~神魔の後継者~   作:Mr.凸凹

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第03話 『綻び始めた輪廻の記憶』

 

 

 不気味な祭壇を中心に俺とシアンは対峙している。

 

『ファイト……』

 

 セレナちゃんは背中から羽を出して上空へと飛び立ち、短く開始の合図をした。

 

「出し惜しみはしない……〈我が御霊を映す者達よ。古の盟約に基づき、我が真の姿を解き放つ鍵となれ!!〉」

 

 俺が力強く言霊(スペル)を唱えると髪がまるで焔の様に真っ赤に輝き、見開かれた眼は紫水晶の輝きを宿していた。全身には幾つもの聖痕(スティグマ)が浮かび上がっている。

 

『相変わらず人間の限界を超えた能力(ちから)ね……』

 

 シアンがため息を吐きながら頭を振る。

 純白の魔方陣が足元から一瞬にしてシアンの躰を潜り抜けると、その姿が六枚の翼を持つ美しい女神へと変化した。

 

『まずは小手調べ……〈聖なる光の矢(ホーリー・アロー)〉』

 

 シアンの言霊(スペル)によって形作られた数百本の光の矢が俺に目掛けて降り注いでくる。

 だが、光の矢は俺に到達する直前に空間ごと消滅した(・・・・・・・・)かの様に搔き消された。

 

『やるわね……この程度じゃ効かないか。それなら……』

「〈重力砲(グラビティ・ブラスト)〉」

 

 シアンの言葉を遮る様に発せられた俺の言霊(スペル)によって発生した重力場が、シアン目掛けて放たれた。

 

『〈聖なる防壁(プロテクション)〉』

 

 しかし、到達する前にシアンの言霊(スペル)よって現れた光の壁に阻まれて四散した。

 

「やるな、シアン」

『ええ、あなたもね……〈聖なる風の刃(エアロ・フラッシュ)〉』

 

 不可視の風の刃が四方八方から俺を襲ってくる。

 だが、俺はそれが見えるが如く紙一重ですべて避けた。

 

「〈焔の鞭(フレイム・ウィップ)〉!!」

 

 俺は手先から焔の鞭が生みだして、シアンに向けて振りかざした。

 

 シアンはそれをバックステップで避けて、俺に目掛けて腕を伸ばして予め仕掛けていた罠を解き放った。

 

『〈咎人の鎖(グレイプニル)〉』

 

「しっ、しまっ……!?」

 

 俺の躰を無数の鎖が巻き付き動きを封じる。

 

『覚悟は良いかな? 〈創世の焔よ、世界に仇なす者に鉄槌を下せ!! 来よ、裁きの神焔よ!!〉 〈浄魔の焔(メギド)〉!!』

 

 しかし、上位言霊(スペル)は虚しく響いただけに終わった。

 

 シアンは驚いて眼を見開いて固まった。

 

「流石にそれは洒落にならないから防がせてもらったよ」

 

 俺は捕らわれていた鎖を一瞥して解呪しながら肩を竦めた。

 

『忘れてたわ。あなたの眼は……』

 

 不意に俺の視線に射抜かれたシアンの動きが束縛された様に止まった。

 

 俺はゆっくりとシアンに近づいて拳を握った。

 

「〈焔の拳(フレイム・ナックル)〉!!」

 

 俺の言霊(スペル)によって拳に発生した焔がシアンを捉えた。

 

『それまで!!』

 

 セレナちゃんは上空から降り立ち、俺の勝利を宣言した。

 

 俺は自分の封印を掛け直し、シアンに手を差し伸べた。

 

「大丈夫か? シアン、立てるか?」

『ええ、なんとかね……あたしの負けね……約束だから教えてあげる』

「ああ、頼むよ」

 

 シアンを助け起こした俺は封印を解いた反動で躰が軋む痛みを無視しながら頷いた。

 

