フェルグラントSide
「気円斬!!」
僕はここに来て何度目かも数えることすら面倒になった黒い槍や剣の軍勢を切り裂いて粉砕し、その先にいる不気味な雰囲気の少年へと殺到する
けれど、黒い剣と槍は切り裂かれると霞のように消え去り、少年はまるで幻か何かであったかのように存在を否定するかのように消える
そして次の瞬間には再度剣や槍が現れ、終わりを感じさせない悪夢を実現する
『まただ・・・何度かめはめ波やビックバンアタックで消し飛ばしてもあの剣と槍はすぐに元通りになってしまう!!それに気は間違いなくそこにあるのに攻撃が当たらない!!』
それにより一度僕は僕に直接的な幻術が効かないから光の屈折を用いて僕を混乱させているのだと判断して槍を無視して攻撃に移った
それでもどこか不気味な感覚を感じるため避け、両手のトンファーで捌きながら進む
が近づくほどに厚くなる弾幕についにかわしきれなくなり・・・近接戦闘に持ち込むことが出来ず、正攻法での攻撃は諦めざる終えなかった
『僕のスピードをもってしても駆け抜けきれないなんて・・・!!』
それもそのはずだろう
現在のフェルを襲うのは前方からの攻撃ではない
もしそうなら攻撃の上を通ったり下を通ったりして迂回することで避ければいい
けれど、僕の移動する先から先に次々と現れる剣や槍の壁により追い込み漁のごとく行動を制限され、いつの間にか僕は界王拳を解除して回避速度よりも五感を強化して反応速度を向上させることにして攻撃の癖を観察することに専念する
そう考えて行動を起こした僕が違和感を感じたのはそのときだった
『!?小指が動かない!!』
そう思って視線を動かすと
右手の小指が石化していた
「僕の能力が効かないのか!!?」
問題はそれだけでなく
掠っただけの右膝と左二の腕、左足首の傷口にも同様の石化が始まっていた
しかし、動揺しつつも気により右小指などの石化部位を探るとその効力が表面的だけだということを早々に悟る
それにより力を入れて内側から石を砕こうと試みるが
「砕けない!?何で!!?」
山河を砕くほどの怪力を持つ肉体にどれだけ力を入れようと石化された箇所は何かの力の加護を受けているのか砕くことが出来ず完全なる拘束具の役割を果たしていた
それによりこれまで自分の信じてきた能力が通用しないという現実に思考が行き、隙を作ってしまう
忘れていた・・・今の敵はあの不気味な少年だけではないと!!
「ブラッディ・ダガー・・・」
赤い刃が僕の四肢を穿つ、それにより崩れたところに例の黒い剣や槍が僕の両手両足を射抜き空中で張り付けの体勢をとらせる
聴こえたのは感情を感じさせない声
しかしそこから感じるのは僕の大切な人
目を向けると変わり果てた家族の姿
「はやて・・・っ」
僕は搾り出すように声を出す
今の彼女は見たことはないが、彼女のことは知っている
半年前、僕ははやてを初めて立たせたときに彼女に触れている
はやての中にあったはやてを蝕んでいた力、あのときはよくわからなかったけれど今にしてみればあの時感じた力の中にあった意思が『悲しみ』であったことがわかる
そう、今の彼女は泣いていた
幼き少女から理想的とも言える体型の美女へと変貌し、髪の色も長さも栗色のショートから綺麗な銀髪ロングに変わり、瞳の色もダークブルーから血のような赤に変わり、輪郭と声すらも変わり果てて、取り込まれた僕の知っているはやての面影など微塵も感じさせないが、そこまで変わり果ててなお僕は彼女を『家族以外の人間をして』見れなかった
自分に手を差し伸べてくれたはやてに僕はまだ恩返しを出来ていない!!
