考えるだけで、反吐が出る」
「ということさ。私たちは共通して彼らの事が嫌いでね。一応家単位では結びついているんだけど、個人的にはごめん願うんだよね。だから――――」
「一緒に戦うのは嫌だから、ここは退けという事か・・・」
「ああ」
ジェミニは2人揃って嫌悪感を全く隠さず、ひびきは表面上は取り繕っているが声に怒りが混じっている。
如何やら白城家と手を組んでいるのが本気でいやらしい。
おそらく魔術師然とした人達、というにしても相当酷い状態の様だ。俺が白城家を最後に尋ねたのは、確か3年前。あのころは魔術師として手は尽くすが、手段は選ぶ人たちの集まりだったはずだ。何かあったのか?
―――まあ、その件は家で考えるとしよう。
「とりあえず事情は分かった。今夜は退くとするよ。俺たちもこれ以上手を晒したくないし」
「そうしてくれると助かるよ」
「それでいいか?セイバー」
「仕方ない。了承しよう」
セイバーは渋々了承してくれた。
退くという考えは彼には殆どない。
今回は敵であるジェミニ側が本気で嫌がっていたので、退くという選択肢を了承したのだろう。
もし、彼らが嫌々ながらも戦おうとすれば、彼は全く退かずに戦い続けたはずだ。
斬って斬って斬って、斬られて刺されて殴られ、死んだとしても――――退かない。
セイバーはそういう男だ。
ライダーとマスターが直ぐに来るという事で、俺たちはここで別れることになった。
特別言葉を交わすことはしない。
再戦の約束をするわけでもなく、再開を願うことも無い。
しかし、その背中は”次は勝つ”と語っていた。
「如何やら彼らは去ってくれたようだ」
肘や胸、膝などの重要部位にのみ鎧を纏うライダーがホッとしたように呟いた。
女性に間違われかねないほど美しい中生的な顔立ち。一見華奢に見えるが鍛え上げた上で、必要とする筋肉以外を限界までそぎ落とした肉体。彼はそれに加えて凛とした雰囲気を兼ね備えた少年だった。
何より目を引くのが、少年が斜めに背負った巨大な剣だ。
それこそ竜でも討伐すると言ってもおかしくないほどの剛剣で、少年の170cm程の背丈よりも大きく見えた。
更に、剣の中腹には継ぎ目の様な物もあり、何かが仕込まれているのがわかる。
「よかったわ。彼らには合わせる目がないもの」
彼の横に立っている白いブラウスの上に茶色のファーコートを纏い、膝の手前まである黒いパンツを着こなす少女も呟く。
少し風が吹き、彼女の黒に少し茶が混ざった鮮やかな髪が空に舞う。均整の取れた顔に髪が少し張り付き、彼女はそれを手で払う。彼女もライダーと同じく凛とした雰囲気を持っており、成熟した女と未成熟な少女が拮抗したそこはかとない儚さを兼ね備えた少女であった。
現在彼らがいる場所は、都市中央部にある三豆公園だった。
ジェミニとセイバーが戦ったはずだが、既にその痕跡はない。恐らくジェミニのサーヴァントである
「本当にね。彼らには悪いことをした。魔術師ってのは怖いもんだよ」
「本来うちの人達はあんなんじゃないのだけれどね」
「となるとやっぱりサーヴァントの仕業かな?」
「そうでしょうね。もし欲にくらんであそこまでの凶行に走ってるんだったら、笑えない」
ライダーと少女は淡々と家の惨状の原因を語る。
白城の家の惨状は散々なものだ。
今までそこらにいる一般人を襲い、自分たちの実験に使うようなことは無かった。ホームレスの人間だったからこそ、何とか騒ぎにならずに済んだが、もし家庭がある人間を襲うなどすればもみ消すのも難しい。
触媒の手に入れ方も酷かった。
普通ならば買い取るなりなんなりして穏便に済ますものだが、無理やり盗み出しその場にいた人間を皆殺しにして、魔術師一家を1つ潰してしまったのだ。白城の家は魔術師としての研究よりも、戦闘に秀でたものが多く、それ故に出来た凶行だった。
しかし白城以上に戦闘に特化した武家・姫条がこの町にいる。
誰かが悪行をすれば彼らはその者を断罪するのだ。その結果、白城は魔術師にしては良識を持つものが多かった。
だが今は完全に暴走している。このままでは、一族全てを皆殺しにされかねない。
少女、
元々は彼女の父が出る予定だったのだ。
しかし彼女の父は召喚の前に狂った白城の魔術師の一部から攻撃を受け、今現在も病院で治療を受けている。
その時に父には死の魔術をかけられ、命を握られてしまった。
