魔法少女リリカルなのは~記憶を探すもの~   作:杉坂 響夜

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第三話

フェルグラントという少年に圧倒的敗北をして意識を失った俺は夢を見ていた

 

 

 

 

「助けて!!」

 

今生で初めてその言葉を聞いたのは転生してから半年が過ぎた頃だったと思う

 

家造りが終わって管理局を調べているうちに違法研究所のことを知り、そこで同年代の子供が実験の被検体になっていることを知った

 

当時、記憶もなく精神年齢も退化していた俺は『僕が助けないと!!』という正義感だけで計画性なんてものもなく行動に出た

 

勿論、アルケミーは止めた。

 

けれど、俺はその忠告を聞かなかった

 

その結果、被験者の子供たちに余計な希望を持たせ、より深い絶望に突き落とすこととなった

 

その時のことは今でも忘れられない。そんなことをユエラたちが現れるまで何度も繰り返し、俺が侵入したがために処分された子供たちも居た

 

それでも俺は努力を続けた

 

『俺が強くなればそんな苦しみからも解放される』

 

『もっと・・・もっと力が欲しい・・・何者をも寄せ付けない強大な力が!!救いたい人を全て護れるような力が欲しい!!』

 

『もう誰も目の前で泣かせたくない!!』

 

一人で実験して武器を造り、血反吐を吐くほどの回数で異世界の野生動物を相手に特訓をしたりする日々を過ごしていた

 

誰かにやれと言われたわけじゃない

 

ただひたすらに俺の心があの光景を否定していたんだ。

 

『望まぬ苦しみから開放してあげたい』と無意識に思い

 

『自分と同じ孤独の苦しみを味あわせたくない』と記憶がないのに魂が叫んだ

 

他の人にとってはそれだけの理由かもしれない

 

でも、俺はそれだけ(・・・・)の為に剣を手に取り、銃を造り、人を殺した

 

このやり方は人間としては間違いなく間違っていたのだろうと思う

 

けれど

 

 

『力』も

 

『記憶』も

 

『知識』さえも持たなかった俺に残された唯一にして最善の方法だった

 

ユエラたちが来るまでの

 

半年間(・・・)

 

普通に過ごしていればたったそれだけの期間だ

 

しかし、俺が実際に経験した半年は

 

それはとても長く・・・・長く、遠い時間だった

 

その地獄を越えて

 

ユエラたちの特訓により着実に実力をつけ

 

 

それから1月後に初めて被験者の子供を2人救った名前は『フィナ』と『フネ』という姉妹だった

 

フィナは元々綺麗な栗色の髪をしていたらしいのだが、実験のため白くなった髪を三つ編みにした色白肌をした9歳の女の子で研究所に連れて行かれる際に共に暮らしていた両親を殺され、妹であるフネと共に連れ去られたが、残った唯一の家族であるフネの身代わりになって元々体の強い方ではなかったのに無理をして実験を受け続けた少女だった

 

自分を犠牲にする行動をとっていた俺にとっては当時から最大の理解者と呼べる人間だった。

 

フネは俺と同い年の7歳の少女で栗色のボブカットが特徴的で姉の優しさを一心に受けた甲斐あってか、研究所で姉に比べて少量とはいえ薬物投与を受けていた身でありながら、気遣いのできる明るい性格のままの性格を維持した元気な女の子だった

 

何故助け出したのが女の子だけだったのかというと笑えないことにそこの研究者全員がロリコンだった(・・・・・・・・・・・・・)という頭を抱えたくなる理由があるのだが、どうでもいい話なので置いておく

 

まぁ、何にしてもそれが俺のこの世界に転生してから最大の成功で感動によって涙を流した二度目の瞬間だった

 

ちなみに一度目はユエラたちと家族になった時だ

 

 

それから俺は努力を重ね10歳にもならない身でありながら人外と素手で正面から戦えるほどの強靭な肉体を手に入れ、ジュエルシードに封じられていた強大な力の数々と前世の記憶、それによって大量の知識を手に入れた

 

けれど・・・・

 

 

 

 

 

 

