魔法少女リリカルなのは~記憶を探すもの~   作:杉坂 響夜

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第拾四話

フェルグラントSide

 

「シャマル・・・シグナムたちは大丈夫なのかい?」

 

僕とシャマルはあれからしばらくしてバインドで簀巻き状態に拘束され、意識をギリギリ保っていたシグナムと気絶していたザフィーラとヴィータを発見したが全員本当に重傷だった

 

シグナムは左腕複雑骨折、助骨数本に罅が入っていたのに加え、腹部に刺し傷とそこから夥しい出血をしていたしヴィータは念話を行ったのがバレた際に蹴られたのだろうと思われる頭部打撲とリンカーコアからの強制蒐集による魔力欠乏症で血の気が引いていたがそれ以外の外傷はない

 

そのため彼女たちにはまずシグナムの刺し傷をシャマルが簡易的に治療し、僕が気を流し込むことで体力の低下を抑え、魔力欠乏症による倦怠感と虚脱感を少しでもマシなものにしていた

 

「シグナムは先程まで意識を保っていましたが治療中に何があったのかを伝えると気を失ってしまいました。ヴィータちゃんは魔力と体力をあとは回復させれば近いうちに回復します。・・・ですが、ザフィーラは」

 

 

問題は・・・魔力が全く感じられないほどまで蒐集され尽くされたザフィーラだ。おそらく最初に魔力を奪われたのだろう。彼には人間形態を保つ魔力すら残っておらず、狼の姿で横たわっていた・・・あと少し発見が遅れていれば体力の低下が深刻なことになり助からなかっただろう一番の重傷者だった

 

「治療は済んで命は取り留めましたがいつ起きるかはわかりません」

 

「そっか・・・」

 

そう言って僕は額を抑える

 

『僕がもっと早くシグナムたちを見つけられていれば―――っ!!』

 

そう思わずにはいられなかった

 

こうなったのはあの猫たちが僕らを見張っていたのを知っていて放置した僕の責任だ!!

 

『あの猫たちが動いても僕や守護騎士のみんながいれば問題ない』

 

『あと少しで闇の書が完成して幸せに暮らせるんだ!!だから今は他のことよりも一番の障害になりうる十六夜の動向にだけ注意しよう』

 

そう思っていた僕の慢心と油断がこの事態を招いたんだ・・・・すべてあの猫たちの掌で踊らされて僕の十六夜零司に対する警戒心まで利用された

 

だから僕にあの日に接触したのは僕をはやてから引き離させるための作戦

 

「シグナム・・・ヴィータ・・・ザフィーラ・・・ごめんっ・・・!!」

 

僕は目の前に横たわる三人に心から謝罪した

 

自分の不甲斐なさ・・・無力感に気が狂いそうだ

 

僕は前にいたモンスターハンターの世界でもこれまでこれといった苦戦をしたことがなかった

 

近接戦闘では僕の反応速度、肉体強度の限界を越える攻撃なんてほとんど受けたことがなかった

 

気円斬で切り裂けない敵はいなかった

 

かめはめ波はどんなドラゴンのブレスもかき消した

 

それは古龍と呼ばれる太古から存在する龍であっても例外はない

 

界王拳を習得してからは山ほどある巨大な龍と殴り合って討伐したことすらある

 

村ではG級ハンター、最強のハンターなんて言葉を言われたこともある

 

けれど、誰も僕を本心から認めてはくれなかった

 

当然だ。誰が山ほどある巨大な龍を殴り殺す異常な存在を同じ人間だと思える?誰が気なんていう普通の人間に使えない特別な力・・・異能をもつ化物を仲間だと言える?あの世界の両親ですら気弾でリオレウスを追い払ったのを見てから僕を化け物を見る目で見た

 

僕にとって・・・その両親に付けられた『フェルグラント』ではなく、転生前『ライト・バルデラ』の頃から数えても初めて向けられた恐れを宿した人間の目だった

 

そして僕はその場で捨てられ、近くの村まで歩いたが両親はやっぱりいなかったが僕のことを錯乱した両親が村中に触れ回った挙句逃げ出したらしく僕が数日後にたどり着いたこの村では僕は来て早々爪弾きものとなった・・・今思えば村に入れただけラッキーだんたんだろうけど、あの頃の僕は石を投げられるが当たり前、ご飯は自分で近くにいた小型の竜『ランポス』を討伐して食料を確保していた

