とある最強の流体操作 作:慧都
インデックスの事件から二週間がたった。
夏もそろそろ本番、学園都市が蝉の鳴き声に包まれる中俺は・・・
「なんで、補修に参加しなきゃいけねーんだよメンドくせー。」
「うるさいです、蒼崎ちゃん。真面目に授業を受けるのです。」
「そうだにゃ~~、蒼やん。おとなしく上やんの道連れとなれ。」
「すまん、慧都。俺が出席日数足りないから付き添いなんて。」
「そうだ僕と名前がかぶt「五月蠅い!青ピアス!!」ひどくない、僕だけ扱いひどくない?」
なぜか俺は補修(という名のデルタフォースの見張り)を受けさせられている。
俺、いつもテストはオール100点なんだがな。
正直、このレベルの授業くらいなら聞かなくても分かる。
意図的に配置されたであろう俺の周りの三人に勉強を教えつつ、時間がたつのを待った。
「小萌先生、俺を呼んだのはこいつらのお守りですよね?バイト代ぐらい出してもらえませんか?失われた時間は帰ってこないんで。」
「で、ですが蒼崎ちゃんの勉強にも「俺のテスト結果、知ってますよね?」ううぅ。」
自分の平穏な時間を侵されて黙っていられるか!今日はケーキバイキングがあったんだぞ!!!
誰が好んで学校なんぞに来なければならんのだ。
「慧都、ホントすまなかった。お詫びになんかおごるから許してくれ。」
怒っていると上条が平謝りしながらやってきた。
しかたがない、許してやるか。
「ハンバーガー5個、先生もお願いしますね?」
笑いながらお願いすると二人ともがたがたと震えながら首を振った。
少しして小萌先生から1000円をせしめた俺は怒りも収まり、上条と近所のファーストフード店に来ていた。
「俺はスタンダードにハンバーガーを5つ、当麻は?」
「上条さんはお金が「すみませんやっぱ10個で。」慧都~~。」
俺が食って脇に腹を空かせた友人ってどんな鬼畜プレイだよ。
っていうか俺がそんなことした事あったかよ
「ちゃんと分けてやるから安心しろ。俺が受け取っていくから当麻は席とっといてくれ。」
「わかった。」
当麻は嬉しそうに店の奥に入っていった。
俺がハンバーガーを受け取って上条のもとへ向かうとすさまじい光景が広がっていた。
ありのまま言うと机の上にのハンバーガーの包み紙を山のようにした巫女服の少女と、怒鳴り合っている当麻がいた。
「貸して」
「持ってない」
「貸して」
「だから持ってないって」
「チッ・・・たかが100円も持ってないなんて」
「持ってないのはお前も一緒だろ」
「私は持ってないんじゃない。足りないだけ。あなたは持ってない。ここ重要。」
「まったく関係ねー。」
上条と巫女服を着た少女、たしか姫神だったっけ?
もう二巻に入ったんだな。
「当麻、どうしたんだ。こちらの方は?」
トレーを机に置きながら訊ねる。姫神はこちらをじっと見つめて・・・
「百円貸してくれる?」
そういった。
「ふむ、つまり君はハンバーガー無料クーポンがたくさんあったから35個ものハンバーガーを注文。そして気が付いた時には帰りの電車賃に百円足りなくなったと?」
要領を得ない姫神の言葉をまとめるとこんなものだ。
35個って、こいつの胃袋は化け物か。
「そう。無計画。だからやけ食いしようとした。そしたら。」
恨めし気に上条を見る、
「この人が借りればいいって言った。だから貸して。」
「いいぞ。」
「いいのかよ!おい慧都、確実に返してもらえなくなるぞ。いいのか?」
「いいって、女の子助けるのに電車賃だけでいいなら安いもんさ。どうぞ。」
1,000円渡す。これで十分足りるはずだ。
「じゃあ巫女さん、気を付けて帰れよ。」
会話中に食べ終わったので片付け帰ろうとすると
「私。巫女さんではない。魔法使い。」
後ろからそんな言葉が聞こえたので
「だったら俺は神の使いだな。ちゃんと連れて帰ってもらえよ、魔法使いさん?」
そういって帰路に就いた。
きっと入口ですれ違った黒服の男たちは、姫神の言う『塾の先生』なんだろう。
買い出しに行くという当麻と別れ家に向かう途中、インデックスに会った。
インデックスは道端に捨てられている猫をじーっと見つめている。
「あっ、けいと。私、このスフィンクス飼いたいかも。」
俺のことを確認するや否や、無理難題を言われても困る。
「当麻のところはペット禁止だからな、無理なんじゃないか?俺も飼ってやりたいが世話をする余裕もないからな。お前たちが別のところに引っ越さなければ無理だと思うぞ。」
「そうなの?でも私はスフィンクス飼いたいかも。」
ギュッと猫を抱きしめるインデックス。ほのぼのするな。
ふむ、どうしようか。
「しかたない、当麻に話してみるか。その猫「スフィンクスだよ!」じゃあスフィンクスを連れてきなよ。」
交渉して駄目だったら、うちに放し飼いにするかな。
交渉の末、当麻は折れた。半ば俺の責任でもあるので、必要なものは俺が用意することにした。
「これと、これ。あとは・・・これでよし。そっちは?」
