事態が急変したのは突然だった。
今日の昼はクラスメイトに例のリストバンド(普通のリストバンドの形をしているが中央に赤と青の二色の石の装飾がされており、その石によって周囲の気温操作を行う)を全員分配り、放課後は最近アースラとの情報交換で捜査の方はアースラのクルーとプレシア、レグナーが手伝っており、ユーノの方はフェイトの使い魔であるアルフが手伝いに行ってくれた。そして俺達小学生組と守護騎士+aは俺の自宅をベースホームとする形で半ば待機状態にあった。何でもリンディ提督いわく「こういうことは私たち大人の仕事です。あなた達はまだ子供なのだから今しか出来ない経験をしっかりつんでください」って言って高町さん達を納得させてた。
それは同時に俺が調査に昼間参加できない免罪符となっているのはおそらくレグナーたちが一枚噛んでいるんだと思う。リンディ提督もかなり気が回る人物だから気を使ってくれたのかもしれないけれど、念のため頭の片隅にでも置いておくだけに留めておこう
こういうことで感謝するのは全てが終わってからでいい
なんて考えてスキルアップのために俺はフェルと魔力、気などを一切使わず力量を一定の値でお互いに合わせた上での模擬戦をやっていた
俺は自分の身体よりも大きなバスターブレードを5歳からの地獄の特訓の日々によって魔力等の能力抜きでもいつの間にか人間離れしていた膂力と重心、体重移動等の技能を遺憾なく発揮し、鋭くコンパクトに振り回してトンファーを使って俺の攻撃を捌くフェルを一定以上に近づけさせず、攻撃を継ぎ目なく流れるように繰り出し続ける。逆にフェルは持ち前のセンスを利用してダメージを最低減にするための効率的な武器の使い方を会得することで回避することに集中していた
そして、この模擬試合を始めて7合目の切り合いになろうかとしていた時、フェルの腹を蹴り飛ばして距離をとった俺が動いた
俺は瞬動による特殊な移動で接近、そこから今持っている2m程の両刃の剣のバスターブレード、それの重心を利用した素早い上段斬り、それをフェルはトンファーを十字にクロスして防ぎつつバックステップで衝撃を後ろに流す
それに対して俺は勢いをそのままに手首の返し、肘捻り、肩の引き、腰の回転を利用、右足で踏ん張りながら左足を更に踏み込ませることで身体の回転を加速させ一振り目以上の速度で切り上げを繰り出す
「ちょっ!?」
フェルは慌てて刀身を殴って攻撃を逸らそうとするが忘れてはいけない。俺の剣は片手剣のような片手で扱うような武具ではない。・・・つまり、相応に
そして刃がフェルの胸を捕らえようとする寸前
ピタリと剣を止める
「・・・勝負ありだな」
そう言ってバスターブレードを粒子化させてアルケミーの中に収納する
「・・・そうだね。というか君って一体何種類の武器を使えるんだい?僕の使わせてもらってるトンファーに関しても並以上には使えるんだよね」
「武器に関しては弓や銃器みたいな遠距離武装に加えて槍、薙刀、戦斧、大太刀から小太刀までの刀類、剣、バスターブレード、鉤爪、鎌、ナイフとかの近接武装もあらかた使える。中でも2尺~2尺3寸の刀剣と戦斧はその中でも飛び抜けて扱える自身がある。普通ここまで幅広く武器を使いこなせる必要とかはないんだけど、俺の場合はいろんな武器とか造ってるせいかその構造を理解して使用者に使いやすいようにとか考えて造る過程で自然と周りから習ったり、文献漁って習得したりで扱えるようになった。」
「・・・僕は呆れればいいのかな?」
「それは任せる。それよりも今重要なのはお前が俺との模擬戦からそのトンファーでの効率的な受け流しとかを習得するのが目的だしな。・・・というかお前気に頼りすぎ、気を使わなくなった瞬間動きの荒さが酷く目立つ、あれがお前の戦い方だってのはわかるけど速さ頼りの近接と反射神経だけじゃ回数こなせば慣れられるからそこから勝てなくなるぞ?ぶっちゃけ俺は素の総合的な実力は守護騎士よりか多少高い程度で魔力はシグナムさんよりも少し高いけど高町さん達よりも少ないぐらいの位置にいる。間合いの取り方と牽制射撃で何とかしてるって言うのが実情だけど、今のお前は気を相手に合わせた上で同じ無手のザフィーラ相手にお前が今と同じ条件でやっても今回みたいにあっさりと負けるのが想像できる。対して俺の場合は間合いのとり方で相手の得意範囲を維持させない戦い方が基本だ。だから相手は自分のリズムが維持できない。・・・・お前に関しては気を使ってる間の異常な反射神経で反応してたり、馬鹿げた速度で常時移動して回避、攻撃してるから間合いが尋常じゃないから実感沸き難いだろうけど、普通の近接戦はいかに相手を自分の間合いに引き込むかが肝になってくる。お前のところのシグナムなんかも蛇腹剣とかを使って引き込んだりしてるだろ?」