家族であるフェイトを泣かせてしまった。

 

 

転生直後とは比べ物にならないほどに強大な力を手に入れ、鍛錬を欠かした日などないにも関わらず圧倒的な敗北を味わった

 

 

『俺は・・・弱い。家族の身どころか自身の身体すら満足に守れない程に・・・・・強くなりたい。・・・もっと、強く・・・誰よりも強くなりたい!!』

 

そう渇望して夢の中で空に向かって手を伸ばした

 

 

 

そこで手を包まれる様な温かな感じがした

 

それと同時に

『・・・・司!!・・・零・・・起き・・・・・司!!』

 

と酷くノイズ混じりだが、確かに誰かに呼ばれているような声がした

 

『誰だ?俺を呼んでるのは・・・』

 

そして俺の意識がそちらに向かうに連れ、段々と声はクリアに届き始め

 

『起きてよ!!零司!!』

 

と言っているのがわかった。

 

声の主がフェイトであるということも

 

時々泣いているのかと思える様な声啜り泣く様な声まで聞こえた

 

必死に俺のことを俺を呼んでくれていた

 

『フェイトが、俺を呼んで泣いている。・・・・何で俺の家族を泣いているんだ?俺が弱いから・・・また、誰かを泣かせた。弱いままじゃ誰も護れない。・・・誰も俺の周りから居なくなってしまう。・・・・嫌だ!!前世で両親を!親友すらも護れなかった苦しみを繰り返すなんて!!』

 

そう言って俺は手にある温もりを握り締め、目を覚ました

 

 

目を覚まして最初に見たものは泣き顔のフェイトとそれにつられて泣いたのか泣き顔のアルフの姿だった

 

左手をみると二人がしっかりと手を握ってくれていた包帯の少し巻かれた自身の右手があり

 

少し奥でプレシアとレグナーが背もたれのない椅子に座ったまま器用に眠っていた

 

次に意識が戻るにつれて嗅覚が覚醒し、病室特有の複数の薬品の匂いが鼻腔を刺激した

 

そこで俺はここが自分の家の病室ではないことを理解した

 

ここがもし俺の家の病室ならば薬品の臭いを嫌がる狐が居るため臭いが薬品棚から漏れないようにしているため、ここまで匂いがするようなことがないからだ

 

・・・・なら、ここは何処だ?

 

普通の病室には似つかわしくない巨大なディスプレイ

 

現在の地球の技術では不可能な技術で造られている計器の数々

 

中には体調を管理する脈拍数、血圧、呼吸量などの測定器だけでなく、魔力量や俺の体質を分析するようなものすらあった

 

生憎今の俺の体質は前回見せた時と違いただの人間だからコレといって調べられても困るような事はないんだけど

 

 

 

 

・・・・・気分が悪いな。せっかくの家族温かさを実感した感動が台無しだ

 

 

ここまでの状況を考えると・・・間違いなくアースラの病室なんだろう

 

 

で、あいつらがここに居ないのは

 

『俺が管理局を嫌っているのを前回の事件の時の態度で知っているから』

 

『そこで寝ているレグナーあたりが説明して目覚めるまで入らないように言い聞かせたか』のどちらかだな

 

 

・・・・っと、いつまでも起きてから『ボー』っとした顔で考え事してるせいかフェイトが余計に心配そうな顔になってる

 

「おはよう、フェイト」

そう言って俺は心配してくれたふたりに精一杯の笑顔で微笑む

 

「「零司!!」」ガバッ!!

 

それに対してフェイトとアルフはこれまでの心配のせいかもの凄い勢いで抱きついてきた

 

 

 

うん、これぞ家族だ♪といえるような感動的な場面だと思わないか?

 

しかも抱きついてくれるのは二人とも間違いなく美少女(または美女)に分類される女性だ

 

男としては嬉しいんじゃないだろうか?