「これで最後だ。」
買い物を終えた俺達は大量の荷物を持って再び上条宅に向かっていた。その途中
「ん?」
「どうしたんだ?」
「いや人払いの結界が張ってあるからさ。聖人は魔法が使えないし、起点はルーンだってことから考えるとステイルってとこかい?」
「ご名答、流石は蒼崎といったところかな。久しぶりだね、蒼崎。それと上条当麻。」
ビルの陰からステイルが現れる。いやわかってたから、そんな自慢げな顔すんなよ。
声をかけなかったのが悔やまれるな。
「で、何のようなんだステイル。ただ遊びに来たわけじゃないんだろ?」
「もちろん、今回は上条当麻に用があるんだ。蒼崎は気にしなくていいよ。」
やっぱり上条には厳しいな。よっぽどインデックスが好きなんだろうな、こいつ。
「用ってなんだ、インデックスに関係のある問題か?」
「まあ、そんなところかな。今代の彼女の協力者としては関係あるといえる。だからこそ僕もここに居るってわけだ、神裂は聖人として世界各地を回っているからね。」
「納得、俺は関係ない話だな。だけど一応聞いておくさ。」
インデックスに好意を抱いている男どもか、上条にはなさそうだけどね。
俺が興味があるのはその中に巻き込まれている少女の事だ。
「この学園都市に三沢塾と呼ばれる塾があるのは知ってるかい、上条当麻?」
あくまでフルネームで呼ぶのな、ステイル。
「勿論、あのシェア№1の塾だろ。そこがどうかしたのか?」
「あの塾に少女が監禁されている。」
「監禁!?」
「どうやら今の三沢塾は、科学崇拝を軸とにしたエセ宗教と化しているらしくてね。その三沢塾が乗っ取られたんだ。正真正銘本物の魔術師、正確にはチューリッヒ学派の錬金術師だがね。その錬金術師の名前はアウレオルス・イザードと言って3年前から行方不明になってたのさ。」
やれやれといった風にステイルが頭を振る。
自分の世界に入るなよ馬鹿。
「その錬金術師が何のために?」
「それは、三沢塾に囚われていた『吸血殺し』。その子が所有しているある生き物を殺す能力さ。」
「ディープ・・ブラット。血?」
「そう、一般的によく知られている名は“吸血鬼”かな。」
「吸血鬼!?そんな化け物が存在するのか?」
上条が大声を上げる。魔術や超能力に関わった時点でその考えはやめるんだな、当麻。
この世には不思議なことがあふれてるんだ、俺たちが知らないだけでな。
「つまり、『吸血殺し』が存在することで吸血鬼は存在する。『吸血殺し』はその名の通り吸血鬼を殺す能力。その力を発揮するために自ら吸血鬼を呼び寄せるんじゃないか?そしてその錬金術師は吸血鬼を求めている。」
「さすがだよ、蒼崎。そのとおりだ。そこで上条当麻、君にはそれを回収する手伝いをしてもらう。拒否権はないと思った方がいい、この命令を拒否するならインデックスはイギリス清教会に強制回収される。」
「ステイル、俺がいるのにそれができるとでも?」
殺気を放ちながら迫るとステイルは冷や汗をかきながら言った。
「わかってるさ、だけどこれは教皇の命令だからね。禁書目録はイギリス清教の中で重要な位置にある。これを機に科学サイドとの戦争になるかもしれない。そんな危険を冒せるかい?」
「俺を脅すのか?大丈夫だ、俺の周りにいる大切な人は命に代えても守るからな。俺の命の対価として大陸一つぐらいなら貰っていくぞ?」
これは本気だ。核兵器を撃ち込まれても大規模魔術で攻撃されても、大切な人だけは守る。再び攻撃されないように相手を確実にぶち壊してな。
というか、実戦経験はないといっても過言じゃないが戦闘経験なら十分にあるぞ。
言わないけど。
いやそれ以前にテレズマだけで地球破壊なんて余裕な気が……。
やめておこう、考えるとこれ以上の特訓ができなくなる気がする。
「そ、そうか。だけどこれは僕への命令でもあるんだ。手伝ってもらわないと困る、それに理事長にも話をつけてあるんだ。やらなきゃいけない、義務があるんだ。」
「へ~、初耳だわ。あとで理事長さんにも連絡するとしよう。上条、俺も手伝ってやるから行けよ。お前だってインデックスがいなくなるのはいやだろ?」
「そう、だな。しょうがねえ魔術師、今回は手伝ってやるよ。」
無駄にでしゃばったみたいで悪いことしたな。
上条もなんかよくわからず困ってたし、気を付けよう。
「これが資料だ、目を通しておいてくれ。夜、君の家に行くよ。」
ステイルは胸元からファイルを取り出し、投げると去って行った。
「アイツも、大変だな。」
そう呟いてしまったのもしょうがないだろう。
彼の煙草臭いファイルに、薄汚れた後ろ姿に漂う哀愁。
何処のくたびれたサラリーマンだよ。歳、大して変わらないだろうに。
夜、スフィンクスの生活環境も整え俺と上条は外に出た。
「ようやく来たか、待ちくたびれたよ。」
ステイルはいつもと変わらぬ服装で待っていた。
よく見ればマンションのいたるところにルーン文字が書かれている、『魔女狩りの王』を置いていくつもりなのか?
