ずっとあなたのことが   作:ぷーすけ

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第二弾です。

カリンって特に愛着があるわけではないんですがなんか想像しやすかったので書いてみました。


守護命の青龍 カリン

 

ダンジョンの最深部。 そこで俺達はボスと激闘を繰り広げていた。

 

 

「あと少しよ! マスター!!」

 

「ああ、任せろ」

 

カラカラカラ………と俺が揃えたパズルが次々とコンボしていく。

 

……7.8.9combo!!

 

 

「よし! 終わりだ!」

 

「りょうかーい!!」

 

 

今までで一番のコンボが決まったおかげでさらにパワーアップした俺達のパーティはボスにとどめを刺した。

 

「よし、なんとかクリアーだな」

 

「ますた〜!!」

 

なんとか激戦を制することができ一息ついている俺のところにリーダーにしているカリンが駆け寄ってくる。

 

「やったね! マスター大好き!!」

 

 

彼女は駆け寄ってくるなり俺に抱きついた。なんとも柔らかい胸の感触が俺に伝わってくる。

 

「こ、こら離れなさい!」

 

「あっ…」

 

俺は慌てて彼女を引き離す。 さすがにこんなことされると動揺してしまう。よくこんなことを平気でするもんだ。

 

「マスター……もしかして私のこと嫌い?」

 

「はっ⁉︎」

 

 

いやだからなんで女の子ってそんなに極端なの?

 

 

「いやそうじゃなくてさ…こういうことはダメっていうか…」

 

「……嫌なの?」

 

「う、」

 

彼女が上目遣いで俺のことを見てくる。 それは反則だろ。

 

「い、嫌じゃないけどさ…その…」

 

「じゃあオッケーだね‼︎ マスター‼︎」

 

俺がいい終わる前に彼女はまた抱きついてくる。

 

またいつものパターンかよ、と思いつつ俺は他のパーティメンバーに助けを求める。

 

「おい、ルシファー! 助けてくれ!」

 

「くくく、お似合いですぜ旦那」

 

ルシファーはこんな状況をいつも外から楽しんでいる。 後でぶっ飛ばしてやるからな。

 

 

という感じでこれが俺の日常の一片である。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

「はあー疲れたー」

 

今日のダンジョンが一通り終わって部屋でくつろげる至福の時間。俺がソファーでゴロゴロしているとドアのノックする音がする。

 

「はあ、またあいつか」

 

「どーもー! 遊びにきたよー!愛しのマスター!」

 

ドアを開けて入ってきたのは我がパーティのリーダーカリンだった。

 

「なんだよ、何か用か? 俺疲れてんだけど」

 

「だったら私がマスターの癒しになるね!」

 

「うお!」

 

彼女はそう言うなりソファーに飛び込んできた。それと同時に俺はソファーから素早く離れて回避する。

 

「あっぶねー、ギリギリセーフ!」

 

そういって彼女の方を見るとなにやらショボンとした顔になっていた。

 

「…そうだよね。疲れてるから迷惑だよね」

 

「え?」

 

「…私に出来ることはないか……じゃあ部屋に戻るね……」

 

「ち、ちょっとまって」

 

いつもはもっとがっついてくるはずなのにそれと真反対の行動を取られ慌てた俺は思わず呼び止めてしまった。

 

 

「…俺今温かい物が飲みたくてさ……良かったらお茶を入れてきてくれないか?」

 

「うん、 いいよ」

 

彼女は少し笑みを取り戻しお茶を入れに行った。

 

 

 

「なんかあいつ元気なかったな…」

 

俺は再びソファーに寝転がり、天井を見つめてカリンのことを考える。

 

 

 

「…カリンか……」

 

 

 

 

カリンと俺の出会いは初めてのガチャだった。 それも俺にとっては壮絶な。

 

 

なんと彼女は卵が割れて出るや否や俺に抱きついてきたのだ。

 

もうその時の俺はびっくりの一言。 何が起こったのか分からずしばらくなされるがままだったが、慌てて気づいて彼女を引き離す。

 

「な、なんだよ‼︎ いきなり!」

 

「私カリン! よろしくね! マスター大好き‼︎」

 

「………………」

 

いきなりの告白?に呆れて物も言えない俺。

 

要するにカリンの俺への好意は当初から始まっていたのだ。

 

まあでもその好意が-Love-ではなく-Like-であることは分かっている。

 