 

うん、前世の俺から見てもその状況は結構傍から見ても羨ましいものであると思う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けれど、覚えているだろうか?俺はここに運ばれた直前、パワードスーツが完全に壊れるような一撃を脇腹に受けている

 

それだけでなく蹴り飛ばされて地面に叩きつけられた際にも全身を打ち付けており骨折こそしていないが、全身の至る箇所で打撲と打ち身になっている箇所が多々ある

 

 

極めつけに

 

 

俺、いま魔力は搾取されたせいでほぼ()です

 

 

よって、俺の耐久力は普段の数分の1程度しかない

 

つまり何が言いたいかというと

 

 

うん、はっきり言う

 

いくら女性とはいえ同い年のフェイトだけならともかく肉体が成人の使い魔であるアルフまで抱き着いてくるとなると今の俺の弱った肉体に耐えられる限度を完全に超えてしまい

 

 

 

「痛・・っ!?ってぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 

足の先から頭の頂辺を稲妻が駆け上がるかのように激痛が走り

 

激痛により盛大な悲鳴を上げることとなったわけだ

 

 

しかし激痛はまだまだ終わらない

 

何故なら

 

「零司!零司!零司ぃ~~~~!!」

 

「良かったよ~~~~~~~!!」

 

と言って俺が目覚めたことと大丈夫そうだということに気を取られているこの二人は完全に俺の声が耳に入っておらず

 

抱きついた姿勢のまま満身創痍の俺の体を絞り上げてきたからだ

 

「痛ッ!!いたたたたたたた!!」

 

体のいたるところが悲鳴を上げ、右腕に刺さっている計測器のチューブやらからも地味にチクチクとした痛みが断続的に続き

 

絞り上げられているため腹部のけられた場所の痣も痛みを増していく

 

タップをして離して貰おうにもフェイトに二の腕のあたり、アルフに肘から下を完全にホールドされているため二人の背中や肩などにタップするどころか手首から先しか動かすことができない

 

かと言って体を身じろぎさせて離れようとするのは今以上の痛みに襲われることになるのと『心配してくれたフェイトたちを拒絶するかのような仕草になるのではないか?』という葛藤により実行できない

 

 

家族に愛されているという幸福と全身の激痛という板挟み

 

これが俗に言う『天国と地獄』だろうか?

 

いやいや待て待て・・・・痛みでテンションとか思考が変な方向に行ってるが落ち着くんだ俺・・・って、それ以上力が強くなるのは・・・・っ痛ってぇーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!無理無理、痣だと思ってたけど絶対脇腹折れてるぞコレ!!ちょっとでいいから待とうかお二人さん!!今そこは拙い、限りなく拙いから速やかに離れるんだharry harry

 

うがぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 

 

『このまま二人が落ち着くまで待つしかないのか?』

 

 

 

と諦めかけた

 

 

 

 

しかし、そこで俺は思い出した

 

 

 

 

この病室にはまだ希望(レグナーとプレシア)が残っていることを・・

 

 

そう思って俺は僅かな期待を胸に二人を見た

 

 

すると

 

「・・・五月蝿いな」

 

「ふぁぁ・・・起きたのかしら?」

 

とこの騒動によって目覚めたふたりの姿が!!

 

 

最初は少し眠そうに目頭を擦っていたが

 

 

すぐに完全に目が覚めたのか周囲の確認をはじめ

 

 

騒ぎの発端である俺たちの姿を視界に捉えた

 

『いいぞいいぞ!!間違いなく今俺に波が来てる!!』

 

 

 

そこで若干考えるような仕草をしたと思えば数秒のうちに答えが出たのか二人は同時に納得したかのような表情を見せた

 

それにより

 

『ヨッシャ!!これで二人の心配を無碍にせずこの状況から解放されることが出来る!!』

 

と思い俺は二人の目を見て即座に救援を求めるためアイコンタクトで『助けてくれ』と訴え掛ける

 

 

 

しかし、二人から帰ってきた返事は

 

『僕の義娘(むすめ)を心配させたんだから自分で責任を取りなよ』

鬼かお前は!!ここで看病してたんなら俺の今の状況知ってるだろ!!この状況でそんなこと言ってる場合か!?いや、確かに心配させたのは悪かったけれど一旦助けてくれないかな?なぁ?