「何やってんだ?」
「あの子のために『魔女狩りの王』を置いて行こうと思ってね。」
ステイルは苦々しい顔をしているがインデックスが心配なんだろう。
「あれってお前の最強の魔術だろ?それを置いていくってことは・・・お前、インデックスが好きなのか?」
「な、ななな何を言ってるんだ!あれは保護する存在であり、決して恋愛対象ではない!!!」
いやどこからどう見ても分かるぞ。あの当麻ですら気づいてるし。
「と、とにかく行くぞ。」
ステイルは焦って歩き出した。
それを俺達はにやにやしながら追った。
「姫神秋沙、この子を保護すればいいんだろ?」
「そうだ、ただしこの作戦はとてつもない危険が伴う。魔術師、今回は錬金術師だがその工房に侵入するんだ。錬金術師の戦い方を知っているかい?」
俺のイメージは手パンで武器を練成したり、指パッチンで燃やしたりだな。
「いや錬金術って鉛から黄金作ったり、不老不死を求める科学の原型だってイメージしかないぞ。」
「錬金術師のイメージとしては正解に近いね、だが彼らの真の目的は世界のすべてをシミュレートすることだ。もしそれができたらどんなことでも起こる、シミュレートできるならそれを起こす原因も起こせる言うわけだ。想像したことが現実に起こるってこと、君はそれに勝つことはできるか?」
「想像したことが現実に起こる?そんなの勝てるわけないだろ。」
「しかも魔術師の工房は幾重もの罠が設置されていると考えていいだろう。真正面から戦って勝つことは困難だ。だから今回の目標はこの少女の保護、できるならば錬金術師の抹殺となる。」
「わかった。行くぞ。」
三沢塾の中は意外と普通だった、原作知識より最初は撃退されることが分かっているので1度目は外で待機、。2回目から参加しようと思ったのだが・・・。
騎士派の男の死体を通り過ぎ、奥へ奥へと向かう。
「まったく、能力者に魔術を使わせるとは。」
「ほんとだよ、君みたいな規格外を除いてそんなことをすれば体がボロボロになることなんて目に見えてのるに。」
グレゴリオ聖歌隊の真似事を打ち破り、歩き続ける。その時背後に気配を感じた。
「当然。君たちが侵入者だな。
現然。君たちを殺せばすべて終、ルバゥ。」
「黙ってろパチモンが。」
「うわー容赦ねー。」
錬金術師の偽者を一発で粉砕すると階段を駆け下りる。
そこには昼に会った巫女服の少女、自称魔法使いがいた。
「よう、姫神愛沙。帰らないか?」
「帰る?私は目的がある。ここから出るわけにはいかない。そして錬金術師アウレオウス・イザードと利害関係が一致している。」
うーん、固い子だな。よし!
「お前に任せた!」
「俺かよ。」
上条とお話でもして、さっさとハーレムに組み込まれるんだな。
俺は本物の錬金術師を探すため、さらに奥に向かっ―――
「ふむ、貴様にはここでご退場願おうか。」
不意に男が現れ、その瞬間俺の意識はブラックアウトした。
俺って、搦め手とかそういうのに弱いん、だ、よ、な…
……結論から言おう
今回俺は全く役に立たなかった。
できたことはそう、被害者の能力者たちの被害を少なくすることだけ。
気が付いたら戦いは終わっていた。
アイツの魔術のせいで・・・・・。
悔やまれることは上条が原作通り一時的に右手を失ったこと。
俺にもっと力があれば……
だが今それを悔やんでいても仕方ない。とりあえず、上条を病院に連れて行こう。
誰よりも強く、どんなことからも友人を守れるように……