「もう終わりか?」
少年が目の前に現れて僕に問いかける
僕の四肢は既に7割が石に覆われている
普通の石ならば問題ないが今覆う石はなぜか僕の力が通じない
それに気を集中させようにもこの石は僕の力を遮断しているのか気を外に出すことが出来ない。唯一気を出せる口からの攻撃も恐らく気円斬や
確かにこの状況は僕の負けだろう・・・
僕だけならば・・・ね
「ディバイン・・・バスターーー!!」
「翔けよ!!隼!!」
僕の目の前を桜色の砲撃と炎の矢が交差する
そして、僕の後ろにはここ数日で身近になった気配
「
その声とともに僕の石化した部位の拘束から解き放たれ、負った傷も僕が彼の力の干渉を了承することにより元通りになる。
「ずいぶん手酷くやられたな?フェル」
「君の怨敵には何故か攻撃が当てられないからね・・・・気はそこにあるのに実体が無いっていうのは初めての経験で正直驚いてるよ。はやてに関しては流石に姿が変わってても攻撃できないし参ったよ」
「その割にはまだ余裕があるようだな?フェルグラント」
「うん。シグナム、一応さっきまで観察に徹してて気はだいぶ残ってるし、傷も回復してもらったからね」
「フェル、はやてはお前の気で解放できそうなのか?」
「無理だね。ヴィータの言ったそれは今の状況で行えば肝心のはやてに負担がかかりすぎて殺してしまうからね」
「なら、アタシらがはやてを・・・フェル、おめぇには零司と一緒にあの不気味な奴に当たってくれ。はやてはアタシらと高町な・・・んたら「なのはだよ!!」で対応する」
「そうでもいいけどヴィータまだなのはちゃんの名前覚えてなかったんだね・・」
「うっせぇ!!コイツの名前が覚えにくいのがいけねぇんだ!!」
「口論もその辺にしておきましょう。あまりはやてちゃんを待たせるのも悪いですし」
「そうだね。私たちで今度こそはやてちゃんを助けよう!!」
「「「「「「うん(おう)(あぁ)!!」」」」」」
高町さんの言葉に俺たち全員が賛同した
そして、俺とフェルは天童へ、残りは八神はやて救出のため行動を開始した
~~~~~~~なのはSIDE
「はじめまして・・・だよね?はやてちゃん」
私は目の前の彼女に問いかける。その間にも私の視界の端には黄金の剣線と青い砲撃、灼熱の炎が飛び交っていた・・・零司君とフェル君から自重の文字が消えたみたいなの。
「お前たちも主の願いを邪魔するのか?騎士たちよ」
・・・無視されたの。
「あったりめぇだ!!はやてがそんなこと願うわけねぇからな!!」
「ヴィータちゃんの言う通りです!!あの優しいはやてちゃんが周りの人に迷惑をかけることを望むわけがありません!!」
「そして、もしもお前が言うように主が道を誤ろうとしているのなら・・・」
「それを止めるのが私たちの務めだ!!」
そう言って三方向から取り囲むように攻撃を仕掛けるシグナムさん、ザフィーラ、ヴィータちゃんとその場から動かずにバインドを主体とした妨害を仕掛けるシャマルさん。そして、極限まで存在感を減らして疾風迅雷、神出鬼没ともいえるような奇襲を仕掛けるフェイトちゃん
しかし、リインフォースさん(さっきシグナムさんから念話で聞いた)も負けてないの!!とても広範囲殲滅魔法を発動したり、腕を振るう度に無数の魔力弾を撃ち出す事でフェイトちゃんたちを牽制してるの!!
・・・・そんな中で乗り遅れて取り残されたなのはです。くすんっ(泣)
という冗談はおいておいて今のところじわじわと削る戦法によってリインフォースさんにまともな反撃を許さないために攻勢はフェイトちゃんたちで主導権を渡さないの。やれやれ!!もっとやれーー!!なの。
そしてこうやって観戦に回ってるなのは=勝ち組なの♪・・・というのは冗談として・・・いやいや本当に冗談だからね?フェイトちゃん、私たち友達だよね?お願いだからそんな切り殺すよ?的な目で見ないで!!waitwait!!
・・・はい。そろそろフェイトちゃんから本格的にお叱りが下りそうなので観戦やめて本格的に混ざってこようと思います♪高町なのは、全力全壊で頑張ります!!(誤字にあらず)
というわけで
「スターライト・・・・ブレイカァァーーーーーーーーーーーー!!!」
次の瞬間には桜色の砲撃がシャマルさんと実況しつつ実はバインドを仕掛けまくってた私のバインドにより身動きの取れなくなっていたリインフォースさんを飲み込んだ。・・・前衛の方々は死に物狂いで射線から退避してたの♪