 

それにより僕は村では無視され始めた

 

そんな中で村で実績のあるハンターたちの姿を見て

 

『僕もああすれば村の皆に認められるのかな?』

 

子供特有な単純な思い込みでそう考えてギルド向かうとハンター登録を行い、既に気の力で人外の域に達していた身体能力で楽々試験を合格して僅か12歳で最年少ハンターとなった

 

けれど、飛竜を討伐しても・・・水竜を討伐しても・・・雷を操る獣を討伐しても

 

世界中で恐れられていたいろんな古龍を討伐しても誰からも認めてもらえなかった

 

そして、8年が経ち、20歳になったあの日、洞窟で採集クエスト中に落ちた変な穴の中を数日間彷徨い、はやてに出会って両親から捨てられてから初めて他人に認められた

 

僕の力を怖がるんじゃなく、凄いと言ってくれた・・・

 

 

 

 

―――――――――――――それなのに

 

僕は自分の大切な人一人守ることも出来なかった

 

新しく家族に迎えてくれたはやてを・・・最初は疑いながらも仲間として認めてくれたシグナムを・・・はやてのことで何度も喧嘩したヴィータを・・・何よりも僕がみんなと仲良くなるのを手助けしてくれたザフィーラを

 

 

「護れなかったんだ・・・・っ」

 

心が引き裂かれそうな感覚を押し殺すかのように僕は拳を握り締めた

 

すると・・・

 

「っ!?ザフィーラ!?起きて・・・」

 

僕の右手に獣の前足が置かれる感触があり、ザフィーラが起きたのかと思って顔を向けるが

 

「・・・・・」

 

ザフィーラは依然深い眠りについたままだ

 

けれど・・・声が聞こえた気がした

 

『そんなところで悲嘆に暮れていて主は戻ってくるのか?』

 

確かにそう聞こえた

 

そして僕がどうするべきか悩んでいると

 

「はやてちゃんを探しに行きましょう」

 

シャマルが唐突にそう言った

 

そして僕はその発言を迷いなくしたシャマルに対し驚いた表情のまま顔を向けると

 

「今私たちのすべきことはシグナム達の意志を継ぐことです。私がシグナムたちの立場でも今立ってる人にそう願ってるはずです。それに・・・今一番辛いのは目の前で家族を傷つけられてシグナムたちが生きているかどうかもわからない状態にあるはやてちゃんのはずですから!!」

 

そう言うシャマルは毅然とした態度で言いながらも目に涙をためていた

 

それを見て僕は言葉を失うどころか思考すら真っ白になった

 

僕は今この状況でこの場にいるシグナムやヴィータ、ザフィーラという目の前の家族だけでなくはやてのことも考えていたつもりだった(・・・・・・)

 

けれど、僕は今一番辛いのが誰だったかを勘違いしていた

 

何故なら僕は目の前で大切な人を奪われたシグナム達と自分を重ね合わせてしまい。

連れ去られてみんなと引き離されているはやても辛いだろうけど、大切な人を守れずに目の前で連れ去られたシグナムたちが一番辛いのだと考えていた

 

けれど、シャマルの発言で冷静になって考えてみると

 

瀕死の重傷を負った状態で砂漠のど真ん中に放置された家族と引き離された普通の優しい女の子・・・それも僕のように転生する前に立派な家族と過ごした過去とすらなく、愛してくれる存在のいなかったはやてが初めて手に入れた・・・欲して止まなかった他人との繋がり・・・それも誰よりも強い絆で結ばれた関係の人間が『生きているかどうか・・・いや、ほとんどの確率で死んでいるかもしれない』などという考えが慢性的に脳裏をよぎる状態を普通の人間に耐えられるわけがないじゃないか!!

 

はやてはモンスターハンターのようにギルドのメンバーの誰かがいつ死ぬかわからない状態にいた僕やベルカ時代の戦乱の世を生き抜いたシグナムたち守護騎士とは違う

 

それ以前にあの世界で僕には親しい人間なんていなかった

 

誰とも知らない他人の死と大切な家族との死ではそれこそ心にかかる負担が違う(・・・・・)

 

・・・・そこまで考えたところで僕の迷いが消えた。

 

「うん、行こう。はやてを・・・・一刻も早く助け出して安心させるために・・」

 

はやてを救うためには手段を選んでいる場合じゃない

 

そう思った僕は・・・同時にある決断をした

 