最初は この子俺のこと好きなのかも、とか期待していたが、彼女は人懐こくてどんなモンスターにもそのように関わっていたので俺もその一部に過ぎないんだな、と感じたわけだ。

 

 

カリンに元気が無かったのもおおよそ見当がついている。

 

最初のうちはそんなカリンのノリに乗ってあげていたが最近は鬱陶しく感じることが多くなってきて、ついつい冷たい態度をとってしまったのが原因だろう。

 

流石に少しあざといとはいえ慕ってくれているのにその態度はないよな…。

 

 

 

「……よし」

 

俺は最近構ってなかったことをカリンに謝ると決めた。

 

 

その時ドアをノックする音がした。

 

「ん、入っていいぞ……お?」

 

てっきりカリンがお茶を持ってきたのかと思ったが、そこにいたのはカリンと同じパーティのサブメンバーであるフレイヤだった。

 

「どしたー?」

 

「マスター、次のダンジョン攻略の書類を持ってきましたよ!」

 

「おお、いつもありがとな」

 

「いえ! 私は当然の事をしたまでで……でもお役に立てたのなら嬉しいです!」

 

フレイヤは顔を赤らめて答える。

 

 

俺のダンジョン攻略は行く前に必ず作戦を立てるようにしている。

 

まあそれは普通俺のやる仕事なのだけれど、ある日フレイヤが折角主力メンバーに入れさせて頂いているのでもう少しお役に立ちたい、と言うのでその日以降任せているのだ。

 

彼女の作戦は完璧であり、おかげでほとんどのダンジョンをクリアーすることができた。 多分俺が立てる作戦より全然いいと思う。

 

だから今こんなに強くなったのも彼女があってこそである。

 

 

そんなフレイヤに何かお返し出来ないかと思い聞いてみる。

 

「なあ、フレイヤ」

 

「なんでしょうか」

 

「何かしてもらいたいことはないか?」

 

「え?」

 

「いや、日頃のお礼といってはなんだけど何か望みを聞いてあげようと思ってさ……いや無かったらいいんだけど」

 

それを聞いたフレイヤは俯いて少しして顔を上げた。

 

「で、では……一つだけ……」

 

「おう、いいぞ」

 

「じ、十秒間だけ目を瞑って欲しいです」

 

「え、それだけでいいのか?」

 

「え、ええ。 でも途中で絶対に目を開けちゃダメですよ!」

 

彼女は恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。 何この子超かわいい。

 

「分かった。 じゃあ目を瞑るぞ」

 

そういって俺は目を瞑った。 フレイヤの絶対ダメですよ、という声が聞こえる。

 

分かってるよ。と答えようとした瞬間、頬の一点に柔らかい感触が伝わる。

 

 

 

…………ん?

 

 

 

 

………………………え? ちょっとまって……… これってもしかして………

 

開けてはいけない目をほんの少し開けて横を見ると、顔を真っ赤にして目を瞑って頬にキスしているフレイヤの顔があった。

 

俺は慌てて目を閉じる。

 

まじかよ‼︎ ふ、フレイヤって大人しそうに見えて意外と大胆なところがあるんだな………ってかどうすればいいんだ⁉︎この状況‼︎

 

そう思いつつとりあえず高鳴る胸の鼓動を抑えてなんとか落ち着かせようとしていると、

 

 

 

 

 

ガシャーン!!!

 

 

「「!!!???」」

 

入り口の付近で大きな音がしたので驚いた俺とフレイヤが目を開けてその方を見ると

 

 

 

 

 

「うそ…………」

 

 

そこには持ってきたお茶の器を落として呆然と立ち尽くしているカリンの姿があった。

 

「おいおい、大丈夫か? 」

 

「カリンさん‼︎大丈夫ですか⁉︎ 」

 

 

「……そ、そんな………」

 

 

「気を付けろよ? 怪我とかしてないか?」

 

 

「……マスターとフレイヤちゃんが?………」

 

 

「おーい聞いてるー?」

 

 

「……うそだ………」

 

 

「どうかしたのか?」

 

何を言ってもカリンはブツブツ言って返答しないので近寄ろうとすると

 

 

「うそだー!!!」

 

 

そう言い放ってカリンは部屋を勢いよく飛び出していった。

 

 

 

「「……………」」

 

 

再び部屋の中はフレイヤと二人きりになる。

 

「どうしたのでしょうか…」

 

「……………」

 

 

フレイヤは気付いていないのかもしれないが俺には見えた。

 