「そうだね。今気を使わないで戦ってて思ったけど、僕がどれだけ気に頼って身体の動かし方の差をつくづく実感させられたよ。気の大きさを同じにして身体能力を大体同じにしてるのに力負けするのも、攻撃のつなぎ方の差で攻撃も出来ない状況に追い詰められる展開が多々あったからね。・・・それで、君は何故僕にこんなことを教えるんだい?僕が君の立場ならいつ敵に回るかわからない相手に戦技指導なんてしないと思うんだけど?」
「それはな―――――――っ!!?」
「どうし―――――っ!!?」
そこで突然波を、感じた。
俺達はこれを本能的に以上と判断してそれぞれの感知能力を使って感知した位置の特定とその気配に対して探りを入れる
その間も感じる波のような感覚
打ち寄せる波のように、引いては高まり、高まっては引いていく。
その感覚が本来結界内に居る自分達が感じるはずのない外部からの悪意だと気づき、直後に急激な寒気を
『・・・この寒気、前に感じたことがある。けれどありえない!!あいつ・・・いや、
そして俺の思考が長く深みにはまりそうになったとき、波は2つの脈動として動き出した
1つは自分の存在、そのものを否定して押し流そうとするような濃密な悪意と敵意
過去に感じたのは敵意だけだったが、それに関してもこれほど濃密なものではなかった
それともうひとつは世界を拒絶するような確かな意思が魔力として伝わったけれど、俺の知らない感覚だった。しかし、この状況で俺にはこんな力を持っている
「闇の書が覚醒したのか・・・」
「うん。おそらくこの強力な悪意を持つ第三者があの使い魔たちからこの世界で強制的に魔力を蒐集させた上で覚醒したんだと思う。もう片方は知らない感じだけど、この世界を拒絶するような意思を持った力は間違いなく闇の書から僕が前に感じたものだよ。・・・多分もうシグナムたちも向かってるはず」
「高町さんたちもおそらくもう向かっただろうな。となると俺達も急ぐしかないな・・・正直なんでこんな事態が起こったかわからないけれど、話は起こした張本人から
「そうだね。僕としてもはやてを僕らから引き離した落とし前もつけてもらわないと気がすまないしね♪・・・一気に移動するから僕の肩に捕まってくれるかい?」
そう言ってフェルは2本の指を額に当てる
「瞬間移動か?」
この数日で気について知るためにクラスメイトの和志から借りた漫画『ドラゴンボール』(本に触れた瞬間思い出したが前世でも読んだことのある漫画だったため知識が開放された)の技に心当たりがあったため聴きながらも指示に従って右手で左肩を掴む
俺の今の服装はいつもの忍者装束(もともとコスプレ衣装だったのに縫製しまくって本来の汎用性からいつの間にか戦闘服になってた)ではなく漆黒のコートを羽織り、某ソードアートのキリトを連想する黒づくめの格好で腰には2本の剣(朱色の鞘に収まった小太刀の『炎牙刀』と抜き身の黄金の剣エクスカリバー)を携え、首には蒼い十字架のネックレスである相棒のアルケミーがかけられており、手には滑り止めとしてフィンガーレスグローブの完全武装で後ろ髪をゴムで尻尾のように纏めた格好
対してフェルははじめてあった時のドラゴンボールの悟飯がセルゲームで着ていた紫の道着と重力に喧嘩を売っているような燃え頭と表すのが一番分かり易そうな髪型は前世を通して見てもエア・ギアのスピリットファイアぐらいでしか見たことがない奇抜な髪型の格好・・・どうやら流石にあのクソ重いインナーとリストバンドは流石に装着していない様だ
「行くよ」
「・・・」
フェルの問いに俺は無言で頷く
その数瞬後に俺達の姿は自宅の工房から消失した
■ ■ ■
「・・・で、着いたはいいが・・・何だアレ?」
俺とフェルは呪詛を思わせる珍妙な文様の浮かび上がった黒紫の巨大な繭の前にいた
それは不気味に脈動していた
その中からは俺とフェルが感じた二つの巨大な力を感じるが来て早々に周囲を旋回して見たところ入り口となりそうな場所は見当たらなかった
そのためどうやって入ろうかと迷っていると
「か~め~は~め~・・・・」
「ん?」
いつの間にか隣でフェルが気を凝縮させ、発射体勢を整えていた
「ちょ、おまっ!!待「波ぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」《ドガァァーーーーン!!!》やりやがったよこの野郎!!?・・・・・って、これで少し傷がついただけとかえらく頑丈だな。この繭」