『セーヤのご先祖様が、楽園(エデン)出身なのは知ってるわよね?』

「ああ、それは知ってよ。でもそれだけじゃ妖魔族が俺を襲う理由にならないだろ?」

『ええ、そうね……セーヤのご先祖様の御名は“クロスフォード・ウィリアム・ウォーレン・アーク・ルシフェル”…この御名の意味する事は分かるかしら?』

 

 シアンとセレナちゃんは俺の様子を固唾を呑んで見つめている。

 

「“クロスフォード・ウィリアム・ウォーレン・アーク・ルシフェル”……えっ!? アーク(・・・)ルシフェル(・・・・・)……って、まさかっ!!?」

 

 俺は自分の考えを確かめる様にシアンに詰め寄った。

 

『その、まさかよ。お爺さま……つまり神王様と人間の女性との間に生まれた娘と、魔王様との間に生まれたのが……』

『お兄ちゃんの家の始祖様なの』

 

 シアンの言葉に続けるようにセレナちゃんが答えた。

 

「なにぃ~~!!? ほっ、本当か?」

 

 俺は信じられないといった様子で聞き返した。

 

『うん、本当よ……これ以上は、教えられないわよ。残念だけどね』

『うん、ごめんなさい……』

 

 二人は済まなさそうに謝った。

 

「ああ、ありがとう……悪いけど少し独りにしてくれないか?」

 

 俺はいつの間にか戻っていた道場に座り込んで考え込んだ。

 

『ええ、分かったわ。さあ、セレナちゃん。行きましょ……』

『うん、また後でね(・・・・・)、お兄ちゃん……』

 

 二人は心配そうに俺を一瞥してから道場から出て行った。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 道場を出て暫く歩いてから、セレナがシアンに訊ねた。

 

『シアンお姉ちゃん……』

『なーに? セレナちゃん?』

『お兄ちゃん、思い出す(・・・・)かな?』

 

 セレナはシアンの表情を確かめるように尋ねた。

 

『どうかしら……まだ分からないわ。完全に思い出すことは難しいわね』

『そうだね。でも……』

 

『はい、ストップ……この話題はお終い。あまりセーヤの負担にならないようにしましょ』 

 

 シアンはセレナの唇に人差し指を当ててながら言った。

 

『……うん、分かったよ。セレナは、今のお兄ちゃんも大好きだし♪』

『セレナちゃんはいい子だね』

 

 シアンはセレナの頭を愛しそうに撫でていた。

 

『くすぐったいよ、お姉ちゃん』

『本当にいい子だよ。あたしは……』

『お姉ちゃん?』

 

 セレナはシアンの顔を不思議そうに覗き込む。

 

『なっ、なんでもないよ……さてと、寝るとしますか』

 

 シアンは慌てた様子で寝室へ向けて歩き出した。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 夢を観た。夢の中で、俺は……

 

『兄ぃ、本当に行っちゃうの?』

『お兄ちゃん、行っちゃだめだよ……』

 

 二人の少女が悲しそうな眼で、俺を見つめている。

 

『ああ、ごめんな。俺は自分の眼で見てみたいんだ。この門の向こう側の世界を……俺の中に流れる人間の血が、そうさせるのかもな』

 

 俺は少女達の頭を撫でなでながら門を眺める。

 

『お爺様も、父上も許してくれた……できれば、笑顔で見送ってくれないかな? 別れの顔が泣き顔だと、少し辛いよ……』

 

 俺の言葉を聞いて、二人はにっこりと微笑んだ。

 

『うん、いってらしゃい。兄ぃ、気をつけてね……』

『お兄ちゃん、いってらしゃい……』

『ああ、行って来るよ。二人とも元気でな……』

 

 俺は笑顔で見送ってくれる少女達に手を振り、まだ見ぬ世界へと足を踏み出した。

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

 

 俺はは朝日に照らされて、目が覚めた。小鳥達の囀りが聞こえてくる。

 

「…………夢か。なんだか、リアルな夢だったな。あの少女達も、どこかで見たことあるような……」

 

 俺は目が覚めて頭がはっきりしてくると、体に当たる柔らかい感触に気がついた。

 俺は慌てて布団をはね除ける。

 

