【構成変更のため投稿終了】幼女に転生した俺が獣人に転生した先輩の嫁になるまでの話   作:ハンヴィー

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 おお、こりゃすごい。採り放題だな。

 目の前には、見渡す限りに、カプセラの花が咲き誇っている。

 これだけ生い茂っているなら、他の連中と場所の取り合いにならなくて済む。

 

「それじゃ、早速始めようか」

 

 マルメオさんの指示で俺達は思い思いの場所で採集を始める。

 採集するときに特別注意することは無い様で、繁殖力が旺盛なので、根こそぎ採ってしまっても構わないようだ。

 どんなところにでも蔓延る雑草で田畑も例外ではないため、特に農家の天敵でもあるらしい。

 そんな生命力が強いところも、俺の世界のナズナに良く似ていると思った。

それはともかくとして、とりあえず、採集を始めるとしよう。

 

「ちょ、ちょっと、マーヤ! 何してるの!!」

 

 よっこらせとばかりに腰を降ろしたところ、何故か僅かに顔を赤らめたサーラさんに怒られてしまった。

 何かやらかしてしまったんだろうかと、首をかしげながらサーラさんを見上げる。

 

「そんな座り方したら、見えるでしょう!」

 

 言われてようやく気付く。

 胡坐をかくように腰を降ろしたせいで、スカートが大きく捲れ上がってしまっていたのだ。

 俺はいそいそと姿勢を直しスカートの裾を整えると、膝を斜めに崩すような女の子座りをした。

 

「いいこと、マーヤ。あんたはもう大人の女なんだから、そんなはしたない真似したら駄目よ!」

 

 はい。すんませんでした。気をつけます。

 

「ぶっ。マーヤのどこが大人の女なんだよ。ちんちくりんのガキじゃねーか」

 

 うっさいわ、ボケ。

 お前だって同じくガキだろうが。

 

「アンタは知らないかもしれないけど、マーヤはもう大人なのよ」

 

 サーラさんが見下すような表情でふふんと鼻を鳴らした。

 

「こいつのどこが大人だって言うんだよ」

「それが分からないから、アンタは子供なのよ。ねー、マーヤ?」

 

 そういう意味深な言い方で煽るのはやめてくんないかな。あと、俺に振るのも。

 テリオのバカが突っかかってくるのは目に見えてるんだし。

 

「何だよ。どういうことだよ」

「ふふん。お子様にはわかんなくても良い事よ」

 

 仕方が無いので、言い争う二人を放置して、俺は採集を始めた。

 

「ほらほら、二人共。喋ってないで手を動かす」

 

 見かねたマルメオさんから注意が飛び、二人はしぶしぶと言ったかんじで互いの矛を収めた。

 暫くの間、マルメオさんを含む俺達四人は、黙々と採集を続けていた。

 今日は天気が良くて良い陽気だ。

 頬を撫でるような微風と小鳥のさえずりが何とも気持ち良い。

 大の字に寝っ転がって昼寝と洒落込みたい誘惑に駆られる。

始めのうちは真面目に採集を続けていたけど、やっぱり暫くすると飽きてきてしまう。

 顔を上げて周囲に目を向けてみると、真面目に採集している人以外にも、花冠を作っている女の子や、茣蓙を敷いてその上でお茶をしながら談笑している人々が多かった。

 俺達みたいに仕事で請け負っているわけではなく、小遣い稼ぎ程度で採集に来ている人達にとっては、ピクニックみたいなもんなんだろう。

 こんな良い天気なんだし、採集なんてそっちのけで寛ぎたいのもわかる。

 というか、俺もそうしたい。

 何気なく、むしったカプセラに目を落とす。

 ナズナにそっくりなハート型の葉っぱの根元の茎を折り曲げる。

 その下にある茎も全て折り曲げて、くるくると回してみたところ、カラカラという乾いた音が鳴った。

 こういう遊びがあったっけなぁ、なんて思っていると、テリオが何遊んでんだと言いたげな目で睨んできた。

 何か言われると面倒なので、俺は何食わぬ顔でそそくさと採集を再開した。

 

「おい、マーヤ」

 

 そうやって、たまにサボりながら採集を続けていると、テリオが顔を寄せてきた。

 なんだよとそちらに顔を向けた俺の目に、ニヤニヤした笑みを浮かべるテリオの顔があった。

 

「ほら。やるよ」

 

 何気ない声と共に、俺の顔に向かって何かが放られた。

 ひんやりとしてぬめぬめとしたものが俺の顔に張り付いた。

 ひっと息を呑みながら払いのけると、それは小さなアマガエルだった。

 カエルは俺を見上げて一声鳴いた後、近くの草むらの中へと跳ねていった。

 

「あはははははは!」

 