俺はいきなりの暴挙に出たフェルとその暴挙に対してたいした傷すらなく依然として佇む繭を見ながら呆れるような声でそういい・・・普段なら
「うん。全力じゃないとはいえそれなりに力を籠めた『かめはめ波』をまさか完璧に弾かれるとは思わなかったよ・・感触から言ってかめはめ波みたいな砲撃型じゃこの繭はもっと力を籠めないとぶち抜けないけど、貫通力や気円斬みたいな切れ味のある技を使えば今入れた力より少し弱くてもいけそう」
フェルは先ほどの攻撃の手ごたえからこの謎の繭の特性を分析し、その内容を伝えるが俺も勿論繭について気になってはいるのだが、この時ばかりは自分たちの飛んでいる遥か下方の水面に感じる二つの気配が気になっていた
同時に下方の水面から例の使い魔と思われる2匹の反応もあるけれど妙に弱弱しい・・・このまま放っておいてもいいけれど、このままでは死ぬな。
フェルは気付いていてあえて無視しているようだ。というか繭の中で闇の書と同化していると思われる八神はやてにしか興味が無さそうだ
・・・いいのか?こうやって放っておくって選択肢をここでしても?仮に・・・フェイトや高町さんならどうすると思う?間違いなく助けに行くだろう・・・これが俺と彼女たちの違いだ
俺は人の死に関して感受性が乏しい・・特に記憶が戻ってからは明らかな線引きが生まれた
・・・高町さんたちは後2分ほどで到着か・・・それまで彼女たちが持つかわからない・・・下手すれば手遅れになる。・・・そうなれば高町さんたちの顔に暗い影が差すことになるだろうというのは容易に想像がつく・・・気付かなければそれまでの話だがそれ以前に件の二人はつい先日腹を割って話をしたクロノの師であるということも聞いている。彼女たちの事情もこの3日間の間に調べられるだけ調べているから動機と思われることも判明している・・・それを踏まえて考えると『八神はやて』・・・彼女の件を抜きにすればそこまで攻められるような人間というわけでもない。敵対しているとはいえ彼女たちは彼女たちなりの解決法を考えていただけだ
それによって俺という謎の多すぎる人間を信用できず、結局こんなことになってしまったということを推測する程度のことは出来る・・・第一今でも若干人間不信なとこがある俺なら間違いなく同じ選択をしただろう
だから俺には彼女たちを攻められないし、クロノの師匠である彼女たちをこのまま見殺しにするという行為自体に忌避感のような感情を感じているのかもしれない
話したこともない人達だが調べる過程で聞いた彼女達の人間性は俺が嫌っている・・・いや、憎んでいる管理局員とは違うクロノと同じ真っ当な側であるという風に感じた。勿論
「チッ!!フェル、悪いけど中のことを少し任せる・・・1分で合流するから」(また少し気配が弱くなってる。これ以上は考えてる時間がない!!)
そう言って俺は下方に浮かぶ彼女たちに視線を送る
「・・・わかった。彼女たちには僕もシグナムたちも言いたいことがあるからね・・・はやても彼女たちを見殺しにしたら怒るだろうし、僕も後味が悪くなるだろうから彼女たちは君に任せるよ。それと時間に関してはシグナムたちが合流し次第でいいよ。それまではなんとしてでも持たせるから」
それにより僅かに考えるそぶりを見せたが、もう一つの決心をした様子で行動に移った
「けれど間違いなくこの中に僕の大切な人がいるんだから・・・少なくとも僕のやることはっ!!決まってる!!」
そういってフェルは気円斬をその繭に向かって投げ込む
それにより繭に人一人が余裕を持って通り抜けられる道ができ
「先に行ってる。君は彼女たちを頼むよ・・・僕は・・・はやてを助け出す!!ハァァ!!!」
そう言ってフェルは気を開放するとともに『界王拳』を2倍で発動して結界内部に飛び込んだ
それを見ると俺は瞬間移動のごときスピードで彼女達の場所に移動し、二人を『操血』で腕を形成して引き上げるととも二人の口に魔力を回復させる薬瓶をねじ込んで強引に飲ませる
「手荒い方法だけど勘弁してくれよ。俺も助けるとは決めたけど自分が完全に信用できない相手に警戒心は解けないし、これからどれだけ力を使うことになるかわからない以上魔法は使えないけれど・・でも、クロノ達のために貴女達が無事に直ることを祈っています。」
そう言って俺はアースラに連絡を取り、リーゼロッテとリーゼアリアの回収を頼み、その完了と高町さんたちの到着を待つのだった
■ ■ ■
「「零司(君)!!」」
「十六夜!!」
「遅れました!!」
