~神魔の後継者~   作:Mr.凸凹

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第05話 『幾千の夜を経た再会』

 俺達が屋敷に戻ると、玄関ホールに大きな荷物が届いていた。

 

「なんだ……?」

 

 俺は訝しげに箱を凝視しながら嫌な予感に背筋に冷や汗が流れていた。

 

「あっ……ここにメッセージカードがあるわよ。えっ~と……叔母様からせいちゃん宛みたいだわ。はい、せいちゃん」

 

 ひとみ姉は一枚のカードに気が付き、手に取って俺に手渡した。

 

「“親愛なるせいちゃんへ。ママから再会のプレゼントよ。さあ、直ぐに、あ・け・て・ね♪”だとっ……!?」

 

 俺は読み終わると露骨に嫌そうな表情でカードを無意識に握りつぶそうとしたが、一応大事に胸ポケットにしまってそのまま歩き去ろうとした。

 

『あれ? 開けないの?』

 シアンは歩き去る俺に問いかけてきた。

 俺はは疲れた様にため息を吐きながら立ち止まって振り返った。

 

「疲れているのにお袋につき合っていられるかっ!」

 

 俺が吐き捨てる様に言い放つと箱の中から声が聞こえてきた。

 

「しくしく……久し振りの再会なのにママは悲しいわ……」

 

 シアンとセレナちゃんはびっくりして箱の近くから後ずさっている。

 ひとみ姉達はやっぱりといった表情で箱を開け始めた。

 箱の中からは俺のお袋である“火狩やよい”が出てきた。

 シアン達は更に眼を丸くして固まってしまっている。

 

「お久しぶり、せいちゃん。少し見ない間に、更に凛々しくなって……ママは嬉しいわ」

 

 お袋は五年振りに再会した息子である俺を抱きしめる様に両手を拡げて歩み寄ってくる。

 

「ひとみ姉達、後は任せた……俺はもう寝るから……おやすみ」

 

 俺はため息を一つ吐くと、踵を反しながら従姉妹達に頼んだ。

 我が母親ながら今一つ行動原理が理解できない。

 まあ、俺を心の底から愛してくれているのは色々な意味で痛いほど分かってはいる。

 

「ええぇ~~!? ママと再会できて嬉しくないの……?」

 

 お袋は悲しそうに座り込んで床にのの字を書いている。

 

「おやすみなさい、せいちゃん……さあ、叔母様は私達とお茶でもしましょう」

 

 両脇を皐月ちゃんと千歳ちゃんに抱えられて、お袋は引きずられるように奥へと消えた。

 シアンとセレナちゃんは暫くしてから、我に返った様に慌ててひとみ姉達を追いかけていった。

 

 

「おはよう。やはり、皆が揃うと賑やかでよいのぅ……」

 

 朝食の席で星爺が嬉しそうに微笑みながら朝の挨拶をしている。

 

「星爺……親父達が帰ってきてたんなら連絡しておいてくれ」

 

 俺は呆れた様子でため息混じりに言った。

 おかげで昨日はいらん心労が重なってしまった。

 五年振りに目の当たりにしたお袋の愛情表現(奇行)は心構えがないと疲れるだけだ。

 

「すまん、すまん。やよいに頼まれて黙っておったんじゃよ……それよりも、昨日は何やら大変じゃったみたじゃの……」

 

 笑顔で語っていた星爺の表情が真剣な物へと変わった。

 

「ああ……ご丁寧な事に妖魔族が俺の命を狙ってきたんだ」

「せいちゃん、なにか恨まれるようなことをしたの? 妖魔族を虐めたとか? ママはそんな子に育てた覚えがないわよ……」

 

 お袋の的外れな言葉に俺は力が抜けて味噌汁の椀に顔を突っ込みそうになる。

 

「やよい。少し黙っていなさい……聖也、心当たりはあるのかい?」

 

 俺の親父である“火狩神威”が確かめるように訊ねてきた。

 

「親父達は始祖様が楽園出身なのは知っているよな?」

「ええ、聞いたことがあるわ」

 

 ひとみ姉の母親である“神堂神音”さんは肯きながら答えてくれた。

 

「聖也君。それがなにか関係あるのかい?」

 

 ひとみ姉の父親である“神堂焔”さんが不思議そうに訊ねてきた。

 

「多分、星爺達も知らないと思うけど……始祖様の御名は“クロスフォード・ウィリアム・ウォーレン・アーク・ルシフェル”……この御名の意味するところが分かるかい? 星爺?」

 

 俺の質問により皆の視線が星爺に集まった。

 星爺は暫く考え込んでいたが、ふと何かに気付いた様に眼を見開いた。

 

