徹甲虫とはこれ如何に。   作:つばリン

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それでは、どうぞ!


第六話~三匹のモンスター~

「ぐむー、悔しい……」

 

 大して思ってもいなさそうな様子でそう呟くと、少女はその柔らかいベッドへとダイブした。直後、何やら嬉しそうな声と共に足をバタバタとさせる。いい加減慣れたとはいえ、竜車の揺れる堅い寝床よりかはやはり自室のベッドが良いのだろう。

 

「仕方ないにゃ。ゲネル・セルタスは強い。今までの甲虫種と比べものにならないのは分かっていた事にゃし、ご主人もすぐに実力が追いつくにゃ」

 

 頭装備を外しつつ冷静に分析するオトモアイルーの話を聞いてか聞かずか、えへへーと幸せそうな顔をしつつフカフカの布団へと頬ずりする少女ハンター。装備を外しインナー姿となった彼女はもはや、そのへんにいる娘と大して変わらないようにすら見える。

 

 ここは、彼らの所属するキャラバンのハンターハウス。現在はバルバレへと腰を落ち着けており、実質のメイン拠点となっているのがこの場所だ。

 

「まぁ、今回でアイテムも粗方使いきったんにゃし、次に挑戦するのは少し先になりそうだにゃ」

 

 ピョコンと椅子へと飛び乗ったオトモアイルーのネロは、そのまま自分の装備の手入れを始めた。ベッドに埋まった少女ハンターはそこから頭上半分だけを出し、「じーっ」とわざわざ声に出してそれを見つめる。

 

「な、何だにゃ?」

 

「……ネロ、何か隠し事してる」

 

 その発言にヒゲをピクリと動かしたネロだったが、目を細め、気とられぬように振る舞う。

 

「どうしてそう思うにゃ?」

 

「ん……。何かちょっと余所余所しかった」

 

 その発言に対しネロは、自分の主人が己をしっかり見ていてくれているという事に若干嬉しく感じつつも、考え事が態度に出てしまったのは戴けないなと内心反省する。彼は真面目で勉強熱心な一方、一つの事に没頭すると周りが見えなくなる癖があったのだ。ハンターの狩りをサポートするオトモ稼業をする以上それは致命的とも言える癖であり、事実苦労して克服したつもりではあったが、こうしたふとした時にその癖が出てしまう事は未だにあった。

 

「何、ただの料理の事だにゃ」

 

「あっ、あのこんがり肉のこと? また焼いてよー、ホントに美味しかったんだからあれ!」

 

 先程までのジト目から打って変わり、顔をパァっと輝かせて言う主人の姿を見て少し和んだネロだったが、どこかとぼけるような動作で「却下だにゃ」と断った。

 

「えーっ、本当に美味しかったのに……」

 

「アレが焼けたのは完全にマグレだにゃ。どうしても焼けって言うんにゃら、例えどんな出来になろうと完食すると約束してもらうにゃ?」

 

「むぐっ、それは……」

 

 見事な切り返しで主人の要求をぶった切ったネロは、にゃはははと笑いながらハンターハウスを出る。一歩外へ出れば、そこは活気と道具、情報に溢れる大陸一の市場。その光景を見、砂漠近く故の少々暖かい外の空気をその小さな胸一杯に吸い込むと、気持ちを切り替えて懐からメモを取り出す。そこには、バルバレの簡単な地図と、どこかの場所を示す赤い印が書き込まれていた。

 

「……よし、行くにゃ」

 

 モンスターと対峙する時とはまた違った種の緊張を覚える自分を自覚しつつ、確かな足取りで、その場所を目指すネロであった。

 

 

「キシャシャシャシャギギギギッ……ギシャッ(カラの実が四つ……おっけ)」

 

 ガサガサと漁っていた草から顔を出し、左右それぞれの中足でつまんだ四つのそれを改めて見てみる。ボウガンの球にもなるだけあって一つ一つはそれなりの大きさではあるものの、中身がスッカラカンのため非常に軽い。振ったらカラカラと音がするあたり恐らく、このカラの実というやつは完熟した後、種を残して水分を飛ばしてしまうタイプの植物なんだろう。ヘチマとヒョウタンを足して二で割ったようなヤツだな。

 

 採取した四つのカラの実を、ベースキャンプで拾った麻袋的なヤツに放り込む。ハリの実含めてどういう訳か無茶苦茶沢山あるから通常弾Lv2作り放題なんだろうが、ゲームでも剣士タイプだった上に、どーせこの身でボウガンを使う事も無さそうだからあまり魅力は感じない。ハンターさんが採る分が無くなったら困るし、必要以上の採取は止めておくとしよう。ただまぁ他にも利用価値は高そうなので、その都度頂くとしようか。