やっぱり集団戦は大威力の砲撃がすぐに撃てて気持ちがいいの♪というわけで実況の高町なのはでした!!・・・うん。シグナムさん、ヴィータちゃん、フェイトちゃんには本当に悪かったと思ってるからザンバーとかアイゼンとかを背中にチクチクしないで!!うにゃぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
零司Side~~~~~~~
「なぜだろう。今高町さんの悲鳴が聞こえた気がする」
「よっ!ほっ!っと、気のせいじゃないのかな?向こうの方はシグナムの紫電一閃とかヴィータのアイゼンの打撃音とか君のとこのフェイトちゃんの電撃の轟音で音なんか聞こえたものじゃないし・・・それよりも!!あいつに攻撃が当たらない理由の方はわかった?」
そうやって天童が放つ例の石化の槍を避けつつ操気弾を投げて反撃を仕掛けながらフェルが聴いてくる
「多分だけど、アイツは空間の位相をズラしたりして俺たちの攻撃を避けてるんだと思う!!具体例で言えばゲットバッカーズの鏡とかみたいにっ!!っともう!!このクソ槍面倒くせぇ!!試しに炎牙刀を投げて迎撃して解析してみれば表面を石でコーティングしてそれを固定することで物理的な力に対して絶対的な拘束具と化す能力ってことはわかったけど?」
「対処法は?気弾か俺みたいに武器投げて相殺!その後は石化した武器を連続して投げて相殺!で絶対に壊れない投擲具が出来る!!・・・つっても、いい加減この攻撃の力の供給源を叩かねぇときりがねぇな。」
そう言って俺は石化の槍を見据えてうんざりした口調で毒づく
「供給源も例の位相とやらで当たらない様にしてるみたいだね」
「そうみたいだな。槍に関してはネタが割れて動きが単調だから避ける分には問題ねぇけど、防戦一方逃げるだけって言うのもいい加減ストレスが溜まってきた。フェルが声で次元の壁に穴空けるくらいのことしてくれれば楽なんだけどな」
「それを言うなら君が零距離にまで近づいて次元斬叩き込めば一撃じゃないか。僕は忘れてないよ?この数日の内に一度だけ僕の武器ごと腕を叩き斬ったあの技」
「出来なくはないけど、その場合はあの槍の肉壁はお前の役目だからな?」
「石像は勘弁!!」
「だが断る!!」
という軽口を叩きながら天童の攻撃をかわす俺たち、その光景に苛立ちを隠そうとしない天童は
「おい!貴様ら!俺様を前に痴話喧嘩か!?それに余裕綽々と言わんばかりに先ほどから俺様を愚弄しおって!!」
絶えかねたと言わんばかりに当然ながら激昂する。それを見て俺たちは
「なぁフェル。使い方も知らずに力だけ持った雑魚が何か吼えてるぞ?」
「・・・のようだね」
正直な話、ここに来た当初は確かにビビッた。あまりにも桁外れな魔力と過去の経験からくるトラウマに・・・フェルに関しても八神さんの安否を気遣いながらの2対1だったからと通らない攻撃という未知のせいで向こうの攻撃を捌きながら能力の解析をやるような余裕がなかったという理由から俺たちは天童を過大評価していたんだ。
それに気付いたのは俺とフェルが天童の攻撃を避け始めて1分が過ぎた頃だった
死角も何も考えていない数に物を言わせた物量でただ単純に相手を追いかけるだけの槍
今の天童の攻撃手段は基本的にそれだけだったのだ。
考えてみればそうだ。半年前の戦いでも天童は『王の財宝』を使った砲撃は使ってもこの世界の技術を用いた魔法なんて魔力弾すらも使っていなかったのだ。
そして、元彼のデバイス『エレミア』も『最低な主』と称し、この世界に転生して以来特訓なんて微塵もやらず、宝具の操作も総てエレミアにまかせ、自分では攻撃対象を選ぶことと魔力を流すことしかしていなかったらしい
そんな奴が何度も
それでもまったく使う気配がない。猿のように顔を真っ赤にして憤慨していても使わずにいるということは・・・だ。アイツにはそれしか攻撃手段がないのだと推測することが出来る
「というわけで雑魚。死にたいなら相手をしてやる。今夜の俺たちは大概に機嫌が悪いからな!!」
そう言うとともに俺は瞬間魔力換装
それに対し俺の知る天童には回避不能な剣速だったのだが、中にいると思われる糞神が回避させたのか致命傷には至らなかった
そして天童は痛みに顔を歪めながらも俺の方を向き直り俺に剣を振るって迎え撃とうとする
が振り返った瞬間天童の上半身と下半身が背後から飛来した気円斬に切断された
やったのは勿論
「僕を忘れてもらわないでほしいな」
フェルがニヤリと不敵に笑う
そして完全に動きを硬直させている天童その隙を俺たちが逃すわけがない
「合わせろフェル!!」
「そっちこそ!!」
「「エクス(ファイナル)・・・カリバぁぁーーーーーー(フラーーーーーシュ)!!!」」
ドガーーーーン!!