「……まっ、まさかっ!? しっ、シアン殿……我等が始祖様は貴女の……」

 

 星爺の言葉に龍爺と仁爺の二人も気が付いた様に愕然としている。

 シアンは静かに首を縦に振っていた。

 

「あの……どういうことでしょうか?」

 

 皐月ちゃんと千歳ちゃんの母親である“月代神那”さんは今一つ理解できないといった様子で訊ねてきた。

 

「つっ、つまり……儂等のご先祖様に神王様と魔王様がおられるということじゃ……そうじゃろ? セレナ殿……」

 

 龍爺の言葉にセレナちゃんは神妙な面持ちで首を縦に振って無言で答えた。

 

「「「ええぇ~~!!? ほっ、本当なのですかっ!?」」」

 

 お袋や神音さんと神那さんの三人は驚きのあまりひっくり返りそうになった。

 

「俄かには信じられないな……」

 

 皐月ちゃんと千歳ちゃんの父親である“月代真人”さんは訝しげに呟いた。

 

「しっ、しかし……それだけでは聖也殿が、妖魔達に命を狙われる理由にはならないのではないじゃろうか……」

 

 仁爺は誰ともなしに呟いていた。

 

『ええ……セーヤが命を狙われる理由の一つは、人の身でありながら断片的にとはいえ混沌の能力(ちから)を操れるからでしょう……』

 

 シアンは肩を竦めながら皆を順番に一瞥する様に見回しながら答えた。

 

「シアンちゃん……どうしてそんなに悲しい様で懐かしい気持ちになっっているの? 」

『えっ? どっ、どうしてって……』

 

 ひとみ姉の気遣う言葉にシアンは驚いた様子で聞き返した。

 

「ああ……ごめんなさい。私の能力(ちから)は天輪眼の内の一つの紅眼……つまり、読心術の一種でなのよ」

 

 シアンはひとみ姉の話を聞いて唖然としている。

 

『…………てっ、天輪眼。しかも紅の……そして、皐月ちゃんは縮地の能力(ちから)……まっ、まさかっ!! ちっ、ちなみに千歳ちゃんの能力(ちから)は先見ですか?』

「ええ、そうですよ。それが、なにか?」

 

 シアンの質問に千歳ちゃんは小首を傾げながら答えた。

 

『お姉ちゃん。そっ、それってまさか……』

 

 セレナちゃんも何かに気が付いた様子で訊ねている。

 

『うん。間違えないみたいね……』

 

 シアンはセレナちゃんに頷きながら答えて、そして思い出した様に答えた。

 

『そして他の理由は兄ぃ……あなた方の始祖様が原因ですね。兄ぃはあたし達が幼い頃に人間界に旅に出ていたんですよ……そして、三人の女性との間に子を儲けました。それが、神堂家や火狩家と月代の御三家のご先祖様達です。セーヤは特に兄ぃの血を色濃く引き継いでいる様ですから……』

 

 星爺達はシアンの話を聞いて、呆然としている。

 俺は改めて己の内に流れている血の重さを実感していた。

 

「時間も残り少ない。さあ、朝食としようじゃないか……」

 

 星爺は沈黙を破るように声を掛けてきた。

 俺達は黙々と朝食を食べ始めた。

 

 

 昼休み、俺は一人で学園の屋上にいた。ベンチに座りながら煙草を吸い、空を何と無く見つめていた。

 そこにシアンとセレナちゃんがやって来た。

 

『ここに居たのね……隣、いい?』

「ああ、好きにしろ……」

 

 俺は空を見つめたまま答えた。

 

『お兄ちゃん、考え事?』

 

 セレナちゃんが少し寂しそうに訊ねてくる。

 

「ちょっとね……」

 

 俺は煙草を携帯灰皿に入れ、ベンチから立ち上がりシアン達の方を向いた。

 

「少し、変なことを聞いていいかい? いや、変でもないか……」

 

 俺は自分でもびっくりするぐらいの真剣な表情で訊ねた。

 

『ええ、あたし達が知っていることなら……』

 

 シアンも真剣な表情で肯き返した。

 横でセレナちゃんも肯いている。

 

「今朝、言っていたよな。始祖様はおまえ達が幼い頃に旅に出て……そして、三人の女性と子を儲けたって……俺、夢で見たんだよ。同じ内容を……これって、どういうことなんだ?」

 

 俺はシアン達の表情を確かめる様に見つめている。

 

『今はまだ答えることはできないわ……ごめんね』

 

 シアンは顔を逸らしながら小さな声で呟いた。

 

「そうか……話せるようになったら教えてくれればいい……」

 