 

『あぁ、フェイト可愛いわ!!フェイト可愛いわ!!』

貴女は一旦|夢の世界から帰国してくれませんかねぇ!!

 

といった感じで片方は我関せずを貫き、片方はこの半年の間にこれまでの生活の反動かフェイトを溺愛しだしたため発症した重度のドーターコンプレックスによる親バカが発動して俺の現状など眼中にないご様子・・・絶対後で俺の今の痛み疑似体験できる機械作って復讐してやるッ!!

 

 

 

どうやらこの場にいる今抱きついて痛みを与えているフェイト達以外の家族には助けるって選択肢がゴミ捨て場にでも放棄されてるらしいのでこの状況の打開は望めないだろう・・・

 

クソッタレ!!この世にやっぱりマトモに仕事してる神や仏は居ないのか!?居るのは天使侍らせて豪遊してるチャラい神様とか転生者たちの行動を映画感覚で楽しんでるような奴や人の人生に干渉しまくって不幸にさせてやろうとか考えるような暇人な神様しか居ないのか!?もっと仕事してくれませんかねぇ!!

 

 

 

 

 

・・・とか考え始めて最早この状況は諦めるしかないと考え始めた

 

 

 

 

だが、神はまだ俺を見捨ててはいなかったのだ

 

救世主は室内ではなく室外からやってきた

 

プシュー。

 

自動ドアがひとりでに開き

 

 

「今大丈夫かい?」

 

部屋の外から希望(クロノ)が現れた

 

『うん、俺今この瞬間初めて『管理局とこれから先協力しても良いかな~』って思った。(一部限定だけど)』

 

が、俺の期待とは裏腹にクロノは俺の状況を見るに

 

「出直し『出直さなくていい!!』・・・そうかい。」

 

入ってくるのを止めて敵前逃亡を開始したのを俺が念話で強引に引き止めた

 

前言撤回。やっぱりこいつ等好きになれないわ~

 

 

『あっぶねぇ~、状況確認とともに撤退のを始めようとしやがったッ・・・この状況で逃げられてたまるかッ!!絶対に手を貸させてやる!!というよりここでもう一度逃げようとしやがったら後で引っ捕えてデバイススッて凶暴な肉食動物のいる異世界にでも飛ばしてやるぞコラァ・・・!!』

 

と完全に痛みにより正常な思考を手放した俺はクロノに対して理不尽な思考を働かせているのにも気にかけず念話で脅しをかけるといった方法でクロノという協力者を得た俺は

 

その後若干精神的に苦労したが3分ほどでこの地獄を脱出し、終わると同時に今回の案件の情報共有と事情徴収のためクロノに連れられて移動することとなり、俺はレグナーたちと共に速やかにコードを引き抜き移動に取り掛かった

 

その際チラリと見えたカーテンの隙間には高町さんが静かに寝息を立てていたのを見て

 

『あの騒動の中でよく眠っていられるな』とか『大した怪我はないみたいだ・・・良かった』といったことを考えて密かに安心していた

 

・・・けれど

 

 

「アイツ等、今度会ったら絶対に叩きのめす」と心に誓ったのはごく当然のことだったと思う

 

肝心な実力がまだ足りていないことを除いては・・・

 

ちなみにブリッジへの道中終始フェイト達が謝ってきていたのを宥めるのが大変だったのをここに追記しておく

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アースラ ブリッジルーム

 

 

先程のひと騒動を終えてクロノによりアースラのブリッジに案内された俺たちは入ってすぐにアルケミーとレイジングハートに記録されていた戦闘データ(編集済み)を確認のために再生して情報の共有化を図った(俺とフェルの会話中にあった神についての会話記録は編集でカットして見せていない)

 

 

その記録映像が終了すると

「では、今回の戦闘により得られた情報の整理を行いたいと思います」

 

とリンディ艦長が発言し、意見交換が開始された

 

「まず今回の事件は戦闘データ上でも確認されている赤い少女が所持していた魔導書

 

『ロストロギア 闇の書』が事件の発端だと言えます

 