 

 俺が今いる場所はエリア2。そう、恐ろしく茂ったツタによって二重床になってる、牙獣種御用達のあのエリアだ。一応レイア姉さんやゲネルもやって来るエリアなので油断禁物だが、ゲネル相手なら地中に居ようが何だろうが近づけば臭いで分かるし、二重床の下にいればレイア姉さんの奇襲ブレスが直撃ー、なんて事も無いだろうからノンビリとアイテム採取中だ。

 

 ……あれ? そういえば今まで当たり前のように分かってたから気がつかなかったけど、何げに俺、どれが何のアイテムかどうかがほぼ完璧に把握できてるな。

 

 ゲームやってたんだから当たり前だろと思うかもしれないが、何せゲーム中では全てのアイテムはアイコンで表示されるのだ。しかも説明文の記述と色が違ってたりする事もあったりとそれらは全くアテにならないので、アイテムが実際のところどんな外見をしているかなど俺含めたモンハンプレイヤー達が知るよしもない。事実、昨日使った火薬草もアイコンと同じ赤色ではなく、普通に緑色だった。

 

「ギッギッギッギ……キシャシャシャシャシャシャシャァ(転生特典……って訳でもなさそうだなぁ)」

 

 俺は、この体になった直後からその動かし方が完璧に分かっていた。このアイテム関係の知識も、そういう“必要最低限の”知識として持っているような感じがする。アルセルタスがこんな知識を持つのは宝の持ち腐れもいいトコだと思うんだが、所詮ご都合主義の範囲内という訳なのか……? というか、そんだけの知識くれるんならついでに文字の知識も欲しかったですハイ。

 

「……ギッ、キシャシャシャシャシャシャシャ(……まっ、気にする事でもないか)」

 

 何か釈然としないが、マイナス方向にかかっている補正ならともかく、これは俺からすれば良いことずくめなので大して悩む必要もないか。ぶっちゃけこの知識がなかったら、この世界で暮らすのが一気にハードモードとなっていただろう。ついでに文字の知識m(ry

 

「キシャシャシャシャ、ギsy(ご都合主義、万z)」

 

「ギュオオオォォォウゥ……」

 

 ブチブチィッ、ズドォーン!

 

「ギシャァ!?(のぉぉ!?)」

 

 この知識を与えてくれた、あらゆる物語において最も崇めるべき存在への賛美の言葉を放っていたその時、聞きなれた――でも弱々しい鳴き声と共に、ツタの下、エリアの下段にいた俺の背後で何かが落下する轟音が響いた。

 

 完全に想定外な事態に何だ何だと慌てて後ろを振り向く。衝撃で地面から舞い上がった土埃。それが晴れ、俺の視界に入り込んできたのは――上段を形成しているツタを貫通し、下段の地面へうつぶせに倒れ込みグッタリと動かなくなったリオレイアだった。

 

 あーそっかぁー、リオレイアかぁー。

 

 ……。

 

「キシャシャシャシャ!?(リオレイア!?)」

 

 え、衛生兵ーっ!

 

 大急ぎで羽を広げ、未だ動かないレイア姉さんの元へと文字通りすっ飛ぶ。っつーか旦那ぁーっ! 怪我してる奥さんほったらかして何しとんじゃあのヘタレウスがぁーっ!

 

 噛みつきやブレスをブチ込まれるかもしれないという事を考える暇もなく、丁度レイア姉さんの顔のド真ん前にズザザッと着地、早速様子を観察する。

 

 どうやら生きてはいるらしいな、一安心。一応意識はあるみたいなんだが、目の前にいる俺に気付いてか気付かずか、何かしらの行動を起こす様子はない。その一見凶悪そうな竜の顔を時々苦しそうに歪ませ、弱々しく身を捩るのみだ。

 

「ギッギッギッキシャァ……?(一体何が……?)」

 

 周りをグルグルと歩き周ってみると、問題となっていると思われる部位を発見。体の側面、翼の下あたりの場所の鱗がひび割れ剥がれ落ち、露出した肉も紫色に鬱血し腫れ上がっていた。明らかに何かしら打撃系統の攻撃によるダメージだ。幸い、上段のツタがクッションになったおかげで落下によるダメージはそこまでなかった様子。面積は広いが、打撲の治療くらいなら俺でも……。

 