 俺は少し悲しげな笑顔で笑っている自分をどこか他人事の様に感じていた。

 

『ごめんね、お兄ちゃん……いつかきっと話してあげる』

「ああ、期待しているよ……さて、飯を食いに行こうか。腹が減ったよ。ひとみ姉達が中庭で待ってるんだろう?」

 

 俺はお腹を押さえながら二人に茶化すように微笑みかけた。

 

『うん。行きましょう……あっ!! 先に行ってくれる?』

「なんでだ?一緒に行こうぜ……」

 

 俺が不思議そうに訊ねると、シアンは顔を赤くして俯きながら佇んでいる。

 

『乙女に、言わせないで……』

 

 俺はその言葉で気が付いて顔を赤くして外方を向いた。

 

「ごっ、ごめん……先に行っているな……」

 

 俺は顔を赤くしたまま、それだけ言うと走り去って行った。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 聖也が居なくなるとシアンは、ぺろっと舌を出して微笑んでいた。

 セレナが真剣な表情でシアンに訊ねてきた。

 

『お兄ちゃんが夢で見たって言っていたけど……』

『ええ、少しずつだけど思い出しているみたいね……』

『やっぱり、あの霊薬を飲ましたのは……』

 

 セレナは俯きながら呟いた。

『どうかしらね……』

 

 シアンは複雑な表情をしながら歩き出した。

 セレナは心配そうにシアンを見つめながら後を歩いていった。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 放課後、俺が職員室で手持ち無沙にしていると校内放送が流れた。

 

『火狩先生、火狩先生。お客様が、お見えです。至急、応接室までお越しください。繰り返します……』

「誰だろう?まあ、行って確かめるしかないか……」

 

 俺は首を傾げながらも応接室へと向かっていった。

 

「火狩です。入っても宜しいですか?」

 

 俺は応接室の扉をノックしながら訊ねた。

 

『どうぞ。お入りください……』

「失礼します……」

 

 中に入ると一人の少女が座っていた。

 俺は始めて見る筈のその少女を何処かで見た気がしていた。

 少女を見て懐かしい様な、それでいて何故か切ない気持ちになった。

 

『この場合は、はじめまして……と言うべきかな』

 

 少女は無邪気な笑顔で笑いながら挨拶をしてきた。

 

「この場合は……? やっぱり、どこかで会ったことが……」

『ええ、遠い昔に……』

 

 俺の問いに少女は笑顔のまま答えた。

 

『立ってないで、お座りになったら……』

 

 俺は少女に勧められるままソファーに腰掛けた。

 

「今日は、何のご用でしょうか?」

 

 俺は年下に見える少女に何故か敬語を使い話しかけた。

 

『用って程のことじゃないんだけど……一度、今の貴方(・・・・)に会っておきたかったの』

「今の俺に……つまり、前とは違うということなんですか?」

『う~んっとね……なんて言ったらいいかな……確かに違うけども、全く違うわけでもないし……そうね。魂は同じでも肉体は違うわね』

 

 少女は俺の頭からつま先まで眺めながら答えた。

 

「魂は一緒でも肉体は違う……つまり、あなたは俺の前世(・・)の知り合い、ってことですか?」

『まあ、そんなところね……』

 

 俺は少女の言葉に半信半疑なのだが、心のどこかで信じる自分が居ることに気が付いた。

 そして、未だに少女の名前を尋ねていないことに気付いた。

 

「まだ、お名前をお伺いしていませんでしたね……」

『あら、そうだったわね。知りたい?』

 

 少女は意味ありげな笑顔で訊ねてくる。

 

「差し支えなければ……」

『うーん。どうしようかな……教えても良いけど……』

 

 少女は暫く考えるように腕を組んで首を傾げている。

 

《コン、コン、コン》

 そこに扉をノックする音が響いた。

 

「どうぞ」

 

 俺は扉の向こうへ短く声を掛けた。

 扉が静かに開くとシアンがお盆を持って入ってきた。

 

『失礼します。お茶をお持ちしました……えっ!? まっ、まさか……貴女は……!?』

 

 シアンは少女の顔を見ながら驚いた様子で佇んでいる。

 

「あれ、何でシアンがお茶を持って来るんだい?」

『ひとみ先生に頼まれて……』

 

 俺の問い掛けに我に返った様にシアンは答えた。

 

「知り合いか?」

『ええ、遠い昔に会ったことがあるわ……』

 

 俺の問い掛けに少女が代わりに答えた。

 

『何故、貴女がここに……それもあの時の姿、そのままに……』

『いずれ、分かる時が来るわ……それよりも、姉上様達はお元気かしら……』

 