この魔導書が闇の書であることは十六夜君の提示した戦闘データに出てきた『フェルグラント』という少年が言っていただけで確実ではありませんが、魔導書自体の形状からもほぼ確実だと思われます」

 

まず最初にクロノから挙がった発言を皮切りに「俺が全力の魔力で戦わなかった理由」「俺が何を考えているのか?」とか答えたくもないものをズケズケと図々しく聴いてくるのに苛立ちを覚えたが『ノーコメント』で全てバッサリと切り捨て

 

シグナムたちの急激な魔力増強が『カートリッジシステム』という今では危険が伴うため使われていないものだということを知り

 

俺の方はフェルグラントの魔力ではないエネルギーの正体を偶然とはいえ知っていたのでカートリッジシステムについての礼代わりに『気』というリンカーコアを用いて使う魔法とは違う生体エネルギー操作によって生まれる訓練次第で誰にでも習得できる技術の一種であることと

 

フェルグラントが化け物というにも生ぬるい次元でこの気を使いこなしているということを伝えたところで

 

これ以上はお互いに有意義な情報交換は望めないと考えたため程なくして会議は終了したが、フェイトはなのはの様子が気になるため今夜はアースラに泊まるそうなので付き添いでプレシアとアルフが残り、傷を癒すために『メディカルポッド』を使いに家に帰る俺と明日の稲刈りと今回の話し合いのことについて『本部』にいるみんなに俺の代わりに報告をしに行くレグナーのみで転移で帰宅し

 

俺はドラゴンボールのフリーザ編に出てくるような薬液に浸かるタイプの医療用具として俺の過去の実験記録と材料の性質を元に薬品関係に明るい知恵を持っていたプレシアの協力を得てこの半年の間に実現に至った『メディカルポッド』に速やかに入り薬液に包まれて眠るのだった

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~翌日

 

早朝、メディカルカプセルの中から目覚めた俺は早速体の調子を確認するためにストレッチを始めた

 

その際に蹴りを受けた脇腹には大きな痣が出来ていたが、現在は綺麗に無くなっており、いつも通りの体のキレがあることが確認できたので今日の稲刈りに予定通りに参加するとアルケミーでレグナーに連絡を入れ、フェイトにもメールでなのはの調子を尋ねたが昨日遅くまで看病していたのか寝ているらしく、フェイトではなくプレシアから今日の稲刈りには途中から参加するということとなのはは一度目覚めた時の様子だとコレといって問題はなかったようだ

 

・・・・リンカーコアの問題でしばらく魔力を使えなくなっていることを除いて

 

 

 

家にある異世界へと繋がる扉の中で『本部』へ向かう扉をくぐり抜け、心配しているだろう家族に体の調子などを伝えて安心させて

 

兼ねてからの予定通りに本部近郊にある田んぼにて稲刈りをしているというわけだ。

 

 

まぁ稲刈りと言ってやることはほとんど変わらない

 

その方法というのも俺とユエラが普通の鎌ではなく、背丈よりも大きい大鎌を振るって根元から刈り取り(もうこの時点で普通よりもダイナミックな気がしないでもないけど気にしないでくれ)

 

その刈り飛ばされた稲をアルケミーが収容し、一区域ごとに刈った稲をトロッコに乗せてそのトロッコを子供たちが運ぶ

 

といった工程の繰り返しだ

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~稲刈り終盤

「これが最後の一本!ハァ!!」ブン!!

 

スパッ!!

 

俺は最後の稲を切り飛ばしてアルケミーが収容するのを見届けると一旦一息つくために鎌の柄を支えにしてその柄に両手を重ねて顎を乗せてもたれ掛かる(身長より鎌の持ち手の長さの方が高いので斜めになっているけど)

 

それを見てユエラは『だらしないぞ』と言ってくるけど俺の体が流石に昨日大怪我というべきだろうか?をしたことにより治療が完了しているとは言っても疲労が残っているため本調子ではないのをわかっているのかしつこくは言わないけれど、俺よりも小さい子供が真似をするかもしれない上に褒められた格好ではないことに気付くと疲れた体に鞭を打ってトロッコまで歩く