 と、考えていたその時。

 

「――ッ、キシャシャシャシャ……!(――っ、この忙しい時に……!)」

 

 どうにかできないものかと患部の様子を観察していた俺の“嗅覚”が、接近する脅威を察知し警鐘を鳴らす。俺はレイア姉さんと臭いの方向を交互に見てどうするべきか一瞬悩んだ後、近場の岩陰に隠れる事にした。因みにだが、レイア姉さんを置いて逃げるなんて選択肢はハナから頭に無かったぜ。

 

「ギシャァァァ……」

 

 俺がドタドタとギャグアニメみたいな走法で移動し、岩陰に身を隠した直後。地面の一部が隆起したかと思えば、性悪近所迷惑騒音(パーフェクトクズ)ババアことゲネル・セルタスが地中から姿を現した。相変わらず激おこモードなご様子ですね。

 

「……? キシャシャシャシャシャシャシャシャ(……? 甲殻が一部コゲてる)」

 

 ……成る程。恐らくはあのゲネル(ババア)、エリア5の巣の場所へでも行ったんだろう。で、そこにいたレイア姉さんが卵を守るために交戦、姉さんのブレスがアイツの甲殻に黒コゲを残し、アイツの体当たりか何かが横腹に当たってあの傷を残した、といったところか。

 

 まぁ、俺としては自分が生き残る事ができ、余裕さえあれば全力でハンターその他人間様方をサポートしていきたいとは考えている。で、レイア姉さんの体にあるハンターとの戦闘痕からも分かるように、モンスターである彼女ら夫婦がハンターさんの敵に回る可能性はかなり高く、わざわざ義理立てする必要は無い。寧ろ間接的に俺の敵ともとれるわけだ。

 

 ――と、ここまで考えてみたはいいんだが、ぶっちゃけそれは都合とか効率を追求した場合の話だ。俺は前世から、あまり効率とか考えない、無駄が大好きな人種だったもんでね。だからこそお見舞いをしようとか考えたり、こうして傷を治してあげようとかしているんだ。飽くまで俺は虫ではなく“人間”として、無駄な事をしてみようと思う。

 

 結論を言おう。

 

 ゲネル・セルタス、許すまじ。

 

「ギッシャァァァァァ!(オッラァァァァァ!)」

 

 “敵”であるゲネル・セルタスの接近に気付き、どうにかもがいて動こうとするリオレイア。一方のゲネル・セルタスは、相手がもはや虫の息――自分も虫のくせに――だと知った上で、余裕を見せてトドメを刺すべく悠々と近付く。俺はそんな状況の中へ突進していき、横っ腹へと体当たりをブチかました。

 

 俺の渾身の一撃を食らったゲネル・セルタスは突然の衝撃に大きく体をよろめかせ、バランスをとるべく数歩後ずさった。その間に俺は二匹の間へ割り込み、鎌を広げて威嚇のポーズをとる。

 

「ギッギッギッギッギキシャァァァ!(相手は俺だクソババア!)」

 

 こうして、俺の初めての戦闘らしい戦闘が始まったのだった――。

 

 

 

 

 

 決まったぜ。(ドヤァ)

 

 

 ――あれ。

 

 私は、また森の中にいた。でも、生えてる植物が違う。私、いつのまに動いたんだっけ。

 

 歩き回ってみる。私が一歩歩くたびに、どこかで生き物が逃げていくのが分かった。逃げないでよ、一緒に遊ぼうよ。

 

 喉が、乾いたな。

 

 そう思って、ある方向へ歩いてみた。そしたら、湖があった。何で分かったんだろう。お水は、とっても綺麗で美味しかった。

 

 お水を飲んでいたら、隣に豚さんが来た。背中にコケが生えてる。綺麗にしなくちゃだめですよ。

 

 豚さんと一緒にお水を飲む。私が満足して顔を上げたら、豚さんも不思議そうな顔で私を見てきた。かわいいな。お友達になろうよ。

 

 でも豚さんはプイッとそっぽを向いて、近くに生えていたキノコを食べ始めちゃった。美味しそうに食べるなぁ。

 

 ――あぁ、私もお腹が空いてきちゃった。私もキノコ、食べてみようかな。

 

 そう思って、もう一回豚さんを見た時。私はまた、意識を手放した。




×シリアス ○シリアル

先日、伊豆へ旅行に行ってきました。前に行った時は台風が通った直後だったのですが、今回はとても澄んだ綺麗な海でしたねぇ。ラギアクルス出てきそうでした。

それではまたいずれ。
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