そして真希が聖杯戦争に出ろ、と命令されたのだ。もしそれしなければ、父は殺すぞと。
そうして彼女は聖杯戦争に参加することになった。
今回の作戦を出したのも奴らだ。正直奴らには従いたくないため、ジェミニらが去ってくれて心からホッとしたのだった。
2人は公園の中を歩き回る。
一応は管理者の家の人間だ。何か一般人に見られてはいけないものがあるかもしれない。
真希は隅から隅までじっくりと調べていく。
そんな中ライダーは呑気に真希に話しかけてくる。
「しかし真希は真面目だね。もっと手を抜けばいいのに。魔術を使えば、こんなものすぐ終わるでしょ?」
「初めに魔術は使ったわ。でもそれだけでは見抜けない物があるかもしれないじゃない」
「本当真面目だね~」
真希の真面目さにライダーは苦笑しながらも、実体化したまま付き合う。
ライダーと真希は談笑しながら公園を練り歩き見聞していったが、結局2人は30分ほど公園を見て回り、何も見つからなかったため家に帰ることになった。
――――最後まで、戦いと彼女らを見ていた足を3本持つ異形の鴉には気づかずに。
セイバー
中立:善
ステータス
筋力A+
頑丈A
敏捷C
魔力A
幸運C
宝具B+
クラススキル
対魔力:A
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。
元来は聖なる鎧体と同化していてなくなっているが、ある魔女から奪った魔法剣による効果で対魔力を得ている。
騎乗:A
幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。
保有スキル
勇猛:A‐
威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。
また、格闘ダメージを向上させる効果もあるが、視野が狭まり冷静さ・大局的な判断力がダウンする。
心眼(偽):B
直感・第六感による危険回避。ほぼ野生に近い本能的な勘。
宝具
聖なる鎧体(デュールコー)
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1人
あらゆる武器を弾き返した肉体そのものが宝具になった。
B+ランク以下の攻撃をすべて無効化する。ただし、打撃系攻撃にのみBランク以下の攻撃を無効化するに留まる。
それを上回る攻撃でもB~B+ランク分の防御数値を削減してからダメージ計算を行う。
更に、戦意が高まれば高まるほど肉体の硬度が上がっていくという特性を持つ。
その為、最終的には通常攻撃では傷を付けるのは殆ど不可能となる。
足の裏には力が及んでいないためここだけには効果はない。
?????
ジェミニ
ステータス
筋力:B
頑丈:C
敏捷:C
魔力:B
幸運:C
宝具:B
クラス別スキル
二重個体:A
2人の英霊を1人のサーヴァントとして召喚。
カストルはライダー、ポルクスはセイバーの能力を所持して召喚されている。
ステータスを共通のものとし、宝具、スキルは個別で所持。
ただし、魔力の消費量は跳ね上がり、ステータスが通常のサーヴァントよりも低下。
そして、片方が消滅すると、もう片方も消滅する。
騎乗:A+
騎乗の才能。獣であるのならば幻獣・神獣のものまで乗りこなせる。ただし、竜種は該当しない。
カストルが所持。ポルクスはBランクの騎乗を所持している。
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。
大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
ポルクスが所持。カストルはCランクの対魔力を所持している。
保有スキル
心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。
共通して所持。
神性:B
神霊適性を持つかどうか。高いほどより物質的な神霊との混血とされる。
ゼウスの血を継いでいる。
ポルクスが所持。
宝具
鍛冶神の鉄拳(ヴァルカン・ナックル)
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ0 最大補足1人
ポルクスが所持する宝具。
自身の手首を切り落とし、そこに装着したヘファイストス製の鉄拳。
拳を使った攻撃の攻撃力が倍近く上がり、拳の防御力も上昇する。