 

「フぅ~~~。まさか半日もかかるなんてな」

 

そして鎌をアルケミーに仕舞ってユエラに話しかける

 

「仕方ないだろう。初めての時に比べて作業量自体が何倍にも増えたんだからな」

 

トロッコに稲を積み込んでいてはみ出しそうなものを剣の側面で叩いて内側に戻して整えながら答えてくれる

 

そうして完全に綺麗な黄金色の山が出来上がったところで

 

近くにいた俺が救出してから数年来の付き合いのある子供たちに話しかける(ちなみに服装は俺を含めて全員汚れてもいいようにと灰色の作業服を着ている)

 

 

 

「フネ(ボブカットの9歳の少女で俺が初めて救出に成功した女の子の一人)、ラディオ(焦げ茶色の坊主頭の11歳の少年)、ワッカ(真っ黒い肌で髪も黒いドレット頭の8歳の少年)。横転した時用のネット持ってきて」

 

「わかった~」「ラジャー」「ガッテン♪」

 

そう言うと3人は手に持っていたホームセンターで見かけるような緑色のネットを広げながら持ってきて俺とユエラがその端を掴んで受け取り慣れた手さばきでトロッコに固定すると

 

ネットを持ってきた3人に今残っている他の子たちと一緒にそのトロッコを運んで貰うように言うと

 

その三人は誰がトロッコを動かすかをジャンケンで決めると嬉しそうに他のメンツを連れて集めに行って、ジャンケンに勝ったラディオ主導のもと近くにいた残り7人の子供達(初参加の面々・・・要するにあの事件以降に俺が研究所から助け出した子供達)を連れてゴンドラのレバー型のスイッチを起動してゴンドラと一緒に脱穀場へ歩き出した

 

そして残された俺たちは

 

「この後のことはエリザスレインたち天使組とセラウィに任せて俺たちは1時間休憩、昨日から働きずめのユエラはその後自由時間という名の息抜「そこまでしなくても私は「じゃ、俺は遅れてくるフェイトとプレシアとアルフを迎えに行って料理班に合流するから~」・・・ってオイ待て!!逃げるなッ!!・・・・・・・・まったく、人の話も聞かないで走って逃げるとは・・・戻ってきたら特訓だ」

 

そう言いながらもユエラは元気に走っていく弟のような存在である零司の姿を見て薄い笑みを浮かべて本部に備え付けられている温泉に向かって歩き出すのだった

 

 

 

~~~~~~~~~~~料理班

 

「あれ?零司さん、一人だけですか?」

 

調理室のドアを開けると大鍋を両手で持った水精が

 

「あぁ、水那。フェイトたちなんだけど来れなくなったってさっきメールが届いた。詳しくは後で晩餐会が終わったあとで説明するよ」

 

「そうなんですか・・・フェイトさんも楽しみにしていらしたのに残念ですね」

 

そう言って壁に掛けてあった中華鍋を手に取り

 

「さ、みんなも待ってることだし今日の料理は豪勢にするよ♪」

水那と作業に集中してる子供たちに微笑みかける

 

「「「「「はい♪」」」」」

 

俺の掛け声とともに晩餐会の料理(百人分)に取り掛かるのだった

 

~~~~~~~~~~

 

その後、俺達の奮闘の甲斐もあり長さ30mもある長テーブルを埋め尽くすほどの魚料理(ムニエル、刺身、焼き魚など)や肉料理(角煮、生姜焼き、ハンバーグなど)と本部近辺で子供たちが栽培している野菜料理(ポテトサラダやラタトゥイユや普通の微塵切りのサラダなど)国籍にとらわれない料理の数々をバイキング形式で本部に集まっていた全員で食べ尽くしたところで晩餐会が終わり

 

 

俺は今後の作戦会議と昨日の件についての詳しい報告のためいつも家にいるメンバーと共に本部の一室にある会議室の円卓に腰掛け

 

残りの今回の話し合いに参加するメンバーであるこの本部を管理している3()人の登場を待っていた

 

そんな静寂な空間で

 