どちらにしろ動けないシグナム、ヴィータ、ザフィーラをこのままにはしておけない

 

彼女たちを安静に休ませることのできる場所は必要だ。そうなった場合いずれシャマルだけの力では限界が来るだろうし、治療用の道具も必要になるだろう。

 

そんな場所の心当たりは僕らの家である『八神家』以外には無い

 

しかし、そうなると管理局にはすぐに見つかってしまうだろう・・・かといってここにいても動けない3人を連れたままはやてを探すのも厳しい

 

そうなると結局

 

『管理局に見つかってシグナムたちの身の安全の保証をさせつつはやての捜索を行う』

 

 

『管理局を避けながらけが人のシグナム達を抱えたままはやてを探す』

 

そのどちらかしか存在しない

 

ならば僕は少しでもはやてを見つけ出せる可能性に賭けたい。

 

だから、意を決してこう口にした

 

「地球に戻って時空管理局・・・ううん。十六夜零司とコンタクトを取る。そして、はやてを何としてでも助け出す!!」

 

この先どうなるかはわからない・・・けれど、今の僕に選べる選択肢の最善は家族の身の安全、僕と同じ転生者の十六夜零司が持つ僕とは違った異能、管理局の捜査能力にはやてを見つけ出せる可能性に賭けるしかなかったんだ

 

そして僕らは倒れているシグナムたちを抱えて魔獣の多く住む砂漠だらけの世界を後にし、地球の我が家へと戻るのだった

 