『うーん、むにゃむにゃ……』

『すやすや……』

 

 そこには俺にしがみついたまま寝息をたてる、シアンとセレナちゃんの姿があった。

 

「なっ、なんで……おまえ達が俺のベットで寝てるんだ?」

『あぅ……おはよー。早いね……ほら、セレナちゃん、朝だよ。起きなさい』

『うっ、う~ん……お兄ちゃん、おはようございます……』

「ああ、おはよう……って、違うぅっ!! なんでおまえ達が俺のベットで寝てるのか、って訊いてるんだよ!!?」

 

 俺は思わず朝の挨拶を返したが疑問を吹き飛ばすかの勢いで訊ねた。

 

『え、なんで、って言われても……』

『え~っと……』 

 

 二人はお互いに顔を見合わせながら首を傾げていた。

  

 そこに騒ぎを聞きつけた、ひとみ姉達が駆け付けた。

 

「どうしたの? せいちゃん。えっ? なっ、なんで……あなた達がそこに居るのよ!!?」

「なになに、どうしたの兄貴……はい? なっ、なんで……あんた達が兄貴の部屋に!!?」

「どういたしました。にい様?……えっ? どっ、どうして……あなた達がここに!!?」

 

 ひとみ姉達は目を丸くし、呆然と佇んでいる。

 

『どうしてかって? それは添い寝していたから……』

 

 シアンは欠伸をしながら答えた。セレナちゃんも肯いている。

 

 その言葉を聞いて千歳ちゃんが気を失って倒れた。慌てて皐月ちゃんが後ろから支える。

 

「そっ、添い寝ってあなた達……なに考えてるのよ!?せいちゃんもなんとか言ってよ!!?」

 

 拳を震わせながら、ひとみ姉はシアン達を睨み付けた。

 

「おまえ達……どうして勝手に、俺の部屋に来たんだ!!?」

『勝手にって……一言断ればよかった?』

 

 シアンが眼を擦りながら訊ねてきた。

 

「そう言う問題じゃな~い!! ちゃんと、おまえ達の部屋を用意してあるだろうがっ!!?」 

 

 俺は声を張り上げて叫んだ。

 

 シアンとセレナちゃんはお互いの顔を見合わせて、申し訳なさそうに呟いた。

 

『だってね、セレナちゃん……』

『うん、なんだか眠れなくて……』

「は~ぁ~……頼むから明日からは自分達の部屋で寝てくれ……」

 

 俺はため息混じりに、祈る様に懇願した。

 

『は~い……分かりましたよ』

『ごめんなさい、お兄ちゃん……』

 

 シアンとセレナちゃんは、残念そうに肯いた。

 

「む~ぅ……せいちゃん。今夜は、私と一緒に寝ようよ」

「もちろん。ぼくも」

 

 ひとみ姉と皐月ちゃんが、剥れながら提案してきた。

 

「にい様、私もよろしいでしょうか?」

 

 何時の間に気がついたのか、千歳ちゃんも訊ねてくる。

 

「勘弁してくれ…………」

 

 俺は心底から疲れたように呟いた。

 

 

「よく眠れたか? なにやら朝から騒がしかったようじゃが……」

 

 朝食の席で星爺が楽しそうに訊ねてきた。

 

「ええ……まあ……目覚めは良くなかったですけども……」

 

 俺はため息混じりに答えた。

 

「ふむ。美少女二人に添い寝して貰って、目覚めが悪いと……贅沢な奴じゃのぅ」

 

 龍爺が怪訝そうに呟いた。

 

「うむ。男の風上にも置けん奴じゃ」

 

 仁爺が呆れながら呟いた。

 

「その話は、もうやめてください……」

 

 俺は疲れ切ったように頭を抱えながら呟いた。

 

「そうですよ、お爺様達。せいちゃんが困っているでしょ」

 

 ひとみ姉が俺を庇う様に口を挟んでくれた。

 

「ありがとう、ひとみ姉……」

「今夜は私と皐月ちゃんと千歳ちゃんが、一緒に寝るんですからっ!!」

 