『『(手応えあり!!)』』
俺とフェルが同時に手ごたえを感じ、発生した爆炎に向かって追い討ちをかけた
俺の魔力弾とフェルの気弾が爆炎を拡大させていく
そのまま数十発の魔弾が俺とフェルの中心で交差する
そして
「「これで決める!!」」
とどめに特大の魔力弾と気弾を投げ込んだ
「「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・」」
その攻撃により息を荒くする俺たちだが
臨戦態勢を解く気になれず、フェルは俺の隣に移動してくる
それをみて俺は訪ねる
「やったとおもうか?フェル」
「気の減りようからしてダメージはあるみたいだけど・・・残念ながらってところかな」
その一言と同時に爆煙が吹き飛び
中から傷だらけのの天童が現れた
その姿を見て俺たちは悟った
「・・・・天童、おまえ」
「君はもう・・・死んでるんだね?」
一滴の血すらも流れぬ体、服が千切れとんだことにより露になった千切れた腕や皮一枚でつながっているだけの足がゆらゆらと揺れている
しかし、それでも動き続ける体。フェルによって両断された筈の箇所もまるでなかったかのようにくっつき、その後に受けたと思われる箇所も皮一枚でつながっている足もじわじわと・・・だが、驚異的速度で再生していっていた
そして全身にある呪術的な刻印が不気味な脈動を続けている
おそらくこれが死体であるはずの天童の体を動かし続けているのだろう
それに天童の瞳は俺の知っている半年前の金と紅のオッドアイだった。というよりも先ほどまではそうだった
それが煙の晴れたときには深淵のごとき深い青へと変わっていた
「キヒ・・・キヒヒヒヒヒ!!ハーーハッハ!!たまらない!!この切らせても痛みを感じることない体!!死ぬことを恐れる必要もない!!これだけの攻撃を受けようとも恐怖すら感じなず魔力で再生する体!!念じれば現れ、敵を穿てば石を残したまま石化する槍!!唯一難点を挙げるとすれば貴様をこの手で切れるだけの筋力が最早この体には無いことだが貴様を生かしたまま永遠に石化させ貴様の目の前で貴様の大切なものを嬲れると思えばこれほどに「―――――やってみろよ。」・・・へ?いや、まだ俺様覚醒を・・・」
天童の間の抜けた声とともに上半身が宙を舞っていた
そして遅れてきた風斬り音が聞こえ
次の瞬間には体が思い出したかのように細切れと化し、天童の全身が離れていく
「細切れになったら出来ないだろうけどな」
斬ったのは勿論俺だ。フェルを見る。正確には彼の瞳に映る自分をだ。
「やっぱり、この程度か。斬っても何の感慨も感じない・・・罪人の首切りと同じだ。
これで永遠にお別れだな天童・・・Auf Wiedersehen(さようなら)」
肉片は炎に焼かれ消失する
どんな攻撃を受けようと痛みを感じない体も細切れにされて再生速度を上回る火力で焼き尽くされればどんな体質だろうと関係ない
「・・・ん?フェル、どうかしたか?」
「いや・・・君、今何した?」
「いや~、ちょっと空間連続で斬り飛ばしたんだけどさ、普通なら生物の本能的な危機感が警戒警報をを送るんだけど、痛みが無いせいか反応すら出来なかったみたいだ♪それに目の色変わってたみたいだけど俺って敵にみすみす覚醒を許すような優しい性格してないんで」
『いやいや・・・隣にいた僕でさえいつ切ったのか刃が見えなかったんだけど?というか殺気すら感じない攻撃なんてどうやれば出来るのさ!!それにその笑顔怖いよ!?・・・金輪際家族関係の話題で零司を挑発するのは辞めておこう。間違いなく命に関わる!!』
などとフェルが内心で誓いを立てていると
「あっちも終わったみたいだぞ?」
「・・・・そうみたいだね。」
桜色の砲撃が前方で照らされた
遥か前方では高町さんがフェイトやシグナムさん、ヴィータに追い掛け回されており、シャマルさんとザフィーラさんがそれをあきれたような顔で見ている
「案外あっけなかったな」
俺は思わず気の抜けた声でそういった
「そうだね・・・れい・・じ?」
そう、フェルが気の抜けた表情で同調した瞬間だった
俺の腕左手に握る赤い刀身の魔剣がフェルの腹を貫いていた
「な!?」
俺の意思とは無関係に振るわれた凶刃、そして動かそうと思ってもピクリとも動かない左腕
(一体何が!?)
そう思ったとき、声がした
『赦さぬ!!赦さぬ!!貴様だけは決して赦さぬ!!と・・・言った事を忘れたかえ?』
「何で今更お前の声が・・・!!」
その疑問に答えるものはいなかった。代わりにあったのは眼前に広がる本のページ
「疑問をこれ以上感じることは無い。お前はこのまま我が主とともに眠るのだから」
その声とともに消えかかる意識の間際、俺が見たのは刺された腹の傷を抑えるフェルと泣きそうな顔をしている銀髪の女性の姿
そして
俺の最大の仇の愉快そうな嗤い声だった