・・・絶対に諦めない。その意志だけを胸に僕とシャマルは行動を起こした。

 

~~~~~~零司Side(フェルがシグナム達を発見したのと同時刻)

 

「あ~・・・・負けた負けた」

 

俺は自分がふっかけた勝負に負けてトボトボとアースラのブリッジから貸し与えられた自室に向かう途中呟きながら敗因について思考を巡らす

 

結果はさっき言ったとおりで

 

「あの二人が開始早々に共同で作業を進めるってのは想定外だった・・・あの二人、いつの間に共同研究のテーマなんて考えてたんだよ・・・少なくとも新婚旅行前は自分たち独自の研究・・・特にゴーレム関係の分野ではやたらと意見の衝突があったと思うんだけどな~・・・・旅行中に何かあったか?」

 

結局の敗因は向こうの出方が俺の想定を超えるものであったことと二人が組んだ時の能力を読み違えたことだよな

 

これで俺の事件が終わった後の研究は決まったし、とりあえず良しとしよう

 

例のアレの準備も終わってるからクリスマスを待つだけだから俺が今コレといってしたい研究なんて現在調整中の試作品『赤龍帝の棘槌(ブーステッド・スパイク)』を完全な形で完成させたいってことくらいだ

 

それを完成させるためにもレグナーたちの造るゴーレムの技術に使われる

 

生体物質と鉱石の同調やそれに適合する物質について俺が現在作っている試作品以上のものを俺以上にその手のことに得意分野の性質上詳しいあの二人の(魔法の術式に重きを置くか鉱石などの素材に重きを置くかの違いはあれど)専門家(スペシャリスト)の意見を取り入れたほうが行き詰って連続での倍化が3回、累計倍化可能回数がたったの9回という素材の元になったドライグの能力を考えれば模倣というにも烏滸がましい代物だ

 

それを完成させようと思っても強度、術式効率、調和性etc・・・の問題があるため俺の技術だけで完成は困難だと思ったからあの二人を手伝わせようかと思って敢えて自分に有利な勝負をふっかけたつもりだったけど・・・

 

「まさか・・・あの二人の研究内容が『完全永久機関を持つ超巨大ゴーレムの作成』なんて面白そうな研究テーマだとは思わなかった。・・・普段あいつらがやってる小型ゴーレムの量産なんてもんじゃなかったのはいろんな意味でラッキーだった」

 

この研究を進めていけば自力で今行き詰ってる研究を達成することができるだろう知識を得られる

 

巨大ロボを造ったことはあるけれど、9m以上のサイズゴーレムは作ったことがない

 

レグナーが普段作るのも7m~19mで場所によって使い分けている

 

それを考えても

 

「634mの東京スカイツリーを超える777mのゴーレム・・・しかも完全永久機関を持つ自立稼動型の作成か・・・自立稼動型の作成は俺の得意分野だし、これは早く事件を終わらせて研究に没頭したくてたまらなくなってきたな」

 

そう逸る気持ちを抑えながら宛てがわれた部屋の扉を開けると

 

目の前にテーブルが1つに椅子が2つと部屋の隅にシングルベッドがシーツを整えられた状態でセッティングされていた

 

左手にはブリッジと通信をするためにあるのか壁に巨大なモニターが備え付けられた

 

そして右を見ると『Toilette』のプレートのかけられた扉がある

 

それを見て俺は着ていた忍者装束を脱ぐと目の前にある椅子の一つにかけ、とある写真の入った写真立てをテーブルの上に置くとそのままユニットバスがあると思われるその部屋に向かう

 

そして扉を開けると予想通りの光景が広がっており、下着を脱ぐとアルケミーの中に収納して蛇口を捻る

 

すると、最初のうちはひやりとする冷水が俺の肌をうち、次第にシャワーから出る水は温度を増していく

 

それにより俺はリンディ提督の私室から感じていた服の不快感・・・途中で服を元に戻してその服から感じる感覚が消失したとはいえその感覚は作業中も俺の体に幻痛のような不快感が俺の体にまとわりついていた

 

それがシャワーの温水によってその残っていた不快感は洗い落とされていくが・・・

 

「さっき椅子にかけた忍者装束は復元する世界(ダ・カーポ)で戦闘前の状態にレグナーたちとの勝負の前に戻したから洗濯とかの必要はないんだけど・・・あれをこのあと着る気にはなれないよな」

 

そう思いながら蛇口を閉め、アルケミーからタオルを取り出す

 

「今更ながらだけどさ、アルケミー」

 

『何ですか?』

 

「アルケミーって今更ながら某青いネコ型ロボットの四次元ポケット以上に便利だよな?」

 

『そうは言っても基本マスターの作ったアイテムとかの倉庫ですからあの青狸と違ってこちらは完全な自給自足ですけどね』

 

「素材は使った分だけ自動加算されてるんだから別に問題ないだろ?」

 

『・・・それはマスターだからじゃないですか?普通の人間なら布と鉱石とわけのわからない魔力の籠った石なんかが自動補充されるだけでそのまま生活に使えないものを良しとする方はいないかと思いますが?』

 

「それもそうか・・・」

 

そう言って話を進めているうちに俺はアルケミーからバスローブを取り出して羽織るとユニットバスを出ると途中、テーブルに置いてある写真立てを取ると備え付けられているベッドに座る

 