ガチャりと部屋にあった静寂をかき乱す音が静かな部屋に響き渡り一同にその音源に視線を向けた

 

 

人間ではありえないほどの艶を持つ水色の膝裏ほどまである髪とモデル顔負けなほどの美貌とスタイルを持つ天使エリザスレイン、その補佐をしている腰ほどまである綺麗なブロンドの髪と青い甲冑が印象的な天使『メロディアーナ』はそれぞれ輝かんばかりの純白の翼を持ったユエラたち同様に力を持つ僕の仲間だ(生憎この本部の結界外では戦えないけれど)

 

その二人が席についたところで

 

再び

 

ガチャりという扉を開く音が聞こえ俺は最後に残った人物に心当たりがあるため扉が開くのを見て内心でため息をつくが顔に出さず

 

 

扉の向こうから登場する人物を待つ

 

病的なまでに白い肌、解けば腰ほどにまである綺麗な白髪を三つ編みにし、シンプルなメガネをかけた俺お手製の車椅子に乗った少女フィナ(・・・)(今回の話の冒頭であった俺が初めて助けた姉妹の姉だ)が車輪を肘置きにあるレバーを前に倒すことで静かな移動音で部屋の中の自身の席に移動する

 

「お待たせしました。子守唄を歌っていたら遅くなってしまいました」

 

そう言ってフィナは俺の方を見て微笑む

 

「気にしなくていいよ。本来この会議はなかったはずなのを急遽集まってもらったんだから」

 

そう言って資料を手渡す

 

「さて、今年も慌ただしい収穫祭が終わって一息つきたいところだけど、そうも言ってられない状況に現在俺たちは瀕している

 

確認のために言うけれど先日俺は3人の襲撃者と出会いそのうちの一人に敗北した」

 

普段の俺の実力を知っているメンバーを含めて正直信じられないといった表情を浮かべているものの事前に知らされていたせいかこれといった声はあがらない

 

それを確認すると俺は一つ頷き話を続ける

 

「そして全身打撲と打ち身と脇腹の骨折、武装を数本完全に破壊された挙句、主兵装級の槍一本の刀身にヒビが入り修繕ドッグ行き・・・・っと、まぁ散々な被害を(こうむ)ったわけなんだけど、ここまでに質問はある?」

 

「「「「「・・・・・」」」」」

 

 

「結構、まぁこれに関しては今生きてるんだし気にするなってことで《《ギロッ!!》》・・・良くはないけど保留に回そう。うん、悪かったから皆睨まないでくれ・・・・割と本気で怖いから・・・・・・ふぅ~~~。まぁここに居る全員にとって重要なのはここからだから一旦冷静な思考で聞いてくれると助かる」

 

そう言ったら「なら最初から神経を逆なでするような発言をするな」とか「どれだけ心配したと思っているのですか!?」などという発言で怒濤の勢いで責め立てられるけれど流石に今回の案件は一人の問題ではないため全員が落ち着くのを待つ

 

 

待つこと5分でようやく落ち着きを取り戻した面々に俺の命が狙われていることを話したのだった

 

そこで全員の雰囲気がかつてないほどに重いものとなっていた

 

何故なら

 

ユエラたちと俺の間にある秘密があったからだ

 

俺が死ぬということ

 

それはすなわち

 

『俺の願いによりこの世界に顕現したユエラたちの消失を意味する』

 

そして『天使たちも例に漏れないためこの本部の管理体制が維持できなくなることも意味する』

 

何よりここにいる子供たち全員が路頭に迷い面倒を見れる人間がいなくなることになる

 

つまり俺の死はこの本部そのものの死を意味する

 

だからこの件は俺たちにとって最重要問題となっているのだ・・・・本当にやれやれだよ

 

半年前のジュエルシード件でだって実は度重なる説得の末にようやく集める許可が貰えたんだ

 

それをもう一度やる羽目になるなんてな

 

「で、前回の戦闘結果からじゃ俺は何の抵抗もできずにこのままでは殺されるっていうのが目に見えてるんでな・・・・俺は俺の誇りとこの日常、仲間を護るために俺は・・「・・もういいわ」・・・え?」