 ひとみ姉の言葉に、皐月ちゃんと千歳ちゃんも肯いている。

 

「あっ、あの~……俺は了承してないんだけど……」

 俺は顔を引きつらせながら俯いた。

 

「それよりも、聖也よ。おまえに頼みがあるのじゃが……」

 

 星爺が思い出したように口を挟んだ。

 

「なんですか?星爺……」

「うむ。今日から、シアン殿とセレナ殿が聖綾学園に通うことになってな。それでおまえにも護衛を兼ねて、通って欲しいのじゃが……」

『よろしく。セーヤ』

『お願いします。お兄ちゃん』

 

 シアンとセレナちゃんは、嬉しそうに頭を下げて言った。

 

「……聖綾って、女学園じゃなかった?」

 

 俺は訝しげに訊ねた。

「そうだよ。私も教師をやっているし、皐月ちゃんと千歳ちゃんも通っているよ」

 

 ひとみ姉の言葉に皐月ちゃんと千歳ちゃんが肯いている。

 

「星爺……俺は、男だぜ? それに学生って年でもないし……」

 

 俺は肩を竦めながら言い放った。

 

「誰も、学生として通ってくれとは言っておらんよ。ちょうど教師が一人産休でいなくなるから、代わりになったらよいじゃろう」

 

 仁爺が星爺の代わりに答えた。

 

「大丈夫なの?」

 

 ひとみ姉が訝しげに訊ねた。

 

「大丈夫じゃ。今朝方、理事会と学園側には伝えておる。聖也殿、頼みましたぞ」

 

 仁爺がにっこりと微笑みながら、俺の肩を叩いた。

 

「…………あっ、あの~もしかして、決定事項なんですか?」

 

 俺は冷や汗を流しながら訊ねた。

 

「「「うむ。嫌とは言わんよな?」」」

 

 星爺達は声を揃えて言い放った。

 

「はい……やらせて頂きます」

 

 俺はそう答えることしかできなかった。

 

 

 

「………俺、何してるんだろうな? 丸で、見せ物みたいだったな……」

 

 俺は職員室で誰ともなしに呟いた。

 

 先ほどまで俺を一目見ようと、女学生達が殺到していた。

 

「なんか疲れてるわね……大丈夫? これでも飲んで、元気出しなさいよ」

 

 ひとみ姉がコーヒーを持ってやって来た。

 

「ありがとう……でも、ひとみ姉? 授業はないの?」

 

 俺はコーヒーを一口飲み、思いだした様に訊ねた。

「ええ、大丈夫よ。それより、すごい人気だったわね。ちょっと、妬けちゃうわ……」

 

 ひとみ姉は意味ありげに微笑んだ。

 

「勘弁してよ……俺なんか見に来て面白いのかな?」

「仕方ないわよ。男の先生なんて少ないもの。それも、こんなに若い先生はね……」

「いくら女学園とはいえ、男なんて珍しくもないと思うけど……同じ敷地内に、男子校の輝諷院学園が在るわけだし……」

 

 俺は首を捻りながら呟いた。

 

「そうでもないわよ……せいちゃん、男前だしね。みんな興味を持つわ……」

「え?そうかな?」

「ええ……だけど、あまり有頂天にならないようにね。じゃないと……」

 

《ピシィ!!》

 

 ひとみ姉の持っていたマグカップに罅が入った。

 よく見るとひとみ姉は満面の笑みを浮かべているが、眼は笑っておらずに額には青筋が浮いていた。

 

「きっ、肝に銘じておきます…………」

 

 俺は冷や汗を流しながら呟いた。

 

 昼休み。 俺は昼食を摂りに食堂に向かっていた。彼方此方から好奇の視線が注がれている。

 

「ああ、いたいた。お~い……兄貴!」

 

 廊下の向こうから、皐月ちゃんと千歳ちゃんやシアンとセレナちゃんの四人が歩いてきた。

 

「こら、学園では“火狩先生”って、呼ばないか」

「は~い……すいませんでした。火狩先生」

 