 テリオはしてやったりとばかりに、俺を指さして大笑いした。

 

「こら、テリオ! 何してんのよ、アンタ!」

「おいおい、テリオ。女の子に何をしているんだ」

 

 すかさず、サーラさんやマルメオさんが注意するが、テリオは腹を抱えて笑い続けていた。

 やりやがったな、この野郎。

 俺は、拳を振り上げようとして、思い直した。

 ここで、いつも通りにこいつを張り倒すだけって言うのも芸がない。

 せっかく大人の女(笑)になったのだから、ここはひとつ、女の武器を使ってみることにした。

 俺は、くしゃっと顔を歪ませると、両手で目元を覆いながら蹲った。時折、しゃくりを上げることも忘れない。

 普段の俺とは違う反応に、テリオはうろたえ、サーラさんは眦を吊り上げた。

 

「こんの馬鹿テリオ! あんたってヤツは!!」

「女の子を泣かせるなんて、最低だぞ」

 

 サーラさんは激怒し、マルメオさんもほとほと呆れ果てたといった感じだった。

 ククク。馬鹿め。

 俺は泣きまねをしながら、指の間からテリオの顔を伺い見ていたところ、テリオと目が合った。あまりにも予想通りの結果だったため、思わずにんまりと口元を歪めてしまう。俺の表情から全てを察したようだったが、もう手遅れだ。

 二人がかりで散々に叱られるテリオの、恨めしそうな視線が実に心地良かった。

 ……そうやって、たまにサボったり、テリオで遊んだりしながら採集を続けていることしばし。

 シノダのほうから、やたらとご立派なつくりの馬車が数台やって来た。

 シンデレラの馬車みたいなそれを目にして俺は、眉を顰めた。

 なぜなら、その馬車の側面には、クルセーナ教の聖印がこれ見よがしに貼り付けてあったからだ。

 

「わあ。なんか凄い馬車が来たよ」

 

 サーラさんが、それに気付いて声を上げた。

 

「あれは……どうやら、教団のお偉いさんの馬車のようだね」

 

 答えるマルメオさんの声には、何かしらの含みを感じた。

 一際派手な馬車の中から姿を現した輩を見て、あっと声を上げそうになった(といっても声は出ないが)

 この前の配達の時、俺に突っかかって異教徒呼ばわりしてきた縦ロールだったからだ。

 あの時と同じような、目に優しくないドピンク色のフリルの着いた服を身に着けている。

 馬車の乗り心地が良くなかったのか、それとも別の理由からなのか、降り立った途端、御者に向かってなにやら文句を捲し立てているようだった。

 癇癪を起している縦ロールお嬢に続いて馬車から降りてきたのは、執事っぽい格好をした初老の男性だ。

 ハンカチで顔を拭いながら、縦ロールを宥めているみたいだ。

 

「あっ! あいつは……!!」

「しーっ!」

 

 俺は慌ててテリオの手を引っ張り、口元に指を一本立てて、静かにするように伝えた。

教会のお偉いさんの娘が、いったい、こんなところに何しに来たのか気にはなったが、見つかったら絶対面倒なことになるのは目に見えている。

 気付かれないようにおとなしくしていたほうがいいだろう。

 幸いなことに、周囲には人が多いし、こっちが何かしなければ気がつかれるようなことはないはずだ。

 

「二人とも、どうしたの……?」

 

 俺達の様子に、サーラさんが若干不審そうに首をかしげた。

 俺はなんでもないというふうに、曖昧な笑みを浮かべ首を振った。

 

「はん。お前には関係ねーよ」

 

 さっきの仕返しのつもりなのか、テリオがドヤ顔で余計なことを言った。

 

「何よそれ! テリオのクセに生意気!」

「俺のクセにって、どういう意味だよ!」

 

 あー。また始まったよ。

 俺は思わず手で顔を覆った。

 言い争う二人に嘆息し、こっそりと縦ロールご一行様の様子を伺う。

 人が多いこともあって、向こうがこっちに気付いている様子は無い。

 

「なんだか、もめているようだね。関わりあいにならないほうが良いだろう」

 

 同じように馬車を眺めていたマルメオさんが言った。

 俺もその意見には大いに賛成だ。

 態々こちらから目を付けられるような事をする必要は無い。

 

「そこの者達」

 

 そろそろ、各自が持参した袋が一杯になろうかというときに、唐突に声を掛けられた。

 やや横柄なその声に顔を上げると、縦ロールを必死に宥めていた初老の男性が立っていた。

 背後には、この前の一件で出会ったロロネーさんと同じような格好の若い男が二人立っている。

 

「その袋に入っているカプセラを譲ってもらいたい」

 

 こっちが避けようとしているのに、向こうから厄介事が狙い済ましたようにやってきた。

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