零司Side
「あ~、流石にこの結果は予想してなかったわ」
アースラに取り敢えず高町さんたちと共に帰還して直ぐに俺は今回の作戦の予想を下回る成果に思わず愚痴をこぼす
「ごめんね。私がもっと早くあの結界を壊していれば・・・」
「ううん、私がもっと早く到着すれば結界の破壊できた時間がもっと早くなってたはず・・」
俺の不用意な発言に思いつめたようにそういう高町さんとフェイト。それによって自分の失言に気がついた俺は即座に訂正を入れる
「あっ!?高町さんたちのせいじゃないから!!今のは単に向こうの作戦にまんまと乗せられた俺の浅はかさに対する愚痴だから・・・・って、なんだか自分で言ってて何か自分が情けなくなるな。もうこの話はやめよう」
「「そうだね」」
こうして俺たちは暗い表情のままブリッジに向かう
そして長くもない道のりを経てブリッジルームにたどり着いた俺達はそのまま今後のことについて話し合うことになり、リンディ提督の私室に集まった
メンバーはこの部屋の主であるリンディ提督を勿論としてクロノ、俺、高町さん、フェイト、プレシア、レグナー、ユーノの八人が座っていた
「さて、集まってもらって早速ですみませんが最初に報告しておきます。
というリンディ提督の発言を半ば予想していた俺は内心で
『あぁ、やっぱりできなかったか。』
と思ったが、落胆はしなかった。元々この作戦はフェルグラント以外の守護騎士を目標とした作戦だ
魔力を使用しないフェルグラントの移動を追跡できるような装備は俺自身も魔法専門のアースラも持っていないため・・・というかあんな規格外な存在を予測できるような未来予知じみた能力のない俺たちにそんな装備を準備できるわけもないし、この中で唯一気についての知識がある俺も自身で明確に認識すらできていないものを計測できるような機械なんて作れる気がしない・・・さっきの戦闘で何か流れ込んでくる不快な感覚があったのは仙術とかハッケイ?とかいう技術なんだと思うけど
何にしても情報が足りなさすぎる
幸い魔王状態の俺にはバッドステータス系の能力は一部の例外(例えばあのクソ神の呪い)を除けば基本的には効かないみたいで勝手に正常に戻るみたいで魔法を使えなくなるといった最悪の事態が起こらなかったのはラッキーだったと言える
俺よりも気に詳しいだろう九尾の狐である『琥珀蓮』に話を聞くという手も無いではなかったのだが、生憎・・・・
『ちと異世界の温泉巡りに行ってくるでな。酒を用意して待っておれ』
と言ってフェルグラントが現れる一ヶ月前から消息を絶っているため連絡が取れないため俺の今知っている以上の知識を得ることができない
少なくとも『気』というのは俺の前世の記憶が正しければ他の作品で使われるエネルギーであるはずなのだから・・・
証拠にこの世界には魔力に関する文献はすぐに見つかるが、気というエネルギーは認識されていないためか詳しい記述も無い
あっても空想などの産物としての記述のみだった
そのため、気を探知するレーダーはフェルグラントが現れてすぐに造ろうとは考えたのだが情報不足で造れなかった
そこまで考えたところでリンディ提督が次の言葉を紡ぐ
「本来の作戦通りに零司君の能力を使えば彼を見つけることはできます。」
そう、確かに俺の能力『復元する世界』を使えば24時間以内に出会った人物を召喚することが出来る。過去にフェイトを召喚して同盟の話を持ちかけた方法がコレだ
しかし問題は・・・
「ですが、これを使っても今のままでは先ほどの戦闘の繰り返しになるだけで何の意味もありません。あくまで私たちの目的はロストロギア『闇の書』の主を見つけることです。」
「そうですね。彼と戦うのはこちらが消耗するだけで向こうの情報を得られないことを考えるとその方法は悪手以外の何者でもありませんね」
リンディ提督にクロノが同意する
「全員で戦えばなんとか勝てないのかな・・・?零司君」
「確かに高町さんの言う通りフェルグラントの体調が完全じゃないだろう今なら確かに勝てるかもしれないな。けれどあくまでもそれはアイツと正面からやり合える人間がいてこそだな。俺はさっきの戦闘であいつ同様に消耗してるし・・・近接戦闘の技術の俺の師匠であるレグナーでもあそこまで膂力に差があればさっきの赤いオーラを纏うまでもなく防ぐ手足が使い物にならなくなる」
「確かにね。いくらジュエルシードを体内に宿しているとはいえ僕が今使えるのはせいぜいゴーレム召喚とその操作、遠距離では砲撃は恐らく撃てないし、撃てても当たらないから多少魔力弾を撃つくらいのものだろうね。残りの魔力のほとんどは僕の現界に回っているようだから飛行魔法すら戦闘に使うほどの高度なものとなるとデバイスを持っていない僕は総てマニュアル制御だから確実にそちらの制御にかかりきりになって戦いにすらならないだろうね。僕と彼では飛行のスピードに差がありすぎる」
「そうね。レグナーを前線にあげたとしても肝心の彼は身体強化をフルに使った零司の攻撃があの程度だった以上曲がりなりにも大魔法使いを名乗っている私でも怪しいところね」
「それ以前に僕らの目で追えない彼にどうやって攻撃を当てるかってことも問題だね」
俺の発言のあとにレグナー、プレシア、ユーノが意見を述べる
「私は二人の戦闘はギリギリ目で追えてたけど、あのスピードにはついていける気がしない・・・かな?」
へぇ~あのスピード、フェイトには見えてたんだ~・・・・・ん?