 

 

 

ポカンとする俺を尻目に俺の言葉を遮ったエリザスレインは続ける

 

「十六夜零司、貴方の目はもっと強くなりたいという者の目をしているわ。つまり、今から貴方が言おうとしていることはそういう事なんでしょう?それは今ここにいる全員が理解しているからそれ以上は言う必要はないわ。貴方が今言うべきは他のことのはずよ?違うかしら?」

 

・・・違わない。俺はもっと先に言うべきことがあった

 

「零司、お前が初めて会った時から強くなることに貪欲だったことは私やセラウィ、エミリッタがこの中の誰よりも知っている。・・・だから言わせてもらう。」

そう言ってユエラは一度言葉を区切り、俺の目をしっかりと見据え、二の句を紡ぐ

 

(おとこ)ならば自分の信念を貫き通すためなら脇目もふらず邁進しろ。お前が何事にも全力で集中できるようにすることが私たちの役目なのだからな」

 

その言葉と共にセラウィ、エミリッタ、レグナーと家にいる面々と天使たちが無言で頷き

 

胸に熱いものを感じた時、右手の袖を引っ張られるような感覚があり視線を向ける

 

すると車椅子の少女、フィナがいつの間にか近づき俺の袖を右手で掴んでいた

 

その表情を見ると慈愛に満ちた聖母を連想させるような笑顔で微笑んでおり、何かを懐かしんでいるようでもあった

 

「零司君、貴方が私と妹を初めて助けてくれたときのこと覚えてる?」

 

彼女は問いかける

 

「覚えてるよ。俺にとって障害で最も達成感を感じた瞬間だ。今でも二人を助けた時の嬉しかったことは夢に見るよ」

 

「良かったです。私も嬉しかった。まるでおとぎ話のヒーローみたいに現れて私たちをあの研究所から救い出してくれたんですから。そして貴方が私たちのような子達を次々と救出するにつれて思うようになりました。貴方はヒーローみたいなんじゃない私たちにとって本物のヒーローなんだと」

 

「ハハッ・・・ヒーローか。照れるね」

 

けど、俺はそんな崇高な存在じゃない。俺はただ自分と同じ感情を持つ人を自分が目にしたくないってだけで自分のために動いただけの自分本位な人間なんだから

 

 

けれど、その言葉は俺の口から発せられることはなかった

 

 

なぜなら

 

「貴方は決して自分本位な人間なんかではありません」

 

俺がその言葉を発するよりも前にフィナが俺の言葉を先回りして話したからだ

 

そして彼女はこう繋げた

 

「自分本位な人間では血反吐を吐いてまで赤の他人を助けようとしません。ですからそれが出来たから貴方は本物の英雄(ヒーロー)なんです。ですから、私たちのことは気にしないで全力で強くなってください。私たちはそんな貴方だからこそ力を貸すんです。誇りに思えるんです。」

 

俺のやってきたことは・・・誰かのためになっていたんだ。

 

そうしてみんなを見るするとエリザスレインは「言うべきことを忘れているんじゃないかしら?」という表情で俺の顔を見ていた

 

そういえばまだ言ってなかったね

 

「みんな」

 

「「「「「「何だ?(どうかしましたか?)」」」」」」

 

「留守を任せるね。ちょっと強くなりにいってきます」

 

そう言って右手を上げた俺に対して皆は笑顔でこう言った

 

「「「「「「行ってらっしゃい零司♪」」」」」」

 

皆の温かい言葉を背に受け、俺は異世界へ旅立つ。もっと強くなるために・・・

 

『いってきます』・・・ただそれだけで良かったんだ。俺にはこんなにも俺のことを信じてくれる仲間たちが居る。俺が彼女たちにかける言葉はただ信頼して皆に頼ることだったんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう考えたところで一つのことに気づく

 

「あっ、明日からまた学校だった」

 

俺の修行の旅は来週まで延期になりそうだ




そしてフェイト達関連のこともすっかり忘れているというちょっとドジな零司君でした(笑)
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