 俺が窘める様に注意すると、 皐月ちゃんは微笑みながら舌を出して言い直した。

 

「火狩先生。昼食はお食べになりましたか?」

 

 千歳ちゃんが少し恥ずかしそうに尋ねてくる。

 

「いや、まだだよ。今から、食堂に行くところだったんだ……」

『なら、あたし達と食べない?中庭でひとみ先生が、お弁当を持って待ってるの』

 

 シアンの言葉に、セレナちゃんも頷いている。

 

「ああ、いいけど……おまえ達、頼むからもう少し周りの眼も気にしてくれ……」

 

 俺は辺りを見回し、恥ずかしそうに小声で言った。

 

 周りの女生徒達は、俺と眼が合うと恥ずかしそうに顔を逸らした。

 

「「「「「「いただきま~す!」」」」」」

 

 俺達は中庭で茣蓙を敷いて弁当を拡げて寛いだ。

 

「ごめんね。時間があれば、ちゃんとした物が作れたんだけど……」

 

 ひとみ姉は残念そうに言った。

 

「仕方ないよ。ひと……神堂先生……そんなに気にしなくても充分美味しいよ」

 

 俺は唐揚げを一つ摘みながらながら言った。

 

「ありがとう、火狩先生。明日は、もっと美味しいお弁当を作るわね」

 

 ひとみ姉は嬉しそうに、微笑みながら言った。

 

「姉貴……じゃなかった、ひとみ先生。ボクも、手伝うよ」

「もちろん、わたしも、お手伝い致しますわ」

「ありがとう。でも、千歳ちゃんは兎も角、皐月ちゃんは料理が苦手でしょ?」

 

 ひとみ姉は従妹の双子の申し出に対して、少し意地悪そうに微笑んで聞き返した。

 

「うぐぅ……ぼくだって少しくらい出来るよ……」

 

 ひとみ姉の指摘に皐月ちゃんは言葉に詰まっている様だ。

 

『あたしも、手伝うわ』

「ありがと、お願いできる?」

 

 ひとみ姉はシアンに微笑みながら答えた。

 

『セレナも手伝う……』

『「だめ!!!」』

 

 セレナちゃんの言葉に、俺とシアンは即答した。

 

『どうして……』

 

 セレナちゃんは涙目で呟いた。

 

『何でって……セレナちゃんは料理が苦手ってレベルじゃないでしょ……』

「ああ、セレナちゃんには悪いけど……あれを、料理と呼ぶのは、ちょっと……」

 

 俺とシアンは顔を真っ青にしながら震えている。

 

「……そんなに、すごいの?」

 

 ひとみ姉がおそるおそる訊ねてきた。

 皐月ちゃんと千歳ちゃんも興味があるらしく、耳を向けてくる。

 

「ああ。セレナちゃんが料理すると、何故か……」

『爆発するのよね……』

「「「…………」」」

 

 想像を超える内容に、ひとみ姉達は絶句した。

 

『くっすん。好きで爆発するんじゃないもん……』

 

 セレナちゃんは拗ねて俯いてしまった。

 

 俺は慌てて口を開いた。

 

「だっ、大丈夫だよ。料理が出来なくても、セレナちゃんは良いお嫁さんになれるよ」

『……本当?』

 

 セレナちゃんは少し顔を上げて、上目遣いで訊ねてきた。

 

「ああ、本当だよ」

 

 俺は優しげな笑みを浮かべて微笑みかけた。

 

『だったら、お兄ちゃんが貰ってくれるの?』

「えっ? それは……」

 

 俺は覗き込むように尋ねてくるセレナから、恥ずかしそうに眼を逸らした。

 

《スパーン!》

 

 どこから出したのか、シアンがハリセンでセレナちゃんの頭を叩いた。

 

『いっ、痛い……なっ、なにするの、お姉ちゃん……』

 

 セレナちゃんは涙目で頭を押さえながら、シアンに訊ねた。

 

『調子に乗るんじゃないの!』

 