そして写真立てに入れられている写真に目を向ける

 

そこに写っているのは日本魔術結社本部で俺と子供たちが笑いながら写っている一枚の写真・・・俺の宝物で出かける際に必ず持ち歩く代物だ

 

「俺のこれも最早習慣だな・・」

 

そう思いながらも写真立てを枕元に置くと横になって目を閉じる

 

子供が一人で眠れないという話があるけど・・・20まで生きた記憶が戻った今でも変わらない・・・俺は弱いままだ・・・こうして誰かを自分の手で助けたという実感は持てても眠るとこの実感も全て夢だったんじゃないかとすら思える

 

・・・そして

 

眠りが深まったとき俺はある夢を見ていた

 

もう既に何度も見ている夢だ

 

内容はそう・・・半年前のあの戦い・・・

 

『赦さぬ!!赦さぬ!!貴様だけは決して赦さぬ!!』

 

『死ねぇーーーーーーーーーーーーー!!』

 

この言葉が何度も夢の中で繰り返され

 

次の瞬間にはさっきの集合写真が映り、俺の家族・・・ユエラが、セラウィが、エミリッタが、フェイトが、テスタロッサ夫妻が、俺の助けた子供たちの姿が写真から俺を残して消えていく

 

まるでこの世界は俺ひとりだとでも言うように・・・これまでの繋がりは全て夢か幻だったとでも言うように

 

そして最後に

 

『貴様の総てを奪ってやる!!』

 

そして、アルゴシアスの憎悪の声が俺の中で響いたとき

 

カバッ!!

 

俺は飛び起きるように目を覚ます

 

途端に全身を襲う汗でベタつく肌の不快感・・・せっかくシャワーを浴びたのにこれじゃあ台無しだな・・・

 

原因は夢の内容なのでよく覚えていないけれど予想はついている

 

いつものことだ・・・家にある治療カプセルを使わない時、俺は決まって同じ夢を見ている

 

時計を見る・・・時刻は8:30になろうかといところ・・・先ほど寝る前にちらりと見た時間から1時間ほどしか過ぎていないようだ

 

この様子じゃあ寝なおすにしても同じことの繰り返しになるだろう・・・ここは大人しく起きるか・・・

 

そう思って俺は汗ばんだ身体の不快感を洗い落とすために立ち上がり

 

同時に何故か感じる不安感を煽るような動悸を払拭するため写真立てにある写真を見る

 

そこには寝る前に見た通り、俺が中心に座り、周りにはフェイトたちやユエラたちといった俺の家族が全員集まっていた

 

そして煩いぐらいに激しい動悸が落ち着いていくのを確認するように右手で胸を押さえる

 

「・・・・ようやく動悸が落ち着いたか・・・ん?」

 

写真を眺めること2分・・・ようやく激しく脈打っていた心臓の動悸が正常に戻った

 

そこで先程までなかった気配が部屋にあることに気がついた

 

「入室の許可は出してなかったと思うんだけどな?クロノ執務官」

 

写真を見ている間にクロノが扉を開けて俺を見ていた

 

「すまない。ノックはしたのだが・・」

 

「・・・いいよ。話があるんだろ?その何か言いたそうな表情からして」

 

「あぁ、君に聞きたいことが・・・ん?その写真は?」

 

要件を言おうとしたクロノだが俺の持っている写真立てに気がついたのか途中で内容を変える

 

「これか?・・・ほら」

 

写真にどうするか迷ったが別に気にすることでもないかと思い、クロノに写真を見せることにした

 

「・・・この写真は孤児院か何かかい?」

 

「クロノ、俺とお前が初めて会った時のこと覚えてるか?」

 

「・・・初めて会った時といえばジュエルシード事件の途中なのはとフェイトの戦いの仲裁をしたときのことだろう?・・・っ!!まさかっ!!」

 

クロノは俺との出会いについて思い出してその質問の糸について思案してすぐに一つの答えにたどり着いたのか驚いた表情へと変える

 

「そうだよ。この写真に写ってる子供達は全員、管理局の組織の上層部が極秘裏に進めてた人体実験の被験者だよ」

 

「やっぱりそうなのか・・・・」

 

「お前はこれをどう思う?」

 

「・・・・」

 

「答えられないよな・・・俺も初めてこれを知ったときは声も出なかったよ。俺がこの世界で最初に目覚めてから始めたのは家造りだった。それからこの世界を・・・管理局の存在を知ってからは本当に心の底から憧れたよ。お前も管理局にいるんだからこの気持ち分かるよな?」

 

「・・・そうだね。僕も父さんの背中を・・・それを支える母さんを見て育ったからわかるよ」

 

「災害から市民を救出する姿、犯罪者から市民を守る姿・・・そのどれもが輝いて見えて、俺もいっぱい魔法の特訓をして管理局に入局するんだって本気で思ってた。・・・そして俺はもっと管理局について知りたくて管理局の関わる事件をいっぱい調べたんだ。」

 

少しずつ声から熱がなくなっていくのが自分でもわかる

 

「当時の俺は管理局のデータベースで魔法に関する知識の勉強とかをやってたから本当は悪いことだっていうのは途中からわかってたけどハッキングしていろんなことを調べてたんだ。そんなある日、偶然にもとある隠しファイルを見つけたんだ」

 

「それがあの人体実験の映像だった・・・ということかい?」

 