「「「「「え?」」」」」」
いきなり言われた新事実にこの場にいる全員が驚き間の抜けた声を出す
「あ、あれ?みんなどうしたの?」
当の本人、フェイトはそれがどれほど異常なことなのかわかっていない様子だ
「流石僕らの愛娘だね。プレシア」
「そうね。私に似て才能のある子だとは思ってはいたけれど・・・・けれど、まさかこれほどとは思わなかったわね」
「恐らく俺との模擬戦でよく高速戦闘をする際に俺のフリューゲルブリッツを何度も見てるからその影響で動体視力が鍛えられたんだろうな」
と勝手に納得するレグナー、プレシア、そして俺
「凄い!!凄い!!凄い!!フェイトちゃんすごいよ!!」
と自分のことのように喜ぶ高町さん
ほかの面々はというと
「彼の関係者は化物ばかりなのかしら・・・」
「もう報告書を考えるのが馬鹿らしくなってきた」
「凄いどころの問題じゃない気がするんだけど・・・」
とリンディ提督とクロノ、ユーノは頭痛を覚えていたがしばらくすると騒ぎも沈静化し
そこで見計らったようにリンディ提督は
「取り敢えず現状は説明したとおり、向こうの居場所がわからない以上私たちの側から動くことができません。なので一旦部屋に戻って休息をとってください。3時間後にまた集合ということでよろしいですか?」
全員に解散を促す
これに全員賛成し、俺たちはリンディ提督の私室を出ることになった
そこで今更ながら血に汚れたインナーの着心地の悪さと自身の血生臭さを再認識したため、リンディ提督に
「すみません、服が血塗れで気持ち悪いので少しシャワーを借りてもいいですか?」
と言った俺に対し空かさずリンディ提督は笑顔で
「構いませ―――――――――」
「「ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」
答えようとする声を高町さんとフェイトが大声で遮った
それにより、私室にいたメンバー全員が何かあったのかと思いその場で足を止めた
そして、原因の二人はお互いに内緒話をして確認をするようなそぶりをすると急に俺の方を向きフェイトが
「零司の魔法で操ってた血って元々は零司の魔力を変換したものだったよね?」
と高町さんと共に詰め寄るように聴いてきたので若干気圧されながらも事実なので頷くと
「「やっぱり!!」」と勝手に納得したような声を出す
いや、二人してそんな納得したような声を出してるけど俺を含めて他の全員は事態に着いていけないでおいてけぼり状態なんだけど?