 シアンはニッコリと微笑みながら、セレナちゃんの額を突付いた。

 

「さあ、早く食べちゃいましょ。お昼休みが終わちゃうわ……」

 

 ひとみ姉の言葉にみんなは、再び弁当を食べ始めた。

 

 

 放課後。俺は学園の武道館に居た。そこには沢山の見物人が集まっていた。

 

「……どうしても、戦らなきゃならないのかい?」

「ええ……貴方がこの学園に相応しいかどうか、見極めさせていただきます……」

 

 如何にも“体育教師です”といった風体の中年教師が、面白くなさそうに言った。

 

「神堂先生と親しそうに……それに生徒達にも人気が……」

「はい? 何か言いましたか?」

 

 俺は不穏な雰囲気の体育教師に真顔で聞き返した。

 

「いっ、いえ……何も……では、始めましょうか」

 

 体育教師は慌てた様子で、取り繕うように捲くし立てた。

 

「ああ、見届人をお願いできますか?理事長……」

「うむ。引き受けよう。宜しいですかな?」

 

 俺の言葉に応えるように、聖綾学園理事長である仁爺が現れた。

 

「りっ、理事長……あっ、あの……これは……」

 

 体育教師は慌てた様子で、言葉に詰まっている。

 

「かまわんよ。納得いかんなら、己で確かめなされ。しかし、本気でやらんと怪我では済みませんよ。せい……火狩先生はお強いですぞ。能力(ちから)も精神も……」

「はっ、はい……分かりました。全力でお相手させて頂ます」

 

 仁爺の言葉に体育教師は真剣な表情で、俺と向き合った。

 

「では、はじ……」

 

 開始の号令を掛けようとした、まさにその時に学園全体が大きく揺れた。

 

「地震か? いや、違うな……」

 

 俺は外から感じる気配に気が付き、外へと意識を向けた。

 

「た、大変です!!? こ、校庭に、妖魔の大群が……」

 

 慌てた様子で、一人の教師が武道場に飛び込んできた。

 その言葉に周りは騒然となった。

 

「ばっ、ばかな!!? この学園には、強力な結界が張られているのだぞ……」

 

 体育教師は愕然とした様子で狼狽えている。

 

「ひとみ姉、生徒達を安全な場所へ! 皐月ちゃん、千歳ちゃんは輝諷院の生徒達を! シアン、セレナちゃんは周りに被害が出ないように、結界の展開を! 〈我が御霊を映す物達よ。古の盟約に基づき、我が前に顕現せよ!!〉」

 

 俺は校庭へと飛び出していった。

 

 




Mr.凸凹「ちくしょう、べらぼうめぇ~~!!」

左舞『あっ、あんた……何でそんなにちんまいのっ!?』

Mr.凸凹「何でって……前回灰も残らないぐらいに消し飛ばされたから、再生が間に合わなかったんだよ」

右舞『つまり自業自得ですね♪』

Mr.凸凹「ひどっ!? まあ、これはこれで中々の見応えのある景色が見えるから良いけどね♪」

左舞『何を言って……あっ!! このぉ~~変態野郎!! スカートの中覗き見たな!!』

右舞『まあまあ、落ち着いて右舞ちゃん……貴方もその姿のままなら困りますよね?』

Mr.凸凹「そうだよな……この景色は捨てがたいけど色々と不便だな」

左舞『捥ぐぞ、この野郎!!』

右舞『はいはい、落ち着いて左舞ちゃん……では、こちらを食べて元の大きさまで戻りましょう』

Mr.凸凹「なにぃ~!? オイラの為に弁当を……ではいただきま~す♪ どれ、この卵焼きから……」

《チュド~ン!!》

左舞『はわわっ!! ばっ、爆発した!? もっ、もしかして右舞ちゃん……』

右舞『さて……もうお別れの時間ですね♪』

左舞『(黒い、黒いよ!! 悪魔的なアタシより黒すぎるよ!!)……そうだね』

左舞&右舞『『次回もお楽しみに~♪』』
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