「はやてはどうなってんだ!!」
俺が使い魔たちの治療を終えてアースラと連絡を取り終わり、転送によって引渡しが丁度終わった頃、シグナムたち守護騎士全員と高町さんとフェイトがついに到着した。
フェルはどうやらまだ中で戦闘中みたいだ・・気の余波が繭の外にまで伝わってきている
「今はフェルが中で戦闘してる。俺はここに居たのは例の使い魔が死にかけてたからそれを助けるためにアースラに回収してもらってた。それと全員をあの繭の中に入るにはまずアレについて説明する人間が要るだろうと思ってここで待ってた。どうにもあの繭は結構頑丈にできてるみたいでフェルのかめはめ波でも弾くくらいに頑丈さを持ち、一見かなりの強度に思えるけれど貫通力のある一撃か気円斬みたいな攻撃なら一時的にだけど通り抜けられるみたいだ
だからあの繭に入るためにはこの中の誰かが穴を開ける役割を請け負う必要がある。・・・本来ならこういう場合一番能力の関係上確実性のある俺が請け負うべきなんだろうけど・・・・・闇の書とは別の大きな力・・・天童に取り付いてると思われるあの胸糞悪い力に用があるから念のために力を温存しないといけないから除外としてほかの誰かに頼まないといけないんだが、立候補者はいるか?」
「シグナムたちははやてを迎えに行ってあげないといけないだろうし、さっきの話を聞く限りじゃなのはの砲撃が効かない恐れがあるから私がやるよ」
俺の問いにフェイトが素早く応えるが高町さんが不満そうな声で次のように述べた
「うぅ~。フェイトちゃ~ん!!あんな繭ならなのはとパワーアップしたレイジングハートのフルチャージで一発だよ~」
・・・何故だろう。想像上で高町さんの砲撃がさっきと同じように弾かれるイメージが沸かない!!それどころかあっさり貫通しそうな気がする
・・・もしかしてこの娘、本当にユニークスキルとかで『障壁絶対貫通』みたいなスキルを持っているのではないだろうか?
もしそうなら怖いな・・・というか今更思い出しのだが先日の結界への容赦ない攻撃を考えるとあながち無理そうに思えない・・・というかスターライトブレイカーなら確実に貫通すると思う
しかし、だ
「高町さんには闇の書の主である八神さんを解放するために強力な魔力ダメージを与えるフィニッシャーを勤めてもらう予定だから却下」
そう言って納得してもらうしかないのだ
そこから少しして一通りの話し合いがついた俺たちは早速行動に移すことにした
「・・・じゃあ、始めるぞユイドラ流符術『超絶強化呪符』起動!!」
俺は昔から使っている身体強化、魔力強化、耐性強化の能力を底上げする魔法を発動してこの場にいる全員を強化する
「10分くらいしか持続しないけど、気休め程度にはなるだろうと思う。フェイト、頼むよ」
「うん♪任せて零司!!・・・・・貫け雷光ッ!!ジェット・・・・・」
フェイトはそう言ってパワーアップした愛機である『バルディッシュ・アサルト』をザンバーフォームに切り替え、プラズマを凝縮したような超大な刀身を形成して構える
「ザンバァーーーーーーー!!」
その掛け声とともに振り下ろし、凄まじい雷光を迸らせて繭に向かって突き進み、予想していた抵抗すら感じさせずに貫いた
そして
「開放!!」
フェイトはザンバーを貫かせたまま凝縮したプラズマの塊であるザンバーの制御を開放し、ザンバーから爆発するように高密度の魔力から生成されたプラズマが切り裂いた部分を中心嫌気焦がす
その光景を見てアースラでエイミーさんとリンディさんは
『・・・フェイトちゃん(さん)。いつの間にそんなエグイ技を・・』
を呆れるような声でそう言ったのが通信越しに聞こえる
正直同感だ・・・うちの義妹はいつの間に恐ろしい攻撃を思いついたんだろうか?
という疑問を感じたが
『あ、プレシアさんの娘だった』
本人に聞かれたら焼き殺されそうな結論だが幸い・・・やめよう。これ以上考えると碌なことにならないような気がする
「さて、行こうか!!中に入ったら「なのはとフェイトちゃんはシグナムさんたちとはやてちゃんの救出、零司君はもう片方に行くんだよね?」あぁ!!こっちは足止めついでに確実に仕留めるから任せろ!!その代わり八神さんは任せた!!」
「うん!!」
「シグナムさんたちも高町さんと
そう言って俺は先に先行し
「任された!!ヴィータ、シャマル、ザフィーラ!!私たちの主を救いに行くぞ!!」
「「「おう(はい)!!」」」
高町さんとフェイト、シグナムたちはそれに追従するように繭の中に進入し、それぞれの戦いが始まった
後に『闇の書の災厄』と呼ばれる事件の幕開けだった。