 少女は笑顔でどこか懐かしむ様にシアンに訊ねた。

 

『ええ、元気ですよ。あなたのことは覚えてないでしょうけど……』

『そう、やっぱり一緒なのね……まあ、覚えていないのは仕方ないわね……』

 

 少女は少し悲しそうな表情で俯いた。

 

「お姉さん?俺も知っている人ですか?」

『ええ、よく知っている方ですよ……』

 

 俺の問い掛けにに少女は顔を上げて答えた。

 そして、俺の首に掛けられている首飾りに今気が付いた様に凝視している。

 

『これは、もしや……』

『ええ、あの時の首飾りですよ……』

 

 少女の呟きにシアンが答えた。

 少女は俺を見つめ、微笑みながら立ち上がった。

 

『今日はこれで失礼します……名前は、次にお会いする時に教えて差し上げます。楽しみにしておいてください……』

 

 少女は俺の頬に口づけをし、はにかむ様に微笑みながら去っていった。

 

「あの時の、首飾り?」

 

 俺は少女が去っていった扉を見つめながら呆然としている。

 シアンは俺を複雑な表情で見つめていた。

 

「シアン? どうした? 俺の顔に、なにか付いているか?」

『な、何でもないよ。それより、お茶が無駄になったね……』

 

 シアンは慌てた様子で、話を逸らす様に捲し立てながら苦笑している。

 

「そうだな。折角だから貰おうか……」

 

 俺はお盆からティーカップを取り、一気に飲み干した。

 

「さて、そろそろ下校時間だぞ。早く帰れよ……それとも一緒に帰るか?」

『そうだね。セレナ達も誘って、一緒に帰りましょう……先に校門で待っててね』

 

 シアンはお盆を手に応接室から出ていった。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 シアンは給湯室で先ほど出会った少女の顔を、自分記憶にある一人の少女と照らし合わせ考え込んでいた。

 

『やっぱり、間違えないわね。それに……』

『お姉ちゃん?どうしたの?』

 

 セレナが心配そうに顔を覗き込み訊ねた。

 

『あっ……セレナちゃん。何時の間に?』

 

 シアンは少しビックリとした様子で聞き返した。

 

『最初から居たよ。気づかなかったの?』

 

 セレナは不思議そうにしながら答えた。

 

『ごめん、ごめん。ちょっと考え事をね……』

『もしかしてお兄ちゃんのお客さんのこと?』

『…………』

 

 シアンはセレナの台詞を訊いて言葉に詰まった。

 

『……やっぱり、そうなんだ。さっき廊下ですれ違ったけど、あの人は……』

『セレナちゃんも気付いたの……ええ、あれは間違えなく彼女よ』

 

 シアンはどこか遠い眼をしながら答えた。

 

『でも、お姉ちゃん。あれから千年以上も時が流れているのに……』

『そうね。普通の人間なら生きていられないわね……でも、彼女は存在している。転生もせずあの時の姿、そのままに……』

『これってどういうこと?』

『さあ、解らないわね……唯一解ることはセーヤに再び巡り会うために、彼女は永い時を生きてきたって事ぐらいかしら……』

 

 シアンとセレナは顔を見合わせながら首を捻っていた。

 

 




Mr.凸凹「痛つつ……くそ、シアンの奴も手加減ぐらいしろよな……」

左舞『その様子ならシアン様はしっかりとお役目を果してくれたみたいだね♪』

Mr.凸凹「あっ!! 左舞ぃ~~!!お前等は作者(オイラ)を何だと思っているんだっ!!」

右舞『何って……言っていいんですか?』

Mr.凸凹「うぉっ!? やっ、病み上がりとは思えないほどの爽やかに見えてちっとも笑っていない表情で言わないでくれぇ~~!!」

右舞『あら……残念ですわね』

左舞『そんな事より、右舞ちゃん……まだ全快って訳じゃないから休んでないと……』

右舞『そうですわね……早く本調子に戻らないとマスターにご迷惑をお掛けしますわね』

Mr.凸凹「さあさあ、布団は暖めておいたよ! オイラが添い寝してあげるからね♪」

右舞『左舞ちゃん……』

右舞『Yes Mam.〈汝、咎人よ。悪魔の囁きに導かれ、更なる煉獄へと堕ちよ!!〉〈奈落への羽撃き(ルシフェンウィング)〉』

Mr.凸凹「ぐぎゃぁ~~!!?」

左舞『任務完了♪ これで心置きなく休めるよ、右舞ちゃん』

右舞『ありがとう、左舞ちゃん』

左舞&右舞『『それでは、次回もお楽しみに♪』』
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