「そうだよ。初めて見た映像は今でも覚えてる。管理局の制服や研究者らしき白衣をを着た人が大勢いてたくさんの同い年くらいの子供が液体の満たされたカプセルの中で悲鳴を上げていた。それをそこにいた局員の人たちは助けようともせず、逆に・・・・「続けてくれ」え?」

 

内容を語るうちに言い淀んだ俺に対してクロノは俺の方をまっすぐ見てそう言ったため、俺は予想外の反応に思わず間の抜けた声を出す

 

これは間違いなく聴きたくない話のはずだ・・・

 

俺の予想ではクロノは俺の話を遮るだろうと思っていたからだ・・・けれど、発せられたのは俺の予想に反して続けるように言ったからだ

 

だから思わず疑問がこぼれた

 

「な、なんで・・・?」

 

それに対してクロノは少し考えるような素振りをして語りだした

 

「僕の父さんは前回の闇の書事件で亡くなった。それは闇の書について調べた君なら知ってる内容だと思う。」

 

そう言ったクロノに対して俺は頷くことで肯定する

 

それを確認するとクロノは話を再開した

 

「父さんは僕にとって弱い人を助けるヒーローみたいな人だった。最後の瞬間まで父さんは同じ艦のみんなを巻き込まないために一人で暴走した闇の書とともに小型艇に乗り込んで行ったって母さんから聞いた。・・・そんな父さんは僕の憧れであり、目標なんだ。・・・とは言っても父さんと同じく死ぬつもりはないけどね。父さんが護りたかったものを僕が代わりに護る。それが僕が父さんの墓前で誓ったことだから」

 

「そっか・・・」

 

「だから聞かせてくれ・・・零司っ!!僕は父さんが護りたかったものを護るだけじゃなく、僕が憧れた父さんに誇れる自分になるためにも・・・父さんの理想・・・僕の『誰もが笑って暮らせる世界』を造るためにも・・・僕はこの問題から・・・苦しんでいる人から目を背けたくないんだッ!!」

 

・・・・そうか。コイツは、クロノは・・方法は違うけれど俺と同じなんだ。俺は前世の記憶の名残があったのか記憶のない状態でも魂があの子達を救いたいと訴えていた。けれど、クロノは尊敬する父親が目指したもの・・・自分が目指す理想のために誰かを救おうとしている

 

理由は違うけれど、お互いに苦しんでいる人を見逃せない

 

「クロノ・・・今から話すことを聴いたらお前は後悔するかもしれない。というよりも俺はお前にこのことを話したくない」

 

クロノは・・・いや、恐らくこの艦『アースラ』にいるクルーの全員はかつて俺が憧れた管理局の人物像と外れない人達なんだろう・・・けれど、もしも俺が知っていることを話して彼らが管理局で行動を起こせば・・・おそらく消されることになるだろう・・・そうなったら俺は後悔するだろう・・・俺は今、こうして話して共感を覚えたクロノが他人には思えなくなっている

 

だからクロノに話したくないと思っている。けれど・・・同時にこのことを知ってほしいとも思っている。例え巻き込むことになってもクロノはおそらく今の考えを変えることはないだろう・・・これは今この艦に乗っている全員に当てはまることだろうけど・・・全員、どうしょうもないお人好しだから

 

ここで話してしまえば高町さんたちも・・・家族であるフェイトたちも巻き込んでしまうかもしれない

 

頼ってしまうかもしれない・・・俺は・・・どうしょうもなく・・弱いから・・

 

けれど、そんな俺の葛藤も関係ないとばかりにクロノはこう言った

 

「絶対に僕は後悔なんてしない。するとしたら今ここで聴かなかった場合だ。それこそ僕はこの先ずっと後悔するだろう・・・だから、僕に全部教えてくれ・・・君の知っている。抱えていることを・・そして、もし僕に出来る事があるのなら存分に頼ってくれ」

 

クロノはまっすぐ俺の目を見てそう言った。そこから伝わる想いがその言葉が本音だと俺に告げている。・・・前世で人を信じられなくなった俺・・・他人の嘘が意識せずともわかるようになった俺の感も間違いなく本音だと告げている

 

それを理解したとき、俺は頬から涙を流し、手で顔を覆っていた

 

巻き込んでしまう辛さは勿論あるけれど、それ以上に・・・

 

クロノはきっと内側から変えてくれる。何故かそう確信することができた

 

確証はないけれどそう思うことができたんだ・・・

 

そして俺はクロノに俺の転生に関することも含めてすべてを語り、これまで調べた膨大な研究データのコピーを全て差し出し、最後に泣きながら搾り出すようにこう言った

 

「管理局の闇を・・・消すのを・・・手伝ってくれ・・・クロノっ」

 

それに対してクロノは

 

「あぁ、零司。これから僕と君は同じ目的を持つ同志・・・いや、親友だ。僕は中から・・君は外から・・管理局の闇を・・・違法な研究で苦しんでいる人たちを一緒に助けよう」

 

俺とクロノがこの約束を果たしてから30分後、クロノとの話が終わってからもう一度肌の不快感を思い出した俺がシャワーを浴び終えた頃にブリッジからフェルグラントがコンタクトを俺に対して求めていることが通信で告げられたのだった




まさかのBLか?いやいやそんなわけない。この作品のヒロインはもちろん女性です♪
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