そんな俺たちの内心を代弁するかのようにリンディ提督が彼女たちに「なのはさん、フェイトさんどういうことなのか私たちにも教えて貰っても良いかしら?」と優しい口調で聴いてくれた
流石年長者!!頼りになる!!と内心思いながら同じく年長者であるプレシアとレグナーに視線を向けると気不味そうに顔を背ける二人がいた・・・そこまであからさまに気にしなくても良いのにと思いながらもそれ以上は触れないことにして高町さん達の話を聴くことにした
その話を聞いた俺たちの反応は
「また物凄いことを考えたな・・」
「可能なのか?」
「理論的には可能ね」
「元々カートリッジシステムに使われるカートリッジを相手から奪うか守護騎士を捕まえてその魔力周波を元に探索する予定だった零司提案の本来の作戦を考えると元々の案がぶっ飛んでいる分だけに僕としてはどちらも苦労しそうだという意味に関しては相違ないけどね」
俺の反応を聞いてクロノは疑問を持ち、プレシアが肯定し、レグナーは感想を述べる
「ということはこの作戦を使えば!!」
「ユーノの予想通り理論的には可能だね。問題は血を浴びたフェルグラントが血を落とすような真似をしたら臭いが落ちてしまう恐れがある以上作戦の決行を急がないといけないってことだけどな」
「・・・どうかな?」
不安そうな表情をする高町さん
「高町さんたちの案は悪くないよ。問題は若干微調整が必要だからフェルグラントが臭いを消すまでに実現できるかが不安だって問題だけだから」
「何か手伝えることある?」
「いや、調整に関しては俺とプレシアさん、レグナーで足りるし最後の電子計測関連をエイミーさんに任せるくらいだから今はコレといってないかな・・・それよりも」
「??」
「さっきの戦闘で結界を破るときに結構魔力消費してただろ?高町さんと一緒に回復に専念してくれ」
そう言って俺アルケミーから魔力を回復させる薬『マギレーション』という俺が調合した魔力の回復力を活性化させる能力を助長させる青紫色の液体の入った試験管を2本手渡す
「それを言うなら零司こそ休まないとっ!!」
「そうしたいのはやまやまなんだけど、生憎休んでられる時間がなさそうだ。俺は魔導師として戦う人間である前に、誰かの役に立つもの、人の願望を形にして叶える工匠だからな。
それに・・・」
そこで俺は言葉を区切り、レグナーの方を向き
「無理不可能、限られた時間で誰かの予想を超えるものを創り出すってワクワクするからな?なぁ?それとも専門外の計測器関係では僕に勝てないって負けを認めて休んでる?」
「フフ、そうだね。君の言う通り僕らは工匠だ。それに確かに君と違って計器関係は僕にとって専門外だけど、面白いじゃないか!!君に負けたと思われるのも癪だ。僕に挑戦するということがどういうことか教えてあげるよ・・・・ククッ」
「あら?二人はもうやる気みたいね?・・・けれど、
私も混ぜなさい!!!」
「参加者は揃ったね・・なら、勝者は敗者に自分のどんな実験でも手伝わせられる権利を得る。敗者はその誓約を命に関わらない限り絶対遵守・・どうだい?」
「問題ない」
「上等よ!!」
「「「なら・・・勝負だ(よ)!!」」」
そう言って俺とレグナー、プレシアは我先にとブリッジに向かうのだった
それを見てここまで話を聞くのに徹していたリンディ提督は
「もうこのまま彼らに任せておけば事件が解決するような気がしてきたわ・・・」
と眉間を押さえてため息混じりに呟くのだった。
フェルグラントSide~
「シャマル、本当にこの世界で合ってるんだよね?」
「そのはずですが?どうかしましたか?」
「いや、僕はてっきり今頃シグナム達は魔獣を狩ってると思ってたんだけど、この世界にはそれらしき気の動きがないからね。それにこの世界って思った以上に生き物が多いのか気の反応が多すぎてすぐには見つけられない」
「強い気から特定してみたらどうですか?」
「そうしてみる・・・・・・ダメだ。強い気の中にもシグナム達の気はない」
「ちょっと待ってください。今私の方でも連絡を――――――っ」
そう言ってシャマルがシグナム達に念話で連絡を取ろうとした瞬間
『シャマル・・・フェル・・』
ヴィータから念話が届いた
「ようやく繋がりましたか・・・ヴィータ、今どこにいるんですか?・・・はい・・はい・・・え?」
ヴィータと念話をしてシャマルは現在地を聞こうとするが、次第に表情が陰っていく
それを見て不審に思った僕はシャマルに訪ねてみることにした
「どうかしたの?シャマル」
「フェル君、落ち着いて聞いてください」
長年ハンター生活で培われた感で今とても良くない状況に僕らが置かれていることは何となく感じ取れた。そしてシャマルから僕らにとって最悪の一言が告げられた
「はやてちゃんが攫われました。仮面をつけた襲撃者は二人組でシグナムとヴィータ、ザフィーラが重傷です。」
僕らの望む平穏はここまで動きを見せなかった第三者の思惑により今まさに消え去ろうとしていた・・・それを理解した僕は静かに拳を握り締め、怒りを堪えながら重傷のシグナム達、攫われたはやての居場所を探した
そして、しばらくして見つかったシグナムたちの治療を終え、全員なんとか命は取り留めたが、ついにはやての居場所を掴むことはできなかった