 

「………カリンが泣いていた?」

 

ボソッとフレイヤに聞こえないような声で俺は呟く。

 

たしかに部屋を出て行く時に見えたカリンの横顔からは涙が溢れていた。

 

 

「………!!」ダッ

 

「マスター⁉︎」

 

 

俺は何か嫌な予感がしてすぐさまカリンの後を追いかけた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

マスターの部屋を飛び出た私は自分の部屋の隅で疼くまった。

 

「マスター……」

 

さっきから涙が止まらない。 ここに来てこんなに泣いたのは初めてだった。

 

私、失恋しちゃった………。 マスターへの愛なら誰にも負けない自信があったのにな………

 

 

最近どおりで私に対して素っ気なかったんだ。 おかしいとは思っていたけどさっきフレイヤちゃんにキスされているのを目撃して確信した。

 

 

マスターはフレイヤちゃんが好きだったんだ。 私もすごいアピールしてたのにな……

 

そう思うとさらに涙が目から流れ出てくる。

 

 

これからマスターとどう接したらいいのだろう……そう考えていた時、

 

 

トントン

 

 

ドアをノックする音がした。

 

「俺だ。 入っていいか?」

 

マスターだ。 マスターにこんな姿を見せるわけにはいかない。 そう思い慌てて涙を拭いた。

 

「…いいですよ」

 

ガチャ、とドアを開けてマスターが入ってくる。

 

「ごめんな、急に」

 

「…………………」

 

 

マスターがここに来た理由はだいたい分かっている。

 

「…それで、さっきのことなんだけど…どうしたんだ?」

 

「………………」

 

やっぱり。 でも今の私には言い出す勇気が無かった。

 

ただ今の私が言えることは、

 

 

「………マスター……」

 

「ん?」

 

「………マスター、おめでとう……フレイヤちゃんと幸せに……」

 

 

今できる精一杯の笑顔をつくる。 ……ダメだ、このままだとまた泣いてしまいそうだ。

 

「…じゃあ私はここで…」

 

そう思って頭を下げ、部屋から出て行こうとする。 すると、

 

「カリン」

 

呼び止められた。 まあそうだろう。 まだマスターの質問に答えていないのだから。

 

「……はい」

 

「……カリン、お前さ……」

 

「…………はい…」

 

「単純過ぎない?」

 

「……へ?」

 

ぷっ、とマスターが笑う。

 

「もしかしてさっきの光景を見てそう思ったの?」

 

こくりと私は頷く。 間違いない、あれは絶対に…

 

「いや、違うからな」

 

「へ?」

 

「だからな……」

 

また変な声を出す私にマスターは笑いながら説明してくれた。

 

 

 

………………

 

 

 

 

「な、なんだ…そうだったんだ…」

 

事情を聞いた私は安心したせいかどんどんと体から力が抜けていくのを感じる。

 

よかった。 マスターはまだ付き合ってなかったんだ………

 

 

………まだ? まだってことはいつかは誰かと付き合うってこと?

 

「ま、マスターは…」

 

「ん?」

 

「マスターは今気になる人っているんですか?」

 

「ん…ああ。 いるよ」

 

「………その人は誰ですか?」

 

 

もうこの際だから思い切って聞いてみることにした。

ドクン、と胸の鼓動が速くなっているのがわかる。

 

 

すうっとマスターが息を吸う。

 

 

「その子はな、いつも笑っていて俺に元気を与えてくれる」

 

「 ドジなところもあったり、おっちょこちょいだったり、おまけに少し絡みがあざといところもあるけど、そんなところが彼女らしいんだ」

 

「最近少し冷たくあたってしまったけれど、それでも俺は彼女が好きだ。 まあ彼女にはその気はないだろうけどな」

 

 

 

 

 

 

 

「カリン。 君のことが好きだ。俺と付き合ってください」

 

 

 

 

 

 

一瞬マスターが何を言っているかわからなかった。

私のずっと待ち望んでいた言葉がそこにはあった。 目から出た滴が頬を伝わっていくのがわかる。

 

 

 

「遅すぎ……」

 

「え?」

 

「私は出会った時から本気でマスターのことが好きだよ」

 

 

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

私は満面の笑みで答える。

 

私の出会いからのマスターへの思いが今ようやく伝わったのだった。

 

 

 

 




いやーカリン欲しいよー‼︎ (とても宝玉が貯まりすぎてるからなんて言えない……)

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